30E22-pm03S

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MDR-1高発現ヒト肝臓癌細胞Pac-1を用いた漢方薬の薬剤耐性に対する効果の解析
◯白石 真純 1 ,日向 須美子 1,2 ,日向 昌司 3 ,花輪 壽彦 1,2( 1 北里大院医療,2 北里
大東洋医学総合研,3 国立衛研生物薬品)
[目的] 抗癌剤耐性の原因の 1 つである MDR-1 は、細胞内の薬剤を細胞外へ汲み出
す排出ポンプとして働いている。本研究では、MDR-1 による薬剤排出に対する漢
方薬の効果を、MDR-1 高発現癌細胞を用いて解析した。[方法] 1)ヒト肝臓癌細胞
株 HuH-7 からパクリタキセル耐性株として樹立した Pac-1 細胞について、各種薬
物トランスポーター遺伝子及びタンパク質の発現量を、定量 RT-PCR 法及びウエス
タンブロット法で測定し、パクリタキセルに対する感受性を細胞増殖アッセイに
より評価した。2) Pac-1 を漢方薬 ( 株式会社ツムラより供与された 25 種類のエキ
ス原末 )を添加した培地で 30 分間培養後カルセイン AM を添加し、カルセインの
取り込み量を測定した。3) Pac-1 を漢方薬とパクリタキセルを添加した培地で 48
時間培養し、BrdU 取り込み量を測定した。[結果] 1) Pac-1 は HuH-7 と比べて
MDR-1 遺伝子及び MDR-1 タンパク質の発現が高く、パクリタキセルに対する感
受性が有意に低下していた。2) Pac-1 のカルセイン取り込み量は 500 ȝg/ml の五苓
散、補中益気湯、人参養栄湯の添加によって有意に増加した。3) 五苓散とパクリ
タキセルの併用は、Pac-1 の BrdU 取り込み量を有意に減少させたことから、Pac-1
の細胞増殖を抑制することが明らかになった。一方、人参養栄湯及び補中益気湯
はパクリタキセルとの併用効果を示さなかった。[考察] Pac-1 細胞は、MDR-1 の過
剰発現によって、パクリタキセル耐性が惹起されていると考えられる。五苓散、
補中益気湯、人参養栄湯は Pac-1 細胞のカルセイン取り込み量を増加させたことか
ら、MDR-1 の薬剤排出を阻害することが示唆された。これらのうち、五苓散は、
パクリタキセルとの併用で Pac-1 の細胞増殖を抑制したことから、MDR-1 の機能
を阻害し、多剤耐性癌細胞の抗癌剤に対する感受性を回復させる可能性が高い。