μ - 東海大学理学部物理学科

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第六章
第六章
ニュートリノ振動:MSW
ニュートリノ振動:MSW
ニュートリノ振動は、精製時・観測時と飛行時の状態が違うことにより発生し、

生成されるニュートリノ (n e ,n m ,n t ) は、組になる ( e - , m - ,t - ) を観測することで、
(n ,n
e

m
,n t ) として観測される。
(n ,n
e
m
,n t ) :フレーバーニュートリノ(flavor neutrino)と呼ばれる
 弱い相互作用:

3
3
ö
1 æ - 3
-m
-m
e
W
W
g
n
+
m
g
n
+
+
t
g mW - mn t ÷
ç å m
å
å
e
m
m
2 è m =0
m =0
m =0
ø
生成されるニュートリノ (n e ,n m ,n t ) は、生成された瞬間に違う状態 (n 1 ,n 2 ,n 3 ) に変貌
し、量子力学に従って時間経過し飛行する。

(n 1 ,n 2 ,n 3 ) :質量固有状態ニュートリノ(neutrino mass eigenstate)と呼ばれる。
æn1 ( t ) ö
æ n1 ( t ) ö æn 1 (0) ö
æ n 1 ( 0) ö
æn e ö æn e ö
d ç
÷ ˆç
÷ ç
÷
ç
÷
÷
ç
÷
†ç
 量子力学: i çn 2 ( t ) ÷ = H çn 2 ( t ) ÷ Ü çn 2 ( 0 ) ÷ = U çn m ÷ Ü çn m ÷ = U çn 2 ( 0 ) ÷
dt ç
çn ÷ çn ÷
÷
ç
÷ ç
÷
ç
÷
è tø è tø
èn 3 ( t ) ø
èn 3 ( 0) ø
èn 3 ( t ) ø èn 3 ( 0 ) ø
æ n ( 0) ö æ cos q
æn e ö
 【2 世代の例】 ç ÷ = U ç 1
÷=ç
n
0
n
(
)
m
2
è ø
è
ø è sin q
- sin q ö æ n 1 ( 0 ) ö
ç
÷
cos q ÷ø èn 2 ( 0 ) ø
とまとめられる。原因は、ニュートリノの質量を直接観測できないことに依る。模式図で表
わすと、
u
u
d u
d d
中性子(n)
量子力学による時間発展
W-
中性子崩壊による生成
フレーバー
ニュートリノ
質量固有状態
ニュートリノ
e-
陽子(p)
eフレーバー
ニュートリノ
弱い相互作用による生成電子観測
n3
ne = n2
n1
n 3¢
nt
n 2¢ = n m
n 1¢ n e
W-
ne
e-
太陽ニュートリノは、太陽内の核融合で生成される電子ニュートリノで、太陽から放出され、
地球上のニュートリノ観測所で観測される。量子力学による飛行時には、通常、ニュートリ
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ニュートリノ振動:MSW
ノは、宇宙空間などで、自由に飛行できる(真空中の飛行)。ところが、太陽内部の飛行では、
大量の電子が存在するため、n e + e - ® "W - " ® e- + n e 等が頻繁に起こり、電子ニュートリノの
飛行の仕方に無視できない影響を与えることがわかっている(物質中の飛行)
。その結果、真
1
空中のニュートリノ振動理論に大幅な変更が加わる。
太陽ニュートリノ
太陽の中での核融合反応によりニュートリノが生成される。弱い相互作用で生成されるニ
ュートリノは電子ニュートリノになる。とくにボロン 8(8B)から生成される電子ニュート
リノを地球上で観測ターゲットにする。そのエネルギーは太陽の標準モデルにより 1~10
MeV であり、このエネルギーのニュートリノが観測にかかるように実験機器を設定しておく。
ニュートリノの飛行距離は、太陽と地球の距離の約 1011mである。
太陽ニュートリノ観測結果によると、地球にくるニュートリノの数が太陽の標準模型より
の期待する理論値のニュートリノの数の約半分(スーパーカミオカンデ観測)であることが
示された。
電子ニュートリノ数の観測値
1
=約
電子ニュートリノ数の理論値
2
(6.1)
1968 年にデービスにより最初に発見された太陽ニュートリノ振動
電子ニュートリノ数
の理論値
電子ニュートリノ数
の観測値
2000 年にスーパーカミオカンデにより再確認された太陽ニュートリノ振動
電子ニュートリノ数の観測値
電子ニュートリノ数の理論値
太陽ニュートリノの飛来の様子は、太陽から放出された電子ニュートリノが宇宙空間を飛行
1
Lincoln Wolfenstein (1978)により提案され、Stanislav P.Mikheyev と Alexei Y.Smirnov (1986)によって太陽内のニ
ュートリノ振動にも拡張され、MSW 効果と呼ばれる
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ニュートリノ振動:MSW
する。その様子を、模式図で表わすと・・・
n e from 8 B
観測
= 0.47 ± 0.08
理論
1011 m
である。この場合は
Dm 2~
E ( MeV )
L (m)
=
1~10 ( MeV )
11
10
= O (10-11~-10 eV 2 )
(6.2)
なる。大雑把に
Dm2  mn2
(6.3)
とすると、ニュートリノの質量として
mn = O (10-5 eV )
(6.4)
になる。残念ながら、この振動は、実験結果から排除された。そこで、
 太陽内部には電子が一杯あって、宇宙空間と違って、電子ニュートリノは電子と多
重散乱する
 太陽から脱出後、宇宙空間の飛行に移る
を考慮する必要がある。太陽内部の電子と電子ニュートリノの散乱は
 4体フェルミ似相互作用
で記述できることが分かっている。
4体フェルミ相互作用とニュートリノ
弱い相互作用は近似的に4体フェルミ相互作用で記述され、太陽内部の物質(電子・陽子・
中性子)とニュートリノの相互作用で終状態にニュートリノを放出するのは
n e, m ,t
Z
電子
n e, m ,t
ns
Z
陽子・中性子
ne
W
電子
太陽内部では
νe が生成さ
れる
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ニュートリノ振動:MSW
と図示できる。2ステライルニュートリノ(n s )は

全く SU(2)Lloc ×U(1)Yloc の弱い相互作用をしない第4番目のニュートリノ
である。3世代ニュートリノ以外にしばしば W ± と Z とまったく相互作用しないこのようなス
テライルニュートリノが導入される。
太陽中では、
 核融合にてニュートリノが生成されるので電子ニュートリノ
が対象になるニュートリノである。生成された電子ニュートリノは、当然太陽中に存在する
電子と散乱する。その結果見かけ上ポテンシャル項をとうして質量が現れる。つまり、
G
L = n eL ( x) i¶/ - mn e n eL ( x) + F e( x)g m (1 - g 5 )n e ( x) n e ( x)g m (1 - g 5 ) e( x)
(6.5)
2
(
(
)
)(
)
Fiertz 変換により4体フェルミ相互作用項は
(
)(
)
GF
e( x)g m (1 - g 5 )n e ( x) n e ( x)g m (1 - g 5 ) e( x)
2
G
Þ F 太陽 e( x)g 0 e( x) 太陽 n e ( x)g 0 (1 - g 5 )n e ( x) + 
2
G
= F 太陽 e† ( x)e( x) 太陽 2n eL ( x)g 0n eL ( x) + 
2
(
)
(
)
(
(6.6)
)
= 2GF 太陽 e† ( x)e( x) 太陽 n eL ( x)g 0n eL ( x) + 
(
)
Þ Einduced n e ( x)g 0n e ( x) + 
以下詳しく調べてみる。標準模型でのラグランジアンでは
G
Lch = F éën eg m (1 - g 5 ) e ùû éë e g m (1 - g 5 )n e ùû
2
Ln =
(6.7)
GF é
ù
æ 8 2
ö
æ 4 2
ö
2
êu g m ç1 - 3 sin q w - g 5 ÷ u - d g m ç1 - 3 sin q w - g 5 ÷ d - e g m (1 - 4sin q w - g 5 ) e ú
2ë
è
ø
è
ø
û (6.8)
´ éën eg m (1 - g 5 )n e + n m g m (1 - g 5 )n m + n t g m (1 - g 5 )n t ùû
と記述する(問題1)。
ここで Fiertz 変換を使用する。つまり、
(y
(1)
)(
)
) º (y
g m (1 - g 5 )y (2) y (3)g m (1 - g 5 )y (4)
(
= å A cA y G y
(1)
A
(4)
)(y
(3)
Gy
A
(2)
(1)
Äy
(4)
)(y
(3)
Äy
(2)
)
(6.9)
の左辺から右辺への移行を Fiertz 変換と呼ぶ。ただし、
2
太陽内部では核融合の過程でn e が放出される。放出されたニュートリノn e は原理的・理論的には太陽内部を
飛行中に振動効果により他のニュートリノに変化し、ほんの僅かにn m ,t (やn s ?)が現れる。
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ニュートリノ振動:MSW
G A = I ( A = Scalar ), g m ( A = Vector ), s mn ( A = Tensor ),
(6.10)
g m g 5 ( A = Axial Vector ), g 5 ( A = Pseudo Scalar )
である。具体的には、
(
+ c (y
+ c (y
å
A
)(
) (
)(y g y ) + c (y
)(y s y )
)(
) (
)(y g g y )
)(
c A y (1) G Ay (4) y (3) G Ay (2) = cS y (1) Iy (4) y (3) Iy (2) + cP y (1)g 5y (4) y (3)g 5y (2)
(1)
V
g my (4)
s mny (4)
(1)
T
(3)
(2)
m
(3)
(1)
A
g m g 5y (4)
(3)
m 5
)
(2)
(6.11)
(2)
mn
である。そこで(6.9)のようにy (2) « y (4) を実現すれば、
G
Lch = F ëén eg m (1 - g 5 ) e ûù ëée g m (1 - g 5 )n e ùû Þ n e Än e ( e Ä e )
2
(
)
(6.12)
になり、その結果、
e Ä e Þ e† e = 電子密度
のように電子密度に関連付けられる。そこで、
(y
(y
(1)
(1)
)(
(6.13)
)
g m (1 - g 5 )y (2) y (3)g m (1 - g 5 )y (4) = y a(1)y b(2)y r(3)y s(4) ( g m (1 - g 5 ) )
)(
)
ab
G Ay (4) y (3) G Ay (2) = -y a(1)y b(2)y r(3)y s(4) ( G A )
as
(G )
A rb
(g (1 - g ) )
m
5
rs
(6.14)
として、
(g (1 - g ) ) (g (1 - g ) )
ab
m
m
5
rs
5
= -å A c A ( G A )
as
(G )
A rb
(6.15)
が成立する。さらに
(1 - g 5 )
2
= 2 (1 - g 5 )
(6.16)
を利用すると
4 (g m (1 - g 5 ) )
ab
(g (1 - g ) )
m
5
rs
= -å A cA ( G A (1 - g 5 ) )
as
( G (1 - g ) )
A
5
rb
(6.17)
1)両辺に (g l ) , ( g l ) を乗じて ( a , b )と( r , s )の Tr をとる。
br
sa
4Tr ( g m (1 - g 5 ) g l g m (1 - g 5 ) g l ) = -256
-å A c A Tr ( G A (1 - g 5 ) g l ) Tr ( G A (1 - g 5 ) g l ) = -64cV - A
(6.18)
ここに、 å A は
(1 - g 5 )(1 + g 5 ) = 0
(6.19)
に注意しての(6.11)代わりに
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å
cA ( G A )
(G )
as
A
A rb
= cS - P (1 - g 5 )
as
+ cV - A ( g m (1 - g 5 ) )
as
+ cT (s mn )
as
(s )
第六章
(g (1 - g ) )
m
5
(1 - g 5 )
rb
rb
+ cS + P (1 + g 5 )
as
+ cV + A (g m (1 + g 5 ) )
as
ニュートリノ振動:MSW
(1 + g 5 )
rb
(g (1 + g ) )
m
rb
5
(6.20)
rb
mn
とできる。これを用いて
4Tr ( g m (1 - g 5 ) g l g m (1 - g 5 ) g l ) = -256
(6.21)
-å A c A Tr ( G A (1 - g 5 ) g l ) Tr ( G A (1 - g 5 ) g l ) = -64cV - A
を得る(問題2-A)。
2)それ以外は
cS - P = cS + P = cV + A = cT = 0
(6.22)
になる(問題2-B)。
これから
-256 = -64cV - A Þ cV - A = 4
(6.23)
を得るので
4 (g m (1 - g 5 ) )
ab
(g (1 - g ) )
m
rs
5
= -4 (g m (1 - g 5 ) )
as
(g (1 - g ) )
m
rb
5
(6.24)
故に
(g (1 - g ) )
(g (1 - g ) ) (g (1 - g ) )
y r(1)y b(2)y r(3)y s(4) ( g m (1 - g 5 ) )
ab
= -y r(1)y b(2)y r(3)y s(4)
rs
m
5
as
m
5
m
rb
(6.25)
5
つまり
y (1)g m (1 - g 5 )y (2)y (3)g m (1 - g 5 )y (4) = y (1)g m (1 - g 5 )y (4)y (3)g m (1 - g 5 )y (2)
(6.26)
である。これを Fiertz 変換といい、
 V-A 型は Fiertz 変換に対して不変である
性質がある。
太陽内のニュートリノ有効相互作用
これを適用して、太陽内の電子や陽子・中性子とニュートリノの相互作用の影響を調べる。
そのために、
 平均場近似を用いる
こととなる。さて、
n eL º
1-g 5
ne
2
(6.27)
を用いると
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GF
én eg m (1 - g 5 ) e ù éëe g m (1 - g 5 )n e ùû
û
2ë
= 2GF éën eLg mn eL ùû éë e g m (1 - g 5 ) e ùû
Lch =
Fiertz trans.
=
ニュートリノ振動:MSW
GF
én eg m (1 - g 5 )n e ù éë e g m (1 - g 5 ) e ùû
û
2ë
(6.28)
になる。同様に
é
ù
æ 8
ö
æ 4
ö
Ln = 2GF êu g m ç1 - sin 2 q w - g 5 ÷ u - d g m ç 1 - sin 2 q w - g 5 ÷ d - e g m (1 - 4sin 2 q w - g 5 ) e ú
è 3
ø
è 3
ø
ë
û
m
m
m
´ éën eLg n e + n m Lg n m L + n t Lg n t L ùû
(6.29)
を考慮する。
これに平均場近似を適用しニュートリノの有効相互作用を導く。太陽では核融合の過程から
電子ニュートリノが放出され地球に到達する。電子ニュートリノに着目すると運動方程式は

C
C
C
C
n eL + Lch + Ln = -n eLg m ¶ mn eL - mn e n eLn eR
n eL + Lch + Ln
L = n eLig m ¶ mn eL - mn e n eLn eR
+ n eR
+ n eR
(
)
(
)
(6.30)
から
æ ¶L
¶m ç
ç ¶ ¶ mn eL
è
(
)
ö ¶L
÷=
÷ ¶n eL
ø
(6.31)
で導かれる(問題3―A))ので、
C
-ig m ¶ mn eL = - mn en eR
+
(
)
2GF éë e g m (1 - g 5 ) e ùû (g mn eL )
æ
é
ùö
æ 8
ö
æ 4
ö
+ ç 2GF ê ug m ç 1 - sin 2 q w - g 5 ÷ u - d g m ç 1 - sin 2 q w - g 5 ÷ d - e g m (1 - 4sin 2 q w - g 5 ) e ú ÷ (g mn eL )
è 3
ø
è 3
ø
ë
ûø
è
(6.32)
を得る(問題3―B))これから、平均場近似に移行すると非相対論的影響のみ考慮するので

ポテンシャル項( g 0 成分)のみ、かつ g 5 項は無視できる
(6.33)
ことがわかる(問題4)。n eL の係数が平均場の中での値(ポテンシャル項)として置き換え
られる。その結果、運動方程式を
C
éig m ¶ m + g 0 (V ch + V n )ùn eL - mn n eR
=0
e
ë
û
ここで
V ch = 2GF < e†e >
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(6.34)
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ニュートリノ振動:MSW
éæ 8
ù
ö
æ 4
ö
V n = 2GF êç1 - sin 2 q w ÷ < u †u > - ç1 - sin 2 q w ÷ < d † d > - (1 - 4sin 2 q w ) < e† e > ú
ø
è 3
ø
ëè 3
û
になる。少し書き換えて
C
C
ég m pm + g 0 (V ch + V n )ùn eL - mn n eR
= éëg 0 ( E + V ch + V n ) - γp ùûn eL - mn en eR
e
ë
û
(6.35)
(6.36)
になるので、電子ニュートリノのエネルギーは
En e = E + V ch + V n
(6.37)
に変化する。また、ミューニュートリノやタウニュートリノ(n m ,t )の荷電相互作用、 Lch に
は éën eg m (1 - g 5 ) e ùû éëtg m (1 - g 5 )n t ùû があるが、(6.35)を導くと同様の手続きで
é < e e>を与えない ù
GF
én eg m (1 - g 5 ) e ù éëtg m (1 - g 5 )n t ùû = 2GF én eLg mn t L ù ê tg m (1 - g 5 ) e ú
û
ë
ûê
2ë
úû
ë
†
(6.38)
になるので、 < e†e > の項からの効果ない。
以上をまとめると
ne
En e = E + V ch + V n
n m ,t
En m ,t = E + V n
ns
En s = E
V ch = 2GF < e†e >
éæ 8
ù
ö
æ 4
ö
V n = 2GF êç 1 - sin 2 q w ÷ < u †u > - ç 1 - sin 2 q w ÷ < d † d > - (1 - 4sin 2 q w ) < e†e > ú
ø
è 3
ø
ëè 3
û
(6.39)
である(問題5)。この表式がニュートリノ振動の解析に使用される。特に、電子ニュートリ
ノの場合には、エネルギー固有値が
E + V ch + V n
に変更されるので
(6.40)
n e (t ) = exp(-iH Dt ) n e (t0 )
(H = E +V
ch
+ V n ; Dt = t - t 0 )
(6.41)
になる。
物質によるニュートリノ振動
このエネルギーの表式を使用してもう一度ニュートリノ振動を調べてみよう。平均場の影響
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第六章
ニュートリノ振動:MSW
は弱い相互作用を通してあらわれるので、(n e ,n m ) が基準になる。対応する時間発展は、(5.43 )
を用いると
H vac = -
æ n e (t ) ö
¶ æ n e (t ) ö
Dm2 3
s cos 2q - s 1 sin 2q ) 、 i ç
(
÷ = H vac ç
÷
¶t èn m (t ) ø
4E
èn m (t ) ø
æ n e (t ) ö æ cosq
ç
÷=ç
èn m (t ) ø è - sin q
sin q ö æ n 1 (t ) ö
÷
֍
cosq ø èn 2 (t ) ø
(6.42)
(6.43)
で記述される。ここで、平均場の影響を取り入れると、
æ V ch + V n 0 ö
H = H vac + ç
÷
0
Vnø
è
(6.44)
になる。ここで、全体にかかる位相は物理的に意味がなくなるので
æ V ch + V n 0 ö
V ch + 2V n
V ch 3
s
=
+
+
H = H vac + ç
H
I
÷
vac
2
2
0
Vnø
è
(6.45)
より、結果として
V ch 3
s
2
を得る(問題6)。また
H matter = H vac +
(6.46)
Dm2 3
s cos 2q - s 1 sin 2q )
(
4E
を代入して、整理すると
H vac = -
(6.47)
æ Dm 2
V ch ö 3 Dm 2 1
H matter = ç cos 2q +
s sin 2q
÷s +
2 ø
4E
è 4E
(6.48)
になる。
今回は、平均場による余分な項があるので、
æ n 1 (t ) ö æ cosq
ç
÷=ç
èn 2 (t ) ø è sin q
- sin q ö æ n e (t ) ö
÷
֍
cosq ø èn m (t ) ø
(6.49)
で
i
¶ æ n 1 (t ) ö æ m1
ç
÷=ç
¶t è n 2 (t ) ø è 0
0 ö æ n 1 (t ) ö
÷
֍
m2 ø è n 2 (t ) ø
のように対角型にはならない。そこで、あらたに
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(6.50)
10/14 平成 26 年 9 月 6 日午後 2 時 17 分
æ n e (t ) ö æ cosq M
ç
÷=ç
èn m (t ) ø è - sin q M
sin q M
cosq M
第六章
ö æn 1M (t ) ö
÷ ç M ÷ º UM
ø èn 2 (t ) ø
æn 1M (t ) ö
ç M ÷
èn 2 (t ) ø
ニュートリノ振動:MSW
(6.51)
diag
により対角化する。対角化されたハミルトニアンを H matter
とすると
diag
H mater = U M H matter
U M†
(6.52)
が条件になる(問題7)。平均場近似での時間発展は
M
¶ æç n 1 (t )
i
¶t ç n 2M (t )
è
ö
æ n M (t )
diag ç 1
÷ = H matter
÷
ç n 2M (t )
ø
è
ö
÷
÷
ø
(6.53)
になる。
計算を実行しよう。
æ Dm 2
V ch ö 3 Dm 2 1
cos 2q +
H matter = ç s sin 2q º - As 3 + Bs 1
÷s +
2 ø
4E
è 4E
V ch
Dm 2
Dm 2
A=
cos 2q , B=
sin 2q
4E
2
4E
diag
H matter
= U M† H materU M
(6.54)
故に、
æ cos q M
diag
=ç
H matter
è sin q M
- sin q M ö æ - A B ö æ cos q M
÷
ç
cos q M ø çè B A ÷ø è - sin q M
sin q M ö
÷
cos q M ø
æ - ( cos 2 q M - sin 2 q M ) A - 2 cos q M sin q M B
=ç
ç ( cos 2 q M - sin 2 q M ) B - 2 cos q M sin q M A
è
( cos q
( cos q
2
M
2
M
- sin 2 q M ) B - 2 cos q M sin q M A ö
÷
- sin 2 q M ) A + 2 cos q M sin q M B ÷ø
(6.55)
を得る。これを対角型すると
diag
H matter
= -s 3 A2 + B 2
(6.56)
になり、混合角 q M は
sin 2q M =
B
, cos 2q M =
A
A2 + B 2
A2 + B 2
で与えられる(問題8)。以上から、
【安江正樹@東海大学理学部物理学科】
(6.57)
11/14 平成 26 年 9 月 6 日午後 2 時 17 分
第六章
ニュートリノ振動:MSW
M
æ n M (t ) ö
¶ æç n 1 (t ) ö÷
diag ç 1
diag
÷ with H matter
i
= H matter
= -s 3 A2 + B 2
M
M
¶t ç n 2 (t ) ÷
ç n 2 (t ) ÷
è
ø
è
ø
æ n e (t ) ö æ cos q M sin q M ö æn 1M (t ) ö
B
, cos 2q M =
ç M ÷ with sin 2q M =
ç
÷=ç
÷
2
A + B2
èn m (t ) ø è - sin q M cos q M ø èn 2 (t ) ø
A=
A
A + B2
2
(6.58)
V ch
Dm 2
Dm 2
sin 2q
cos 2q , B=
4E
2
4E
になる。
共鳴ニュートリノ振動
ここで、混合角の表式を調べてみよう。
sin 2q M =
B
, cos 2q M =
A
A +B
A + B2
Dm 2
V ch
Dm 2
A=
cos 2q , B=
sin 2q
4E
2
4E
2
2
2
になっている。最大に混合((5.14)参照)が起こるのは
sin 2q M = 1 Þ q M = 45
(6.59)
(6.60)
であり
Dm 2
V ch
cos 2q =
4E
2
を得る。この特別な条件を
 共鳴現象(resonance phenomena)
と呼ぶ。この条件は
A=0Þ
(6.61)
V ch = 2GF < e†e >
(6.62)
を用いると、(6.61)は
Dm 2 cos 2q
< e e >=
º< e† e > crit )
(
2 2 EGF
†
(6.63)
になる。この条件を満たしている場合には、
 最初のニュートリノ質量がいくつであっても、最大の混合になる
diag
ことが特徴である。また、ハミルトニアンは H matter
= -s 3 A2 + B 2 なので
diag
H matter
= - Bs 3 = -
Dm 2 sin 2q 3
s
4E
で与えられる。
結果として、振動は
【安江正樹@東海大学理学部物理学科】
(6.64)
12/14 平成 26 年 9 月 6 日午後 2 時 17 分
H diag = -
第六章
ニュートリノ振動:MSW
Dm 2 3
s
4E
(6.65)
のときに
Pn e ®n m (t ) = sin 2 2q sin 2
Dm 2 L
4E
(6.66)
になることから、
diag
H matter
=-
Dm 2 sin 2q 3
s
4E
(6.67)
のときには
Pn e ®n m (t ) = sin 2 2q M sin 2
(Dm 2 sin 2q ) L
Dm2 L sin 2q
= sin 2
4E
4E
(6.68)
が導かれる。この結果、

Pn e ®n m (t ) = 1 ⇒ n e からn m への完全転化
が起こりえる。これは、
Dm 2 L sin 2q (2n + 1)p
; n = 0,1,2,
=
4E
2
の時に起こることがわかる。以上から
qM
混
合
最
大

45
Pn e ®n m ( t ) = 1
e†e ( º ne )
2 3
c cos 2q
Dm21
2 2 EG F
(6.69)
2 3
Dm21
c L sin 2q ( 2n + 1) p
=
4 E
2
( n = 0,1,2,)
になる。従って、
En e - En m = V ch = 2GF N e =
Dm 2 cos 2q Dm 2

2E
2E
(6.70)
より、大雑把に
Dm2  2GF EN e
(6.71)
として実験からニュートリノの質量の2乗差がわかる。
2
Dm21
の理論的予言を、エラー! 参照元が見つかりません。より求めてみる。単位を揃えて、

Dm 2c2  2 2cGF Ene
使用する数値として

ne の基準値として、エラー! 参照元が見つかりません。

E の基準値として 10 MeV
【安江正樹@東海大学理学部物理学科】
13/14 平成 26 年 9 月 6 日午後 2 時 17 分
第六章
ニュートリノ振動:MSW
を選び

c = 197 MeV × fm (1fm = 10-13 cm )

GF として、
GF
( c )
2
= 1.16637 ´ 10-5 GeV -2 (1GeV = 109 eV )
を用いて計算すれば
ö
ne
æ E öæ
2 4
Dm21
c  2 2cGF Ene = 1.51 ´ 10-4 ç
eV2
֍
3÷
è 10 MeV ø è 100 ´ N A / cm ø
(6.72)
程度になる。2013 年の実験データより、 (n e ,n m ) ではなく、 (n e ,n m ,n t ) での解析結果は
より、
2 4
Dm21
c = 7.5 ´ 10-5 eV2
(6.73)
と得られている。 (n e ,n m ) で簡単化した予言と、良い一致をしている事が分かる。
【安江正樹@東海大学理学部物理学科】
14/14 平成 26 年 9 月 6 日午後 2 時 17 分
第六章
ニュートリノ振動:MSW
第六章問題
1)標準模型のラグランジアンから(6.8)を導け。
2)A)(6.18)を導け。
B)(6.22)を次の結果を用いて導け。
(1)両辺に (1 - g 5 ) , (1 - g 5 ) を乗じて ( a , b )と( r , s )の Tr をとる
br
sa
(2)両辺に (1 + g 5 ) , (1 + g 5 ) を乗じて ( a , b )と( r , s )の Tr をとる
br
sa
(3)両辺に ( g m (1 + g 5 ) ) , ( g m (1 + g 5 ) ) を乗じて ( a , b )と( r , s )の Tr をとる
br
sa
(4)両辺に (s mn (1 + g 5 ) ) , (s mn (1 + g 5 ) ) を乗じて ( a , b )と( r , s )の Tr をとる
br
sa
3)A)(6.31)を「作用不変の原理」から導け。
B)(6.32)を導け。
4)(6.33)を説明せよ。ここで、
æu ö
y =ç ÷
èvø
として、(6.32)を代表して
(yg (V - Ag )y ) (g
m
5
m
jL )
を
æI 0 ö
æ 0 s ö 5 æ0 I ö
, g =ç
g0 =ç
÷
÷, g = ç I 0÷
0
I
s
0
è
ø
è
ø
è
ø
の表示を用いて書き換えたときに非相対論近似では u のみから成る項が主な寄与になるこ
とから議論するとよい。
5)(6.39)の表にあるn s に対する En s = E の関係式を導け。
6)(6.46)を導け。
7)(6.52)を導け。
8)(6.56)と(6.57)を導け。
9)(6.60)に対比して、ほとんど混合が起こらない場合を議論せよ。
【安江正樹@東海大学理学部物理学科】