〔東京家政大学研究紀要 第22集(2),P・153∼162,1982〕 人体におよぼす環境湿度と被服の開口状態の影響(第1報) 平均皮膚温と被服内温湿度について 中 里 喜 子 (昭和56年9月29日受理) The Influence of the Environmental Humidity and the Opening Degree of Clothing on Human Body (Rep.1) Changes of Mean Skin Temperature, Temperature within Clothing and Relative Humidity within clothing Yoshiko NAKAzATo (Received September 29,1981) 態などを同じくした. 1 はじめに 被験者の体格などをTable 1に示す・ うだるようなむし暑さ,これが,わが日本の夏季の・暑 2・環境条件 さを表現する言葉である.暑さは,気温ばかりによるの 従来の研究報告によると, 『至適温度の範囲では,湿 ではなく,湿度,風速および熱輻射などの要因が組み合 度の増減が,快適度におよぼす影響は少ない.』2)とあり, わせられて,生じるものである. また『気温30℃以上においては,特に高湿度の場合, この湿度の人体におよぼす影響に関する研究報告は, 脈博数,血圧,呼吸など人体におよぼす影響が大であ 数が少ない.三浦らの報告1)によると,オフィス事務員 る.』3)との報告があるので,環境温度を30℃に設定した. の調査の結果,r温熱感は,湿度が高いと温い方へ傾く』 すなわち,中等度温域から,高温域へ上昇する境界の とあり,省エネルギーの叫ぼれている現今,被服形態と 30℃±0.5°Cとした. の関連におけるこの種のデータは必要であり,意義のあ 環境湿度は,55%と80%±5%に設定した・ るところと考え,その実証を行った. 風速は0.1m/sec.以下である. 3. 実験に用いた被服 II実験方法 被服形態は4種とし,同質材料にて製作した.すなわ ち,ポリエステル65%,綿35%混紡のブロード生地によ 1・被験者 被験者は,女子学生4名とし, 合宿して栄養の摂取状 って,製作されたものを着用し,比較した. Table l CHARACTERISTICS OF SUBJECTS AGE HEIGHT @ (CM) BUST WEIGHT @(CM) @ (KG) W−RATIOH SUBECTS ROHREL VERVAECK BODY rURFACE hNDEX @INDEX A 20 165 84 57 34.5 1,268 0.85454 1,579 B 20 156 78 41 26.2 1,079 0.76282 1,314 b 21 164 79 47 28.6 1,065 0.76828 1,444 D 20 153 80 45 29.4 1,256 O.81698 1,355 、 被服衛生学研究室 (153) 中里 喜子 a実験中の被験者 b熱電対打点式記録計 cMINIMA鋭感温湿度計 dINFRA−EYE 550 Fig.1 実験装置 (154) 人体におよぼす環境湿度と被服の開口状態の影響(第1報) SUBJECTIVE RESPONSE O CORE TEMPERATURE <> THERMO COUPLES ’ REST(TEMP.25℃) ① MINIMA… I INFRA・EYE 550 () WEIGH T △ EXPOSURE(TEMP.30℃) ② ③歯⑤幽⑦_愚 RECOVERY(TEMP,25℃) ⑨ ⑩ △ O’ 10’ 20「 30’ 4σ 60’ 50’ 70’ 80’ 90’ 100’ (MIN.) Fig 2 SCHEDULE MEAN SKIN TEMPERATURE short sleeve O Open collar shirt< long sleeve X 、. Yshirt neck tieくshort sleeve ◎ 擁、㌦筆 1。㎎,leev。△ 36 ⑧⑭ ⑭ ⑧ ⑳ (8⑭ ⑭⑭ ⑭⑭⑭◎⑭⑧◎ ⑭◎ ◎△◎ ⑭ ⑭⑭▲▲△◎△A▲▲ ◎△▲△」◎▲△▲△◎△◎△◎△ △ ⑭ ⑭▲▲◎△◎△◎◎◎×△◎▲△◎ x× ▲ ×▲●ムム●▲×▲x△◎ ⑭△ ◎▲ ▲ ⑧0△◎×◎XX ●×●X×●◎●●◎XXO▲●×0〈X算⊃¢●◎ax◎ムO▲⑧◎ ◎ ▲&◎⑭◎ ▲◎◎△ ●●○●0●0000◎○●○●◎C◎○ ◎ ●△△⑭◎⑭ ⑧⑧ ▲ & △◎◎●O OO O O O× ◎⑧◎◎ 0●×●OO O O ●▲△ ●O 35 ㊧ △ △ △●◎●o● ●xO O▲● ●△△ 0 0x ●ム▲ ●▲ ●◎ ○◎ × ◎o◎▲ △ △O×Ox O×Ox O O xOOP(O×O x O x W1 34 W2 W3 (℃) 30’ O’ 10’ Rest 50t 100’O’ @ 30’(MIN.) Exposure Rec6very Fig.3 平均皮膚温の変化 (155) 80 怫M◎▲ 55% % WEAR’S CONDITION; HUMIDITY; 中里喜子 衿型は開衿とYシャツにネクタイ使用との比較,袖型 は半袖と長袖との比較および衿型(上向開口)と袖型 (水平開口)との比較を行った. R.1)の椅座作業である.この作業を3回くり返して, 退室までに10分間の回復時間が設けてある. なお,入室の前後と,作業の前後には,主観調査を行 下衣はサージのタイトスカート,下着はブラジャーに った. パンティ.下肢にはパンティストッキングと運動靴を着 皮膚温は1分おきに打点し,被服内温湿度は5分おき けた. に計測し,被服表面温度は作業の前後に映像に納めた. 4・測定項目 III結果および考察 皮膚温は,銅・コンスタンタン熱電対を,打点式記録 計で記録した.皮膚温の測定部位は,左胸部乳頭下部, 1・ 環境湿度および被服の開口状態と平均皮膚温の変 左前腕屈側,左下腿部とし,平均皮膚温は,3点法によ 化 り算出した. 測定した皮膚温を胸部1/2・前腕1/6・下腿1/3の按 被服内温湿度は,ミニマ鋭感温湿度計(昭和理化学 分比率によって,平均皮膚温を求めた. 製)を用い,左胸部乳頭下部に位置する被服層内におい Fig.3は,被験者の平均皮膚温の4人の平均値を,環 て測定した. 境条件別にして比較したものである. 被服表面温度は,サーモグラフィーインフラアイ550 1)環境湿度55%においては,開衿・半袖く開衿・長 (富士通製)を用い,左胸部乳頭下部,左前腕屈側に位 袖くYシャツにネクタイ・半袖と長袖は,入り混った状 置する被服表面温度の他に,前額中央部,咽喉部の測定 態で高い. も行った. 2) 環境湿度80%においては,開衿。半袖の場合,環 体内温として舌下温の測定をした.(Fig.1参照) 境湿度55%の時との差が少ないことから,上向開口から 5・ 実験の時間帯 の放熱と共に,水平開口による放熱状態のよいことが, 実験時間は,日内変動の少ないAM:9°∼12°までと, 推察される.Yシャツにネクタイの長袖は,安静時にお PM:13°∼16°までに行った. いて,最も高い状態で安定していたが,暴露室に入室し 半日で1条件とし,2人が1組となった. 10分置きに20分間つつの作業を3回行った結果,作業に 実験の前後には体重測定(50g目盛の市販衡器使用) 合わせて3つの山を形成する.つまり,作業が終った時 を行い,発汗量をみた. に下がる.Yシャツにネクタイの半袖は,第1作業中は, 1条件における時間帯はFig.2に示す通りである. 長袖との差は少なかったが,暴露時闘がすすむにつれて, 暴露室に入室して10分安静の後,20分作業をするので 非常に下がってくる.発汗によって蒸発熱が奪われ,皮 あるが,それはクレペリγ用紙による1位加算(R.M. 膚温が下がった結果であることが,後述する被服内湿度 ー atW3 TEMP → 36 LOSS● ︸ ︷ 35 }+ 34 0 WEIGHT 200 P50 P00 T0 十1 ℃ 55% 80% short S. Open 55% 80% long S。 55% 80% short s. 55% Yshirt ・neck collar shirt 80% 10ngs. tie Fig 4 暴露室入室90分後の平均皮膚温と体重減少 (156) 9 人体におよぼす環境湿度と被服の開口状態の影響(第1報) の顕著な増加と,主観評価などからも考察できるのであ い.開衿・長袖は平均皮膚温が最も高い.Yシャツにネ る. クタイでは,半袖・長袖とも環境湿度55%の場合より, 更に言えることは,この場合,上向開口による影響が 平均皮膚温が下がっている. 大きいと言うことである.開衿・長袖の平均皮膚温が, 2)体重減少の状態 暴露室に入室してから最も高いのは,発汗も少なく,半 環境湿度55%の時より80%の方が,更に開衿よりYシ 袖と比較して,袖からの放熱が少ないため,平均皮膚温 ャツにネクタイ,半袖より長袖の方が,体重減少は大き が,最も高くなったものと推察される. い. 2・ 暴露室入室90分後の平均皮膚温と体重減少の状態 個人差は環境湿度55%の時より80%の時の方が少ない. 環境条件毎に暴露室入室90分後,すなわち,第3作業 すなわち,環境湿度80%におけるYシャツにネクタイの 終了直後の平均皮膚温の平均値と,最大値,最小値をと 長袖が,最も体重の減少は多かったのである.これは発 り,体重減少の状態と合わせてみたものが,Fig。4であ 汗によるものであると言えよう.上向開口を閉ざした場 合,換気が悪いために平均皮膚温が下がることが関連づ る. 1)平均皮膚温の平均値でみると,環境湿度55%の場 けられる. 合,開衿・半袖く開衿・長袖くYシャツにネクタイ・半 3・ 被服内温湿度の変化 袖くYシャツにネクタイ・長袖の順に上昇し,そのばら 1)半袖の場合,上向開口および環境湿度が被服内温 つきは,開衿・半袖の場合低い方に大きい. 湿度におよぼす影響 環境湿度80%の場合は,開衿・半袖では,55%の場合 被服内温湿度を半袖において,上向開口(衿型)およ と平均値は同じであるが,そのぱらつきは高い方に大き び環境湿度の違いにより,どのように影響されるか比較 open c・O HUM・;55%sh°「t s’〈neck,i,× TEMP.;30℃ 37 80% 〃 /open c. △ ㌔eck ti,ロ Xムロ × ○ X △O △ O 口 90 80 33 臼 70 9 口△ 口ム ロム ロム ロム ロム 囚 囚 口 Exposure Fig.5 半袖の場合他の条件のおよぼす影響 / (157) ×O 50 10 20 30 0 60 50 Ox W3 ×O xO 6 Ox xO XO xO xO 6 OX 0x O× ○× ⑭ OX ⑧ XO xO W2 W1 30 Rest 囚 ロム コ 0△ 口ム 口ム ロム ロム ロム ロム △ 31 碧 ム ロxO 32 口 ○ 合 O X 40 O 30 20 100 0 30 R,、。v。,y(Mi・・) ︵駅︶boεヨo℃陥ε唱韓.口. 囚xO 口△×○ △,図 ○ ムロxO ムロxO ×口△ O 囚XO 囚XO ロムxO 口△XO 口 轟O 日X O ロム × O △口 ×○ ムロ× O 口△x O ロム x O 口 △ × ○ 34 ロム x O △X ︵εb。自署。で・三θ馨①﹂ヨ邸おq§↑ 35 △x口 36 中里 喜子 したものがFig.5である, 長袖ですなわち,水平開口を閉鎖した場合の比較であ 被服内湿度は,環境湿度80%の場合と,55%の場合と るから,衿型の違いによる上向開口の機能がよくわかる. の2層は分かれ,危険率1%で有意差が認められた.暴 環境湿度80%のYシャツにネクタイ〉同 開衿〉環境 曙時間が進むにしたがって,それぞれ,Yシャツにネク 湿度55%のYシャツにネクタイ〉同 Sr?衿の順に下がっ タイをした方が差をつけて上昇していく傾向がみられる. ていく. 被服内温度は,開衿よりYシャツにネクタイ,環境湿 被服内温度は,入り乱れ,暴露時間の進むのにつれて, 度55%より80%の方が高く.暴露時間が進むのにしたが 環境湿度80%の場合,Yシャッにネクタイの場合が低下 って,その差は少なくなるが,作業1,2,3と3つの山 していくのは,被服内湿度の高さと関連した結果として, が形成され,特に開衿では,産熱と放熱のバランスのよ 発汗によるものであると推察できる. さが推察できる. 3) 開衿の場合,水平開口および環境湿度が被服内温 2)長袖の場合,上向開口および環境湿度が被服内温 湿度におよぼす影響 湿度におよぼす影響 被服内温湿度を開衿において,水平開口(袖型)およ 被服内温湿度を長袖において,上向開口(衿型)およ び環境湿度の違いにより,どのように影響されるか比較 び環境湿度の違いにより,どのように影響されるか比較 したものがFig.7である. したものがFig,6である. 被服内湿度は,環境湿度80%の場合と,55%の場合と 被服内湿度は,上向開口による差もつき,環境湿度に の2層に分かれ,危険率1%で有意差が認められた. よる差と共に,4層に分かれ,危険率1%で有意差が認 環境湿度80%の方が,被服内湿度が高く,環境湿度55 められた. %では,長袖の方が被服内湿度は低く暴露時間に関係な HUM.;55%Iong s.〈 neck tie 80% 〃 ⑭囚 neck tie XO△ XOムロ x④口 0△× O×ムロ 五口○ ×囚〇 ㊦口 △Oxロ ム○ロ ◎図 ロxO ムO口 △× O口 嵐口○ x 囚 口 XO△ 囚XO 35 △ △ O O x O 33 90 80 32 口△ 口△ 口△ 口ム ロム ロム ロム ロム ロム ロム ロム ムロ ロム ロム ロム ロム ロム ロム ロム ロム ロム 0ム 口△ ロム o 70 60 50 30 W2 W1 ’ W3 XO 666・・××XXXXXX×XXXXXδ OOOOOOOOOOOOOOOOO XO xO x 31 F−・一・一一・一一十一一一一一 50 Rest Exposure 100 Fig.6 長袖の場合他の条件のおよぼす影響 (158) 30 20 F・一一一一一一・===...一一= 10 20 30 0 40 〇 30 (Min.) Recovery ︵訳︶b◎偶ヨθ〇一〇口嘱調θ匁P.=.餌 囚 XOO 34 ムロX 口X ︵εb。葺ぢでεヨ写。おり衷①§①↑ ムロ x 36 <open c. OXムロ open c. TEMP.;30℃ 37 ’ 人体におよぼす環境湿度と被服の開口状態の影響(第1報) 〈,同じような値を保っているが,半袖は暴露時問の経 被服内温湿度をYシvツにネクタイをした場合におい 過と共に下がり,95分で長袖の値と合致している. て,水平開口(袖型)および環境湿度の違いにより,ど 環境湿度80%の場合,長袖の方が高く,半袖は低いが, のように影響されるか比較したものがFig.8である. その差は少ない.暴露室に入って30分経過すると,逆に 被服内湿度は,環境湿度80%の場合と,55%の場合と 半袖の方が高く交互する.又65分経過すると逆に交互し の2層に分かれ,危険率1%で有意差が認められた. て,元の通りに長袖の方が高くなる。これは,袖すなわ 環境湿度55%の場合,このようにYシャッにネクタイ ち水平開口からの換気は,開衿の場合に余り多くないと をして,上向開口を閉鎖していると,安静室で安定した 言うことが,推察できる. 状態の時,半袖の方が長袖より被服内湿度は高く,最初 被服内濫度については,安静室では,環境湿度80%の からむれていることが推察できる.これは暴露室に入っ 長袖〉同 半袖〉環境湿度55%の長袖〉同 半袖の順で て30分間に下降し,長袖より低くなり,大体平行状態を あるが,暴露室に入ると,全体に上昇して,その温度差 保つ.水平開口の機能は,上向開口が閉鎖されたとき, もつまってくる. ここに発揮されたと見ることができるのではなかろうか. 環境湿度55%の場合の半袖は,被服内温度が,最初際 被服内温度は,袖の形態と関係なく,環境湿度による 立って低く,作業1,2,3と進行するのにしたがって, 影響を受けているが,その差も少ない.暴露室入室後ど 3つの山が形成されつつ上昇して,他の条件の場合との んどんその差は収微されていく.暴露室入室60分からは, 被服内温度に近づいていく所に特徴を見る. 環境湿度80%の場合の長袖の被服内温度が下がっていく 4) Yシャツにネクタイをした場合,水平開口および のは,発汗によるものであると推察できる. 環境湿度が被服内湿湿度におよぼす影響 ・ 5) 環境湿度55%の場合,被服形態による被服内温湿 short s. O TEMP.;30℃HUM.;55%open c.〈 37 10ngs. X 80% 〃 〈 short s. △ long s.ロ 36 口 囚O △ 90 X 33 80 × × ○ 70 口ム ロム 囚 囚 口△ 0ム ロム ロム ロム 囚 ロム 6 囚 Aロ ^口 △5 囚 60 50 OX Ox OX ⑧ O× Ox Ox Ox O× O× OX Ox Ox O× Ox Ox Ox Ox X X X ○ X 0 X 0 O X 31 0 0 区 32 9 囚 臼 ロム 口△ 口ム O 40 30 W1 30 W2 W3 20 }・…一一一一一一十一一一一一一一1 10 20 30 Rest 0 50 Exposure Fig.7 開衿の場合他の条件のおよぼす影響 (159) 100 0 30 (Min.) Recovery ︵§b。ヨぢ[。葺引馨.寓.属 △送]○ XムロO x囚0 △図O △X口 O xムロ ○ ムロOX 四 xO △図○ 口×△○ △口xO △図 0 0x△ ○ 一△x O 区○ △ ムロx O △xC O ムロ × O OX 34 囚 ムロ 口△ ︵εb。・導。でg導馨2三邸﹂①含①↑ 35 ロ 、 中里喜子 度の比較 されていない. 被服内温湿度を環境湿度55%の場合に絞って,開衿・ 6) 環境湿湿80%の場合,被服形態による被服内温湿 Yシャツにネクタイ・半袖および長袖の4種の組み合わ 度の比較 せによる被服形態によって,比較したのがFig.9であ 被服内温湿度を環境湿度80%の場合に絞って,開衿・ Yシャツにネクタイ・半袖および長袖の4種の組み合わ る. 被服内湿度は,Yシャツにネクタイ・半袖〉開衿・半 せによる被服形態によって,比較したのがFig. loであ 袖>Yシャツにネクタイ・長袖〉開衿・長袖の順に安静 る. 暴露室に入室後の被服内湿度は,Yシャツにネクタイ 室で安定していたが,暴露室に入り,35分経過,第1作 ・長袖〉同 半袖〉開衿・長袖〉同 半袖の順であり, 業が終了した時には,Yシャツにネクタイ・長袖の被服 内湿度は最も高くなり,換気の悪さが禺てくる. 衿型による影響を受けている,Yシャツにネクタイ・長 開衿。長袖が最も低い.これらのことから,衿型によ 袖の場合,被服内湿度が高く,最も上にあり,被服内温 る影響を受けていることがわかる. 度は,入り混っていたのが,暴露室入室後15分からは, 被服内温度は,作業開始から30分位まで上昇をつづけ, Yシャツにネクタイ・長袖が最も低くなるのが特徴であ 作業の切れ目で下がり,3つの山型が形成されている. る.これは発汗によるものであると推察できる. Yシャツにネクタイ・長袖は,35分が最も高く上昇し, IV 要 その後は少し下がる.被服内湿度の最も低かった開衿・ 約 長袖の被服内温度は,Yシャツにネクタイ・長袖に次い 1・環境としての湿度の問題として , で高く,開衿・半袖が雌も低い.環境湿度55%では発汗 環境湿度の人体におよぼす影響力は大きく,差の検定 , short s. O TEMP.;30℃ HUM.;55%Y shirt neck tie< 37 long S. X short s,△ 80% 〃 < long S.口 ○ムロ ×△0口 x△0 △⑧ 口 GvO 盈O X△O O△xロ ム⑭0 △xロO △XO口 ムロ⑧ △O図 濫 ロO O O 33 囚 32 70 60 △ 50 6 6 OX ⑭ ⑧ δ δ ⑭ XO xO xO ×O XO XO 6 6 xO 0x OX OX OX Ox △OX 31 △ 口△ 口△ ロム 口ム ロム ロム ロム ロム ロム ムロ ロム ロム ロム ロム ロム ロム ロム ロム 0ム ロム ロム ロ 口 △ 08 0 9 x口 己 X △ 40 30 30 W1 W2 W3 20 1・一一・一・一一・一一一一一一一一・− 0 50 100 10 20 30 Rest Exposure 〇 30 (Min.) R㏄overy Fig.8 Yシャツにネクタイの場合,他の条件のおよぼす影響 (160) ︵濃︶bめ口毛Oで賃ヨθ嘱≧.=.餌 XムロO ムOロ O 口O△ 34 ム xO ⑧ ムロ XO ム ロX ム ロ 35 0× ︵9︶⇔。巖弓。で口毛写。§邸﹄巴§ 36 人体におよぼす環境湿度と被服の開口状態の影響(第1報) TEMP.;30℃ HUM.;55%WEAR’S CONDITION; 37 short s. O open c.< long S. × 10ngs.口 △ O口 x 口 33 口 ⑧ 80 X O O 90 70 32 ︵§・。葺ぢで章葦.寓・ △ O ○○ △ OO ムロX 図 △○ 口×△○ 囚×○ x口△○ ×ムロ O 口△Ox ムロ xO 露○ ×ロム○ ロム○ short s. △ neck tie〈 Ox 34 囚⑭ △ ○ Xムロ ロ9雲会 △ X O△ 囚x O 35 ムロ ︵εb。・導。で環毛馨。﹂5一田a§ ロ ロ× 口 X△ 36 60 ムロOx 囚X W3 〇 100 Rest 囚X 囚⑧ 口θ× 口△OX 囚Ox 囚Ox 図ワ× W2 Q日× 10 20 30 囚Ox 30 口㊨x W1 器 暴 口O△× O△X の口× O × ④口X ④口x O口x △○口x △○口X △○ロx 31 50 40 30 20 〇 30 (Min.) Exposure Recovery Fig.9 環境湿度55%の場合被服形態による比較 の結果,危険率1%において,環境湿度55%と80%の差 開衿・長袖 t・=8.750 異による被服内湿度は,高度な有意差があった. 開’衿・半袖 to=5.395 Fo=81.941>F/24(0.01)7.82 Yシャツにネクタイ・半袖 t・=4.918 2・被服の問題として Yシャツにネクタイ・長袖 t・=3.115 1) 平均皮膚温について 以上の順である.開衿の方が高く, Yシャツにネクタ 環境湿度55%,80%とも,開衿・半袖が結果がよい. イの方が低いのは, Yシャツにネクタイを着装して,前 開衿・長袖は,環境湿度55%では差は少ないが,80%で 室にて安静にしている時からむれて,環境湿度55%と80 は皮膚温の上昇が目立っている.Yシャツにネクタイで %との差が少なく出ると言うことと,環境湿度55%・80 は,半袖も長袖の場合も,環境湿度80%で平均皮膚温は %ともデータの上では,開衿より高いのであるが,55% 逆に下がる.これは,発汗によるためであることが,体 の時,すでに発汗して,その水分の透過が閉衿と比べる 重の減少および被服内湿度の上昇からも推察できる.す と,Yシャツにネクタイは,開放面積が少ないため,低 なわち,発汗し蒸発が促進され,気化熱が奪われるため いことが推察できる. に皮膚温が下がる・開衿・長袖の場合は,発汗の水滴は, 長袖と半袖とを比較してみると,上向開口を開けてい すぐ換気するので,体温は下がらない.上向開口の効率 る開衿では,水平開口すなわち袖の形態の影響力は少な のよさが考察できる. く,長袖の有意差が高くなった.Yシャツにネクタイを 2) 被服内温湿度について 締めて,上向開口を閉鎖した時に,はじめて袖の形態が 環境湿度と被服内湿度は,高度な有意差をもつ.その 影響してくることが推察される. 有意差の高い被服形態から並べてみると, 省エネルギーによる冷房は,環境湿度を下げることが (161) 中里喜子 TEMP.;30℃ HUM.;80% WEAR’S CONDITION; 37 short s. O open short s.△ neck tieく long s.口 ○ムロx ㊨図 △⑧ロ ○△×口 ○ロム O△図 Ox口 △⑭口 ④×口 △OX 口 x△0 ムロO× 3口 且0口 O△ 図 XOムロ ×O口 ⑭口 △ 34 10ng s.× O図△ X △Ox口 ムロ OX △⑧口 35 O口 書 ナ ’窪 80 口△XQ 口△ 口嵐O [五XO ロム0 0△xO 口△xO O△xO 口△⑧ 口△xO △O図 ロ念 口④X ロムOx 口QΩx ロムxO ロ会W ロムxO 口△⑭ 口会O 口蓉0 0xO △ ムロム○ 33 32 バ § 営 導 9・ △ 口xO △ ︵P︶b。口毛。で口導写①旨駕﹄巴g↑ △O囲 36 C.< 1 70 属 60 50 40 31 30 30 Wl W2 W3 20 F・一…一・一・・一一十一 − 10 20 30 0 50 100 Rest Exposure Fig.10 環境湿度80%の場合被服形態による比較 〇 30 (Min.) Recovery 第1であり,高湿の場合に,被服の開口状態を考慮し, 2)Winslow, C E. A. etal.:Amer.」.1カ9.,26,103 先づ上向開口の放熱効果が優先するという結果が出た. (1937). 更に効果を増していくのには,水平開口に意味のあるこ 3)牛草貞雄:日衛誌,21,54(1966) とが証明された. 4)渡辺明彦,肝付邦憲外:労働科学,52,636(19 本研究に当り,ご指導下さいました労働科学研究所三 76) 浦豊彦博士・同 肝付邦憲先生に感謝申し上げると共に, 5) 中橋美智子,酒井文子:家政誌,27,121(1976) 験者,被験者として協力された芝浦工業大学学生椿守弘 6) 中橋美智子,酒井文子:家政誌,27,196(1976) 7)山下辰雄:衣服誌,10,1(1966) ・威田薫,東京家政大学学生古出由美子・蓮見菜穂美・ 8) 森瀬 貞,石橋葉子,加賀野美子:家政誌,24, 堀知子・前山悦子氏に感謝の意を表する. 209 (1973) 引用文献 第31回日本家政学会総会にて発表 1)三浦豊彦,外:労働科学,43(12),683∼712(19 (昭和54年度福祉会国内研修助成による) 67) ‘ (162)
© Copyright 2024 ExpyDoc