社会調査とはなにか(2) テーマの設定と仮説構築 1.今年度の社会調査法実習のテーマ 2.テーマ(調査すべきこと)を絞るために 3.仮説の構築 4.参考文献 5.課題 1 1.今年度の社会調査法実習のテーマ 調査題目:「裁判員制度に対する意識~価値観との関連」 調査目的:司法制度改革において裁判に制度が発足した。 司法に対する国民の信頼を回復するために、市民に分か りやすい裁判の実現が目指され、国民が裁判に直接関わ る制度として提唱された。裁判員制度施行後4年が経ち、 国民的関心事となるような凶悪・不可解な事件に裁判員 が参加し、マス・メディアで報道されることもあった。 “社会の安全を自分たちの手で守るために人を裁く”とい う色彩が強いこの制度に対する態度や制度への参加意 欲には、個々人の価値観が影響を及ぼしていると思われ る。そこで、価値観(人生目標や幸福感)と裁判員制度に 対する意識を明らかにし、どのような制度の在り方が望ま しいかを考察する。 2 2.テーマ(調査すべきこと)を絞るために (1)先行研究のレビュー 既に着手(ほぼ終了??) ⇒目的についてa)明らかにされていることとb)明らかに されていないこと、を列挙する。 具体的には、 ①裁判員制度に対する国民の意識(理解、態度など) ②裁判員裁判への国民の参加意欲の積極性 ③価値観尺度(どのような尺度があるか、何を測定でき るか) ④裁判員制度に対する意識と価値観との関連 ※①②は専攻研究あり。④は少ないと思われる。 3 (2)概念の定義を明確にする 意識? 態度? 価値観? (3)明らかにしたいことを疑問文の形で提示する ⇒仮説につながる。 4 (3)調査すべきことをもっと絞り込むために ※明らかにしたいことが多すぎては困る。 自分たちのグループでレビューした先行研究のみならず、 他のグループのものも参考にしよう。 これまでの「社会調査法実習」での研究成果も参考にしよ う。 “明らかになっていること”“明らかになっていないこと”を 明確にしよう。 概念や用語の定義を再考しよう。 明らかにすべきこと(調査すべきこと)を絞りこもう。 仮説を構成しよう。 5 3.仮説の構築 (1)仮説とは 科学的事実を説明するために仮に想定される認知的枠組 (心理学事典, 平凡社)。 作業仮説:新しく研究を進める場合に前提として設定 される仮説。 例1)オウム真理教関連のメディア報道に多く接した 人ほど、社会不安を感じた人が多いのではないか (斉藤・川端, 1998) 6 (2)仮説を構築するための手順 ①知りたいことを問いの形で言語化しよう! =リサーチ・クエスチョン 例1)都市部居住者に「民主党」支持者が多いと いうのは本当か? 例2)教育水準は人種差別的意見の有無と関連 があるか? リサーチ・クエスチョンは、測定可能なほど具体 的であるほうがよい。 ⇒質問項目・回答(選択肢)の作成⇒分析 7 ②“なぜそうなると思うか”の論拠(=仮説の根拠)を示そ う!出典の明記を忘れずに! 例えば、次の例のように・・・・・ 仮説1:テレビの視聴時間が長い人ほど、現実認識は ○○となるであろう。 ←論拠:成人を対象とした■■(19??)の研究によれば、 テレビ視聴時間が長い人ほど、犯罪率を高く見積もる傾 向があるからである。 仮説の根拠を示すためには、以下のいずれかが不可欠。 a)先行研究の知見の整理 b)理論・モデルの援用 8 (3)仮説の構築・再考のポイント ①文末表現に気をつけよう! 断定表現 ex)裁判についての知識がない人ほど、遺族や 被害者に感情移入しやすい。 推量表現 ex)裁判についての知識がない人ほど、遺族や被 害者に感情移入しやすいだろう。 9 ②論理表現に気をつけよう! ~ほど、・・・・だろう。 ex)裁判についての知識がない人ほど、遺族や 被害者に感情移入しやすいだろう。 ○○よりも△△の方が、~だろう。 ex)裁判についての知識がある人よりもない人 の方が、遺族や被害者に感情移入しやす いだろう。 10 ③検証可能かどうか見極めよう! どんな結果でも仮説が支持される ex)裁判についての知識があるかないかで、遺族 や被害者への感情移入の程度に違いがある だろう。 →知識の有無で感情移入の程度に差があれ ば、どのような結果でも仮説が支持される。 質問紙調査で調べられない ex)裁判員裁判は、裁判官裁判よりも量刑が重く なるだろう。 ex)裁判員制度は憲法違反であろう。 11 抽象的で漠然としていないか⇒より具体的に ex)裁判員裁判は冤罪を生みやすいだろう。 ex)裁判員裁判において、一般市民が「公正な判 断」をすることには限界があるだろう。 既に明らかにされていることではないか 実証研究で既に明らかにされていることを、わざわ ざ再検討する必要はない。明らかにされていないこ とを明らかにするのが実証研究である。 ex)裁判員裁判で裁判員を務めることに消極的な 態度を持っている人の方が積極的な態度を 持っている人よりも多いだろう。 12 一般的な事実ではないか ex)犯罪の種類によって量刑は異なるだろう。 適切な根拠から仮説が導かれているか 根拠=仮説もNG 13 4.参考文献 森岡清志(編著) (1998) ガイドブック社会調査 日本評論社 村田光二・山田一成(編著) (2000) 社会心理学研究の技法 福村出版 大谷信介・木下英二・後藤範章・小松洋・永野武 (2005) 社会 調査へのアプローチ(第2版) ミネルヴァ書房 酒井隆 (2003) 図解アンケート調査と統計解析がわかる本 日本能率協会マネジメントセンター 島崎哲彦(編著) (2000) 社会調査の実際 学文社 高野陽太郎・岡隆(編) (2004) 心理学研究法 有斐閣アルマ 14 5.課題 <課題3>仮説の構築とその根拠の提示 プリントアウトして、5/15授業開始時に提出 仮説は各グループ一人一つずつ立てること。 以下の点を確認することを忘れずに。 ・仮説の根拠の妥当性 ・仮説に不備がないか(どのような結果が出ても支持された ことになる、複数のことが盛り込まれているなど、スライド 9~13枚目の「(3)仮説の構築・再考のポイント」で指摘 されていること) ※質問紙が完成した段階で、もう一度仮説を見直してもらうこと があります。 15
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