MECCA 伊勢の劇場 指導教員 上松 佑二 8JCA3220 広垣 大祐 1. 設計目的 ている。内宮は外宮と離れた場所にあるのだが、そこに 「伊勢神宮は人間の理性に反発するような気紛れな要 はおかげ横町、おはらい町といったみやげ物店・飲食店 素を一つも含んでいない。その構造は単純であるが、そ が並んでいる門前町がすでに完成され賑わいを見せて れ自体倫理的である。後代の日本建築は見るごとき煩瑣 いる。外宮前にはそういったものが無く、内宮ほど活気 な装飾的被覆におおわれることがない。木材を瓦葺屋根 がない。この地に劇場を建てることにより、演劇を中心 とを素材として究極的な建築形式が創造されたのであ とした外宮の門前町へ発展させていきたい。 る。 」 ブルーノ・タウト「日本美の再発見」より 伊勢神宮は日本宗教のメッカであり、日本建築のメッ カである。 3.建物の特徴 この劇場の特徴は以下の通りである。 昔の伊勢は、この伊勢神宮の門前町として、多くの参 ① 高さ:伊勢という町はあまり高い建物を建てると神 拝者が往来し活気づいていた。しかし、現在の伊勢は時 宮を見下ろす形になってしまい、神様に対して失礼 代の流れとともに参拝者は減っていき、昔のおもかげを という事から、低層の建物が多い。その町並みに馴 ほんの少しだけ残しさびれた街になってしまった。そこ でもう一度この街を昔のように人々が往来しにぎわい のある街にしようと思う。 そのためにはまず「もてなしの心」というのが必要で 染ませたい為に極力低層を心がけた。 ② 外壁:日本建築の特徴である格子を意識し、スリッ ト状の開口を並べたり、全面窓ガラスの部分に木棒 を間隔をあけて並べたりした。 ある。昔、神宮では神々を楽しんでもらう為に様々な舞 ③ 動線:入り口から客席まで行くまでのアプローチは を踊りもてなした。このため伊勢は古典芸能のメッカと 一直線である。その途中には鳥居型の列柱が全面ガ も言われている。そして神宮門前町では地元民が参拝者 ラス張りのトップライトを支えている。その両脇に に様々な料理を提供してもてなした。こうして伊勢は発 は稽古場と演劇に関する資料室があり、嵌め殺し窓 展していった。この意識を今の伊勢の人々にも持っても を通して稽古の風景や展示品を見ることができる。 らう必要がある。 また、この部屋は屋外からも見えるようになってお そこで私は伊勢に古典芸能を中心に演技できる劇場 り、どこからでも演劇に触れるようにした。 を作る計画をした。この劇場で伊勢市民は、参拝者に対 ④ 客席:客席はワンスロープ型でなるべく舞台に近づ して古典芸能を中心とした演劇を披露する。市民が役者 くようにした。左右には桝席がある。二階のバルコ で参拝者が観客である。そうすることにより地元民はも ニーの桝席はカップルシートを作り、若者用にして てなすという意識をもつことができ、これをきっかけに ある。 さらに伊勢を発展させるにはどうすればいいかを考え るきっかけになるだろう。 ⑤ 舞台機構:直径12メートルの回り舞台と大小 1 つ ずつのせりを設置した。そして花道も設置し古典芸 能が演技できる最低限の機構は設置した。 2. 敷地 敷地は伊勢市駅前にする。この敷地は外宮の門前町に 位置し伊勢市の玄関口の 1 つである。以前この敷地には 以上 百貨店が建っていたが撤退してしまい、市としてもこの 跡地を利用し新しく伊勢を開発していこうと構想して いる地でもある。伊勢市駅は外宮の参拝者にも利用され、 その人たちをもてなすための劇場を立てるには打って つけの場所である。 伊勢神宮は外宮と内宮という二つの神社で成り立っ MECCA Theater in Ise 2001年度卒業設計梗概集 東海大学工学部建築学科
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