静止流体中で振動する角柱まわりの渦構造に関する研究

広島工業大学紀要研究編
第 38巻 (
2日
0
4
) pp.33-40
論
文
静止流体中で振動する角柱まわりの渦構造に関する研究
寿隆**・吉中義典***
中西助次*・菅
(平成 1
5年 9月1
2日受理)
AVisualStudyofVortexStructurearoundaSquareCylinderPerformingSinusoidal
OscillationsinaFluidatRest
ToshitakaKANandY
o
s
h
i
n
o
r
iYOSHINAKA
SuketsuguNAKANISHI,
(
R
e
c
e
i
v
e
dS
e
p
.1
2,
2
0
0
3
)
Abstract
Wh
enab
l
u
f
fbodyi
so
s
c
i
l
l
a
t
e
di
nas
t
i
l
lf
l
u
i
d,secondarystreamingi
sg
e
n
e
r
a
t
e
daroundt
h
e
b
o
d
y
. Theo
b
j
e
c
t
i
v
eo
ft
h
i
ss
t
u
d
yi
st
h
ef
l
o
wmixingandd
i
f
f
u
s
i
o
nu
s
i
n
gt
h
i
ssecondaryf
l
o
w
h
eo
b
s
e
r
v
e
df
l
o
wp
a
t
t
e
r
n
susingt
h
e
t
h
a
ti
n
d
u
c
e
saroundt
h
eo
s
c
i
l
l
a
t
e
db
o
d
y
. I
nt
h
i
spaper,t
v
i
s
u
a
l
i
z
a
t
i
o
nmethodaroundo
s
c
i
l
l
a
t
e
dsquarec
y
l
i
n
d
e
rwasreportedandwasmadea
comparisont
h
ef
l
o
wp
a
t
t
e
r
nbetweent
h
ebothc
a
s
e
so
ft
h
esquarec
y
l
i
n
d
e
randt
h
ec
i
r
c
u
l
a
r
c
y
l
i
n
d
e
r
. Andt
h
r
e
e
d
i
m
e
n
s
i
o
n
a
lf
10ws
t
r
u
c
t
u
r
e
saroundt
h
eo
s
c
i
l
l
a
t
e
dsquarec
y
l
i
n
d
e
rhas
beenmadec
l
e
a
r
. Theexperimentsa
r
ec
a
r
r
i
e
doutf
o
rthec
a
s
e
so
fKeulegan-Carpenter
numberKCbetween0.
4and2
.
0andnondimensionalf
r
e
q
u
e
n
c
ys=40~140
KeyWords:VortexStructure,FlowMixing,O
s
c
i
l
l
a
t
e
daBlu
f
fBody,O
s
c
i
l
l
a
t
e
dSquare
C
y
l
i
n
d
e
r,SecondaryFlow,FlowV
i
s
u
a
l
i
z
a
t
i
o
n,Keulegan-CarpenterNumber
振動する角柱厨りの流れを実験的に調べ,振動棒で誘起さ
1. は じ め に
れる流れパターンについて知見を得るとともに基礎データ
静止流体中で物体が振動することによる物体まわりの流
を構築することを目的とする。
動現象は,撹弁混合に用いられる基本的な流れ場の一つで
ここでパラメータは振幅と振動数を選び,その範囲は,
ある。この流れ場で,撹幹混合の効率を上げるためには,
本研究が層流領域における小型撹祥装置の開発を背景とし
物体からの渦放出とプラントルの第三種の二次流れ 1) とを
ているため,比較的小さな振幅 KC (無次元振幅) = 0.4~
積極的に作ること,さらにその流れ場をコントロールする
2
.
0,振動数 s (無次元振動数)
ことが重要と考えられる。
で K
C=4a/d. s=fd vと定義する o (
aは振幅, fは振
=40~140 とする。ここ
2
/
血液有形成分の損傷を防止する必要がある混合ではへ
動数, d は代表長さ
vは動粘度)。また,振動円柱まわ
せん断応力の強い乱流場での混合は適切で、はなしミ。同様の
りの流れパターンの変化 3)-7)と本研究の角柱まわりの流
ことが食品,薬剤などの混合に際して要求されることもあ
れとを比較し,幾何形状の違いによる流れパターンの変化
る。そこで,本研究はこの有形成分を壊さないせん断応力
についても考察する。一般に,撹祥棒の幾何学的形状は撹
の弱い層流領域での揖祥混合を対象としたものである O し
持混合の効率を上げる上で重要な因子と考えられるが,本
たがって,本研究では静止流体中で振動する撹持棒による
研究ではその第一段階として素過程である正方形断面角柱
混合を考え,その第一段階として揖拝棒である角柱が正弦
としている O また,本研究に関連した振動物体まわりの流
*広島工業大学工学部機械システム工学科
日株式会社アイメックス
**本広島工業大学大学院工学研究科機械システム工学専攻
-3
3一
中西助次・菅
寿隆・吉中義典
れに関する研究は河川及び海洋構築物に関するものが多
なプラントルの第三種の二次流れが観察される 。 これに対
くSト剖 上述した著者らの目的とした領域での報告は少ない。
し,角柱の場合の剥離渦は振動半周期の聞に形成され放出
2
. 実験装置および実験方法
図 1は,可視化実験装置の概要を示したものである 。水
、
"
槽は 750Lx450wx450Dm m であり,倶Ij墜の影響や底面の
佳子
影響がないような十分な大きさにした。供試角柱は, 一辺
が 5mm.長さ 200mmのステンレス製の正方形断面角柱を
コ
{一一寸
τ
使用する 。供試角柱に開けられたトレ ーサ注入口は,角柱
の対称な 2面にワイヤ ーカット法を用いて幅 O.2mm.Z 軸
霊
タ
方向に 10mm の長さの切りかきを設けている 。そこから
染料の注入を行い可視化実験を行った。染料はフルオレセ
五五⑤
インナトリウム水溶液を使用した。 また,スリ ッ ト光には
Q
;Amplifier~Osc凶 ating Equipment③LaserPowerUnitCD2W
アルゴンレ ーザー (2W) を使用した。
図 2に.本論文で使用する空間座標系を示しておく 。 ま
A
r
i
o
nL
a
s
e
r~Control Box~ Optical F
i
b
e
rCable⑦C
y
l
i
n
d
r
i
c
a
l
Lens③ D
i
g
i
t
a
lVideoCamera~Personal Computer
た,本論文は得られた可視化実験の内, X-y 断面に絞っ
Fi
g.
1 Experimentala
p
p
a
r
a
t
u
s
て議論する 。
図 3は辰野ら 3) による誘起流の構造による分類図に,著
Z
者らの実験範囲をあわせて示したものである 。実験は,角
柱と円柱の幾何形状の違いによる流れパタ ー ンの変化につ
いて比較実験を行うために,円柱は
s=40-80.KC=2.0
でく〉の領域で実験を行った。 また,本研究は振動を利用
した小型撹祥器の開発を考えており,振幅の小さな範囲
(
KC=0.4-2.
0)で振動数を広くとった範囲 (s =4
0-140)
で実験を行う 。 この種の実験は初期条件が流れパタ ー ンに
大きく影響する 。そこで,水槽に水をため角柱をセットし
て一昼夜置いたものを使用することで,流体は完全に静止
したと仮定する 。
流れパタ ー ンは,スリット幅 lmmのレ ーザースリッ
Y-Zpl
創 le
ト光を通して得られる流脈線を,デジタルビデオカメラで
撮影した。収録された画像はパソコンに取り込み,デジタ
Fi
g.
2 C
o
o
r
d
i
n
a
t
esystem
ル画像データとして処理する 。
3
. 実験結果と考察
1
5
•
•
本論文では得られた可視化画像の結果の内, X-y 断面
.・
柿・
・
・
F
1
0
q岨
・
"
・
・
ー
の流れに絞って考察する 。
1"
-I
.
.
I
ー川二コ
1
0
3.
1 円柱 と角柱近傍の流れパターン の比較
はじめに,静止流体中で振動する円柱と角柱の流れパタ
H吋
日:H, 輔
・・
~.
G
(
s
中 町eCy
l
i
n
d
e
r
)
Pr
e
s
e
n
tDa
回2
・
ー」
・-/kl
て
丞
d
h
a
a
E
“
5
・
.,
.
~l.唖9
凪偽 /
S
_ 0+"
ー ンの違いを可視化実験の流脈線を用いて調べる 。
, KC=2.0 で
図 4は
u
、
.
.
R
e
g
i
皿eA
R
e
g
i
meB
R
e
g
i
皿eC
R
e
g
i
皿e
D
R
e
g
i
皿eE
R
e
g
i
meF
R
e
g
i
皿e
G
H
o
n
j
i
D
at&
Pr
e
s
e
n
tD
a
t
a
l
IC) (CircularCylinder)
,
'里
d
ð6~~ð . ‘.
一
ー
.
一
'2
0
'
札
s=40 と s=67 についての,円
V
.
0
.
柱 と 角 柱 の 可 視 化 写 真 を 示 し た も の で あ る 。 K C=2
s=40 での円柱と角柱の流脈線による流れパタ ー ンを比
較すると,円柱の場合,円柱近傍で弱い振動流が観察され
る。 これに対して角柱では構造的渦パタ ー ンが存在する 。
β を増加させた β=67について観ると,円柱では典形的
-34
ロ 00
:>0
ロロ~
A
。
。
6_
iU
.
.
.
=_
ーーー 通, ~
。
ロ
‘ ・ .
,
.
,
.
二三室生月ム円
九
r=
1
0
0
50
H
r
'
泊
1
5
0
8
3
l
Fi
g.
3 Ac
l
a
s
s
i
f
i
c
a
t
i
o
no
ff
l
o
w
s
静止流イ卒中で振動する角柱まわ りの渦構造に関する研究
された後,複雑な流脈模様を示す。 また,参考のため示し
振動方向の直角方向の二次流れに乗り流れていく 。 このよ
た KC=3.14. s=51 の円柱の場合の可視化写真 i) につい
うにしてできた剥離渦は,角柱の位置によらず空間に固定
てみると,振動半周期の簡で形成された剥離渦はその形状
された座標軸でみると,同じ Y 軸上を振動方向の直角方
の状態で放出され,さらに放出後もその形状,大きさを保
向へ流れ,渦列を形成している 。(図 5(
b)
')
図 5(
c)
は
, KC=1
.
2,s=1
4
0の結果を示したものである 。
ったまま二次流れに乗って流れ去る 。 このことは,角柱近
傍の流れが強い非線形性を示す流れ場となっていることを
ここでの流れパタ ー ンは,振動方向の直角方向の二次流れ
意味している 。 このことより,円柱に比べ角柱のほうが混
から振動方向への二次流れに変わる遷移領域(流れの分岐)
合撹祥棒として適していると考えられる 。
であり,不安定な流れパタ ー ンである 。 ここで,放出され
た剥離渦は明確な 二次流れが存在しないため,角柱のまわ
3.
2 角柱近傍の流れパターン
りの限られた範囲までしか広がらない。
4-2.
0,s=40-140
角柱近傍の流れに注目し, KC=0.
d)
は
, KC=1
.6,s=1
4
0の結果を示したものである 。
図 5(
のパラメータ変化に伴う流れパタ ー ン変化を調べた。図 5
図より 二次流れは振動方向に生じている 。放出された剥離
はその代表として KC=0
.
4-2.
0,s=1
4
0 の場合について
渦はすでに放出されている渦と干渉し,それらの形状は不
s=140の結果を
明瞭となる 。 このことから,角柱近傍は強い非線形の流れ
示したものである 。剥離渦パターンは,角から剥離した流
場となっていると考えられ,その効果で複雑な渦パタ ー ン
れが角柱壁面に再付着し循環領域をつくる 。 この渦パタ ー
を形成していると考えられる 。
示したものである 。図 5(a)
は
, KC=0
,
4
.
図 5(
e)
は
, KC=2.0.s=140の結果を示したものである 。
ンは図に見られるように形状をほとんど変えることなく,
渦放出も起こらない。
図より, 二次流れは振動方向に生じている 。剥離渦は角で
b)
は
, KC=0.8,s=1
4
0の結果を示したものである 。
図 5(
作られた後,次の半周期間で速い流速で放出される 。角近
図より流れパタ ー ンを見ると半周期ごとに放出された剥離
傍の渦パタ ー ンは比較的はっきりしているが,水槽全体で
渦は,次の半周期でできた剥離渦と千鳥配列に放出され,
の流れパタ ー ンは乱流に近い状態になる 。
l M
•
•
1
1
1
.
KC=3.
l4 s=5F
)
KC=2
.
0 s=40
KC=2.0 s=67
Fi
g.
4 Flowp
a
t
t
e
r
no
fs
q
u
a
r
ec
y
l
i
n
d
e
randc
i
r
c
u
l
a
rc
y
l
i
n
d
e
r(
P
l
a
n
ev
i
e
wo
ff
l
o
wi
nt
h
eX-Yp
l
a
n
e)
- 35-
中西助次 ・菅
t
lT=0.
0
0
0
寿隆 ・吉中義典
νT=0.
25
0
t
lT=0
.
5
0
0
νT=0.750
t
lT=0.
50
0
νT=0.750
(
a
)
KC=0.
4 s=1
4
0
t
l
T=O.OOO
t
lT=0
.
25
0
(
b)
KC=0
.
8 s=1
4
0
1
4
J
∞o
νT=O.
芯才一t
B
X
t
lT=0.
25
0
見J
νT=0.500
t
lT=0.750
νT=0.500
.
7
5
0
t
lT=0
(
b
"
)KC=0
.
8 s=1
4
0
νT=0.250
5
.
J
rf
一
(
c)
KC=1
.2 s=140
‘
一
νT=O
.
O
O
O
t
lT=0.250
νT=0.500
t
lT=0
.
7
5
0
t
lT=0.500
t
lT=0
.
7
5
0
(
d)
KC=1
.
6 s=1
4
0
t
l
T=0
.
0
0
0
t
lT=0.
25
0
(
e)
KC=2.0 s=140
Fi
g.
5 Flowp
a
t
t
e
r
nn
e
a
ras
q
u
a
r
ec
y
l
i
n
d
e
r(
P
l
a
n
eviewo
ff
l
o
wi
nt
h
eX-Yp
l
a
n
e)
- 36
一え為
t
l
T=O.OOO
静止流体中で振動する角柱まわりの渦構造に関する研究
3
.
3 角近傍の流れパターン
の半周期で反対の角からできた剥離渦に押し出されるよう
角柱の角近傍の流れ構造を流脈線に注目して調べる。図
b
)ですでに示したように,放出された
に放出される。図 5(
6は剥離渦形成の過程を (
a
)I
角柱近傍の弱い二次流れ J
,
渦は振動方向の直角方向へ二次流れに乗り渦列状となって
(
b
)I
振動方向の直角方向の二次流れJ
,(
c
)I
振動方向の二
移動する。
c
)は振動方向の二次流れ
-図 6(
次流れ」に分類し,角柱振動一周期間について可視化写真
b
)と同様に振動の過程で剥
角で剥離した流脈線は,図 6(
をスケッチして時系列で示したものである O
-図 6(
a
)角柱近傍の弱い二次流れ
離渦を作る O そして,反対方向の角へ移動した剥離渦は,
そこでできた新しい剥離渦に押し出されるように放出して
角で剥離して側壁に再付着した流脈線の時間変化挙動か
いく。
らみられるように,剥離渦の放出はみられない。 剥離点は
角に固定されているが,再付着点は明確ではない。また,
3.
4 角柱近傍の流れパターンの三次元性
渦パターン変化は時間周期的で再現性がある O
・図 6(b団辰動方向の直角方向の二次流れ
赤,黄,緑,青 4色のシート光を用い,その位置の違い
角で剥離した流脈線は振動の過程で剥離渦を形成する。
による流脈線の色の変化から,角柱近傍の流れパターンの
この剥離渦は固定空間座標系からみると静止しており,次
{
:
仁
戸
幅
←
ー tlT=0.
14
3
三次元性を調べる。シート光は,
口
・
‘ー
ー t/T=0.
14
3
e
j
ー一一 t/T=0.
14
3
口
[]
可? f
月
f
f
(
{
j
つ
ー
-
t/T=0.286
4ト
ー
tlT=0.429
←一一 t/T=0.286
4
←
ー t/T=0.429
(
'
:
[
j
> 空
つ
乙
:
仁P t
J
一輔- t/T=0.571
一帯ー tlT=0.571
ト tlT=0.714
一一骨 t/T=0.714
qp
一一・ t/T=0.857
(~I口つ
0
・- tlT=1
.0
0
0
角柱近傍の
(
a
)
弱い二次流れ
← -t
/T=0.286
噌十一 t/T=0.
4
2
9
一酔-t/T=0
.
5
7
1
者
一
時
噌
歩 t/T=0.714
F
っ
手
つ
ち
ゴ
ヂ
一一・ t/T=0
.
8
5
7
.0
0
0
ーー骨- t/T=1
(
b
)
振動方向の直角方向
一 -t/T=0.857
副司酔
F
i
g6 S
k
e
t
c
ho
ff
l
o
wp
a
t
t
e
r
nn
e
a
ras
q
u
a
r
ec
y
l
i
n
d
e
r
37
t/T=1
.0
0
0
(
c
)
振動方向の二次流れ
の二次流れ
目
z軸方向に
2.5mm 間隔
圃
・
圃
・
中西助次・菅
寿陵・吉中義典
で設置した。 図 7は
, KC=0
,
4
.0
.
8,1
.2
,1
.6
,2
.
0,s=4
0の
方向の直角方向で顕著に色が分かれているのが見られる 。
実験結果と,それにもとづき鳥搬固としてスケッチで示し
この写真から,流れパターンはスケ ッチに示すような半球
たものである 。
状の流れ構造が角柱近傍にできている 。次に KC=2.0の
a)
,(
b)
より KC=Oι 0
.
8
,s=40 では 4色が重なり
図 7(
写真を見ると,流脈線が赤い流脈線領域と青い流脈線領域
に分かれている 。渦放出後,三つの剥離渦は赤いスリット
合い,二次元的な流れパタ ー ンであることが分かる 。
d)
,(
e)
より KC=1
.6
.2
.
0
. s=4
0の写真を見ると,
図 7(
染料は
領域の二次流れと青いスリット領減の二次流れに乗って流
4色に分かれている 。 KC=1
.6の場合には,振動
れていく 。
(
a)
s=40
KC=0.
4
(
b)
s=40
KC=0
.
8
(
c)
s=40
KC=1
.2
(
d)
s=40
KC=1
.6
(
e
)
s=40
KC=2.0
Fi
g.
7 3
d
i
m
e
n
s
i
o
na
Jf
l
o
wp
a
t
t
e
r
n
3
8
静止流体中で振動する角柱まわりの渦構造に関する研究
3
.
5 流れパターンの分類図
二次流れは後述する (
u
i) の領域に比べ遅い流速で水槽全
図 8は,可視化実験の結果を基に流れパタ ー ンを 3つの
体に広がっていく 。 また流れパタ ー ンは, この領域で二次
パタ ー ンに分類し , KCs 面に分類 図とし て示したもの
元的な流れから三次元的な流れへと変わる 。
である 。
(i
i
i)振動方向への二次流れが起こる領域
(i)角柱近傍で弱い二次流れが起こる領域
この領域での二次流れは,振動方向へ生じる 。 この二次
この領域は,粘性作用が支配的で角柱近傍の限られた領
流れは他の領域 (i). (i)に比べ流速が速く,水槽全体
域で二次流れが生じる 。 そのため,広領域での混合には適
に広がりやすい。ここでの流れパタ ー ンは三次元的である 。
さない。
領域 (i) ~ (
u
i)は
,
(i
i)振動方向の直角方向への二次流れが起こる領域
(i).(i)領域は比較的流脈線の
i)は流脈線の複雑な流れ
明確な流れパタ ー ンであるが, (u
ノTター ンとなっている 。
この領域の 二次流れは,振動方向の直角方向へ生じる 。
a
f
b
g
C
h
m
r
d
1
n
S
O
t
k
p
q
e
2
.
5
,
,,,‘、
m
2
.
0ト a
己l.5~
)
n
u
(
1
.0
60
j
40
)
ー
(
0
.
5
80
1
00
1
20
8
F
i
g.
8 Ac
l
a
s
s
凶c
a
t
i
o
no
ff
l
o
w
s
39-
1
40
中西助次・菅 寿隆・吉中義典
4
.ま
と
2
7,3
9
4
7,(
19
8
2
)
.
告集, 3
め
1
1
) 溝田武人・岡島
非定常流体力に関する実験的研究土木学会論文報
静止流体中で振動する角柱まわりの流れを可視化実験で
告集, 3
2
7,4
9
6
0,(
9
8
2
)
.
調べた。その結果を次のようにまとめる O
(
1
) 円柱に比べ角柱のほうが,より強い非線形性を示す流
厚.“振動する角柱まわりの流線と
1
2
) 田村哲朗:“角柱まわりの流れと空力特性
2
2,7
1
3,(
2
0
0
3
)
.
れ場となる O
(
2
) 振動角柱まわりの二次流れは,振幅が重要な因子であ
1
3
) 田村哲朗・伊藤嘉晃.“振動する角柱まわりの流れと
り,その大きさによって二次流れの流れ方向が変化する。
風圧力に関する 3次 元 解 析 の 予 測 精 度 日 本 建 築 学
会構造系論文集, 4
9
2,2
9
3
6,(
19
9
7
)
.
(
3
) 振動角柱によって生じた二次流れは,振動方向の直角
方向への流れより振動方向への流れの方が流速は速い。
(
4
) 二次流れの
Fへの依存度は弱く
1
4
) 岡島
KC に依存してい
厚・松本達治・木村繁男:“振動流中の円柱お
よび正方形柱に作用する流体力の測定と流れの可視
る。したがって,混合の促進には振動数の変化より振幅
化 日 本 機 械 学 会 論 文 集(
B
), 6
3
6
1
5,3548-3556,
の変化によるほうが効呆的である。
9
7
).
(
19
(
5
) 流れパターンを二次流れの方向および剥離渦パターン
に関して
1
5
) 安田孝宏・岡島
三 次 元 数 値 解 析 日 本 機 械 学 会 論 文 集(
B
),6
8
6
6
6,
3つのパターンに分類し ,KC-s 面に分類
2
9
3
2
9
9,(
2
0
0
2
)
.
図として示すことができた。
文 献
1
6
) 安田孝宏・岡島
厚.“振動流中の円柱周りの流れの
三 次 元 数 値 解 析 日 本 機 械 学 会 論 文 集(
B
), 6
8
6
7
0,
1
6
14
-1
6
2
0,(
2
0
0
2
)
.
1) H
.S
c
h
l
i
c
h
t
i
n
g
:“
Boundary Layer Theory 8
t
h
'
ヘ
S
p
r
i
n
g
e
r,3
0
2
3
6
5, (
19
9
9
)
.
厚・“振動流中の円柱周りの流れの
1
7
)塩谷篤・岡島厚・六郷彰:“矩形柱周りの流れ
9
8
2
,(
1
9
8
4
).
2)岡小天: “バイオレオロジ裳華房, 4
の三次元数値シミュレーション日本機械学会論文
.
W
.Bearman: “振動円柱により誘起され
3)辰野正和.P
B
),6
8
6
7
0
,1
6
0
11
6
0
7,(
2
0
0
2
)
.
集(
る流れの可視化実験九州大学応用力学研究所所報,
司
1
8
)原
角 柱 の 流 体 反 力 日 本 機 械 学 会 論 文 集(
B
), 5
2
4
8
4,
6
6,1
6
9
1
8
5,(
19
8
8
)
.
3
8
8
8
3
8
9
1,(
19
8
6
)
.
.
W
.Bearman: “A v
i
s
u
a
ls
t
u
d
yo
ft
h
e
4) M.Tatsuno,P
f
l
o
waroundano
s
c
i
l
l
a
t
i
n
gc
i
r
c
u
l
a
rc
y
l
i
n
d
e
ra
tlow
秀介・鈴木俊紀:“水中で正弦的に振動する正四
1
9
)原
秀介・鈴木俊紀:“水中で正弦的に振動するだ円
Keulegan-Carpenter numbers and low Stokes
B
), 6
1-586,
柱の流体反力'¥日本機械学会論文集 (
.F
l
u
i
dMech.,2
1
1,1
5
7
1
8
2,(
19
9
0
).
numbers",J
2
0
7
6
2
0
8
0,(
19
9
5
)
.
l
o
w around an o
s
c
i
l
l
a
t
i
n
g
5) H
.H
o
n
j
i
: “Streakedf
2
0
)原
秀介・横山一夫:“水中で正弦的に振動する円板
c
i
r
c
u
l
a
rc
y
l
i
n
d
e
r
",]
.F
l
u
i
d Mech.,1
0
7,5
0
9
5
2
0,
の 流 体 反 力 日 本 機 械 学 会 論 文 集(
B
),4
7
4
2
2,1
9
5
6
-
81
).
(
19
1
9
5
9,(
19
81
)
.
6)中西助次・桜井元康・仲佐昭範:“静止流体中で振動
21)原
秀介・鈴木俊紀:“水中で正弦的に振動する円板
する円柱まわりの流れに関する研究可視化情報学
の流体反力
会誌, 2
1
S
u
p
p
.
l2
,9
1担, (
2
0
01
)
.
2
5
2
6,
(
9
8
4
)
.
7)吉中義典・中西助次・桜井元康・大坂英雄:“静止流
2
2
)原
日本機械学会論文集 (
B
),50-458,2523-
秀介・鈴木俊紀:“水中で正弦的に振動する正四
体中で振動する円柱まわりの流れに関する研究日
角柱の流体反力に対する端板の大きさの影響日本
本機械学会中国四国支部第 4
1期総会・講演会講演論文
機械学会論文集 (
B
),5
7
5
3
3,1
4
1
7,(991
)
.
0
5
1
0
6,(
2
0
0
3
)
.
集
, 1
8) 原
2
3
)原
秀介・鈴木俊紀:“水中で正弦的に振動する円柱
四角柱の流体反力
の 流 体 反 力 日 本 機 械 学 会 論 文 集(
B
),5
1
4
7
1,3
6
5
5
-
4
3
7
4
4
0,(
19
9
2
)
.
c
y
l
i
n
d
e
r
s
'
¥J
.F
l
u
i
dMec
,
.
h1
5
5
,1
4
1
1
7
4,(
19
8
5
)
.
秀介・鈴木俊紀:“水中で正弦的に振動する円柱
の流体反力に対する端板の大きさの影響日本機械
:
“ Experiments on t
h
es
t
a
b
i
l
i
t
yo
f
2
5
)T
. Sarpkaya,
B
),5
5
5
1
3,1
3
6
8
1
37
l
, (
1
9
8
9
)
.
学会論文集 (
1
0
) 溝田武人・岡島
B
),5
8
5
4
6,
日本機械学会論文集 (
.H.
K
.W
i
l
l
i
a
m
s
o
n
:“S
i
n
u
s
o
i
d
a
lf
l
o
wr
e
l
a
t
i
v
et
oc
i
r
c
u
l
a
r
2
4
)C
9
8
5
)
.
3
6
5
8,(
9)原
秀介・鈴木俊紀:“水中で正弦的に振動する斜正
.F
l
u
i
d
s
i
n
u
s
o
i
d
a
lf
l
o
wo
v
e
rac
i
r
c
u
l
a
rc
y
l
i
n
d
e
r
",J
Mech.,4
5
7,1
5
7
1
8
0,(
2
0
0
2
)
.
厚:“振動する角柱まわりの流れの
特性と流体力に関する実験的研究¥土木学会論文報
4
0一