剤 スミチオンの 魚 毒性に及ぼす 温度の影響と 温度順化 MEP 橋本 造" The Effect Of Temperature On the TOxicity Of the MEP (Sumithion) and the Heat Acclimation 0n the Rainbow Trout Susumu HASHIMOTO* スミ チオンは普通物の農薬として, また魚 毒性については上 ヒ 較的少ないものとして B にランクさナ L,広く 使用されているものであ る。 この農薬は,また林野においてもカラ松に発生するハバチ防除を目的に用いも れている。 しかし本剤の林野における散布は,水温の上昇する夏季に行われるため,週日行った塩素酸ソー ダ系除草剤デリレートの実験において "温度上昇による致死没度の低下" が知られていることから,スミチ オンの使用にあたっては "温度上昇による魚毒性の助長効果" を明らかにしておく必要があろう。 殊に Icm83年には,本剤の散布当該地区内において,養殖ニジマスの異常死亡事件が発生し,水温上昇によ る相剰効果が疑われていた。 このことは,全ての河川に冷水性の甘、が棲息する北海道のような地域において 特に重要な問題を提起する。そこで,前記の異常死亡の原因究明を兼ねてスミ チオンの魚毒性における "温 度卜昇による助長効果" を求める実験を行った。本報告は,実験を行うにあたって得もれた温度順化の問題 と共にその結果を取 リ 纏めたものであ る 方 l. ' 去ル 供試魚及ぴ実験時期 供試焦、 には,1984 年 2 m16 日に三、 化し・ 道上水産ノ 、 化場十歳試験池 (北海道さけ・ます ノ 、 化場千歳支場内) で飼育されていた―般にスチールへッ ドマスと呼ばれている二ジマス [Sal グ仰 eaは iぬwem りの稚魚、 を用いた。 実験は,魚、 を I 表に示した時期に札幌の北海道さけ・ますふ化場研究室に運び, 5 M 8 日から 6 かけて 4 回行った。なお供試魚は, 環境変化の影響を除くため実験に先立って 1 - 月 28 日に 3 週間飼育され,実験時 の大きさについては,高温に対する順応処理 (以下 耐温 処理.と呼ぶ)をした時及び実験時にそれぞれ死亡し た魚、 の 測定値をもって代表させ 2 表に示した。 表l 実 験 実 験 時 供 式数 搬入月日 5 nn 2 口 5 fl 9 a 6 月 4 H 6 f] 4 H 期 5 fn 8 5 日― 5 mIi 6@ T 6 m@18 円― 6 仁121 6 H 25 @ 日 U 日 448 6 H 28 y 北海道さけ・ますふ化場研究業績第296 号 * 水産庁北海道さけ・ますふ化場 (HOkkaido Salmon Hatchery,Fishery Agency, 2-2 Nakanoshima, 062 JAPAN) 113 TOyohira-ku, Sappor0, 北海道さけ・ます ふイヒ 場研究報告 第 39 号 2. 実験装置及び温度条件 本実験では,種々の温度条件での TT.m 値の測定が同時に行えるよう, I 図に示した I 組 5 個の試験槽に ついて, 6 つの温度条件が設定できる温度傾斜試験槽 C620miB(縦 )X500mm( 横 )X200mm (深さ) : 内部の試験 槽の大きさ70""( 縦 )X100""( 横 )X200nim (深さH を用いた( I 図)。 この装置により得られた被検温度条件としては, その上限を約w0 でに設定したところ 3 表に示す結果が得 L,れた。 l図 温度傾斜試験 槽 (E) 実 験 装 置 の加熱 部( h) の制御は,大洋化学工業製のサーモミンダー 冷却 部( C) の制御は,東洋製作所の 電子冷熱装置 TE-108M 止 ― 80 で直接行い(F) , を用いて低温水を循環させて行った (G) 。 各温度系の温度は。測定時期が進むにつれ気温が上昇したため低温側の温度が 少しずつ高くなり, 口 変動も 増加した。 なお,同 ―温度系における各試験槽間における温度のバラツキ具合にっいては , 4 表に示した通り温度が 低くなるにつ tUL相対標準偏差が大きくなった。 しかし変動幅については,それが大きかった実験 I 及び実験 表2 *1 *2 oで ― 0 2C 供試魚 、 の人きさ (平均土 標準偏差, 0 44 土 ().]R ・ I 59 @ [email protected] ・ ・ ・ ・ 2 でも標準偏差0 Ic ― 0 Rで ,実験3 及び実験 4 では同じく0 [email protected] C 及びD はそれぞれ 耐温処理用の水梢i(6 左参照)を表わす。 CF-(Bw は /FL@@cm)) Xl03 114 と極めて小さいものであった。 MEP 剤 スミチオンの 佳 毒性に及ぼす 温度の影響と 温度順化 表3 実技X@(48 土 sd 時間@ 温度 糸 2 3 4 5 T T ・ T T * T * : 3 4土 17 . 17. ?.土 温 実験又土 2(50 sri 時間) 度" 実験X3(50 ナ sri 時間@ 0 5 十 18.5 13.5 士 0.2 @ 66.0 @ 0 . 2 [email protected] 土 0.3 12.4 実験X4 卜0sd時間) 0.2 [email protected] [email protected] 土 0.3 9.2 十 0.3 [email protected] 6 7 .9 @ 0 . 3 [email protected] 7 .0 @ 0 .1 温度記録計の 記録をI 時間毎に読み 取 リ ,その平均及び 標準偏差で ボした。 1al―温度系における 各試験棺間の温度のバラツキ 具合" 表4 丈験 sd I(n rSd I@ 温度系 検 ・ 1 T ・ T 被 I 0.4 安故 sd 2(n-rsd 2) I 0.2 2.4 実験 sd 3(n@ rsn 2@ 1 0.2 1.2 実験 .sn4(n@ rsd l@ 実験 snt-4(n@rSr 6) 1 0.1 1.4 1 0.2 0.4 1.3 n ・実験回数;Sd ,標準偏差(L);rSd ,相対標準偏差(%) 薬液の 詞製 3. 被検薬液は,80% 乳剤を同じ濃度液ごと纏めて,読取限度 IDlg の電子秤 を用いて秤取調製した。 こ /しもの 被検液は実験開始の前日に調製し。それぞれの試験槽に分配役,エアーポンプで通気した。なお,各実験時 の被検濃度の範囲は 5 表に示したとおりであ る。 T 4. 実 T 2 3 T 4 T 5 I 実 濃 験 2 験 3 . 0- ― 1 fLf- (ppm) 度 実 3 Z 1 T 験 検 2.0 3 30.0 0- 1 刀 3i.0- .30.0 l .0- 15 .0 7 .0- ・ 温度系 被 実 3 3 験 ・ ・ 4 0 0- 30 0- 30.0 ・ 表5 fif@0 耐温性を強化するための処珪 温度上昇による死亡即ち温度死に起因する実験誤差を軽減させるため, 恒温水槽 (以下耐温棺 と呼ぶ) へ, 6 表に示した温度の耐温処理用の 色、 をヵゴに人れて段階的に移し替え高温での試験に対応できるようにつ とめた。 表6 耐潟槽" 実 験 I9 I 耐温処理槽の温度(C) 実 験 19 . 1- 2 19 0 * I 図参照 J75 実 験 18 . 3 9 実 験 五 9 5 ・ 4 北海道さけ・ますふ 化場研究報告 第 39 号 ・ 耐温処理は試験開始の前日からt@ い ,実験I 及ぴ実験 2 では飼育槽から1R での C 槽へ,また C 梢 から19 で の D 槽へと魚を移し替えて行った。 しかし実験 3 及び実験 4 では,出来るだけ移し替え時の温度変化の影響 を少なくするため,あらかじめC 槽及び D 槽の温度を移し替えられてくる荏 が前いたところの温度に等しく しておき,C 棺では通電による 自然な温度上昇,D 棺 では30 分毎に0.5 できざみで温度調節器を 調整し昇 温 させた。 耐温処理さ/した D 槽の魚は,温度系 T I 及び T2 の佳は T.3 及び T4 (以下 T … と呼ぶ@ の 試験 魚 として,また,同じく c 棺 の試験径 として用いた。なお,T5 及び Tf の試験丘には・実験 I 及び実験 2 では飼育 棺の魚を直接使用し,実験3 及び実験 4 では,試験開始前日のタ刻から B 梢に収容されていたものを用いた。 なお,飼育槽の温度はn . rc であった。 5 耐温処4 時及び実挨時の溶存酸素甘及ぴ pH ・ 7 表及び 8 表に,耐温処理時及び実験時の溶存酸素量を, 9 表に実験時 pH と温度。薬剤濃度及び試験魚 の数を纏めて表示した。 溶存酸素量については。耐温処理時及び実験時いずれにおいても常識的には良好な状態であ ったと思われ る。 表? 実験 耐温槽 水 D 温 19.0 1 5N 9 酸 素 8.4 88 耐温処理時の溶存酸素量 (ppm) 実験 日 魚. 数 水 温 2 酸 5 月 29 日 実験 素 魚、 数 水 温 3 6月 日 25 酸 素 19 C 日 93 83 94 94 表8 実験 温度系 T T T 水 温 I 酸 .I 実験時の 溶存 酸素 5 H30H 素 1 20 2 17.7 85 3 4 15.2 82 T 12.7 83 T 5 T 6i 9.6 量" 実験 魚、 数 水 温 I 酸 87 1? 10 ・ 1 9.1 89 10 酸素量平均 (%) 94.0@ * :値は対照区での測定値 116 日 素 % 87 86 6n i 1.4 魚、 数 MEP 剤スミチオンの 魚 毒性に及ぼす 温度の影響と 温度順化 表9 実験時のpH ,温度,薬剤濃度及び 点数 実 験 6 2 月 I 日 "F t@ │ [email protected] [email protected] * 1 : 分子の値は測定時の 点数である。 同じ値があるとき最大値では 少ない方,最小値では 多い方の数を 示す。 * 2 : 対照区を除いた 最低濃度を示す 。 結果及び考察 l. 耐温処4 と死亡 今回の実験では。 多数の試験魚を用意したのに実際に使用出来た魚は極めて少なく,実験遂行が極めて困 難であ った ( I 表 )。 この原因については, 10 表に示したとおり耐湿処理時の死亡率が著しく高かったことに よるものであったため,以下高温への耐温処理及び順応性について検討することにする。 表l0 耐 温 処 理 時 の 死 亡" * : この表で示した 異常魚は横臥し, 殆ど呼吸停止状態の 死亡直前と思われるもので ,死亡率の計算では 死無 、 として扱った。 117 北海道さけ・ますふ 化場研究報告 第 39 号 即ち.実験I では試験也を搬入してから実験に供されるまでの期間が I 週間と短かったため,この時の異 常死亡の煉因については,環境変化や搬入前の飼育条件などによる影響とも考えられた。 また,実験 1 にお ける耐温処理では,試験槽の中に入る大きさのステンレス製のカゴを用いて各試験槽毎に必要な仔 数に小分 けして耐湿処理したところ, 1 表に示したようにそれぞれのカゴの死亡率に者しいバラツキが生じたため, こうしたことにより,水の流通の悪いカゴが生じて耐温処理時の死亡率を高めたとも考えられた。 そこで実験 2 以降の実験では,健康を調えるための飼育を 2 週間以上とし, また.耐温処理は死亡佑 を見 込んだ必要点数を綴めて行うことにした。 しかし,試験佳 を人れるカ でとして亜鉛メッキの金網で作ったものを用いたところ, C の耐温槽に入れら tLLた試験魚、 は, しばらくして著しく算上げ行動をし始 め, 2 時間半後に飼育槽にもどしても, 表11 ひどい貧血症 状を呈して16 時間経過後に64% が死亡した。 この原因 耐温処理の死亡率に 見られた松本の 不均―性 は, ヵゴの素材である亜鉛引き金網よりなんらかの原 因で亜鉛が溶出し, その亜鉛の毒によるものと推測さ れた。 したがって実験2 の耐温処理では,ナイロン絹地で 作ったカゴ及び実験 I で使用したカゴを, また実験3 及び実験 4 では,実験 2 で便ったナイロン絹地のカゴ を用いて而寸温 処理することにした。 なお,実験 2 の 耐温処理時において,魚を温度槽 C から同じ n 槽へ移し替えるとき, 或 いはD 槽から各 試 験棺への分配時に,猛烈に狂奔したのち仮死状態にな るものが多数生じた。この原因にっいては,酸素の不 足が魚、に大きな負担になることも知られているため。 実験 3 以降耐温処理槽 c , D への通気量を―段と多く し溶存 酸素量の不足による負担をお除するようにし 卜 た ( ? 表)。 しかし実験 3 では実験 2 のときと同じ症 状が耐温処理時にみら ナ L, いまだ亜鉛毒の影響が残っ ていると見え,多数の甘 が死亡した。そこで実験4 で は, 耐温槽及び恒温装置の洗浄にっとめたところ。耐 *1 .死亡直前と 思われるもの *2 ・標準偏差 *3 .相対標準偏差 湿処理時の死亡は全く見られなくなった。 この実験 4 の結果は,亜鉛毒が除去されたことに加え,飼育日数 が 3 週間と長くなって履歴の影響が少なくなったこと。及ぴ十分な酸素が供給されたことなど生理的負担が 者しく軽減されたためと考えられる。同時に二ジマスにとっては.耐温処理換言すれば水温の上昇時には, 充分な酸素の補給が生存のための必要条件となることを示唆するものであ り ・ また二ジマスは,高温への順 応性が内外の条件に著しく影響され易い甘 と言うことが出来そうであ る。 なお 白 然界における 水温の口問較差にっいては 十勝地方 猿別川の昭和57年 9 J@11 日の記録において 8 8C が観測されており, 小河川或いは流量の少ない養魚池での夏季の水温変動は, ・ も , 極めて著しいものとな ろう。 したがって夏季における二ジマスの高温への順応は,棲息あ るいは飼育環境が悪化するとき,潜入酸 素量の減少も手便 って極めて苛酷なものとなりそうであ る。 2. スミテオンの魚毒性 2 図及び 3 図は,今回行った魚毒性実験の結果を。 即ち 3 表に示した水温条件のときの スミ チオン濃度と 死亡率の関係を図示したものであ る。 なお 2 図に示した結果については,耐湿処理時に大量の死亡をみた合、 118 MEP 剤スミチオンの 色 毒性に及ぼす 温度の影響と 温度川頁化 の生残りを用いたものであ るため,偏 りが生じている恐れがあるうえに,耐温処理時に発生した亜鉛毒及ぴ 供試魚が,かつて飼育されていたときの履歴の影響を強く受けていることが以下の理由から推察される。 即ち , 2 表及び 4 図に示した肥満度及びその頻度分布から.実験 I 及び実験 2 のT I 及び T 2 で使用した 魚は,実験3 及び実験 4 のものより肥満度が小さく,健康状態の劣 っていることが推察される。 そして, こ のように魚が不健康なとき,毒物に対する感受性は高くなること, 3 のT 1 -T また加えて実験 2 のT 1 -T4 及ぴ実験 2 の 魚は,亜鉛毒からの生残リ魚であ るため,毒物への感受性がいっそう高くなることが予想 される。これら 2 つの相乗効果が,実験I のT4 の結果で示されているように,既報の結果以上に低い浪度 でタ E亡率を高くした原因と考えもれる (2 図)。 十 / 一一一 ノ ノ スミ チオン 丁 1-- fl 叩 % 乳 00 / * イ - / 甘 ︵︵ 八 L﹃ ノ / @ ・・ pQm ― 100 , ノア・ 100 死 へル , 1 一一一 ト、 十 ¥¥ ・ 1 , 1 1 ( イ 上 100 亡 率 (%) 2 図 色々な温度条件でのスミ チオン濃度と 死亡率の関係 桂 今の温度条件での丁 」 実験 I の T4 m 値 では,かなり低い TLm は,高温域での TLm 値が算出可能であ る。 しかし,2 図に示したその他の結果について 値の算出を目標とした T 1 -T3 の対照区や低濃度E での死亡率が。高温度区での死 亡率より高くなるなど,濃度と無関係なバラツキが生じている。 したがって高温域でのTT 理時に死魚が発生しなかった実験 4 の T 1-T ・ 3. m 値は, 耐温処 3 の結果から,中温域の値は飼育棺 の魚を直接試験棺へ収容 して行った実験3 のT 4 の結果から,また低温域の値は,実験 3 の T 5 及び T 6 の結果からそれぞれ DOu droff 決によって求めることにした (3 図)。 119 北海道さけ・ますふ 化場研究報告 第 39 号 ,。 T 2 l 丁 ト 024h 「 0 24 片山 5七 02 で @舛 D O 44 2昨 " 。 'では り オン eo T 3 ・ 4o T 4 % 剤 7 沸 0024 仙 け , lL 。 t(晦 3) 04B .・ 0241v@ 印よ Q2q 匁 , 4 度 ・ ・ ― ppm ― 50 4 24hr @?4 048 @ ユ 5"0 @ , . 40 T 6 20 4 'てい. ') (@ : 3) ]図 亡 率 (%) ・ 至 4h 「 ゑ o 25 頻 50 25 叱 4図 済 度 CF 肥満度の頻度分布 図中の数字は2 表参照 120 ・ 100 士 0圭巳 3、@汗引 色々な温度条件でのスミ チオン濃度と 死亡率の関係 50 度 コ 100 100 死 士 50 100 @[email protected] 100 100 MEP 剤スミチオンの 魚 毒性に及ぼす温度の影料と温度順化 表け 椎々の温度条件での入ミ子オ ンの TLmf 直 [mF7V ) その結果は,T2 表に示したとおり毒物の TLm 値としてはかなり 高いものとなった。 しかし前述のとおり 種々の原因により生理的 に不健康と思われる佑は, より低い濃度でも死亡が助長されたため (2 図),高温,渇水など 自然環境の変化が著しく魚休へ影響しそう な時には,毒性が助長される恐れがあるという点を留意しておく必 要があろう。 なおスミ チオンの TLm 値については, 寺蓮や門出らにより調べ られているので, それもの実験と同温度での本実験の結果とを少し 比較してみることにする。この場合,寺尾の結果にっいては, 中に薬剤 Im4 の溶液が,1000ppm I L として表示されているため, 80 乃 乳剤の比重を測定して濃度表示値を補正 した (寺尾は50% 乳剤を使用したので 厳密には少し違ってくる 九 また,TI , m 値も 方法に疑問が 生じたため, DOudroff 法により付皮算出したものを用いることにした。 その結果,本実験での24hrT Lm る二ジマス及びサケでの値の IO . 5-6 は,寺尾の実験によると メ マス及びサケでの値の4 . 5-2 . 4倍となった。この原因については, . 7倍, 門 田によ 薬剤調製の項で述べたとおり, 試 験液を前日に調製したため不溶物が沈澱してその影響がなくなったこと,本実験では80% 剤を使用したので 50% 剤を用いた既報の実験より不純物による影響が少なかったことなどが考えられる。殊に不純物の影響に ついては, テトラピオン製剤の毒性試験において増量安定剤であ るべン トナイトの毒性が原体より強く,原 体と相剰的に働いて薬剤の毒性を強めていることも知られているところであ 芝 。 以上のことから農薬の開発 に当っては,より安全な安定,増量制,乳化剤の開発が望まれる。 薬剤に対する感受性と温度の関係 5 図は, - 3O - 20 - m 値と温度の関係を 図に表わし たものである。 この図からスチールへッ ドマスと呼ば 50ppm -: 40 12 表の T T ・ 4) @ 24 hr TLm 0 48 t れる二ジマスは, 10C 以上の水温のとき薬剤に対する 感受性が著しく高まっていることが推察される。 しか ウ し , 20 。c 以上の高温域でどのような影響を受けるかは, 今回の実験から推測することは困難である。 また,耐 温処理時の様子や産卵 習桂(産卵期の水温 mo-15 . 5C ・ 主に湧水のあ る所へ産卵) からみて,水温が20 で以上 ヴ, に上昇するときは,多分に温度そのものによる 影響(温 l0 O " つ、 - 度死) が著しくなるものと思われる。参考までに, 5 図には@A4 時間 T T.m と温度の関係に 2 つの曲線を当て l0 5図 l5 20 TLm] 値と温度との関係 図 中の曲線は最 ,/J'__ J@ ー乗法によって 来 めた2 次及び3 久の曲線を例示した "C はめ,例示しておいた。 このような薬剤に対する感受性と温度の関係につい ては,ヤマべによる 除草剤デゾレートの実験において, 水温が M でを越えると温度の増加につれて 著しくTLm 値が減少し薬剤に 対する感受性の高まることでも知 られている。なお感受性に対する温度の影響について は,フイッシャー及びエルソンもによる 大西洋サケ 卜血Mo M 伍パ 及び,カワマスLSMLg7fwM ル W 而ぱ JfS) 脚注 ; 宮城県木産試験場の 伊藤章氏より 川口良友尺 (住友化学) への私信で ,農業事芙部の門 田忠臣氏が行った 各位薬品とサケ 及ぴニジマスに 対する再性式験の 結果を報告している。 121 北海道さけ・ますふ 化場研究報告 第 39 号 の電気刺激に対する反応と温度についての研究によると ,ニジマスに近縁とされている ヵワマスはio@c のと き, また大西洋サケは15C ,のときそれぞれ 最も反応が強いといわ/していることからも 推察される。 以上のことかも,薬剤に対する感受性と温度との関係は,棲息場所や産卵習性と温度との間にみられる生 態学的特性と同じ関係にあ るように推察され, その原因は,広温性或 いは狭温性なる名称で知られている温 度上の生理的特性に依存するためと考えられる。 近年の分類学では分子レべルでの検討もなされるが, ッドと呼ばれているもの は,ヤマべ より低温域, 以上の温度では薬物に対しても感受性が九進し 厳密にはスチールへ いずれにしても,ニジマス 即 ち約loC 以下の水温域を本質的な棲息域とし,それ ヤマべより影響を受け易いものと思われる。 また,同じ冷水性の也 でも前述のとおり感受性は佳 種によって異なるため,嫌忌行動の結果から生態系に まで影響する恐れがあ り, したがって魚が棲息する場所での散布には,スミチオンにとどまらず細心の注意 が払われるよう望まれる。 なお水薬剤の二ジマスに対するTI , m 値は,毒物の Tr.m 値としてはかなり 高濃 度であ り,誤って直接河川へ散布されるようなことがなければ, 本薬剤の散布が二ジマスに影響することは ないものと思われる。 5) 本薬剤による症状 6 図は, 本薬剤によって死亡した魚の外部症状を参 考 までに示したものである。即ち , 15ppm の溶液に I 置かれた魚は,消化器内に液体が充満しやがて 日 図に 示したように腹部が膨出する。この症状の魚、 の出現は, 高濃度の波で長時間生きている区はど数及び症状共に 大きかった。 このことはf ぃ 温度ほど腹部膨出伎が発 生し易いことを意味するが,反面高い温度では,症状 が現われる前に死亡するほど強く温度の影響を受ける ことを示唆するものである。 6図 外 部 症 状 勺 糸 要 MRP I. 系殺虫剤スミチオンの林地における散布は,夏季に行われるため,水温上昇による魚毒性の助長 が問題となった。このため,耐湿性を強化するための処理を行った二ジマス稚魚を用いて,魚毒性に及ぼ す温度の影響を調べた。 2. ニジマス稚魚の温度上昇に対する順応性は,健康状態及び履歴に影響され易 は 3 週間の準備飼育及び酸素条件が93% く ニジマス稚魚の スミ チオンに対する感受性は,温度上昇により 九進し24 時間 TLm 3. ― 20 6でのとき42 . 4ppm-12 ・ ・ 8ppm , 11C から20C への順応 飽和以上で耐温処理したとき可能であった ( 7 表, 10 表)。 値で示すと,水温 7. ?で であったu2 表, 5 図L この魚毒性は,健康状態の悪化により助長され る。 122 MEP 4 ・ 剤 スミチオンの 魚 毒性に乃 はす温度の影料と温度順化 薬剤感受性と温度との関係は, 魚種それぞれの生理特性に依存して,産卵習性,棲息場所と 温度の関係 にみられる生態的特性と相似の関係にあ るように思われる。したがって魚毒性に及ぼす 温度の影響は低温 性, 挟温性の魚ほど強いように思わ しる。 それ故冷水性の魚が棲息する河川の多い北悔道では,夏季に温 十 度が上昇する恐れのある河川がある地域への薬剤の散布は,河川への誤散布による事故が起らないよう特 別な注意が必要であ る。 参 1 橋本 2) 橋本 3) 川本信之 4) P. DOudoroff 進 1g17.t ・林地除草剤 (デゾL@ ―ト) 考 文 献 のヤマべ幼魚、に対する毒性試験報告― TT .嫌忌濃度の測定 ならびに致死浪度に及ぼす温度の影響について,北海道さけ・ますふ化場,資料 進 1975 ・テトラピオン製剤 ( フレノック粒剤 10) のサケ稚魚に対する毒件について, け・ますふ化場 ・ 資料 19R9 ・魚類生理生態学 . 144-145 他 1951. .恒星社厚生閣,東京 (ffmT 田喜弘訳 1955) . 魚類に対する産業廃水の急性毒を評価するための生 物学的定量法,水産増殖, 3, 2 : 1-23. 5) 寺尾俊郎 (20) 6) W. 1965 ・農薬のサケ及びと メ マス稚魚に対する毒性試験,北海道水産ふ 化場研報, : 65-8fi. B. Scott @ 北悔道さ E. J. Crossman 1973. Freshwater 123 fishes Canada. Bul1. 184, pp. 966
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