第14章 道路防災

道 路 防 災
第 14 章
14-1
第 14 章
第1節
総
道路防災工 目次
則.................................................................................14- 3
1. 適用の範囲...............................................................................14- 3
2. 定
義...................................................................................14- 3
第2節
工法の検討.............................................................................14- 4
第3節
落石防護柵.............................................................................14- 6
1. 設置基準.................................................................................14- 6
2. 設計一般.................................................................................14- 8
2.1
設計フローチャート.................................................................14- 8
2.2
設計計算...........................................................................14- 8
3.標準設計.................................................................................14- 9
3.1
適用範囲...........................................................................14- 9
3.2
適用条件...........................................................................14-10
第4節
覆式落石防護網.......................................................................14-12
1.設置基準...............................................................................14-12
2.設計フローチャート.....................................................................14-13
3.設計...................................................................................14-13
3.1
型式の選定.......................................................................14-13
3.2
ロープにかかる重量...............................................................14-14
3.3
材料強度.........................................................................14-15
4.構造細目...............................................................................14-17
第5節
ポケット式落石防護網.................................................................14-18
1. 設置基準...............................................................................14-18
2. 型式の選定.............................................................................14-19
3. 設計...................................................................................14-19
3.1
設計フローチャート...............................................................14-19
3.2
設計計算.........................................................................14-20
3.3
材料強度.........................................................................14-20
4.積雪地仕様.............................................................................14-21
4.1
第6節
設置場所.........................................................................14-21
その他の工法.........................................................................14-23
1.ロープネット...........................................................................14-23
2.ワイヤーロープ掛工.....................................................................14-23
3.根固め工...............................................................................14-24
4.接着工.................................................................................14-25
5.のり枠工...............................................................................14-25
5.1
概要.............................................................................14-25
5.2
現場打コンクリートのり枠工.......................................................14-26
14-2
【H16.9.30 一部修正】
第1節
総
則
1.適用の範囲
この要領は、岐阜県県土整備部が実施する、落石に対する防災事業の設計に適用する。定めの
ない事項については、下記の指針等による。
示方書・指針等
発行年月
道路土工(擁壁工指針)
発
行
者
H11. 3
日本道路協会
〃
(カルバート工指針)
H11. 3
〃
〃
(仮設構造物工指針)
H11. 3
〃
〃
(法面工・斜面安定工指針)
H11. 3
〃
〃
(土質調査指針)
S63.2
〃
〃
(施工指針)
S63.2
〃
落石対策便覧
H12.6
〃
道路震災対策便覧(震前対策編)
H14.4
〃
〃
(震災復旧編)
H14.4
〃
〃
(震後対策編)
H 8.10
〃
道路構造令の解説と運用
H16.2
〃
建設防災ハンドブック
S58. 7
建設産業調査会
砂防施設設計要領(案)
H16.3
中部地方整備局監修
砂防設計公式集(マニアル)
S61. 5
全国治水砂防協会
治山技術基準解説
H11. 7
日本治山治水協会
コンクリート標準示方書
H17 年度
土木学会
H18.4
岐阜県建設技術センター
H17.11
日本河川協会
H14.4
国土交通省道路局
岐阜県建設工事共通仕様書
国土交通省河川砂防技術基準同解説
震災点検要領(案)
2.定
義
備考
(中部地整 H12-P15-2)
わが国は、国土の大半を山地が占めるという地形的な特質、季節的な豪雨、豪雪等の気候条件、
あるいは地震や火山の多い環太平洋地帯に位置する等、自然災害の発生しやすい国であるといえ
る。道路防災工は、これらの自然災害のうち、落石によって道路がもつ機能を損なうことを最低
限に抑えることを目的としている。
対策工を検討する上では、現況の地域特性や地形的な判断、災害の連動性を考慮に入れ、災害
に対する目的を明確にすることが必要である。
工法選定については、想定される災害の頻度、量、速度をふまえ、より効果的なものを考える
必要がある。
14-3
第2節
工法の検討
1.法面保護工
(のり面工・斜面安定工指針 H11-P207)
法面保護工については、地質・土質条件、湧水・集水の状況、気象条件等を事前に調査し適正
な工法を検討する。(3−24
2.落石防護工
のり面保護工参照)
(落石対策便覧 H12-P129)
落石防護工については、落石の大きさ,高さ, 法面勾配,法長,土質等を十分調査し、適正な工
法を検討する。
3.発生源対策工
(落石対策便覧 H12-P97)
発生源対策(予防工等)を考慮し、単独工種のみでなく、組み合わせによる工種についても、
十分に検討を行う。
4.設計フローチャート
(中部地整 H12-P15-3)
設計フローチャートについては、図 14.1 に示すとおりである。
5.積雪に対する対応
(道路防雪便覧 H2-P97、落石対策便覧 H12-P129)
積雪に対する対応は、地域を特定することが難しいことから、過去の実績を基に担当事務所と
協議を行い決定する。
14-4
START
斜面の調査
発生源対策
は可能か
YES
NO
N0
落石以外に崩土も
作用するか
YES
YES(2m 以上)
落石の跳躍量は
大であるか
NO(2m 以下)
(100kJ 程度以上)
エネルギーは
大であるか
50∼100kJ 程度以上
50kJ 程度以下
斜面角度が
急であるか
NO
YES
(60゜程度以上)
(60゜程度以下)
護
工
設計のフローチャート
(中部地整 H12-P15-3)
14-5
法面保護工
図 14.1
落石覆工
落石防止網工
落石防止柵工
防
予防工
第3節 落石防護柵
(落石対策便覧 H12-P146)
1.設置基準
(1)
落石防護柵の高さは、落石の跳躍高さの標準を h=2m(法面直角方向、「落石対策便覧」5-4-2
参照)と考え、柵高 2.0m(7 本掛)を標準とする。ただし、落石の跳躍高さは地形等によるとこ
ろが大きいことから、柵高は落石が落石防護柵を飛び越えないように十分検討するとともに、
1.0∼2.0m 程度の土砂溜を設けることとする。
(県仕様)
(2)
落石防護柵は、「落石対策便覧」(H12.06)5-4 落石防護柵により設計することを基本とし、
落石防護柵基礎の安定については、「落石対策便覧」5-4-7 基礎の設計によるものとする。
(3) 落石防護柵基礎の安定検討においては、設計計算上で中間支柱を H-200×100×5.5×8 の他に
H-175×90×5×8、H-150×75×5×7 および H-125×60×6×8 を使用した場合を仮定(実際に使
用する中間支柱は H-200×100×5.5×8)して、それぞれの可能吸収エネルギーに対応した基礎
形状を採用するものとする。(県仕様)この場合の設計には、落石防護柵の支柱、ロープおよび
ネットの荷重を考慮しないものとする。また、連続基礎の有効抵抗長は、「落石対策便覧」5-43 表 5-8 より、L=9mとする。
(4)
落石エネルギーが落石防護柵の可能吸収エネルギーを超える場合には、発生源対策としての
落石予防工等も含め、別途検討するものとする。
(5) 落石防護柵の基礎形式は連続基礎と単独基礎の2タイプとする。(県仕様)
ただし、単独基礎については、基礎の前面がほぼ水平の堅固な地盤で受動土圧が期待できる場
合は単独基礎(A)(表 14.1 参照)とし、ブロック積天端に設置する場合は単独基礎(B)(表
14.1 参照)とする。採用する場合の適用範囲は、3.1 適用範囲に示す可能吸収エネルギーを超え
ない範囲とする。
(6)
ブロック積み天端に連続基礎タイプの落石防護柵を設置する場合の基礎形状は、基礎の前面
勾配をブロック積みの前面勾配に合わせるものとし、ブロック積み擁壁の高さは、落石防護柵の
基礎を含む高さとする。この場合、基礎の高さは原則として ha=1.0mとする。(県仕様)
(7)
標準設計の採用にあたっては、図 14.4 基礎タイプ選定フローチャートに基づき、表 14.2 基
礎タイプ選定表より選定する。ただし、該当する基礎タイプがない場合には、設計条件に基づき
別途検討するものとする。(県仕様)
(8)
積雪地域については、M16U ボルト付き中間支柱を使用し、最上段ロープと金網とを結合コイ
ル(φ3.2×50×300)を 1 個/m用いて補強することを基本とする。ただし、積雪量が多く上弦
材が必要と思われる箇所は、担当事務所との協議により設置できるものとする。(県仕様)
(9)
落石防護柵の一連の長さは 9∼60m の範囲とし、基礎コンクリートの目地間隔は 9m を標準と
する。なお、60m を超える場合には、排土口を設けるものとする。排土口は、図 14.3 の排土口
(端末支柱式)を標準とする。(中部地整 H12-P15-24)
(10) その他の事項については、「落石対策便覧」5.4 によるものとする。
(11) 落石防護柵基礎の安定検討においては、背面土圧を含めた基礎の安定を確保するものとし、
原則として裏込め土のすべり線が法面後方の地山にまでおよばないように柵背面の平場 W1 を
確保するものとする。(図 14.3 参照)(県仕様)
14-6
図 14.2
ストンガード排土口(端末支柱式)
(中部地整 H12-P15-28)
250
350
平場:W1
A点(平場後方端)
すべり線(試行くさび法による)
※ 試行くさび法によるすべり線が、A点より後方に外れないように、平場を確保する。
図 14.3
防護柵背面の平場
(県仕様)
14-7
2.設計一般
2.1
(県仕様)
設計フローチャート
START
落石および斜面状況の調査
・落石の大きさ(直径):R(m)
・斜面勾配:θ(°)
・等価摩擦係数:μ
・落石落下高さ:H(m)
落石エネルギーの算定
E=(1+β) ・(1-μ/tanθ) ・W ・H
E :落石エネルギー(kJ)
β:回転エネルギー=0.1
W :落石重量(kN)
落石跳躍量2.0m(斜面直角方向)に対応する基
礎の必要高さの検討。(基本はha=1.0mとする)
(ha=1.0m ha= 1.5m ha=2.0m)
「落石防護柵標準設計 基礎タイプ選定表」
により、基礎タイプを選定する。
落石の大きさと重量
落石直径:R(m)
落石重量:W(kN)
0.20
0.10
0.30
0.36
0.40
0.87
0.50
1.70
0.60
2.94
0.70
4.66
0.80
6.97
落石の単位体積重量:γs=26kN/m3
図 14.4
2.2
区分
A
B
C
D
斜面の状況と等価摩擦係数:μ
落石および斜面の特性
硬岩、丸状
凹凸小、立木なし
軟岩、角状∼丸状
凹凸中∼大、立木なし
土砂、崖すい、丸状∼角状
凹凸小∼中、立木なし
崖すい、巨礫まじり崖すい、
角状凹凸大∼小、立木なし∼あ
り
基礎タイプ選定フローチャート
設計計算
(1)
落石エネルギーの算定
( 中部地整 H12-P15-22)
Ei=(l+β)・(l−μ/tanθ)・m・g・H
β:回転エネルギー=0.1
μ:落石の等価摩擦係数(表 14.2 参照)
H :落石の高さ
m:落石の質量
θ:斜面勾配
g:重力加速度
14-8
(単位:kJ)
μ
0.05
0.15
0.25
0.35
(2)
落石重量と直径の関係
( 落石対策便覧 H12.6 P261)
落石の形状、単位体積重量等はさまざまであるが、標準として形状は球体とし、算定式は、次記
のとおりとする。
4 ⎛R⎞
3 ⎝2⎠
3
W= π ⎜ ⎟ γs
R= 3
ここで
6W
πγs
W:落石重量(kN)
R:落石直径(m)
γs:落石の単位体積重量(kN/m3)
(3)
落石の可能防護範囲
落石が柵に持込むエネルギーの計算を行い、可能防護範囲にて、落石防止柵を決定する。
3.標準設計
3.1
(県仕様)
適用範囲
標準設計は、柵高h=2.0mの標準的な落石防護柵について、それぞれの落石エネルギーおよび落石跳躍量に対
応した基礎形状を選定できるようにしたものである。
下記の適用範囲外の設計条件については、別途検討するものとする。
適用範囲は下記のとおりとする。
(1)落石防護柵の柵高はh=2.0m、支柱間隔はa=3.0mとする。
(2)落石防護柵の一連の長さ(ロープ全長)は 9m∼60mの範囲とする。
(3)適用にあたっては、次頁の「3.設計条件」を満足するものとし、これ以外の場合は、別途検討するもの
とする。
(4)落石可能吸収エネルギーの適用範囲は、設計において仮定したそれぞれの柵自体の持つ可能吸収エネルギ
ー{34.65kJ(H-125×60×6×8)、38.32kJ(H-150×75×5×7)、46.27kJ(H-175×90×5×8)、53.42kJ(H-200
×100×5.5×8)}を超えない範囲とする。
(5)連続基礎の高さは ha=1.0mを基本とし、標準の落石跳躍量 h1=2.0m(斜面直角方向)に対して柵高が不
足する場合には、ha=1.5mあるいは 2.0mを選定するものとする。
ただし、ブロック積天端に設置する基礎は、原則として ha=1.0mとする。
(6)単独基礎については、基礎の前面がほぼ水平の堅固な地盤で受動土圧が期待できる
場合は単独基礎(A)とし、ブロック積天端に使用する場合は単独基礎(B)とする。
落石可能吸収エネルギーの適用範囲は、表 14.1 及び表 14.2 に示す可能吸収エネルギーを超えない範囲と
する。
14-9
3.2
適用条件
本標準設計作成における設計条件は下記のとおりである。
(1)落石防護柵
柵高:H=2.0m、
支柱間隔:a=3.0m
一連の長さ(ロープ全長):L=9m
(2)ワイヤーロープ
ロープ径:φ=3×7 G/O-14φ
弾性係数:Ew=100,000N/mm2
(3)中間支柱
中間支柱全体
弾性係数
降伏点応力度
H-200×100×5.5×8: 断面係数
断面二次モーメント
H-175×90×5×8
: 断面係数
断面二次モーメント
H-150×75×5×7
: 断面係数
断面二次モーメント
H-125×60×6×8
: 断面係数
断面二次モーメント
EH=200,000
σ=235
Z=138.0
I=666.0
Z=66.1
I=413.0
許容支持力度(常時):q=150kN/m2
(5) 裏込め土
単位体積重量:γ=19kN/m3
粘着力
:C=0kN/m2
(6)基礎接合部
防護柵の根入れ長:
許容圧縮応力度
d=0.850m
:σca=6.75N/mm2
許容せん断応力度: τa=0.50N/mm2
14-10
cm4
cm3
I=1210.0
擁壁底面の摩擦係数 :μ=0.60
:φ=30°
cm3
I=1810.0
(4)基礎地盤
内部摩擦角
N/mm2
Z=181.0
Z=88.8
N/mm2
cm4
cm3
cm4
cm3
cm4
落石防護柵 h=2.0m
W
ha
1:
N
コンクリート基礎工
250
基礎タイプ 柵高(m)
ha(m)
W(m)
A
1.0
0.5
B
1.0
0.7
C
1.0
0.9
D
1.0
1.1
2.0
E
1.5
0.5
F
1.5
0.6
G
1.5
0.8
H
2.0
0.5
I
2.0
0.6
単独(A)
1.1
0.7×0.7
2.0
単独(B)
1.1
0.7×0.7
※基礎タイプA∼Iは、連続基礎である。
基礎底面の摩擦係数:μ=0.60
許容支持力度:q=150kN/m2
裏込め土: γ=19kN/m3 φ=30°
C=0kN/m2
有効抵抗延長: L=9.0m
N
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.0
0.0
可能吸収エネルギー(kJ)
34.65
38.32
46.27
53.42
38.32
46.27
53.42
46.27
53.42
3.42
2.71
基礎タイプA : 中間支柱をH-125×60×6×8(E=34.65kJ)と仮定した場合
基礎タイプB、E : 中間支柱をH-150×75×5×7(E=38.32kJ)と仮定した場合
基礎タイプC、F、H : 中間支柱をH-175×90×5×8(E=46.27kJ)と仮定した場合
基礎タイプD、G、 I : 中間支柱をH-200 ×100×5.5×8(E=53.42kJ)と仮定した場合
単独基礎(A) : 基礎前面がほぼ水平の堅固な地盤に設置する場合(E=3.42kJ)
単独基礎(B) : ブロック積天端に設置する場合(E=2.71kJ)
表 14.1
基礎タイプ一覧表
14-11
可能吸収エネル
ギー E
連続基礎
ha=1.5m
ha=1.0m
ha=2.0m 単独基礎
(A)
(B)
(別途検討)
53.42kJ
(タイプ−D)
(タイプ−G)
(タイプ−C)
(タイプ−F)
(タイプ−I)
46.27kJ
38.32kJ
34.65kJ
(タイプ−B)
30kJ
(タイプ−H)
20kJ
(タイプ−E)
(タイプ−A)
10kJ
3.42kJ
2.71kJ
単独(A)
0kJ
単独(B)
※(1)基礎の高さについてはha=1.0mを基本とし、標準の落石跳躍量h1=2.0m(斜面直角
方向)が柵を超える場合にはha=1.5mあるいはha=2.0mを採用する。
(2)ブロック積天端に設置する基礎は、原則としてha=1.0mを採用する。
(3)単独基礎(A)は、基礎前面がほぼ水平の堅固な地盤で受動土圧が期待できる場合に採用する。
(4)単独基礎(B)は、ブロック積天端に設置する場合に採用する。
表 14.2
第4節
基礎タイプ選定表
覆式落石防護網
1.設置基準
(1)
覆式落石防護網の標準については、図 14.5 のとおりである。
(2)
斜面最下部のサブアンカーは、地形に応じて必要な箇所に設置する。
(3)
覆式落石防護網の型式は、Ⅰ∼Ⅲの 3 型式とし、幅 4.0m×法長 10.0m=40 ㎡当りの想定落石
重量、法長、法勾配により決定する。
(4)
その他の事項については、「落石対策便覧」5.3.2 によるものとする。
14-12
図 14.5
概略図(参考図)
2.設計フローチャート
START
設計に用いる落石荷重および
自重の決定
法長分の落石荷重および自重
に耐え得る縦ロープの径の決定
法長方向下方 3 スパン分の落石
重量および自重に耐え得る横ロ
ープの間隔および径の決定
金
網
の
種
類
の
決
定
アンカーの強度および安定に
対する検討
END
図 14.6
設計フローチャート
(落石対策便覧
5-3-1
P133)
3.設計
3.1
型式の選定
幅 4.0m×法長 10.0m=40 ㎡当りの想定落石重量より、型式の選定を行う。
表 14.3
型
式
想定落石重量
(40m 2 当り)
Ⅰ 型
14.70kN
Ⅱ 型
9.80kN
Ⅲ 型
4.90kN
14-13
3.2
ロープにかかる重量
(1)
縦ロープにかかる重量
H
)
10
W1
:落石荷重(W1 = W1 a ×
W2
:覆式ロックネット自重(W2 =W 2 a×l・H)(表 14.4)
W1 a:40m2 当りの落石重量
W2 a:覆式ロックネットの単位重量
l
:縦ロープ間隔
W=K(W1 + W2)
K
:斜面勾配による補正係数
表 14.4
型
式
(表 14.5)
覆式ロックネットの自重
標
準
重
Ⅰ 型
69N/m 2
Ⅱ 型
48N/m 2
Ⅲ 型
30N/m 2
表 14.5
量
斜面勾配による補正係数
法勾配(角度)
補正係数(K)
1:1.0(
45°
)
0.354
1:0.8(
51°20')
0.468
1:0.7(
55°
)
0.532
1:0.6(
59°02')
0.600
1:0.5(
63°23')
0.670
1:0.4(
68°12')
0.743
1:0.3(
73°18')
0.814
K=sin
θ−μcos
θ
θ:法勾配(角度)
μ:落石と地面との摩擦係数(=0.5)
14-14
(2)
横ロープにかかる張力(T)
横ロープは法長方向の 3 スパン(10m×3=30m)の荷重を等分布荷重として受ける値を
最大荷重と考える。
等分布荷重
W
l
w=
l:縦ロープ間隔
横ロープの張力
T=
w・l2
8・f
f:サグ(縦ロープ間隔の 10%)
3.3
材料強度
(1)
金網の強度
表 14.6
d
素線径(㎜)
A
素線断面積(㎜)
T
素線の許容引張強度(N)
P
線交点強度(N)
2.6
5.3
779
760
3.2
8.0
1,176
1,150
4.0
12.56
1,846
1,790
T=A・σ
P=2Tcos
85°
=1.475T
2
金網の線交点数
L
n=
2lsin
85°
2
L :金網目合、L:縦ロープ間隔
σ:許容応力 147N/㎜
表 14.7
d
素線径(㎜)
L
(m)
線交点数
1m 幅
4m 幅
2.6
3.2
4.0
14.8
59.2
4.0
(安全率 2)
14-15
幅 1m あたりの
有効張力
(kN/m)
4m 幅の
有効張力
(kN)
11.2
33.95
17.0
51.35
26.5
80.63
(2)
ワイヤーロープの強度
表 14.8
(3)
ロープ径
(㎜)
断面積
(㎝ 2 )
設計切断荷重
(kN)
許容荷重
(kN)
16
1.01
118
58.8
12
0.59
68.6
34.3
アンカーの強度
(a)
岩盤用アンカー
表 14.9
寸法
(㎜)
断面積
(㎝ 2 )
D22(M20)
2.45
D25(M24)
3.53
D29(M27)
4.59
D32(M30)
5.61
(b)
①
SD295A
短期許容セン断応力
(kN/m 2 )
許容セン断荷重(短期)
(kN)
36.0
120
51.9
67.5
82.5
土砂用
コンクリートアンカーブロック
アンカーのコンクリートブロックは、ロックネットで覆われる部分の高さ、法勾
配、落石の大きさに応じてロープにかかる荷重が変化するため、コンクリートアン
カーブロックの設計計算を行い決定する。
②
打込アンカー
打込アンカーの種類に付いては、十分に検討を行い、決定する。
なお、土質によって多少異なるため、原則として現地で引張試験を行い実際の耐
力を把握する。
14-16
4.構造細目
(1)
控長については、縦ロープ、横ロープとも 5m を標準とする。
(2)
縦・横ロープ用アンカーは原則として良質な岩盤部を選定し岩用アンカーボルトを使用し、
85 ㎝以上岩碇着として角座金ナットにてワイヤを地盤まで締付け、極力、せん断力で抵抗
するよう設置するものとする。
(3)
岩用アンカーボルトの削孔径は表 14.11 に示すとおりである。
表 14.11
(4)
岩用アンカーボルト
削孔径
32φ
52φ以下
28φ
48φ以下
25φ
46φ以下
22φ
42φ以下
金網重ね長は 20 ㎝を標準とし、許容範囲は−10 ㎝以内とする。ただし、局部に凹凸があ
り部分的に許容範囲を超える場合は、補強を行わなければならない。
(5)
ロープ端の処理は折返しもしくは、巻付きグリップにて行う。また、折返し長は 1m とし、
許容範囲は±20 ㎝とする。ワイヤークリップは 18φの場合 1 箇所あたり 5 個、16φ以下は 1
箇所に 4 個取り付ける。巻き付けグリップ使用の場合は、破断荷重にて掌握力試験を行い滑
り量が 10 ㎜以下であることを確認する。
(6)
結合コイルは最上段横ロープは 1m に 3 個取り付け、縦横補助ロープ共に 1m に 1 個取り付
ける。
なお、最上段横ロープについては、金網を 20 ㎝折り曲げて結合させる。また金網の折り曲
げ箇所は、亜鉛メッキ鉄線のφ1.2 ㎜以上で 30 ㎝間隔にて緊結するものとする。
14-17
第5節
ポケット式落石防護網
1.設置基準
(1)
ポケット式落石防護網の標準については、図 14.7 のとおりである。
(2)
斜面最下部のサブアンカーは、地形に応じて必要な箇所に設置する。
(3)
ポケット式落石防護網の型式は、Ⅰ∼Ⅲの 3 型式とし、設計計算により決定する。ただし、
積雪地域については、積雪仕様とする。なお、積雪仕様については、標準仕様と異なる材料
についてのみを表 14.12 に表す。他については、標準仕様と同じとする。
(4)
ポケット式落石防護網の支柱基礎はヒンジ式を原則とする。
なお、埋込式を採用するに当っては、十分に検討し、選定を行う。
(5)
その他の事項は「落石対策便覧」5.3.3 によるものとする。
表 14.12
型式
支柱
Ⅰ,Ⅱ
H125×125×6.5/9
図 14.7
概略図
14-18
2.型式の選定
(1)
型式の選定は、落石エネルギーおよび可能吸収エネルギーにより決定する。
詳細については、表 14.13 に示すとおりである。
表 14.13
部材名
A
B
C
金網
φ3.2×50
φ4.0×50
φ5.0×50
結合コイル
φ3.2
φ4.0
φ4.0
縦ロープ
φ14
φ16
φ18
ワイヤーロープ
〃
〃
横ロープ
φ14
φ16
φ18
〃
〃
吊ロープ
φ14
φ16
φ18
〃
〃
補助ロープ
φ12
φ12
φ14
ヒンジ式
H−100
× 6× 8
H−100
× 6× 8
H−100
× 6× 8
支柱
※
(2)
部材は原則として亜鉛メッキ仕様とする。
石の大きさは(重量)、落石の転がる法面長、法面勾配および法面の等価摩擦係数等を考慮
したうえで設計計算を行い、型式の選定を行う。なお、別添資料(14-18、図 14.11)における
選定図は、参考である。
3.設計
3.1
設計フローチャート
START
斜面状況の調査
①落石の高さ
②斜面の角度・状況
③ネットの傾斜角度
④落石の重量
⑤落石の直径
落石エネルギーの計算
落石吸収エネルギーの計算
①ネットの吸収エネルギー
②ロープの
〃
③支柱の
〃
④吊ロープの
〃
⑤落石の衝突前後における
エネルギー差
可能吸収エネルギー
≧
落石エネルギー
YES
アンカーの強度および安定に対する検討
END
図 14.8
設計フローチャート
14-19
NO
3.2
設計計算
(1)
落石エネルギーの算定
Ew=
1
2
・
w
g
・(Ⅴsinθ 2 ) 2
落石速度(Ⅴ)の算定
V= 2 g (1 −
µ
tan θ 1
)H
表 14.14
斜面の状況と等価摩擦係数:μ
区分
落石および斜面の特性
A
硬
岩:丸状、凹凸小、立木なし
0.05
B
軟
岩:角状∼丸状、凹凸中∼大、立木なし
0.15
C
土
砂:崖すい、丸状∼角状、凹凸小∼中、立木なし
0.25
D
崖すい:巨礫まじり崖すい、角状、凹凸大∼小、立木なし∼あり
(2)
0.35
可能吸収エネルギー(ET)の算定
ET=EN+ER+EP+EHR+EL
EL:衝突の前後におけるエネルギー差
EN:ネットの吸収エネルギー
ER:ロープの吸収エネルギー
EP:支柱の
3.3
μ
〃
EHR:吊りロープの
〃
材料強度
(1)
金網の強度
表 14.15
d
素線径(㎜)
p
線交点強度(N)
3.2
1,150
4.0
1,790
5.0
4,253
(2)
n
幅 1m 当りの線交点数
幅 1m 当りの有
効張力(kN/m)
17.0
26.5
14.8
41.98
ワイヤーロープの強度
表 14.16
ロープ径
(㎜)
断面積
(㎝ 2 )
設計切断荷重
(kN)
許容荷重
(kN)
18
1.29
157
78.4
16
1.01
118
58.8
14
0.78
98.1
49.0
12
0.59
68.6
34.3
〈落石対策便覧
P-134〉
※弾性係数
1.0×10 6
N/㎝
14-20
(3)
アンカーの強度
(a)
岩盤用アンカー
表 14.17
寸法
(㎜)
断面積
(㎝ 2 )
SS400
短期許容セン断応力
(kN/m 2 )
許容セン断荷重
(短期)
(kN)
Ⅰ(5.0G)
Ⅱ(4.0G)
32φ(M33)
6.94
11.8
81.3
Ⅲ(3.2G)
28φ(M27)
4.59
11.8
53.9
型
式
(b)
①
土砂用
コンクリートアンカーブロック
コンクリートアンカーブロックは、「本章第 4 節、4.3.3
材料強度(3)アンカーの強
度②土砂用(a)」に準じる。
アンカーの位置は、極力全面土圧の期待できる平坦部に設置し素掘り部にコンクリ
ートを打設する。
②
打込アンカー
「本章第 4 節、3.3
(c)
①
支柱(ヒンジ式)アンカー
岩部用
22φ×1,000
②
材料強度(3)アンカーの強度(b)土砂用」に準じる。
2本
土砂用
「本章第 4 節、3.3
材料強度(3)アンカーの強度(b)土砂用」に準じる。
4.積雪地仕様
4.1
設置場所
積雪地のポケット式落石防護網工については、金網と法面の間に雪が入込み金網への影響
が大きいため、支柱を緩斜面に設置し、極力空間を少なくする。
14-21
標準地仕様
積雪地仕様
図 14.9
概略図
選定図(参考図)
設計条件
斜面区分
D
等価摩擦係数
0.35
斜面勾配
45°(1:1)、55°(1:0.7)、63°(1:0.5)
吊ロープ
10m(角度 45°)
縦ロープ
20m(網地縦長さ)
横ロープ
30m
支柱高さ
3.0m
図 14.10
概略図
ポケット式ロックネットの自重
形
式
5.0G
4.0G
3.2G
図 14.11
落石重量と斜面長さの関係
14-22
金網部標準平均重量
81N/m2(8.1kg/㎡)
55
(5.5
)
37
(3.7
)
第6節 その他の工法
落石防護工として、主に用いられている落石防止柵と落石防護網は、前述のとおりであるが、そ
の他の工法も用いられていることから、以下に紹介する。
1.ロープネット
ロープネットは、浮石や転石を原則的には各格子ブロック(標準2m×2m=4㎡)で受け持
ち、縦・横ロープおよび十字アンカークリップを介してアンカーに伝達して、初期始動を止める
落石予防工である。
交点部に設置するアンカーは、広い斜面の中で必ずしも安定した位置に設置可能であるとは限
らないが、このロープネット工法は局部的に交点部のアンカーが、浮石・転石と一緒に動こうと
する荷重が働いても、縦・横主ロープおよび補強ロープを介して他のアンカーに荷重を分担させ、
お互いに持ち合いするため、架設された広い範囲(面積)の中で、安定した予防工としての機能
効果がある。
設置方法は、浮石や転石が滑動や転倒する恐れのある斜面に、柔軟で強度の高いワイヤーロー
プを縦および横に主ロープとして格子状に斜面に沿わせて張り、両端にアンカーを設置する。ま
た、交点にもアンカーを設置し、締結力の高い十字アンカークリップでアンカーと連結する。更
にその間に補強ロープを張設して各交点をクロスクリップで止める。
主ロープおよび補強ロープの径は標準で 12φであり、格子の間隔は、一般的には主ロープ(ア
ンカー間隔)で縦・横2mが標準である。その間の補強ロープは0.5m間隔が標準であるが、
斜面の状況によっては、変えることができる。また、局部的に金網を架設すれば風化による小さ
い浮石や小礫の落石を防止することができる。
2.ワイヤーロープ掛工
(落石対策便覧 H12-P104)
ワイヤーロープ掛工は、浮石や転石が滑動や転落しないように格子状にしたワイヤーロープや
数本のワイヤーロープ等を用いて直接浮石等の基部を覆ったり、掛けたりして斜面上に固定させ
る工法である。浮石や転石が巨大な場合とか土地の制約条件等で応急的に斜面上に固定しなけれ
ばならない時に良く用いられる。施工も他の工法とくらべ簡易であるが、本設構造物でなく仮設
構造物として取り扱うことが望ましい場合が多い。
ワイヤーロープ等で浮石等を覆ったり掛けたりする場合、ロープ間等から抜け出すことのない
よう十分その安全性を確保しなければならない。また、浮石等の質量や滑落時の荷重に十分耐え
られるように、ワイヤーロープの強度やロックボルト強度ならびにロックボルト定着長等を十分
に検討し、安全を図らなければならない。
ロックボルトの定着岩盤は不動岩盤で、完全に安定した箇所を選定しなければならない。施工
後、ワイヤーロープおよびロックボルトの腐食に十分配慮・点検する必要がある。
ワイヤーロープの強度については、落石防護網の設計の項のワイヤーロープの諸値に示す強度
を用いて設計する。また、落石や転石の角等でワイヤーロープが破損等しないよう配慮する必要
がある。
落石や転石に対する抑止力の算定にあたっては、地震荷重や雪荷重、必要に応じて凍結融解時
における基礎岩盤の劣化や落石自体の劣化等を考慮に入れるのが望ましい。
14-23
3.根固め工
(落石対策便覧 H12-P112)
根固め工は斜面上の浮石が転落や滑動を生じることのないように浮石の基部や周囲を斜面上で
固定させる工法である。
斜面上の浮石・転石は除去することが望ましいが、簡単に除去できない大きさの浮石・転石の
場合に用いられる。この工法はコンクリート工または石積工等により浮石・転石等の基部を固め
る比較的規模の小さいものから、基部の安定岩部に鉄筋のさし筋等を施工し、モルタル等で固め
る方法や鉄筋コンクリート工またはH鋼等の支柱によって押える大規模なものまである。
この他、浮石の多い斜面でオーバーハングあるいは鉛直に切り立った岩の亀裂部にコンクリート
およびモルタルを充填して、岩自身の風化防止と安定を確保するための根固めもある。
3.1
コンクリート根固め工
(落石対策便覧 H12-P113)
斜面上にある大きな浮石・転石が動きださないようにコンクリートで浮石・転石の基部や
周囲を固め、斜面上に固定させる工法である。
簡単に除去できない浮石や転石が大規模に集中し、斜面勾配が比較的ゆるい場合に適する
が、材料の搬入や斜面上の立ち入り等で施工の困難の場合もある。
浮石の重みが根固め工に加わった場合、根固め工が浮石とともに転落や滑動を生じないよ
うにするため、根固め工の基部は安定した基盤に置く必要があり、図
のようにさし筋や、
ロックボルト等で基礎コンクリートを滑動しないよう固定する場合もある。
根固め工から浮石や転石が抜け出すことのないようにコンクリートの厚さを十分に確保し、
浮石等の基部のみでなく周囲を包むように設置することが望ましい。
また、斜面を流下する雨水等によって洗堀を受けると根固め工の効果が著しく減少するの
で、根固め工の周囲の形状、斜面表面の整形等に注意を払う必要がある。
コンクリートを打設する時には浮石の表面の泥や砂等の付着物を除去してコンクリートの
付着なじみを良くし、かつ、施工中に浮石等が不安定とならないように根固め工基部の掘削
や斜面の成形に当たっては十分注意を払わなければならない。
コンクリート根固め工の設計にあたっては、対象とする浮石の作用荷重を現地の状況に応
じて推定した上で、根固め工の規模、配筋、差し筋量等の構造を設計する。その際、コンク
リート標準示方書等の関係図書を参照するのがよい。また、基礎となる地盤の評価について
も、「道路橋標準示方書Ⅳ下部構造編」中の直接基礎の設計の項などを適宜参照するのがよ
い。
3.2
石積根固め工
(落石対策便覧 H12-P114)
斜面上で簡単に除去できない浮石や転石がある場合、周囲の斜面から小さな浮石や転石を
あつめて石積工をつくり、これにより浮石や転石の基部を固める方法である。
これは浮石整理も兼ねることができる。また、石積工の後モルタル吹付等を施し表面を固
化し、あらかじめ吹付前に注入管を配しておき注入により一体化させることもあるが、注入
材の逸出が著しく、不経済な場合が多い。
コンクリート根固め工の場合と同じように材料の搬入や斜面内の立ち入り等で施工が困難
な場合もある。コンクリート根固め工に比べ耐久性に劣り、特に流水による洗掘は十分気を
つけなければならない。
14-24
4.接着工
(落石対策便覧 H12-P103)
落石崩壊危険箇所でのはく離等の場合には、特にこれを接着材を用いて防止する方法が行われ
ることがある。観光地の風光明媚な箇所等の保存等には良く使用されることがある。
接着材としては、セメント系のものと樹脂系のものが開発されている。セメント系の場合、固
化時間を非常に短くさせて逸出を防止させている。樹脂系は主にエポキシ樹脂系のものが多く開
発されており、セメントモルタル等に混合して使用されたり、単独で使用されることもある。セ
メント系のものと同様に、樹脂系接着材は逸出を防止するためその固化時間が調整出来るが、セ
メント系よりも固化時間も早くできたりパテ状にして使用するものもある。
接着工を施工するにあたり、その接着面に粘土等の接着を阻害する物質を含んでいることが
多いので、十分洗浄する等により除去して、接着性を確認してから用いることが肝要である。
また、亀裂が深部まで発達している場合には、接着材がそこまで到達していない恐れがあり、
接着に対しての有害な物質の洗浄も不可能な場合も多いので、使用に際しては十分それらを調査
検討しなければならない。
5.のり枠工
5.1
(落石対策便覧 H12-P124)
概要
のり枠工にはプレキャストのり枠工と現地打のり枠工とがあるが、落石対策ではのり面の
一部や全体を一体化させ落石や小崩壊等を防止する目的から、現場打のり枠工が用いられて
いる。
現場打のり枠工には現場打コンクリート枠工と吹付のり枠工がある。最近では、施工性、
迅速な対応、簡単な型枠で施工可能な現場打吹付のり枠工を採用することが多くなっている。
現場打コンクリートのり枠工の場合、吹付のり枠工と異なり、十分に強度を有した型枠が
必要であり、打設コンクリートは、コンクリートポンプ車等で施工される。このため、生コ
ンクリートが使用され、コンクリートの管理は工場で行われるので品質管理が十分であり、
高強度の、コンクリートが得られる。
これに比較して、吹付のり枠工の場合はその強度が低く設計構造物断面が大きくならざる
を得ない。しかしながら、現場打のり枠工の場合、のり面勾配がゆるやかな箇所ではコンク
リートが細部へ充てんできないことや、枠の断面が小さく幅が 40cm 以下での施工では打設
コンクリートが流失しないよう蓋状型枠が必要であることから、十分にコンクリートが隅々
まで打設できない等の欠点がある。吹付のり枠工と一長一短があるのでその使い分けは十分
検討しなければならない。
のり枠工は単独で用いられることもあるが、抑止力を期待される斜面部にロックボルトや
グラウンドアンカーを組み合わせて用いられることが多く、枠内には周辺景観環境を考慮し
緑化工も併用されている。
また、設計においてはのり枠内の排水、積雪寒冷地においては凍上対策、積雪荷重の考慮
が必要である。
14-25
5.2
現場打コンクリートのり枠工
(落石対策便覧 H12-P125)
現場打のり枠工の場合、対象とするのり面が平坦で凹凸が少なく、ある程度勾配を有する
箇所での施工が多く、枠幅は 40cm 程度以上が多い。
一般にはその勾配は 1:1.0 以上の急勾配でないと打設コンクリートが十分に行き渡らな
い等の欠点がある。コンクリート打設時には数個所蓋部に窓穴を設けてバイブレーター
にて十分締め固める等により、配筋の裏や隅にまでコンクリートが充てんされるよう注意す
る必要がある。
また粗骨材についても枠内の配筋間隔等にもよるが、粒径 30mm 以下であることが望ましい。
枠内の設置基盤に凹凸があると空間が生じ、ここからコンクリートが逸出するので、目地
材等を使って逸出を防止することが肝要である。型枠の固定は、吹付枠工において使用する
アンカーバーや補強アンカー等と同様なものを使用して、コンクリート打設時や打設後固化
するまでの保持ができるよう配慮しなければならない。
アンカー工等と組み合わせる場合は、一般の梁構造物として設計することが肝要であり、
コンクリート示方書等を参照して検討する。
5.3
吹付のり枠工
(落石対策便覧 H12-P126)
吹付のり枠工は、設置地盤に多少起伏があってもフレキシブルな金網様型枠やボール紙
等を材料とした型枠を用いることにより十分対応出来る。吹付モルタルや吹付コンクリー
トは流動性が低いため、上蓋を必要とせず、そのまま施工できるのが最大の特徴である。
また、施工性が良く、搬送距離も比較的長く、施工条件にもよるが吹付機から 100m程度
までの搬送が可能である。
のり枠の断面寸法については、それぞれの対象とする落石や浮石等の抑止力に見合った
ものを設計しなければならないが、その寸法は 150mm∼500mm のものが多く使用されている。
さらに抑止力の大きなものにも対応するため、最近では 700mm の枠断面のものも採用され
るケースもある。
吹付のり枠工のコンクリート強度は低いので、その設計に当たってはそれに見合った数
値を使用することが肝要である。吹付のり枠工の設計については、「道路土工−のり面工・
斜面安定工指針」や(社)全国特定のり面保護協会から「のり枠の設計・施工指針」が出さ
れており、他にも多くの参考図書が出版されているので、それらを参照されたい。
14-26