目 1 次 平成19年度の業務報告 ベージ (1)第9回全国和牛能力共進会(和牛博覧会inとっとり)での活動 山崎 浩一 岩尾 健 ・・・ 1 (2)子牛の移行抗体量を調べました!! ・・・ 2 (3)和牛公共牧場における小型ピロプラズマ病の感染実態調査 山本 譲 ・・・ 3 (4)和子牛の異常産例 小西 博敏 ・・・ 4 (5)馬インフルエンザ発生に伴う防疫対応 池本千恵美 ・・・ 5 (6)県外導入種豚で確認された豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)浸潤農場での対策 (7)豚コレラ?!→ 長谷川理恵 ・・・ 6 梁川 直宏 ・・・ 7 千代 隆之 ・・・ 8 尾崎 裕昭 ・・・10 豚の 牛ウイルス性下痢ウイルス 感染 (8)高病原性鳥インフルエンザ発生に備えた対応 (9)事例から学ぶブロイラーにおける伝染性気管支炎対策 2 事務分担表(H19.5.1現在) ・・・11 3 主な出来事 ・・・12 4 参考資料 (1)管内の市町村別家畜飼養状況(H18・H19) ・・・13 (2)最近の管内及び鳥取県の家畜飼養状況(H14∼H19) ・・・14 -1- 1 平成19年度の業務報告 (1)第9回全国和牛能力共進会(和牛博覧会inとっとり)での活動 西部家畜保健衛生所 1 山崎浩一 千代隆之 加川清三郎 齋尾秀隆ほか はじめに 平成19年10月11日∼14日、米子市、大山町等を主会場に、第9回全国和牛能力共 進会鳥取県大会が開催されました。 本大会の出品牛の健康管理と会場の衛生管理に万全を期すために、「第9回全国和牛能力共 進会家畜衛生対策要領」を定め、家畜衛生部の中に統括班、衛生班、診療班を組織しました。 統括班は出品道府県、実施本部等との連絡調整や総合管理、衛生班は共進会会場内・車輌等 の消毒、診療班は牛搬入時の臨床検査、24時間態勢の牛の管理等に当たりました。 これらの業務の遂行のために、県内3家畜保健衛生所、西部農林局、日野農林局、鳥取県 獣医師会、農業共済連、畜産振興協会の延べ194名の職員を配置しました。 2 出品牛等の衛生対策 出品牛492頭及びその随伴牛6頭、並びにその他展示牛等24頭は、所属する道府県を 出発する72時間以内に家畜防疫員が健康であることを確認したもののみ搬入を認め、また 事前に結核病、ブルセラ病及びヨーネ病の検査を実施するとともに、当該疾病が基準日(平 成19年10月9日)から過去3年間農場に発生がないことを条件としました。 予防接種は、炭疽、牛5種混合生ワクチン、イバラキ病、牛流行熱及び牛異常産3種混合 不活化ワクチンの接種を義務づけました。 3 消毒 会場内の消毒は、ポジティブリスト制度に則り、近隣に 消毒薬が飛散しないよう注意を払うとともに(写真 )、蹄 を除く牛体にも消毒薬が飛散・付着しないよう配慮しまし た。輸送用車輌も消毒槽を通過するのみとしたため、出品 牛の受け入れもスムーズに行うことができました。 会期中の消毒は、牛舎等の出入口に踏込み消毒槽の設置、 審査会場への通路や審査会場入口に消毒マットを設置しま した。 4 出品牛等の健康管理 会場内に家畜診療所を開設し、診療班が出品牛等の診療、衛生相談、昼夜にわたる巡回、 医薬品の払い出し等を行いました。 会期中に数頭の手綱の放れた牛も見られましたが、迅速な対応により事故の発生はありま せんでした。また、輸送ストレス等による食欲不振や蹄の損傷、子牛の気管支炎等が散発し ましたが、出品牛は家畜衛生部の尽力もあり、健康な状態で審査に望むことができました。 5 おわりに 今大会では、全国38道府県から種牛の部313頭、肉牛の部179頭、合計492頭の 出品牛が県内の最終審査会場に集合しその優劣を競い合いました。 来場者も予想を大きく上回り、動員者やボランティアの方々に支えられて盛会に開催でき ました。出品牛の大きな事故もなく最終審査が滞りなく執り行えたのも、関係機関の方々の 御協力の賜物と考えております。ここに厚く感謝申し上げます -2- (2)子牛の移行抗体量を調べました!! 西部家畜保健衛生所 岩尾 健 1 はじめに 平成17年に150頭規模の哺育センターが管内に設立され、30戸を越える酪農家から 年間約300頭のヌレ子(ホルスタイン種または交雑種)が導入されています。 初乳の給与によって獲得する移行抗体量が、子牛によって、あるいは酪農家によってどれ くらい差があるのか、また移行抗体量が少ない子牛がその後どうなるのかを把握するために、 哺育センターに導入されたヌレ子の移行抗体量を全頭測定しました。680頭のデータから 傾向を探ってみました。 2 結果 (1)酪農家による差 移 行 抗 体 量 の 平 均 は 1.75g/dl( 最 大 4.8、最小 0)でした。右図に示すよう に酪農家による差は明確でなく、抗体 量が多い子牛と少ない子牛が大きな幅 で混在していました。 (2)母牛の年齢による差 母牛の年齢が2歳未満(すなわち初 産牛)の子牛の移行抗体量の平均は 1.72g/dl であり、3∼4歳の母牛から生 まれた子牛の平均 2.28g/dl に比べて明ら かに少なかった。 (3)病気との関連 哺育センターでは、平成18∼19 年度に9頭が肺炎(右写真)で死亡し ています。この内8頭は移行抗体量が 平均より下回った子牛であり、更に5 頭は 1.0g/dl 以下の極端に低い子牛でし た。 3 まとめ 初乳給与の基本は 、 早く 質の良 い初乳を 十分に ですが、非常に意 識の高い酪農家であっても完璧ではなく、現場で常に高いレベルを保っていくのは非常に難 しいと痛感しました。粉末初乳の強制投与(早い、簡便、確実。哺乳欲が出てからが無難) は対策の一例として挙げられますので、ご検討ください。 -3- (3)和牛公共牧場における小型ピロプラズマ病の感染実態調査 西部家畜保健衛生所 1 ○山本譲 岩尾健 はじめに 最も注意すべき放牧病の一つである小型ピロプラズマ病は、フルメトリン製剤等(商品名 :バイチコール等)の殺ダニ剤の普及とその効果によって近年ではこの病気にかかる牛は減 ってきています。 しかし、平成18年に管内の公共牧場であります N 牧場におきまして、小型ピロプラズマ 病に感染した牛が多く確認されました。平成19年度は N 牧場に初めて放牧する牛(小型ピ ロプラズマ原虫に感染していない牛)を中心に、放牧後の小型ピロプラズマ原虫の感染時期、 経路、そして牛への影響を調べました。 2.結果と考察 小型ピロプラズマ原虫の感染は9月から10 月に集中し、初めて放牧した牛は10頭中10 頭と100%の感染率でした。 8月にダニの牛体寄生が全頭で認められてお ピロプラズマ原虫 り、感染はダニによって媒介されたと思われま したが、ダニの寄生が確認されてから感染の成 立までに長い期間を要していることから、ダニ 以外のアブ、サシバエといった吸血昆虫も関与 していると思われました。 今回、毎月の健康検査時の血液検査で貧血傾向を示す牛もいましたが、体重が減ったり、 元気がなくなった牛はいなかったことから、黒毛和種は小型ピロプラズマ病に対して抵抗性 があることが分かりました。 しかし、分娩時のストレスで小型ピロプラズマ原虫に感染した母牛は体調を崩し、生まれ てきた子牛も栄養不良であるものも認められましたので、これからの注意観察が必要だと考 えられました。 3.今後の対応 (1)N 牧場の感染牛を他の公共牧場に放牧しないことによって感染の拡大を防止すると共 に、感染牛には駆虫薬を投与し、感染源を根絶することが必要だと考えられます。 (2)今回のダニの寄生は雨が降っているときに殺ダニ剤を投与したため効果が薄れたもの と思われましたので、雨天時にはなるべく投与しないようにし、投与を翌日に延期する等の 対処が必要だと思われます。 (3)今後も新たに放牧した牛の分娩が続きますので、母子の健康状態のチェックをしてい く必要がありますし、小型ピロプラズマに対する治療も必要です。 (4)近年、和牛放牧が盛んに推進されていますが、小型ピロプラズマの対策として、公共 牧場のみではなく、放牧する牛に対して適切な殺ダニ剤の使用が重要だと考えられました。 -4- (4)和子牛の異常産例 西部家畜保健衛生所 1 小西博敏 はじめに 家保では様々な病性鑑定を行っています。本年度、脳に形態異常を認めた異常産の症例に 遭遇しました。今回、和子牛の症例のいくつかを紹介します。 2 症例 (1) 新しいウイルスによる異常産 県外より初任導入された牛での異常産例です。母牛に異常産ワクチンは接種済みでしたが、 死産で、図1のように体型異常がみられました。検査の結果、ピートンウイルスという聞き 慣れない病気が原因と考えられました。ピートンウイルスは、近年、沖縄県・南九州での異 常産との関連が疑われています。ワクチン等の対応策は現在のところまだありません。本症 例については、県外での感染の可能性高いものと思われました。 (2) 栄養状態が関連した異常産 分娩してすぐに行動異常がみられた症例で、 生後、起立せず異常行動を示しました 。、母牛 は異常産3種混合ワクチンは未接種でした。体 格は大きいのですが、起立不能で、頭部を旋回 するような動作、また前肢がもがくような遊泳 動作がみられました。解剖では、小脳が後方に 正常対照 やや伸びた状態が確認(図2)され、ウイルス 検査により、アカバネ病などは否定されました。 本症例は小脳の形状より大孔ヘルニアと診断さ 図2 小脳 断面 れ、その発生原因としては、ビタミンA欠乏症との関連が考えられました。 3 まとめ 家保での病性鑑定は、今回紹介したように、ピートンウイルスなど新疾病の解明の糸口と なるケースや、その結果を農場に対して飼養管理に関する情報としてフィードバックできる ケースなど、単なる伝染性疾病の鑑定のみにとどまらない、いくつかのメリットもあります。 そのため、今後も積極的に病性鑑定を実施し、また的確な情報を生産者に提供していきたい と思います。 -5- (5)馬インフルエンザ発生に伴う防疫対応 西部家畜保健衛生所○池本千恵美 1 千代隆之 はじめに 平成 19 年夏、大規模競走馬関連施設で馬インフルエンザが国内で 36 年ぶりに発生しまし た。同年秋の国体馬術競技では、本疾病まん延防止のための防疫対応のもと全国から馬が集 合しましたが、感染は拡大しました。 一方、管内には発生地とも移出入のある競走馬育成施設や国体出場施設等が密集していま す。秋季国体出場に際しては、帰鳥後の検査で感染が確認されましたが、その後の厳重な防 疫対応により管内でのまん延は無く、無事終息できました。 2 対応 (1)36年ぶりの国内発生(競走馬関連施設中心) 国内での発生に伴い、管内の馬飼養施設に対する緊急調査(馬の健康状態、移出入状況、 ワクチン摂取状況等)及び情報提供・注意喚起を実施しました(右表 )。A競走馬育成施設で は発生地との馬の移出入が頻繁でした。ワクチンは1施設で未接種でした。警戒を要すると判 断し、馬の移動予定と異変時の連絡体制を強化しました。これらの対応により管内への疾病 進入を防止できました。 (2)管内で初めての発生(国体出場馬が感染) 管内から 3 頭(2 施設)、国の方針に基づく厳重な防疫対応のもと、秋季国体に出場しまし た。しかし、帰鳥後の検査で 2 頭(2 施設)の感染が確認されたため、B・C 両施設内全飼養 馬について 2 週間の移動自粛を畜主に依頼し、防疫対応を強化しました。2 週間後に清浄確 認検査を実施したところ、国体出場馬を含む同馬舎飼養馬の検査結果は全て陰性でした。こ れらの対応により本疾病の管内でのまん延を防ぐことができました。 3 まとめ (1)国内の大規模競走馬関連施設で発生し、管内には発生地と頻繁に移出入のある施設が存 在するため、発生が危惧されましたが、初動防疫で本疾病の進入を防止できました。 (2)秋季国体では全国から馬が集合し、管内からの出場馬2頭も帰鳥後に感染しました。し かし、防疫対応の徹底、検査体制の強化により、まん延を封じ、無事終息できました。 4 考察 今回、全国的な馬インフルエンザの発生により、管内の馬も感染を避けることが出来ませ んでした。しかし、ワクチン接種がほぼ徹底されていたこともあり、症状は呈さず、また、 隔離等の防疫対応も徹底できたことにより、まん延も防ぐことが出来ました。 今後とも、早めの徹底した防疫対応で、万が一の被害を最小限に抑えていく必要があるこ とを周知していきたいと思います。 -6- (6)県外導入種豚で確認された豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS) 浸潤農場での対策 西部家畜保健衛生所 1 ○長谷川理恵 千代隆之 はじめに 県外から導入された種豚が原因と見られる豚繁殖・呼吸障害症候群(以下 PRRS)の浸潤 があった養豚場に対する、家保の衛生対策事例を紹介します。 2 農場の概要 該当農場は、母豚規模 900 頭の養豚場であり、県外導入豚の血清を用いて PRRS の抗体検 査を実施し、平成 18 年度の検査において全て陰性でした。 平成 19 年 7 月の県外導入豚において、15 頭中 7 頭が陽性、また同舎内で飼育していた未 経産豚においても陽性率が 43.6%でした。抗体検査と併せて PCR 検査(ウイルス遺伝子検査) により、血清から PRRS ウイルスに特異的遺伝子の検出を試みた結果、抗体検査で陰性であ った検体も含めて 12 頭中 5 頭が陽性でした。 平成 18 年における繁殖成績及び育成率の比較で影響は認められず、また臨床症状がないこ とから PRRS ウイルスは弱毒株と考えられました。 3 衛生対策 4 まとめ 〔防疫ルール〕 【農場への衛生対策】 ①農場に則したオールイン・オールア • 「ピッグフロー」の厳守 離乳からと畜場出荷までの豚が、農場内のどの ウトを前提とした衛生マニュアルの作成。 豚舎でどのように飼育されていくかにおける流れ (右図) に沿った飼育管理 ②農場の定期的な感染状況調査と調査 • 各豚舎の管理 結果を基にした清浄化のための検討会の 担当者による管理、管理の順番、衣服・長靴の 実施。 交換、死亡豚の搬出などの管理の徹底 ③隔離豚舎の新設。 • 農場防疫(伝搬経路) 導入豚、トラック、ワクチン接種時の注射針、運 【導入元について】 搬用品、 ハエ・蚊・ネズミ対策の徹底 導入元の農場が独自に検査した結果、 同様に抗体検査および PCR 検査で陽性で あることが判明し、導入元の変更の可否について検討したが変更することはできないとのこ とでした。そのため、導入豚の馴致期間を 3 ヶ月へ延長し、その後繁殖に供することとしま した。 種豚供給農場は、定期的な衛生検査の実施により販売先へ安全な種豚供給をすることが重 要であり、また、農場は積極的に導入元の衛生情報の提供を求め、導入後の確実な隔離飼育 の実施と、農場内に病気を侵入させないという一人一人の衛生に対する意識が必要となりま す。また、農場の抗体検査などの定期検査の実施は、家保が迅速な病性鑑定および衛生指導 を行ううえで必要不可欠となります。 -7- (7)豚コレラ?!→ 豚の 牛ウイルス性下痢ウイルス 西部家畜保健衛生所 1 感染 ○梁川直宏 千代隆之 はじめに 管内養豚場の豚コレラ抗体検査において、A 農場の豚から抗体陽性が確認され、病性鑑定 における確認検査において牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)の交差反応であることが判 明しました。牛に下痢や流産を起こす疾病の原因ウイルスが豚に感染したもので、豚には無 症状であるが、抗体を産生し、豚コレラウイルスと近縁のため、豚コレラの抗体検査で陽性 となるものです。近年、他県でも同様の事例報告があり、豚コレラの監視を行う上で、早期 発見の障害となるため、清浄化に向けて、原因究明に取り組みました。 2 事例の概要 ○臨床症状 体温や白血球数は正常の範囲で、臨床的に異常を示す豚は認められませんでした。 ○抗体保有状況 肉豚、繁殖候補豚(導入・隔離解除後)、繁殖豚で抗体保有個体が認められました。 肉豚の抗体保有状況から母豚からの初乳による移行抗体の可能性は低いと考えられ、ウイ ルス感染し抗体を保有したものと考えられました。 繁殖候補豚は、県外から導入時の隔離検疫検査で抗体陰性を確認していたので、隔離解除 後に感染し、抗体を保有したものと考えられました。 ○ウイルス保有状況 検査に供した、抗体保有豚、抗体陰性豚の検体(血清)からウイルスは検出されませんで した。このことから、個体間同士の大規模な感染の拡大はないものと考えられました。 ○ウイルス進入ルート 人的(従業者、来客)、物的(薬、餌)、周辺の牛農家、野鳥、猫、鼠など考えられるが、 結論は出ず不明でした。 ○感染拡大の原因 妊娠時の繁殖母豚が原発で、ウイルスを保有していたと仮定した場合、肉豚の抗体保有は、 胎盤感染が疑え、繁殖候補豚の抗体保有は、導入後の隔離解除前に母豚群からの胎盤などを 与え、農場内の基礎疾病に対する免疫付与を行うことから、このことが感染拡大の原因と疑 えました。 3 まとめ 本事例は、豚コレラの監視上重要であるが、感染拡大の原因が BVDV 感染胎盤と判明した としても、豚の BVDV 感染は、無症状であり、農場側としては、農場内基礎疾病の免疫付与 効果の方が、優先される事項となります。しかし、BVDV が進入するということは、他の危 険な病原体も進入する危険性があります。病原体の進入原因や感染拡大の原因を究明し、農 場の防疫上の弱点を洗い出すことにより、防疫マニュアルを見直すことはもちろん、作業遵 守に努めることが極めて重要であると再認識し、引き続き農場との連携をとり、清浄化を図 るものとしました。 -8- (8)高病原性鳥インフルエンザ発生に備えた対応 西部家畜保健衛生所 1 ○千代隆之 尾崎裕昭 取り組みの方向・目的(H19) 昨年まで現地1本部体制だった組織体制の変更を主目的として、平成 19 年 3 月に「鳥取県 高病原性鳥インフルエンザ初動対応総合マニュアル」が改正され、現地家畜防疫班(家保) と現地健康生活班(総合事務所)に分離して役割がより明確になりました。また市町村現地 対策本部も同時に設置される等、万一の発生時の危機管理体制の構築に向けて、部署、部局 横断的に連携の強化を図る必要があります。 2 具体的な取り組み手順(H19) (1)西部管内農家研修会(6/25) ①冬場になって慌てることなく、夏場からの衛生対策、衛生意識の向上を図る ②焼埋却地の選定、移動制限、出荷、消毒、風評対応、経営再開等の不安に対して、情報や 資料を提供することで払拭することを目的として開催。 (2)鳥取・岡山県境防疫協議会(7/12) ①県境 10km 内の養鶏農家の情報交換 ②非常時の連絡ルート交換等を目的として、両県3家保同士により開催。 (3)県境防疫検討会(8/31) ①県境 10km 内の養鶏農家の情報交換 ②発生家保の防疫対応についての情報提供等を目的として、島根(松江、出雲家保)、岡山(高 梁家保)、広島(備北家保)、日南町役場を参集して、当家保主催の県境防疫検討会を実施。 (4)高病原性鳥インフルエンザの西部管内版の図上訓練(11/29) 各部署ごとで、事例検討方式による各シミュレーションの対応<情報伝達体制・流通状況 調査・検診体制・消毒ポイント>の確認を西部各市町村の畜産担当、福祉保健担当、総務担 当等の実務担当者、西部・日野総合事務所の各部局実務担当者、家保職員を対象として開催。 (5)西部総合事務所幹部職員勉強会(1/7) ①高病原性鳥インフルエンザ対応への支援(法的根拠の整理・勉強会の実施等) ②殺処分鶏の焼却方法、埋却地の具体的な選定の協議 ③初動対応時の連絡体制の徹底強化等を今後の課題として確認。 (6)西部総合事務所勉強会(1/22) 上記(5)を受けて、一般職員を対象とした勉強会に参加。 高病原性鳥インフルエンザの基礎知識、対策の概要、課題等についての共通認識を持ちまし た。 -9- (7)日野総合事務所研修会(2/6) 高病原性鳥インフルエンザ発生時における危機管理体制の構築のためのより一層の連携強 化を目的として、基礎知識、対策の概要、総合マニュアルの理解、問題点等を確認。 3 まとめ もし万一の発生ということになれば、即座の初動対応が、勝負の分かれ目となります。そ の際に、防疫業務は家保を中心に粛々と行われます。また、そのためには実状に沿ったマニ ュアルの整備も重要になり、現場からさらに声をあげていくことが必要です。何よりもサポ ート体制の確立として、他班との連携強化が重要となります。幸いに本年度は、鳥インフル エンザの国内発生はありませんが、訓練に次ぐ訓練を実施することで、不安が安心に変わり ます。今後も図上訓練を重ね連携を強化することで、初動対応に向けての準備を充実させ、 確実にしていきたいと考えます。 - 10 - (9)事例から学ぶブロイラーにおける伝染性気管支炎対策 西部家畜保健衛生所 ○尾崎裕昭 倉吉家畜保健衛生所病性鑑定室 植松亜紀子 小谷道子、岡田綾子 伝染性気管支炎(以下IB)は鶏の呼吸器(ゴロゴロ、呼吸器症状)、生殖器(産卵低下、卵 殻卵質低下)、泌尿器(腎炎、下痢)に影響するウイルスによる病気で、合併症として大腸菌 症を引き起こすこともあります。特に腎炎型IBは肉用鶏で発生し、高い死亡率となります。 ワクチンによる予防が応用される一方で、IBウイルスは非常に変異が早く、型が多いため対 策は非常に困難となっています。そこで、ブロイラーにおける近年の一団地内3農場での発生 事例をまとめ、対策のポイントを検討しました。 各農場のワクチンプログラムは、A農場は 発生事例のまとめ 初生IB生ワクチンの散霧接種のみ、B農場は A農場 B農場 C農場 初生と17日齢の2回目、C農場は加えて28日 飼育形態 開放 開放 密閉 齢に3回目の接種を実施していました。発生 約4万 約4 万 約11万 飼育羽数 43 39 43 発症日齢 概要は右に示したとおりです。農場毎の減 IBワクチン 1回 2回 3回 耗率も異なり、同じ農場内でも鶏舎毎の減 3.0-4.0% 2.9-10.6% 減耗率(鶏舎) 3.8-15.1% 耗率は差がありました。解剖では、腎臓の 8.3% 3.5% 4.2% 減耗率(全体) 約14日 約14日 約12日 発生期間 腫大(腎炎)は共通して見られ、細菌検査 現地解剖所見 腎炎(9/10羽) 腎炎(15/15 腎炎(10/10羽) では大腸菌が頻繁に分離されました。遺伝 羽) 羽 大腸菌症 3/4 未実施 2/3羽 子検査で、国内のIB分離株を5つタイプに分 IBV遺伝子型 JP-I JP-III JP-I 類する方法が報告され、その検査法による とB農場は異なるタイプでした。また、それぞれの農場で発生終息までには約2週間程度要し ました。 <IB対策のポイント> 同時期に一団 地内で流行した腎炎は、全てが同じタイ 事例から学んだこと プのIBウイルスによるものでは無かった 同一と考えられたIBVは型が異なり侵入経路は別 ことは、侵入経路が異なることを示して 農場は野外のIBVに持続的に感染 腎炎型IBでも大腸菌の混合感染あり います。抗体検査の結果からは発生時に 予防 既に抗体を保有しており、野外では様々 衛生対策、飼育管理の徹底 な株に感染し、または、ワクチン免疫で 広範囲のウイルスをカバーできるワクチン 発生してしまったら も完全には防御できない事例もあること 速やかに、病性鑑定を依頼(届出伝染病) から、強毒な株の農場への侵入防止に最 他の鶏舎に侵入しない様に衛生対策強化 善をつくすことが必要です。減耗率は農 細菌の二次感染が強いようなら薬剤による治療 場や鶏舎間でも差があり、ウイルスの病 原性、管理面の差が影響すると考えられました。IBには不明な点が多数ありますが、予防対 策としては、衛生対策と飼育管理の徹底が第一 であり、ワクチンでは広範囲の株をカバーす るもので対処することが重要です。発生してしまった場合でも、病性鑑定依頼すると同時に、 作業手順の変更(発生鶏舎は後回し)、衛生管理の徹底(専用長靴、消毒槽設置の徹底、異常 鶏早期淘汰など)を行うことで被害が最低限に抑えられます。 IB対策のポイント - 11 -
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