金融の基本Q&A50

金融の基本Q&A50
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安塚 大輝
日銀はなぜ金利が低水準なのか?
• お金を借りる側の体力が落ちている
バブル崩壊以前の日本
の経済成長率は大変高
いものであったが、バ
ブル崩壊後に急激に落
下している。それ以降、
日本の経済成長率は低
推移を保っている。
• 日銀による超低金利政策
日銀は金融機関同士が1日だけお金を貸し借りす
るときの金利である「無担保コール翌日物」とい
う金利を低水準に維持する政策をとっている。こ
の政策により、経済全体で使われるお金の量が増
え、景気・物価は改善されると考えられる。また、
日銀による超低金利政策には、金融システム不安
を鎮静化させる効果も期待できる。
日銀の役割とは?
• 紙幣の発行
私たちが安心してお金を使えるように、高い技術と厳しい管理の下で偽札を防止し、お
札の発行と吸収を行なっている。
• 物価の安定
定期的に金融政策委員会を開催して金融政策の基本的な方針を決定する。現在は、政策
金利として「無担保コール翌日物金利」を用いており、金融政策決定会合の度にその誘
導目標を決定している。無担保コール金利は、短期金融市場での取引により日々変動す
るため、日銀が誘導目標を設定しただけでは目標通りに推移するとは限らない。そこで、
日銀は資金供給オペや資金吸収オペを行うことで金融機関との間で国債、手形の売買等
を行い、資金量を調整することで金利を目標水準へと誘導する。
• 決算システム、金融システムの安定
システミック・リスクが発生しないように、日銀には決算システムの安定や金融システ
ムの安定を確保する役割が課されている。このため、日銀は金融機関の経営実態を
チェックしている。仮に何らかのショックによって金融機関の経営が悪化し、予定して
いた支払いができない、あるいは市場を通じて借りていたお金を返済できないといった
事態が生じた場合、「最後の貸し手」として金融機関に直接お金を貸し付ける。
なぜ貸し渋りは起こるのか?
• 資産価格の急落や、景気の大幅な悪化により銀行の収益・資産
状況が悪化し、貸し出し余力が低下
08年の米国を震源とした金融危機以降、日本経済も戦後最悪と形
容されるほど落ち込んだ。この結果、銀行の貸出余力が悪化し再
び銀行は貸し渋りを行なっているのではないかとの懸念が高まっ
ている。
• 企業などの資金の借り手の問題
金融危機の直後は、銀行の貸出余力が低下しただけではなく、景
気の大幅な悪化の影響から企業業績が悪化したため、多くの企業
では、手元資金を確保するために資金の需要が増加している。
• 新たな損失を回避するための貸し出し姿勢の慎重化や、企業な
どの資金需要が銀行の貸し出し余力を上回っている
金融機関に対する厳しい監督
• システミック・リスク
ある所で発生した決済不能が次々と広がって世の中に混乱
を及ぼす可能性のことをいう。具体的には、一つの金融機
関の支払不能や決済不履行等や、特定のマーケット(市
場)または決済システム等の機能不全が、他の金融機関、
他の市場、または金融システム全体に波及することである。
特に決済システムの要である銀行間決済の場で決済不能が
発生すると、これが連鎖的に広がって多数の銀行が決済不
能になると共に、それらの銀行を利用して行われるはずで
あった多くの個人や企業の決算も出来なくなる可能性があ
ることから、その影響は格段に大きいといえる。そのため、
金融機関に対する厳しい規制や監督は、金融機関に特有の
システミック・リスクの発生の防止、預金者などの保護、
経済の安定を目的としている。
しかし!!
流動性危機の発生!
お主な原因な
お
発生する
現象
08年発生の金融危機
伝統的な金融危機
流動性の不足
不良債権の発生
・市場での資金の貸し手
がいなくなり、市場から
の資金調達が困難になる
・市場で価格が付かず取
引が停止
・市場参加者による取引
相手の選別
・預金の取り付け
・決算サービスの停止
・金融機関同士による取
引相手の選別
・徐々に銀行の損失が拡
大
金融危機前までは、規制や監督は銀行が預金や決
算の支払いをできない事態に陥らないよう、個々
の金融機関における不良債権の発生を防ぐという
ような財務の健全性に重点を置いてきた。しかし、
08年に発生した金融危機では流動性危機が起こっ
てしまうなど、金融機関への規制や監督の新たな
問題点が明らかになったことから、G20サミット、
国際機関、米国、英国などが金融機関に対する規
制や監督の見直し、強化を進めている。
論点
中小企業への貸し渋りについて