第6週 §2(決済システムの安定化政策)続き 前回の講義で学んだこと: ◆ だれが通貨をどのように供給するか ◆ 振り込み、振り替えのしくみ ◆ 日銀当座預金の役割とは ◆ 銀行の行う信用創造とは ◆ 銀行取り付けの可能性とその実例 (テキスト対応範囲:p.23~31) 1 §2 設問の残り (テキストp.29~43) Q2) 日銀の「最後の貸し手」機能とは Q3) 競争制限的規制とは Q4) セーフティ・ネットとは 2 Q2) 日本銀行の「最後の貸し手」機能とは何 か ◆ 銀行取り付けの問題点 ・ 取り付けが伝染する危険性が高い ・ 結果として、預金を用いた決済システムが崩壊 (システミック・リスク) ◆ 必要に応じて、経済全体の現金および日銀当預を 増加させられるのは中央銀行(日銀)だけ ・ 銀行の保有する証券の買い取り ・ 最後の貸し手(Lender of the Last Resort:LLR) → 日銀当座預金を通じた貸し出し 3 Q3) 「競争制限的規制」とは何か ◆ 事後的措置だけでなく、平時の安定化政策が必要 [A] 競争制限的規制 → 近年は緩和・撤廃が進む [B] 預金の安全性を確保するその他の措置 ・ 「最後の貸し手」機能,預金保険制度 ・ 自己資本比率規制 ・ 早期是正措置 決済システムのセーフティーネット 4 [A] 競争制限的規制 (1) 参入規制・・・開業等の制限、分業の徹底 → 預金者利益や銀行経営の安定性を保全 (2) 金利規制・・・金利上限のガイドライン(実質的命令) → ハイリスクの貸し出しを抑制 (3) 店舗規制・・・店舗数の自由な変更を規制 → 業務単位あたり費用の抑制、経営の効率化 (4) その他:国際取引に関する規制(外国為替管理法) ・日本の高度成長期には成長産業に重点的に資金が配分された ・「護送船団行政」:金融機関の倒産は起きず、システムが安定 5 競争制限的規制の問題点 ◆ 参入規制によって既存の銀行が保護され、超過利 潤(レント)が温存され、高コスト体質が維持される → コストを負担するのは預金者や借り手 ◆ 1980年代以降の金融自由化にともない、競争制限 的規制が徐々に緩和・撤廃 ・1970年代末~ 金利自由化,外国為替法改正 ・1993年 金融制度改革法 ・1994年 定期預金金利の全面自由化 ・1997年~ 「金融ビッグ・バン」 参入規制と店舗規制の緩和・撤廃 6 競争的環境の整備と決済システム安定化の両立 ◆ 日本版‘ビッグバン’による利便性や機能の向上 ・ 銀行の営業時間の緩和,手数料の自由化 ・ 商品の多様化(銀行・証券・保険の業務区分撤廃) ・ 新規参入や銀行の業態の変化(Net銀行やATM銀行) ◆ 非効率な金融機関の倒産 ・ 山一証券(1997),北海道拓殖銀行(1997),日本長期信用銀 行(1998:現新生銀行),日本債券信用銀行(1998:現あおぞら 銀行)といった大手金融機関の破綻 7 Q4) どのような「セーフティ・ネット」があるか ◆ 中央銀行による 「最後の貸し手」機能 ◆ 預金保険制度 ◆ 自己資本比率規制 ◆ 早期是正措置 8 ◆ 預金保険と「モラル・ハザード」 預金保険制度 ・ 1971年から導入 ・ 各銀行が預金保険機構に預金保険料を供託 ・ 銀行の破綻時に、同機構は預金保険金を支払う、ま たは営業譲渡などの支援を実施 ・ 保険金の支払い(pay off):預金者1人1行あたり元本 1000万円まで(および預金利子分) ・ 営業譲渡時の資金援助:破綻銀行の不良資産の買 い取りや資金提供(貸付や贈与)を含む 9 ペイ・オフが元本1000万円までしか適用されない理由 ◆ 最大の理由は‘モラル・ハザード’の防止 ・ 銀行経営に関するモラル・ハザード ・ 預金者の監視に関するモラル・ハザード ◆ 元本1000万円までが預金保険対象預金(付保 預金ともいう) ※ 小口預金者の監視費用負担の問題 ◆ 元本1000万円を超える預金(非付保預金)を預 ける大口預金者は、自身で銀行の経営状態を監視 (市場による銀行経営の監視) 10 ◆ 自己資本比率規制 ・ 自己資本価値=企業の保有資産価値-負債価値 (=株主資本価値) ・ 銀行の場合、負債の大部分は銀行の供給する預金 (資産) 銀 総資産 (実物資産や 行 (負債) 預金(負債) 株式(自己資本) 保有する証券など) 11 銀行の自己資本比率規制 自己資本の価値 ◆ 自己資本比率= 資産価値 資産価値-負債価値 = =1-負債比率 資産価値* ◆ *各種資産のリスクがそれぞれ異なるため、リスクに応じて ウェイトを掛けて分母の資産価値を査定 (例えば、国債はリスクゼロであり、分母には含まれない) ◆ 銀行の保有資産(貸付など)が不良資産化すると、償却によっ て資産価値が低下し、自己資本比率も低下する(預金の安全 性が損なわれるリスクが増大)。 12 畔上秀人「これからの地域金融機関の店舗展開」(2007年東京研究会報告資料)からの転載 13 §2 練習問題の解答 [1] (1) 日本銀行 (2) 要求払い預金 (3) 信用創造(預金創造) (4) 銀行取り付け (5) システミック・リスク (6) 日銀当座預金 (7) 最後の貸し手 (8) 競争制限的 (9) 参入 (10) 上限 (11) 店舗 (12) (日本版)ビッグ・バン [2](1) ウ (2) イ (3) エ (4) ア (5) エ 14
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