孤立性腸骨動脈瘤手術例の検討 佐久田 斉 玉城 守 松原 忍 仲栄真盛保 上江洲 徹 下地 光好 宮城 和史 鎌田 義彦 国吉 幸男 古謝 景春 要 旨:当科で経験した孤立性腸骨動脈瘤手術例(9例18病変,全例男性,平均年齢 73.6歳)の臨床的特徴を腹部大動脈瘤(AAA)症例(108例,男90例,女18例,平均 年齢70.3歳)と比較して検討した.AAA合併例では31例(28.7 %)に腸骨動脈瘤(54 病変)の合併を認めた.破裂の頻度は孤立性腸骨動脈瘤では2例(22.2%), AAA例では 12例(1口%)に認め,うち2例は腸骨動脈瘤破裂であった.腸骨動脈瘤はAAA例では 総腸骨動脈(85.2%)に発生した紡錘状瘤(87.0 腸骨動脈での発生(55.6 径は合併例では36±14 %)が大部分であったが,孤立性では内 %)と嚢状瘤(55.6%)の占める割合が有意に高かった.平均瘤 mm. 孤立性では30±10mmとほぽ同等であった. 手術術式は,総腸骨動脈瘤(8)に対しては,全例に瘤切除と人工血管置換術を施行し, 内腸骨動脈瘤(10)に対しては,瘤切除4例,瘤切除および内腸骨動脈再建2例,流入・ 流出動脈結紫3例,ラッピングを1例に施行した.手術および病院死はなく,両側内腸骨 動脈を結紫した1例に麻輝性イレウス,他の1例に殿筋肢行を合併した.術後20∼136ヵ 月の観察期間にて9例中3例に遠隔期死亡を認め(累積5年生存率75%),うち1例は術 後26ヵ月に胸部大動脈瘤破裂により失った. 孤立性腸骨動脈瘤は比較的まれな疾患であり,同時期のAAAに対する発生頻度は 8.3%であるが,瘤径が3cm以下でも破裂例があるので,特に嚢状瘤の場合は積極的な手 術が望ましい.内腸骨動脈瘤,特に両側性や下腸間膜動脈閉塞例では内腸骨動脈血行障害 に留意すべきである.また他領域の動脈瘤を合併することがあり,全身の動脈硬化性血管 病変の検索とともに危険因子の管理,長期経過観察が必要である. (日血外会誌8 : 729-736, 1999) 索引用語:孤立性腸骨動脈瘤,腸骨動脈,動脈瘤,動脈硬化症,血行再建術 的まれとされている1-5)しかし,超音波断層法や はじめに CT検査の進歩,普及とともに診断例が増加しつつあ 腸骨動脈瘤は,腹部大動脈瘤に伴う拡張性病変とし る.またその手術に関しては,内腸骨動脈の血流を保 て存在することが多く,孤立性に発生することは比較 つことが重要であり,両側の内腸骨動脈を結紫した場 合には腸管虚血や殿筋虚血を生じることがある.当科 琉球大学医学部第2外科(Tel : 098-895-3331) で経験した孤立性腸骨動脈瘤手術例の臨床的特徴を腹 〒903-0215 沖縄県西原町字上原207 部大動脈瘤(AAA)症例と比較して検討した. 受付:1998年8月21日 受理:1999年11月24日 31 730 日血外会誌 8巻7号 表1 孤立性腸骨動脈瘤症例 腸骨動脈瘤の径(形態) 症例 年齢 性 主 訴 67 男 下腹部痛 2 85 男 左下側腹部痛* 3 79 男 無 4 82 男 5 60 男 無 無 1 左総腸骨動脈 左内腸骨動脈 右総腸骨動脈 右内腸骨動脈 25mm(嚢状) 28min(嚢状)* 25mm(紡錘) 51mm(紡錘) 間欠性政行 25mm(紡錘) 25mm(紡錘) 23mm(紡錘) 30mm(紡錘) 20mm(嚢状) 25mm(紡錘) 6 72 男 7 67 男 両鼠径部腫瘤** 8 74 男 息切れ# (拡張23mm) 34mm(嚢状) 9 76 男 右下腹部・鼠径部痛* 49mm(嚢状)* 平均73.6才 30mm(紡錘) 16mm(嚢状) 26min(紡錘) 25mm(紡錘) 43mm(紡錘) 43mra(嚢状) *破裂性 **両側大腿動脈瘤合併 #ASR合併 表2 危険因子と術前合併疾患 腹部大動脈腸骨動脈瘤 孤立性腸骨動脈瘤 症例数 9 31 男女比 9 : 0 30 : 1 年齢 60-85 60-84 (平均) (73.6±3.0) (71.3±6.3) 腹部大動脈瘤 検定* (FisherS接法) フフ 60 : 17 51-86 p=0.0205 n.s. (70.6土7.6) 喫煙 55.6% 86.7% 75.0% n S 高血圧 77.8% 77.4% 69.9% n S 糖尿病 22.2% 22.6% 28.8% n S 高脂血症 33.3% 53.3% 42.5% n S 虚血性心疾患 33.3% 38.7% 23.7% n S。 脳血管障害 33.3% 35.5% 13.3% P°0 0149 腎機能障害 22.2% 16.1% 16.0% n S. 呼吸機能障害 44.4% 46.7% 35.4% n S. ASO 22.2% 16.1% 13.5% n S ゛腹部大動脈一腸骨動脈瘤v5腹部大動脈瘤 外傷性,医原性および人工血管吻合部に発生した仮性 対象と術式 動脈瘤は検討から除外した.なお今回の検討は,紡錘 対象は1985年4月から1997年12月までに孤立性 状動脈瘤は総腸骨動脈では25 腸骨動脈瘤と診断し手術を施行した9例とし(表I), 動脈では20 mm 以上の拡張病変,嚢状は大きさに関 32 mm, 内および外腸骨 ア31 佐久田ほか:孤立性腸骨動脈瘤手術例の検討 1999年12月 表3 腸骨動脈瘤の性状 孤 立 性 腹部大動脈合併例 31 (28.7%) (8.3%) 2 (6.5%)# 54 n.s. * 18 5(55.6%) 18 (58.1%) n.s 18 (100%) 52 (96.3%) 0 2(3.7%) n.s. * 2 (22.2%) 性性昨一 離 真仮解 状 9 性数性 性 裂変側 破病両 症 例 数 (AAAに対する頻度) 0 0 病変部位 総腸骨動脈 8 (44.4%) 10 (55.6%) 内腸骨動脈 外腸骨動脈 検定 0 46 (85.2%) 8 (14.8%) 0 p<0.01* 47 (87.0%) p<0.01* 瘤の形態 紡 錘 状 嚢 状 11 (61.1%) 7 (38.9%) 瘤 径(mm) 最小一最大 平均土標準偏差 1 6-5 1 20-103 30.2±9.9 36.0±13.6 * 7 (13.0%) *カイ2乗検定 * * Wilcoxon検定 わらず動脈瘤として扱った.対象症例の年齢は60∼ n.s. ** #切迫破裂1例を含む 結 果 85歳,平均73.6歳,全例男性であった.症例は9例 中3例に腹痛を認め,うち2例は破裂性であった.他 1. 年齢と男女比 の6例は他疾患の精査中に偶然に発見された. 孤立性腸骨動脈瘤群,大動脈―腸骨動脈瘤群,大動 同時期のAAA手術症例は108例(男90例,女18 脈瘤単独群に分けて検討した(表2).年齢分布は3 例,年齢51∼86歳,平均70.3歳)であり, 群に差を認めなかった.男女比は大動脈一腸骨動脈瘤 AAAに 対する孤立性腸骨動脈瘤の発生頻度は8.3%であった. 群の30:1に対し,大動脈瘤単独群では3.5:1と, 一方, AAA 前者は有意に男性の比率が高かった.一方,孤立性腸 108例のうち31例(28.7 %)に腸骨動脈 瘤(54病変)の合併(大動脈―腸骨動脈瘤)を認め 骨動脈瘤群は全例男性であった. た. 2. 危険因子と術前合併疾患 孤立性腸骨動脈瘤に対する手術術式は,総腸骨動脈 孤立性腸骨動脈瘤群の9例中7例(77.8 瘤(8病変)に対しては,全例に瘤切除と人工血管置 圧,5例(55.6%)に喫煙歴を有し,合併症として虚 換術を施行した.症例1は径8 mm, 血性心疾患と脳血管障害を各3例(33.3 10mmの直型人工血管,症例3, 症例2と6は径 %)に高血 %)に認めた (表2).大動脈一腸骨動脈瘤群は大動脈瘤単独群に比 5, 7はY型人工血 管(径18×9mm)を使用した.内腸骨動脈瘤(10病 較して有意に脳血管障害の合併率が高く,また虚血性 変)に対しては,瘤切除のみ4例,瘤切除および内腸 心疾患も多い傾向にあった. 骨動脈再建2例(径8mm人工血管を使用),流入お 3.動脈瘤の性状 よび流出動脈結紫術3例,ダクロンフェルトを用いた 瘤の病因は,孤立性はすべて動脈硬化性真性瘤であ ラッピング術を1例に施行した. り,AAA合併例では解離性1例2病変を除く52病 変(96.3 %)が動脈硬化性真性瘤であった(表3). 33 m骨 日血外会誌 8巻7号 ア32 表4 骨盤内血行と虚血症状 症例 内腸骨動脈 病変部位 LCIA LIIA RIIA 一 右 -左 再建 一 再建 2* LCIA 一 一 開 存 一 結 紫 - ll・IAぽ 閉 塞 結 紫 4 RIIΛ LIIA ラッピング 結 紫 下腸開膜動脈 虚血症状 閉 塞 無 開 存 無 一 麻癖性 イレウス ー 一 開 存 一 閉 塞 無 一 RCIΛ RIIA 5 結 紫 結 紫 LCIA − 6 LCIA 結 紫 一 再 建 閉 塞 一 結 紫 一 結 紫 結 紫 一 * RUA 結 紫 開 存 W *破裂例 LCIA:左総腸骨動脈 LI訊:左内腸骨動脈 RCIA:右総腸骨動脈 RIIA:右内腸骨動脈 − 7 LIIA 一 LCIA LIIA RIIA 8 − 9 動脈瘤破裂は孤立性では9例中2例(22.2 無 開 存 一 開 存 無 一 %)であり, 閉 塞 開 存 無 一 殿筋政行 (両側) - 開 存 無 (有症率33.3%). 1例に麻雄性イレウスを合併し7日 AAA合併例では破裂1例,切迫破裂1例(計6.5%) 間の保存的治療にて改善した.瘤破裂のI例に下肢深 であった.両側発生は孤立性では5例(55.6%), 部静脈血栓症,また両側内腸骨動脈を結紫した1例に AAA合併例では18例(58.1 殿筋破行を合併した. %)と同程度であった. 発生部位はAAA合併例では総腸骨動脈(46病変, 術後20∼136ヵ月の観察期間では9例中3例に遠隔 85.2 %)が最も多く,内腸骨動脈は8病変(14.8%) 期死亡を認めた.1例は虚血性心疾患によるうっ血性 であった.孤立性では総腸骨動脈に8病変(44.4%), 心不全死(術後21ヵ月),1例は皮膚癌(術後136ヵ 内腸骨動脈に10病変(55.6 月)により,他の1例は胸部大動脈瘤破裂(術後26 %)を認め,後者の比率 が有意に高かった(p<0崩).瘤の形態は, 併例では紡錘状が87.0% AAA合 ヵ月)により失った.累積3年および5年生存率は各 (47病変)を占め,嚢状は 75%であった. 13.0% (フ病変)であった.一方,孤立性では紡錘状 5. 骨盤内血行と虚血症状 6口% (11病変),嚢状38.9% 内腸骨動脈(IIA)と下腸開膜動脈(IMA)は少な (7病変)であり, AAA合併例に比べて嚢状の比率が有意に高かった くとも1つの血流を維持することを原則とした.しか (p<0.01).破裂例は孤立性では2例とも嚢状瘤(径 28 mm (径30 し, IMAの閉塞を認めかつ内腸骨動脈の硬化性変化 と49 mm)であり,合併例では紡錘状1例 のため再建困難な症例もあった.孤立性腸骨動脈瘤例 mm),嚢状1例(径103 のIIAとIMAの開存の有無および術後に発症した虚 はAAA合併例の36.0±13.6 に対し,孤立性では30.2±9.9 mm)であった.瘤径 mm (平均土標準偏差) 血症状を表4に示す.症例1は両側性内腸骨動脈瘤症 mmと両者に差を認め 例で, IMAも閉塞していたため,両側IIAの人工血 なかった. 管再建術を行った.症例3はIMAが開存していたた 4.早期および遠隔成績 め,両側rIA結紫術を施行したが,術後に麻雄性イ 孤立性腸骨動脈瘤に対する手術および病院死はなか レウスを合併した.症例4はIMA閉塞を合併した両 った(死亡率0%)が,3例に術後合併症をきたした 側内腸骨動脈瘤症例で, IIAの血流を保持する目的に 34 ア33 佐久田ほか:孤立性腸骨動脈瘤手術例の検討 1999年12月 表5 他領域の動脈瘤病変 症例 動脈瘤病変 既往 腸骨動脈瘤手術時 腹部大動脈瘤 1 + 傍腎動脈腹部大動脈瘤 - (lo年前ヽ径66nim) 2 ㎜ − 一 一 − 一 四 21 一 - 一 − - 一 一 一 一 ㎜ − 31 − 腹部大動脈瘤 両側総大腿動脈瘤 (13年前ヽ径68mm) (右41自11ヽ左41mm) + 136 − - 6 7 26 (径130mm) 一 4 5 胸部下行大動脈瘤破裂 − + − − 33 − − 一 3 31 (径45ram) ㎜ − − 観察期間(月) 術後観察期 胸部大動脈瘤(径43mm) 外腸骨大腿動脈瘤(径30mm) 72 膝寞動脈瘤(径25mm) 8 両側大腿深動脈瘤 + 20 (右29mm、左41mm) 9 31 (瘤型はすべて紡錘状) 一側は瘤のラッピング術を行った.症例8は両側内腸 考 察 骨動脈瘤症例で,瘤径が大きくかつ末梢の動脈硬化病 変が強いため, IIA再建は困難と判断し両側IIAを結 孤立性腸骨動脈瘤は比較的まれな疾患であり, 紫した.術後に約200メートルの殿筋肢行を認めた. AAAに対する相対頻度は, 6.他領域の動脈瘤病変 かし,腹部超音波検査やCT検査が普及するにつれ, 孤立性腸骨動脈瘤症例の過去,手術時および術後観 診断例が増加しつつあり,われわれの症例では8.3% 察期間中に合併した他領域の動脈瘤病変を4例に認め であった. た(表5).第1例(症例1)は腹部大動脈瘤(瘤径 今回経験した9症例はすべて男性であった.症例数 66 mm)術後10年目に両側内腸骨動脈瘤を発症し, が少ないため統計学的有意差はないが,腹部大動脈瘤 さらに術後観察中には腎動脈分岐部の大動脈瘤(径 症例(男女比5:1)と比べると男性の比率が高いと 45 mm)を認めた.第2例(症例3)は腸骨動脈瘤術 考えられる.また,大動脈一腸骨動脈瘤例と大動脈瘤 後26ヵ月目に胸部下行大動脈瘤の破裂をきたし死亡 単独例を比較した場合,前者は有意に男性の比率が高 した.第3例(症例7)は腹部大動脈瘤(瘤径68 かったことは興味深いといえよう. mm)術後13年後に,左内腸骨動脈瘤と両側総大腿 孤立性腸骨動脈瘤では両側発生例や多発例が多いこ 動脈瘤を発症し同時手術を施行された.さらに3ヵ月 とが特徴である. 後に人工血管吻合部を含む右外腸骨−大腿動脈の拡張 McCreadyら4)は34%が多発性であったと報告して Lowryら3)は23%が両側性, いる.牧野ら6)は本邦報告例を集計し,64例中21例 (径30 mm)をきたしたため再手術を施行した.また 上行大動脈の拡張(径42 0.3∼4.7%である1`5).し (32.8 %)が2個以上の動脈瘤症例であったと報告し mm)と膝認動脈瘤(径25 mm)を認めており経過観察中である.第4例(症例 た.今回の検討でも56%が両側性かつ多発性であっ 8)は孤立性腸骨動脈瘤と同時に両側性大腿深動脈瘤 た. を認め同時手術を施行した. 瘤の発生部位は, 35 AAA合併例では総腸骨動脈が 734 日血外会誌 8巻7号 85.2%を占めるのに対し,孤立性では総腸骨動脈 骨動脈瘤症例に対し,経皮的動脈塞栓術とF-F 44.4 %,内腸骨動脈55.6%であり内腸骨動脈瘤の頻度 over bypassを組み合わせることにより良好な成績が が高いことが特徴であった. 得られたと報告している.本術式の長期成績は不明で McCreadyら4),佐藤ら5) cross- は孤立性腸骨動脈瘤の発生部位について,総腸骨動脈 あるが,高リスク症例に対して試みる価値があると思 85∼89%,内腸骨動脈10%,外腸骨動脈1∼5%と報 われる.しかし,ショックを伴う破裂例(緊急例)や, 告した.一方Lowryら3),Markowitzら7)は約50%は 内腸骨動脈の血流維持の観点から,両側発生例ではよ 総腸骨動脈に発生し,残りは内腸骨動脈に発生すると い適応にならないと思われる. 報告した.われわれの症例は後者に近い値となってい 腸骨動脈瘤に対する手術では,内腸骨動脈の血流を る. 保つことが重要である.両側の内腸骨動脈を結紫した 瘤の形態に関しては,検索し得た範囲では詳細な報 場合には腸管虚血や殿筋虚血を生じる可能性が高い. 告はみられない.今回の集計では, 今回の症例では,両側内腸骨動脈を結紫した3例中2 AAA合併例では 紡錘状87.0%,嚢状13.0%であったのに対し,孤立 例は,下腸間膜動脈が開存しているにもかかわらず, 性では嚢状の割合が38.9%を占め有意に高かった. 内腸骨動脈血行障害を合併しQOLを低下させた.し その理由として, AAA合併症では総腸骨動脈が腹部 たがって内腸骨動脈瘤,特に両側性や下腸間膜動脈閉 大動脈瘤に連続して紡錘状に拡張する例が多く,嚢状 塞例に対しては,内腸骨動脈血行障害を防止するため 瘤の頻度が相対的に低くなるためと考えられる. 可能な限り内腸骨動脈再建を行う必要がある. 孤立性腸骨動脈瘤は腹部大動脈瘤に比較して,臨床 今回対象とした孤立性腸骨動脈瘤9症例中,4例 例における破裂の頻度が高いと報告されている3・5・7). (44.4%)に他の領域の動脈瘤病変の合併を認めた. 今回の検討では,腹部大動脈瘤108症例中10例(腸 これらの病変はすべて動脈硬化病変によるものであっ 骨動脈瘤破裂2例を除く), AAAに合併した た.孤立性腸骨動脈瘤を有する症例では,同時あるい %)が破裂例であった. は異時性に他領域の動脈硬化性真性動脈瘤を合併する 腸骨動脈瘤31例中2例(6.5 9.3%, 一方,孤立性腸骨動脈瘤では9例中2例(22.2 %)が 頻度が高いことが示唆される. 1982年, Crawford 破裂例であり,後者の破裂しやすい傾向が示唆された. ら13)は重複大動脈瘤の発生頻度は,動脈硬化性で その理由として,腸骨動脈瘤は骨盤内に存在するため 1,337例中日8例(9%)と報告している.近年,人口 触診が困難であり,またかなり大きくなるまで症状を の高齢化と診断技術の向上などにより,重複大動脈瘤 発現し難く,破裂してはじめて診断されるケースが少 は増加傾向にあり14)腸骨・四肢動脈においても同様 なからずあることと関連すると思われる.また今回の であると思われる.孤立性腸骨動脈瘤症例では,全身 検討から嚢状瘤の割合が高いことも原因の1つと考え の動脈硬化性血管病変の検索とともに動脈硬化症危険 られる. 因子の厳重な管理,長期経過観察が必要であろう. 文献的には破裂性腸骨動脈瘤に対する手術死亡率は 結 語 52%と高率であるのに対し,待機的手術の死亡率は 10%以下であるs'.従来,非破裂性に対する手術適応 孤立性腸骨動脈瘤は比較的まれな疾患であるが,多 は,瘤径が3cm以上とされている9).しかし2cmで 発性かつ破裂しやすいことより,瘤径が3cm以下で も破裂した例があり10),われわれも2.8 も,特に嚢状瘤の場合は積極的な手術が望ましい.内 cmの嚢状総 腸骨動脈瘤の破裂(症例2)を経験した.非破裂例に 腸骨動脈瘤,特に両側性や下腸間膜動脈閉塞例に対し 対する待機的手術はほぼ安全に行いえることから,瘤 ては,内腸骨動脈血行障害を防止するため可能な限り 径が3cm以下でも,特に嚢状瘤の場合は積極的に手 内腸骨動脈再建を行う必要がある.孤立性腸骨動脈瘤 術を行うぺきである,と考える.しかし,本症は動脈 を有する症例では,同時あるいは異時性に他領域の動 硬化症に起因するものがほとんどであり,高齢者が多 脈瘤を合併することがあり,全身の動脈硬化性血管病 く,心腎肺疾患を合併する率が高いので,慎重な周術 変の検索とともに動脈硬化症危険因子の管理,長期経 期管理が肝要である. 過観察が必要である. Reuterらu)や小須賀ら1町ま,高リスクを有する腸 36 1999年12月 佐久田ほか:孤立性腸骨動脈瘤手術例の検討 文 献 1) Silver, D・, Isolated report In : Vascular Anderson, hypogastric E. E. and artery aneurysm. of three cases. Arch. Porter, Review 9) Freischlag, and B. and I, General 77 statistical data : 935-940, 3) Lowry, on aneurysm. 1293, 1978. McCready, 11) Reuter, Surg・, 113 : 1289- et al.: Isolated 93 : 688-693, P. C, iliac artery aneurysms. Surgery, 1248-1250, : 1370-1375, 動脈瘤手術例の検討.日血外会誌,4: 787, 13) Carson, and B. N. 1978. S. N.:Thrombosis extraanatomic by of a selective em- bypass. AJ R,134 : 1980. 71-76, and Norman, of the iliac artery. Ann. E. S. and rysm : A multifocal Cohen, 1995. E, S.:Aortic disease. Arch. aneu- Surg・, 117 : 1982. 14)杉本 智,稲岡正己:重複大動脈瘤に対する三 J. C.:Aneu- 期的手術の1例.日胸外会誌,45: Surg・, 154 : 777- 1997. 1961. H.:Isolated : 1727-1732, Crawford, 1393-1400, 8) Haimovici, : case 3-1978. iliac artery aneurysm 日臨外医会誌,56 1984. 1995. A. M. of the MGH McNeely, 腸骨動脈瘤に対する経皮的動脈塞栓術の1例. 6)牧野信也,吉津 博,羽鳥信郎他:孤立性腸骨 Markowitz, J. 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The Ten aneurysms wrapping (55.6 %) Both During felt (n=l) or hospital death and deep vein thrombosis a follow-up case was complicated 26 months by aneurysms by abdominal even when (22.2 %) 18 lesions in total, were of arterioscleriliac artery (CIA) 61.1 %) and 16 to 51 mm and 8 saccular (n = 7, 38.9%) (average, was performed to avoid reduction occurred. However, for 10 CIA 30.2 + / ― 9.9 mm). lesions. IIA with reconstruction of hypogastric blood complications hip claudication in another in 1 case of ruptured after surgery: were supply. in 3 cases (33.3 % after bilateral ligation of IIA aneurysm. 3 patients died, including the cumulative in the ascending aneurysms (n = 2), ligation (n = 3), occurred aorta, common 1 who suffered a ruptured survival rate was 75 % femoral are rare, and at 5 years. One artery and popliteal artery, aggressive surgery in desirable, especially in cases of the diameter is less than 3 cm. Hypogastric blood particularly in cases of bilateral IIA lesions and lesions that are compounded mesenteric artery. Because iliac artery aneurysm aneurysms simultaneously or at various generalized evaluation ruptured aortic aneurysm. Isolated iliac artery aneurysms saccular aneurysm, April 1985 and November aneurysms. period of 20 to 136 months, thoracic aortic aneurysm and another in size from (n = 4), aneurysmectomy rate) : paralytic ileus in 1 case and aneurysms, between occurred in the common fusiform (n=ll, ranged with graft replacement with Dacron operative morbidity All aneurysms, associated with bilateral femoral treated by simple aneurysmectomy No were included. true aneurysm. Aneurysmectomy and Arteriosclerosis,Revascular surgery 60 and 85 years of age (average, 74 years). Two in the internal iliac artery (IIA). configurations Two were Kamada, Koja surgery in 9 cases of isolated iliac artery aneurysm 1997. All patients were otic etiology and Yoshihiko Nakaema, of Surgery, Faculty of Medicine, University of the Ryukyus Key words : Isolated iliac artery aneurysm, Iliac artery,Aneurysm, We Moriyasu times of the arteries, management up. (Jpn. J. Vase. Surg., 8: 729-736, cases are often complicated during flow should by occlusion by 38 of the inferior other arteriosclerotic their clinical course, this condition of arteriosclerotic risk factors, and long 1999) be preserved, necessitates term follow-
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