今日の目的 - 立命館大学大学院 先端総合学術

長瀬修
2012年9月30日13:00-14:00
立命館大学国際平和ミュージアム
概要
 障害者の権利条約の概要
 国際的実施の課題
 国内的実施の課題:障害者制度改革
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障害者の権利条約の背景
-障害学‐
 社会モデル
 社会の障壁が作り出す不利益としての「障害」こそが
問題である
 文化モデル
 違いの尊重
 障害者の参加
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条約の成立・実施過程
 1987年
 2002年
 2006年
 2007年
 2008年
障害者差別撤廃条約提案
障害者の権利条約交渉開始
同採択
署名開放
同発効
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条約の目的(第1条)
 障害者のすべての人権の確保、基本的自由と尊厳の尊
重
 社会参加を妨げる障壁(バリア)
 障害の社会モデルの反映(障害学)
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障害に基づく差別とは?(第2条)
 障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、
政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他の
いかなる分野においても、他の者との平等を基礎と
してすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し
又は行使することを害し又は無効にする目的又は効
果を有するものをいう。障害に基づく差別には、合
理的配慮を行わないことを含むあらゆる形態の差別
を含む。
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合理的配慮とは?(第2条)
 障害のある人が他の者との平等を基礎としてすべて
の人権及び基本的自由を享有し又は行使することを
確保するための必要かつ適切な変更及び調整であっ
て、特定の場合に必要とされるものであり、かつ、
不釣合いな又は過重な負担を課さないものをいう。
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合理的配慮の例
 難聴者




筆記・字幕、磁気ループ
ろう者 手話通訳
盲ろう者 指点字、触手話、手書き文字
視覚障害者 朗読、点字、盲導犬、
電子データ
肢体不自由者 スロープ、車いす用トイレ
トイレ休憩、電子データ
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条約の主な原則(第3条)
 固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含
む。)及び人の自立に対する尊重
 非差別
 インクルージョン
 差異の尊重
 機会の平等
 アクセシビリティ
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政府の義務(第4条)
 障害者の権利を守るための法律づくりと行政施策の
実施
 政府自体
 民間
 決定過程での障害者との協議、決定過程への障害者
の関与
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平等と差別をなくすこと(第5条)
 差別をなくす
 合理的配慮の確保
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障害のある女性(第6条)
 女性であることと障害者であることの複合的な差別
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障害のある子ども(第7条)
 子どもの最善の利益の確保
 障害児の意見表明権
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意識向上(啓発) (第8条)
 社会全体の障害者の状況に関する意識向上と障
害者の権利尊重
 障害者に対する固定観念の除去
 学校での障害者の権利尊重の態度促進
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アクセシビリティ(第9条)
 物理的なバリアフリー
 情報面のバリアフリー
 情報保障などの人的支援
 朗読者
 手話通訳者
 筆記者
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生命に対する権利(第10条)
緊急事態(第11条)
 誰もが同じ命の権利を持っていること
 自然災害時の障害者への対応
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法律に関する平等な権利(第12条)
司法へのアクセス(第13条)
 平等な法律に関する権利
 成年後見制度など必要な支援
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身体の自由(第14条)
拷問の禁止(第15条)
 自由を奪われないこと
 拷問や非人道的な扱い、人体実験の禁止
 医療観察法の問題
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搾取、暴力、虐待の禁止(第16条)
身体と精神の尊重(第17条)
 児童虐待防止法、高齢者虐待防止法に続いて、
障害者虐待防止法が成立(2011年6月、2012年10
月施行)
 養護者、福祉施設従事者、使用者(雇用主)による虐
待
 虐待の類型(身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネ
グレクト、経済的虐待)
 通報義務
 障害者権利擁護センター設置(都道府県)*市町村へ
の情報提供、助言
 通報窓口としての障害虐待防止センター設置(市町
村)
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国境を越えた移動の自由(第18条)
 生まれたことを認められ、登録される権利
 自分の親を知り、親に育てられる権利
 外国に行く権利
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地域で生活する権利(第19条)
移動の自由(第20条)
 施設への入所を強制されない権利
 地域での生活支援を受ける権利
 障害者自立支援法の課題
 車椅子等の提供
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表現の自由と情報アクセス(第21条)
プライバシーの権利(第22条)
 自分の選んだ形で、意見を述べたり、情報を受け取
る自由
 点字や手話や字幕による情報の提供
 分かりやすい情報の提供
 健康やリハビリテーションに関するプライバシーの
保護
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家庭と家族の尊重(第23条)
 結婚し、家庭を築く権利
 性教育を受ける権利
 不妊手術、断種手術を強制されない権利
 家族と暮らす権利
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教育(第24条)
インクルーシブ教育の原則
地域の学校に行ける権利
学校での合理的配慮の提供の義務
手話で学ぶ権利
盲学校やろう学校を選ぶ権利
手話のできるろう者教員や点字のできる盲人教員の
採用
 大学での合理的配慮の提供の義務






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健康(第25条)
リハビリテーション(第26条)
 障害を理由とする診療拒否や医療停止の禁止
 地域での医療やリハビリテーションの権利
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労働の権利(第27条)
人間らしい暮らしの権利(第28条)
 ふつうの会社で仕事をする権利
 障害を理由とする採用拒否の禁止
 政府、自治体と企業による雇用の促進
 合理的配慮の提供
 衣食住に困らない権利
 障害基礎年金や社会保障の権利
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政治的活動の権利(第29条)
 投票や立候補の権利
 分かりやすい投票の方法
 投票の秘密の確保
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文化的生活・レクリエーション、レジャー、ス
ポーツへの参加の権利(第30条)
 テレビや映画の情報保障
 一般スポーツへの参加
 障害者スポーツへの参加
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統計とデータ収集(第31条)
 条約実現のために適切な情報(統計とデータ)の収集
 プライバシーの保護と倫理の遵守
 条約の実施のための評価と、障壁への対処に活用
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国際協力(第32条)
 国際協力のバリアフリー化
 障害者の国際協力への参加
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国内実施(第33条)
 独立したモニター(監視)機関の設置
 障害者組織のモニタリングへの参加
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署名・批准状況と国際的実施
 154の署名国・地域組織
 122の批准国・地域組織
(2012年9月28日現在)
 批准と実施の関係は?
 2008年
第1回締約国会議
 2011年
障害者の権利委員会審
査開始
 チュニジア、スペイン
 2012年 同委員会審査
 ペルー、中国、アルゼ
ンチン、ハンガリー
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自治体の障害差別に関する条例
 千葉県
2006年10月制定2007年7月施行
 北海道 2009年3月制定2009年4月施行
 岩手県 2010年12月制定、2011年7月施行
 さいたま市 2011年3月制定2011年4月施行
 熊本県 2011年7月制定 2012年4月施行
 八王子市 2011年12月制定 2012年4月施行
民主党マニフェスト(政権公約)2009
 障がい者自立支援法を廃止して、障がい者福祉制度
を抜本的に見直す
 【政策目的】
 ○障がい者等が当たり前に地域で暮らし、地域の一員と
してともに生活できる社会をつくる。
 【具体策】
 ○「障害者自立支援法」は廃止し、「制度の谷間」がな
く、サービスの利用者負担を応能負担とする障がい者総
合福祉法(仮称)を制定する。
 ○わが国の障がい者施策を総合的かつ集中的に改革し、
「国連障害者権利条約」 の批准に必要な国内法の整備
を行うために、内閣に「障がい者制度改革推進本部」を
設置する。
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民主党の障害者政策
障がい者制度改革推進会議
障がい者制度改革推進会議第1回会合
 24名の構成員のうち、14名は障害者団体の代表=歴
史的な構成
 2010年1月から2012年3月まで29回開催
 2010年1月12日
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障がい者制度改革推進会議
障害者制度改革のための基本的な方
向(第1次意見)
 2010年6月29日 障害者制度の改革のための基本的な
方向について(閣議決定)
 2010年12月17日 障害者制度改革の推進のための第2
次意見
 2010年6月7日
障害者制度改革の推進のための
基本的な方向
(2010年6月29日閣議決定)
 2011年 障害者基本法の抜本的改正
 障害者施策の実施状況の監視(モニタリング)
 権限:関係各大臣への勧告権限、資料提出要求
 2012年「障害者総合福祉法」(仮称)の制定
 2013年
「障害者差別禁止法」(仮称)等の制定
2011年7月
改正障害者基本法成立
 総則
 障害者の定義に「社会的障壁」
 地域生活における共生
 手話を言語として認定
 差別の禁止(社会的障壁の除去)
2011年7月
改正障害者基本法成立
 基本的施策関係
 教育(生徒と親の意向の尊重)
 防災と防犯<新設>
 消費者としての障害者の保護<新設>
 選挙における配慮<新設>
 司法手続きの配慮<新設>
 国際協力<新設>
2011年7月
改正障害者基本法成立
 障害者政策委員会等
 国に障害者政策委員会の設置し、障害者基本計画に関
する調査審議・意見具申、勧告=モニタリング機能
 地方障害者施策推進協議会を改組し、所掌事務に障害
者に関する施策の実施状況の監視を追加
2012年6月
障害者総合支援法の成立
 障害者自立支援法の廃止(障害者自立支援法意
見訴訟原告団・弁護団と国との基本合意文書)
 制度の谷間を生まない障害の定義の設定
 応益負担の廃止
 2010年4月に総合福祉部会が設置された。55名の
委員(発達障害・難病・高次脳機能障害関係者
も参加)
 2011年8月に同部会の「骨格提言」
2012年6月
障害者総合支援法の成立
 「頓挫」
 政治主導はどこに?
 自立支援法の廃止ではなく、名称変更
 1割の「応益負担」
 主な改正点
 難病の追加
 重度訪問会議の対象拡大(知的と精神)
 意思決定支援
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2013年
障害者差別禁止法の制定
 推進会議に「差別禁止部会」を設置し、「障害者差
別禁止法」(仮)の制定に向けた検討を開始する。
 2012年度末(2013年3月)をめどに結論を出し、2013
年通常国会提出を目指す。
 2012年9月14日、障害者政策委員会差別禁止部会は意
見のとりまとめ完了
障害者政策委員会の発足
2012年7月
 改正障害者基本法第32条に基づく設置
 全30名
石川准(静岡県立大学教授)
 任務
 障害者基本計画(2013年~2022年)に関する調査審議、
必要に応じて、内閣総理大臣又は関係各大臣に対し、
意見を述べること。
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障害者政策委員会の発足
2012年7月
 障害者基本計画の実施状況を監視し、必要に応じて、
内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に
勧告すること。
 内閣総理大臣又は関係各大臣は、政策委員会の勧告に
基づき講じた施策について政策委員会に報告しなけれ
ばならない。
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わたしたちの課題
 「障害者」を含めたインクルーシブな社会をどう作
るのか。
 インクルーシブな社会づくりの過程をインクルーシ
ブに。
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