風レンズ効果を利用した風力発電について

風レンズ(風の局所集中効果)による
風力発電の高出力化
大屋裕二、烏谷 隆、深町信尊、
渡辺公彦
(九州大学応用力学研究所)
茶木田 浩(九大院航空宇宙)
内 容
• なぜ風力エネルギー、背景と現状
• 風力発電と風レンズ効果
• 集風加速装置の開発
• まとめと今後の課題
社会的背景
近年、化石燃料の大量消費による
地球環境の悪化(地球クライシス)
温暖化現象、酸性雨、森林破壊、
砂漠化、異常気象、などが深刻な
社会問題となっている
☆ COP3:地球温暖化防止京都会議
•温室効果ガス排出量
(1997年12月)
2008年~2012年
1990年レベルから
6%削減
☆ 長期エネルギー需給見通し
•化石燃料の割合
•石油の割合
1996年
83%
(1998年6月)
2010年
75%まで削減
55%
50%程度まで
削減
新エネルギーの比率
1996年
化石
燃料
83.0%
新エネ
ルギー
1.1%
地熱
0.2%
水力
3.4%
1.1%
3.1%へ
増加
風力発電に関する
2010年の目標見直し
化石
燃料
75.1%
地熱
0.6%
2010年
原子力
12.3%
2010年
新エネ
ルギー
3.1%
1996年
水力
3.8%
原子力
17.4%
1998.6
30万kW
2000.3
300万kWへ
増加
日本の風力開発の推移
2010年目標
30万 ⇒ 300万 kW
日本の風力設備容量(MW)
160
150
140
120
100
75.063
80
60
40
31.568
20
0
0.358
0.891
0.991
2.899
1989
1990
1991
1992
4.982
5.856
1993
1994
9.496
1995
13.495
1996
17.198
1997
1998
西暦年
Wind Turbine Capacity in Japan
1999
2000
世界の風力開発の推移
20000
17706
世界の風力設備容量(MW)
18000
16000
14000
12000
11285
9841
10000
7684
8000
6172
6000
4905
3594
4000
2000
1097
1318
1492
1588
1731
2002
2287
2539
2876
0
1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000
西暦年
Wind Turbine Capacity in the world
風力エネルギーの特徴
長所
・クリーンである
・無限の自然エネルギー
短所
・エネルギー密度が小さい
・不規則性、間欠的な性格
風車工学の発達
風車は
◎できるだけ大きな直径で
◎できるだけ背の高い風車を
◎できるだけ風が吹く所に設置する
方向に発展してきた。
発電効率
風車の運転
モードの例
風況マップ
◎ 灰色 --- 年間平均風速が
6m/s以上の地点を多く含む
地域
◎ 黒色 --- 8m/s以上の地
点を多く含む地域
毎秒4メートル程度以上の風
が吹かないと発電できないた
め、適地が少ない。
低風速でも十分な
発電ができない
か?
風力発電と風レンズ効果
発電量 P は風車に流入する
V
風速 V の3乗に比例
P∝V3
単位体積あたりの運動エネル
ギー × 流入速度
局所的に風速を上げたり、地形効果をうまく利用できれ
ば(風エネルギーの集中)、発電能力は大きく向上する。
風レンズ効果
風レンズ研究の目指すもの
・ 何らかのしかけで風を集めて速くする : 集風装置の開発
・ 地形の増速効果を予測し利用する : 局地的風況予測法
・ 他の原理による風エネルギーの変換 : フラッタ発電など
・ 熱による風の発生を利用したハイブリッド風力発電
: 太陽熱による上昇風の生成利用など
・ 風車騒音の軽減による設置可能地域の拡大
集風加速装置の開発
風エネルギーの集中化
風車を包む構造体
縮小型
拡大型
風の集中の様子
L/D=7.7
φ
D
風速分布
x
0
2
1.8
1.6
U/U ∞
y
L
拡大型
縮小型
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-0.5
0
0.5
1
X/L
1.5
2
2.5
3
流れの可視化
Flow
縮小型の流れの様子
Flow
拡大型の流れの様子
横断方向の速度分布(集風体入
口)
y
1.8
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0.55[cm]
-1.5
-1.0
-0.5
U/U∞
0.0
Y/D
φ
D
0
0.5
1.0
x
L
1.5
開き角度による最大風速の違い
拡大型
U max /U ∞
1.5
y
1.4
φ
D
0
1.3
x
L
L/D=1.5
1.2
1.1
1
0
2
4
6
開き角φ[度]
8
10
長さに対する最大風速の変化
2
Umax/U∞
1.5
1
1
4.6
1
1
2
1
φ
D
0.5
Φ= 4°
L
0
0
0.5
1
1.5
2
2.5
L/D
3
3.5
4
4.5
5
コンパクトタイプに対する
周辺付加要素による最大風速の増加
インレットの付加
(上流取入口)
つばの付加
(下流端)
周辺付加要素による最大風速の増加
2.5
U max/U ∞
2.0
1.5
1.0
基本形
インレットのみ
0.5
つば10cm のみ
インレット+つば10cm
0.0
0
0.5
1
1.5
2
2.5 3
L/D
3.5
4
4.5
5
つばの効果
基本形
基本形+つば
集風体の内部・外部の流れ
(2次元DNS、等渦度線図)
風速増加のメカニズム
風の流れ
風車
集風加速装置
発電性能の実証実験
平板翼タイプの出力特性
羽子板6枚翼のみ
つば30,羽子板6枚翼
先細捻り4枚翼のみ
つば30,先細捻り4枚翼
40 [W ]
35
30
25
20
15
10
5
0
0
500
1000
1500 [rpm ] 2000
SWWP翼の出力特性
60 [W ]
風車のみ
基本形
基本形+つば30
50
40
30
20
10
0
0
500
1000
1500
2000
2500 3000
[rpm ]
発電性能の比較(風速8m/s、同じ負
荷)
風車のみ
同じ風車に集風体
を用いた場合
まとめ
• 風エネルギーの集中化を図り、風速を局所
的に増大させて風車にあてる集風加速装
置の開発を行った。
• つば付きディフューザー体が大きな集風加
速を示し、1.6倍-2.4倍の増速が達成できた。
• コンパクトな装置を用いて実証実験を行っ
た結果、風車のみの場合と比べて2倍-3倍
の発電量増加が達成できた。
今後の研究課題
• コンパクトタイプ集風装置で更なる加速を達成す
るために、下流端での渦形成用つばに関し、最
大効果を引き出すタイプを検討する必要がある。
• 今後、より大型のプロトタイプモデルを製作し、
フィールド試験を適当な場所で実施し、実用試験
にはいる必要がある。
• 集風装置による風車騒音低減の可能性の追求。
• 以上、今後の実用化に関しては小型・中型風車
を対象とした集風構造体の製作、および集風構
造体に適した風車の開発など各方面と連携して
開発を進める必要が出てくると予想される。