一般臨床医学01

柔道整復師 国試対策
サブノート
一般臨床医学 各論まとめ
♪ 2015 年度 ♪
2
■呼吸器疾患 総論■
【主要徴候】
《咳 嗽》
・乾性咳:アレルギー性(気管支喘息,過敏性肺炎),間質性肺炎,肺水腫
《喀痰・痰》
・泡沫状痰:肺水腫
*肺うっ血
・血痰:肺癌,肺結核,気管支拡張症
《ばち指》
・肺疾患,心疾患,肝疾患
《胸
水》
・漏出性胸水:心不全,肝不全,腎不全
*肝硬変,ネフローゼ症候群
・滲出性胸水:炎症性疾患,悪性腫瘍,膠原病
*肺梗塞
■呼吸器疾患 各論■
【かぜ症候群】
・ウイルス感染がほとんど
・白血球数,CRP は正常なことが多い
【肺 炎】
・血液検査:白血球増多,CRP 上昇
・X 線・CT:浸潤影,すりガラス影
※サルコイドーシスとは,肺,リンパ節,皮膚,眼,心臓,筋肉など全身諸臓器に乾酪壊死を認めな
い類上皮細胞肉芽腫が形成される全身性の肉芽腫性疾患
閉塞性肺疾患の図
《一般臨床医学 各論まとめ》
3
*閉塞性肺疾患*
・気管支喘息,肺気腫,慢性気管支炎など
*拘束性肺疾患*
『特 徴』
1.呼気延長(呼気性の呼吸困難)
・肺の容積減少に伴う肺活量の減少を
2.残気量増大
主とする疾患
3.1 秒率の低下
・間質性肺炎(肺線維症),塵肺,
サルコイドーシスなど
4.咳・痰・喘鳴
♪
他に,びまん性汎細気管支炎,閉塞性細気管支炎
【気管支喘息】
◆気道の炎症・過敏性亢進による,一時的な可逆性
の気道の気流制限
《病 型》・外因性と内因性に分けられる.アレルギー性をメインに
『アトピー型』:IgE 依存型,外因型,小児に多い
『非アトピー型』:内因型,感染型,成人に多い
*原因として,アレルギー,感染,自律神経失調,ストレス,遺伝的素因,アスピリン,運動など
《症 候》
・発作性
の呼吸困難(呼気性)
・夜間や早朝に出現しやすく,気象の影響を受ける
・連続性ラ音
・重症発作時は呼吸音減弱または消失
*他に,起座呼吸,チアノーゼ,樽状胸など
*秋や季節の変わり目
IgE に抗体が結合し,ヒスタミンが放出され炎症反応を起こす.アレルギー反応を抑制しようと好酸
球がやってきて蛋白分解酵素を放出.これが正常組織にもヒットし組織傷害を起こす.
【慢性閉塞性肺疾患 (COPD)】
◆慢性閉塞性肺疾患(COPD)≒肺気腫
《病 因》
・喫煙.他に大気汚染やα1 アンチトリプシン欠損症など
*男性に多い
『定
義』終末細気管支から末梢の肺胞が異常に拡張するか,あるいは肺胞
壁が破れて隣り合う肺胞が融合し,容積を増した状態.病変部の肺組織に線維化は認められない
《症 候》
・労作性
呼吸困難
・樽状胸,口すぼめ呼吸,鼓音(過共鳴音),呼吸音減弱
・胸部 X 線:横隔膜の平低化(肺肝境界低下)
CO2 ナルコーシス:慢性的に CO2 が貯まっていて、呼吸中枢が酸素を基準に調節している状態。急
な酸素濃度上昇により呼吸中枢が麻痺
《一般臨床医学 各論まとめ》
4
【原発性肺癌】
腺
癌
扁平上皮癌
小細胞癌
大細胞癌
頻 度
50
30
10%
5%
好発部位
肺野(末梢側)
肺門(中枢側)
肺門
肺野
あり
あり
不 明
喫煙との
関係
*腺癌:女性に多い
不
明
・小細胞癌:上大静脈症候群,異所性ホルモン産生症候群
《疫 学》
・男性に多い.60~70 歳代に多い.
男の 1 位,女の 2 位
男 2 位:胃癌,3 位:大腸癌
女 1 位:大腸癌,3 位:胃癌
『パンコースト症候群(腫瘍)』
*主に扁平上皮癌(肺尖部の癌)の胸郭外浸潤によるもの
*肺尖部の上に,C8,Th1 の神経根,上腕神経叢,頸部交感神経節がある
「症 状」
・反回神経の障害・・・・嗄声
・交感神経節の障害・・・ホルネル症候群
・上腕神経叢の障害・・・電撃痛,筋萎縮,知覚障害
『頸部交感神経麻痺(ホルネル症候群)』
*主に C8~Th12 までの交感神経の障害
「症 状」
・縮瞳 瞳孔散大筋の低下
・眼瞼下垂 瞼板筋の低下
・眼球陥凹 (眼瞼裂狭小ため)・発汗低下
◆眼瞼下垂をきたす疾患
・ホルネル症候群,重症筋無力症,動眼神経麻痺
交感神経性眼瞼下垂:交感神経支配の瞼板筋麻痺で生じるもの.交感神経は,三叉神経第一枝に吻合
し,虹彩まで至る.その経路が障害される Horner 症候群の眼瞼下垂のこと.
『肺癌における腫瘍随伴症候群』
・異所性 ACTH 症候群:ACTH 産生
・ADH 不適合症候群(SIADH):ADH 産生
・ランバート・イートン症候群(LEMS):筋無力症状
LEMS…神経筋接合部でのアセチルコリン放出障害
【転移性肺癌】
:乳癌,胃癌,肺癌からの転移が多い
《一般臨床医学 各論まとめ》
5
【自然気胸】
《原 因》
・原発性:肺嚢胞(ブラ,ブレブ)の破裂による
*背が高く,やせた,喫煙する,若い男性
・続発性:COPD,間質性肺炎,悪性腫瘍
*病態生理呼吸器 p178
♪
《症状・所見》
・突然の呼吸困難.胸痛.咳
・声音減弱,呼吸音減弱,鼓音
◆ 補 足 ◆
『胸部の視診』 p26
1.樽状胸:COPD,気管支喘息
2.漏斗胸:マルファン症候群
3.鳩 胸:くる病
『肺野の打診』 p35
*正常・・・清音
1.濁 音:肺炎,肺腫瘍,無気肺,胸膜炎
2.鼓音(過共鳴音):肺気腫,気胸
*p111・119 では鼓音と書いてある
『異常呼吸』
1.チェーン・ストークス呼吸:予後が非常に悪い状態
2.クスマウル呼吸:糖尿病,尿毒症
3.ビオー呼吸:脳圧亢進症
*浅速呼吸:肺水腫,肺塞栓症 生理学 p80
《一般臨床医学 各論まとめ》
6
■循環器疾患 総論■
【主要徴候】
《呼吸困難》:心不全では夜間呼吸困難や起坐呼吸がみられる
《失神発作》:アダムス・ストークス症候群:心臓の拍動異常による脳の血流低下
■循環器疾患 各論■
【心不全】
『左心不全』
:起座呼吸
『右心不全』
:浮腫
,発作性夜間呼吸困難,肺うっ血など
,腹水,静脈怒張など
【虚血性心疾患】
『狭心症』 『冠状動脈』心臓の栄養血管で上行大動脈の起始部から分枝
(ⅰ)労作性狭心症:労作時.冠硬化による
(ⅱ)不安定狭心症:症状が徐々に悪化.心筋梗塞に移行しやすい
(ⅲ)異型狭心症(冠攣縮性狭心症):安静時
『心筋梗塞』
・心筋虚血による心筋の壊死
《狭心症と心筋梗塞の違い》
狭心症
病 態
胸痛発作
ニトログリセリン
心電図
心筋梗塞
一過性の心筋虚血
虚血による心筋の壊死
数分~30 分以内
30 分以上
有効
無効
主に ST 低下
ST 上昇,異常 Q 波
心筋梗塞:トロポニン,CK,AST,ALT,LDH 上昇
《動脈硬化の危険因子》粥状硬化じゅくじょうこうか
・高血圧,脂質異常症,糖尿病,肥満,高尿酸血症,喫煙,
ストレス,家族歴など
《循環器疾患の主要症状》
:胸痛,呼吸困難,動悸,浮腫,失神など
《一般臨床医学 各論まとめ》
7
【弁膜症】
◆リウマチ熱が原因のことが多い
◆心房細動を生じやすい
『1.僧帽弁狭窄症』
・左房肥大→肺うっ血→右室肥大
・拡張期
雑音
♪
『2.僧帽弁閉鎖不全症』
・左室肥大
・収縮期
逆流性雑音
↑全収縮期
『3.大動脈弁狭窄症』
・左室肥大
・収縮期
駆出性雑音
・遅脈・小脈
『4.大動脈弁閉鎖不全』
・左室肥大
・拡張期
雑音
・速脈・大脈
【ファロー四徴症】
①大動脈騎乗
②心室中隔欠損
③肺動脈狭窄
④右室肥大
*症状:チアノーゼ,太鼓ばち指,木靴心
★チアノーゼ:皮膚や粘膜が青紫色の状態
還元ヘモグロビンが増えた状態
『先天性心疾患』他に心房中隔欠損,心室中隔欠損(最も多い)
*大動脈瘤・大動脈解離補足
【バージャー病】(閉塞性血栓血管炎)
・四肢の中小動脈に炎症が起き,血栓が形成される
・20~40 歳代の喫煙者(男性)に多い
・症 状:間欠性跛行 遊走性血栓性静脈炎
*他に,指(趾)の冷感,しびれ,虚血性潰瘍,壊死,レイノー現象
閉塞性動脈硬化症:腹大動脈分岐部から大腿動脈.50 歳以上
【心房細動】
・心房が無秩序に細かく震える不整脈
・血栓
を形成しやすい → 脳塞栓
の原因になる
《一般臨床医学 各論まとめ》
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■消化器疾患■
【食道癌】
・中高年の男性
に多い
・原 因:高濃度アルコール,喫煙,熱い食物
・発生部位:中部に多い
バレット食道からの腺癌.化生による円柱上皮化が原因.反回神経麻痺
・初発症状:無症状,わずかにしみる感じ
次第に嚥下時痛・嚥下困難
他に:ほとんどが扁平上皮癌.肝転移は少ない(他の消化器系と違う).
【消化性潰瘍】
・胃もしくは十二指腸の粘膜下層にまで組織が欠損したもの
・原 因:塩酸,ペプシン,ヘリコバクター・ピロリ菌
アルコール,ストレス,喫煙,NSAID,コーヒーなど
・合併症:吐血,狭窄,穿孔
『胃潰瘍』
・40 歳代に多い.食後に痛み.
『十二指腸潰瘍』
・30 歳代に多い.空腹時に痛み.
【胃 癌】
《特 徴》
・50~60 歳の男性に多い
・腺癌が多い
《早期胃癌の定義》
・癌の浸潤が粘膜下層
までにとどまるものをいう
・リンパ節転移は問わない
《分 類》
1.早期胃癌の肉眼分類(内視鏡含む)
2.進行胃癌の肉眼分類 = ボルマン分類
《一般臨床医学 各論まとめ》
9
《転 移》
1.ウィルヒョウのリンパ節
転移
・左鎖骨上窩リンパ節への転移
2.シュニッツラー
転移
・ダグラス窩(直腸子宮窩)への転移(播種)
♪
3.クルケンベルグ
腫瘍
・卵巣への転移
・播種が多い
他に,癌性腹膜炎(腹膜播種)
血行性転移では肝臓への転移(門脈を通って)が多い.
肺転移(奇静脈を通って)早期胃癌の 5 年生存率は 90%
『ダンピング症候群』
・胃切除後にみられる
・食後に悪心,冷汗,動悸,脱力感,腹痛,下痢などがみられる
【潰瘍性大腸炎とクローン病】
*原因不明で若年~青年に多い
腹痛,下痢,発熱,体重減少などの症状
潰瘍性大腸炎
組織病変
クローン病
粘膜下層まで
全層
大
消化管ならどこでも
腸
病 巣
*直腸に始まり全大腸を侵す
病巣の連続性
好発部位:回腸末端
あり (びまん性)
なし (スキップ)
急
徐々に
・狭窄,痔瘻
肉芽腫(非乾酪性)
性
症 状
・粘血便
《一般臨床医学 各論まとめ》
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【大腸癌】
・発生部位:直腸が最も多い
・症 状:血便あるいは粘血便
・腫瘍マーカー:胎児性癌抗原(CEA)
早期癌の 5 年生存率 99%.消化器癌の中で最も手術成績がよい
【虫垂炎】
*虫垂の管腔の閉塞に併発する急性化膿性炎症
《自発痛》
・初期は,心窩部痛や腹部全体の鈍痛 (内臓痛)
・次第にひどくなると,右下腹部に限局した鋭利痛 (体性痛)
《圧痛点》*詳細な部位まで出てる・p44
・マクバーニー点
・ランツ点
・ムンロー点
《腹膜刺激症状》
・筋性防御
:内臓-体性反射
・ロブジング徴候
・ブルンベルグ徴候
:左側腸骨窩を圧迫すると,右側腸骨窩に痛み
:圧迫しておいて,急に手を離すと強く痛む
反跳痛
・ローゼンシュタイン徴候
:左側臥位でマックバーネ点を押すと,
仰臥位(背臥位)よりも強い痛み
《一般臨床医学 各論まとめ》
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【腸閉塞(イレウス)】
《定 義》
・腸管内腔の閉塞(1)や腸管の運動障害(2)などによって,
正常な腸管内容の肛門側方向への通過が障害された状態
《分 類》
1.機械的閉塞
単純性・・・血行障害なし
複雑性(絞扼性)・・・血行障害あり
♪
2.機能的閉塞
麻痺性
けいれん性
《各特徴》
・機械的閉塞:腹腔内癒着(開腹術後の癒着)が最も多い
・複雑性閉塞
:緊急手術の適応
(絞扼性↑)
・機能的閉塞:腹膜炎
(麻痺性↑)
《症 状》
*排便・排ガスの停止,腹部膨満,腹痛,嘔吐など
・機械的閉塞:ぐる音増強.腸蠕動不穏
(腸雑音の異常亢進↑)
・機能的閉塞:ぐる音消失(低下)
(麻痺性↑)
不穏=おだやかでないこと
打診:鼓音
聴診:ぐる音(腹鳴)
グル音:gurgle(英語),gurren(ドイツ語)
*TNM 分類* = 悪性腫瘍の進行度を分類
T:原発巣の拡がり方
N:所属リンパ節の転移
M:遠隔転移の有無
*三つの要素を組み合わせて病期 stage の分類(Ⅰ~Ⅳ)が行われる.
《一般臨床医学 各論まとめ》
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【肝
■肝・胆・膵疾患■
炎】= 肝細胞の死 アルコールや薬剤性のものは肝障害ということが多い
*主にウイルスによる炎症を肝炎という
*ウイルスの種類:A.B.C.D.E など
特徴:肝細胞に強い親和性をもつ (肝細胞だけに感染する)
肝細胞を壊さない
*免疫系に認識されると → 肝細胞ごと殺される
認識されないと → そのまま生き延びる (無症候性キャリア)
・急性肝炎…一気にウイルスを殺す
・慢性肝炎…少しずつしか殺さない
*A 型:約 45%,B 型:約 25%,C 型:約 10%
A型
B型
C型
感染経路
経口
血液
血液
急性か慢性か
急性のみ
どちらもある
慢性化しやすい
発 癌
まれ
やや多い
多い
最も多い
劇症化
B 型肝炎:抗体の出現順…c(初期)→e(うつすことはまれ)→s(かつて感染していた・予防接種後)
HBe 抗原=感染力↑
HBs 抗原=現在感染している
HBc 抗原が余ると HBe 抗原
【肝硬変】慢性の炎症などにより細胞が何度も再生を繰り返すうちボロボロになる
・進行性の慢性肝障害の終末像.不可逆性
・三大変化:線維化,再生結節(偽小葉),血管構築の大きな歪み
《症 状》
・門脈圧亢進症状 はばたき振戦,赤鼻性座瘡,脾腫,
・泥土様黄疸,くも状血管腫,手掌紅斑,女性化乳房,など
・合併症:消化管出血,肝性昏睡,播種性血管凝固症候群,肝癌など
*門脈圧亢進症*
*門脈を通過出来ない血液は他のルートを経由して心臓へ戻ろうとする
①食道静脈を経由・・・食道静脈瘤
②腹壁静脈を経由・・・メズサの頭 臍傍静脈ともいう.皮静脈を通るためみられる
③直腸静脈を経由・・・痔核
・腹水
:低アルブミン血症と門脈圧(類洞圧)亢進による
・脾 腫:汎血球減少をきたす 肝硬変以外でも門脈圧亢進のみられる疾患はある
《一般臨床医学 各論まとめ》
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【急性膵炎】 *膵炎 = 膵酵素による自己消化
・膵臓が再生に向かえば治癒可能(一過性)
『原
因』
:アルコール.胆石
(副甲状腺機能亢進症.耳下腺炎など)
他に暴飲暴食原因不明など
『症
状』
:心窩部の激痛.前屈位(エビ姿勢・胸膝位)をとる
『検
査』
:血清アミラーゼ・尿中アミラーゼ上昇
『治
療』
:絶食,絶飲
♪
モルヒネの単独投与は禁忌:オッディ括約筋を収縮させて
しまい膵管内圧が上昇する
【慢性膵炎】
・長期間の炎症による,膵臓の不可逆性の破壊.膵臓の線維化
『原
因』
:アルコールによるものが最も多い
『症 状』
1.代償期:腹痛発作(急性再燃期と間欠期に分けられる)
2.非代償期:外分泌腺障害・・・消化吸収障害,脂肪便
内分泌腺障害・・・糖尿病症状
『治
療』
:禁酒,脂肪制限など
頻回少量の食事.カフェイン禁止など
◆急性・慢性とも仮性膵嚢胞を合併しやすい
*アルコール代謝*
ビタミン B1 を大量に消費
水分・糖分を補給するのがよい
・肝臓で分解
1.アルコールを分解する酵素により,「アセドアルデヒト」(毒性強い)となる
2.アセドアルデヒトを分解する酵素により「酢酸」となる
3.酢酸からアセチル CoA となり二酸化炭素と水に分解(TCA 回路?)
(余れば中性脂肪として貯蔵?)
*アセドアルデヒト:顔面紅潮.吐き気.頭痛.心拍数増加など
《一般臨床医学 各論まとめ》
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■代謝・栄養疾患■
【糖尿病】
*糖の役割
ブドウ糖(グルコース)は生体に最も重要なエネルギー源であり,
血液中から全身の細胞に取り込まれる
*インスリン
膵
臓のランゲルハンス島の B 細胞(主に膵尾部に分布)でつくられる
筋細胞や肝細胞内へのグルコースの取り込みを増加させ,
グリコーゲン合成を促進する
《分 類》
Ⅰ型:インスリン依存型
・若年者に多い
・急激に進行する場合が多い
・自己免疫が関与
Ⅱ型:インスリン非依存型
・中年以降にみられる
・緩徐に発症
・肥満に多い
・遺伝的素因が関与
《症 状》
・口渇・多飲・多尿
・体重減少など ・無症状のこともある
《急性合併症》(糖尿病性昏睡)
①糖尿病性ケトアシドーシス性昏睡
・Ⅰ型に多い 血糖の上昇,インスリン作用の不足により,
・脂肪の分解が亢進し,血中にケトン体が増加する
*ケトン体は血液を酸性に傾ける
・アシドーシスを代償するため過呼吸になる
*クスマウル
の大呼吸:深く,頻回の呼吸
・高血糖による浸透圧利尿で脱水状態
・循環血液量の低下 → 血圧の低下 → 昏睡
・アセトン臭:甘酸っぱい臭いらしい
ケトン体:アセトン,アセト酢酸,β-ヒドロキシ酪酸
②高浸透圧性非ケトン性糖尿病性昏睡
・Ⅱ型の老人に多い 脂肪は分解されずケトン体は増加しないが,
・高度な脱水
高血糖により細胞内の水分は血管に吸い上げられ,
・高ナトリウム血症
その水分が尿で漏れ出てしまう
◈感染症:免疫力の低下 なぜ起きるかは分かってない
《一般臨床医学 各論まとめ》
15
《慢性合併症》:長期の高血糖状態では血管の障害が促進される
①網膜
症:最終的には失明することもある
②腎 症:腎不全となり透析導入
③神経
♪
蛋白尿
障害:四肢の遠位部に対称性の知覚障害
glove and stocking 型
腱反射低下・消失 下肢の振動覚が早期に障害
シャルコー関節,痛覚麻痺による関節破壊
*シャルコー関節(神経病性関節症):糖尿病のほかに・・・
・脊髄空洞症.脊髄癆
④その他:足趾壊疽,動脈硬化症など
起立性低血圧,膀胱障害,インポテンスなど
《検 査》血糖値:70~109mg/dl HbA1c:4.3~5.8
・ブドウ糖負荷試験:ブドウ糖を摂取し,その後の数値を調べる
・HbA1c:測定時より 1~2 ヶ月前の血糖状態を反映する
・血漿 C ペプチド値:インスリン分泌能の評価 C ペプチドとはインスリン
が分泌される際に一緒に分泌される.プロインスリン→インスリンと C ペプチドへ分解
《治 療》
・食事療法,運動療法,薬物療法
基本的には治癒困難
[耐糖能とは?]
*糖に耐える能力 → 血中の糖の濃度を正常に保つ能力 →
上昇した血糖値を正常に戻す能力 → インスリンの作用の能力
[血糖を調節するホルモン]
・血糖降下作用ホルモン:インスリン
・血糖上昇作用ホルモン:グルカゴン
,副腎皮質ホルモン,
ACTH,成長ホルモン,カテコールアミン
◈インスリン:血糖が上昇すると働く
*肝臓ではグリコーゲン合成促進,蛋白・脂肪合成促進,糖新生低下
*筋ではグリコーゲン合成促進,蛋白質合成促進,K の取り込み促進
*脂肪組織では脂肪合成促進 エネルギー源の貯蔵
《一般臨床医学 各論まとめ》
16
■内分泌疾患■
『成長ホルモン』
・肝臓に働きかけソマトメジンを分泌 → 骨格成長.蛋白同化作用
・グリコーゲンを分解して血中へ → 血糖上昇
・貯蔵されている脂肪を分解.血中の遊離脂肪酸が増える
*分泌促進要因…睡眠時・絶食・低血糖・運動
・他に:カルシウムとリンの吸収促進.免疫防御能促進
【巨人症】 ♠)下垂体腺腫によることが多い
*成長ホルモン(GH)が過剰に分泌されると・・・
・先端の肥大(眉弓部膨隆,鼻・口唇の肥大,下顎の突出,四肢末端の肥大など)
・高脂血症,高血糖,高血圧 プロラクチンが性腺を抑制する作用を持つから
・性腺機能の低下 性腺刺激ホルモンの細胞を圧迫.プロラクチンの産生による
いろんな組織がでかくなる
*腫瘍による圧迫症状:脳圧亢進症状,両耳側半盲,視力低下
↑p231:頭痛,嘔吐,うっ血乳頭,徐脈
♠)下垂体腺腫
・プロラクチン産生腫瘍
・成長ホルモン産生腫瘍
・副腎皮質刺激ホルモン産生腫瘍
などなど
【下垂体性小人症】 *GH の分泌低下
・身体の均整のとれた小人
*下垂体機能低下症:シモンズ病,シーハン症候群 p178
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『抗利尿ホルモン』(ADH,バゾプレッシン)
・集合管での水の再吸収促進 → 尿量を減らす
*血漿浸透圧の調節に関与
・血管平滑筋の収縮(主に細動脈) →
血圧上昇
*血圧の調節に関与
【尿崩症】
*ADH の分泌低下や,ADH に対する反応が低下すると…
・多尿(希釈尿)・口渇・多飲
《一般臨床医学 各論まとめ》
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『副甲状腺ホルモン』(上皮小体ホルモン・パラソルモン・PTH)
・骨の再吸収促進(骨から Ca を血中へ吸収)
・破骨細胞の活性化
*造骨細胞の活性化が後に起こる.
・ビタミン D に作用して腸管からの Ca イオン吸収促進
・腎臓で P の再吸収抑制(排泄促進).Ca 再吸収促進
↓
*血中 Ca 濃度の増加
♪
,血中 P 濃度の減少
【副甲状腺機能亢進症】
・高カルシウム血症.結石症.病的骨折
・消化器症状,多尿
・検査所見:血中 PTH 上昇
アルカリホスファターゼ上昇
【副甲状腺機能低下症】*現在の教科書では削除
・低カルシウム血症:テタニー (筋肉の痙攣)
クボステーク徴候
トルーソー徴候
・検査所見:血中 PTH 低下
高 P 血症
*Trousseau 徴候:上腕にマンシェットを巻き前腕への血流を止めると,助産婦手位となる
*Chvostek 徴候:外耳孔の前方で顔面神経を叩打すると,眼輪筋や口輪筋が痙攣する
『位 置』
甲状腺両葉の後面 通常は 4 個(個人差あり)
生理学 p190
『ビタミン D』
:皮膚・肝臓・腎臓が生成に関与 日光も
*骨代謝の促進…血中 Ca 濃度の増加 骨からの Ca・P の遊離
腎臓での Ca の再吸収亢進(排泄抑制)腸管からの Ca・P の吸収促進
《一般臨床医学 各論まとめ》
18
『甲状腺ホルモン』(サイロキシン・トリヨードサイロニン)
・熱量産生,酸素消費の増加 → 基礎代謝亢進.発育促進
・蛋白,糖,脂質代謝への作用 → 血糖上昇など
・カテコラミン(特にアドレナリン)の作用の促進
*成長発育に重要なホルモン
*思考が迅速になる.反射の時間が短縮する
【甲状腺機能亢進症】(バセドウ病・グレーブス病)
・抗 TSH 受容体抗体による自己免疫疾患と考えられている
*Ⅴ型アレルギー
(Ⅱ型アレルギーの亜型)
・20~50 歳の女性に多い
《バセドウ病の三大特徴(メルゼブルグの三徴候)》
①甲状腺腫(びまん性.無痛性.やわらかい)
②眼球突出
③頻脈
*他の症状:頻脈,発汗過多,動悸,振戦,食欲亢進,体重減少,
微熱,暑がりなど
*周期性四肢麻痺
:低カリウム血性 男性に多くみられる.過食や飲酒後
*他に周期性四肢麻痺がみられるのは原発性アルドステロン症
《検 査》
・血中の甲状腺ホルモン濃度上昇
・血中 TSH(甲状腺刺激ホルモン)の低下
『甲
状 腺』 生理学 p153~
・頚部前面の甲状軟骨のやや下方に位置する
*濾胞上皮細胞から分泌
カルシトニン*傍濾胞細胞から分泌
《一般臨床医学 各論まとめ》
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【甲状腺機能低下症】(粘液水腫)
・寒がり,皮膚の乾燥,徐脈,低血圧など
・圧痕を残さない浮腫 → 粘液水腫
・成人では,およそバセドウ病の逆の症状がみられる.
*小児に発症すると…↓
『クレチン病
』
・低身長:四肢が短く,頭部が大きい
・知能低下など
♪
*その他:慢性甲状腺炎(橋本病)の終極像でみられる
【慢性甲状腺炎】(橋本病)
・自己免疫疾患
・20~50 歳の女性に多い
・びまん性甲状腺腫:ゴム様硬
・嗄声
・慢性に経過するため,大部分の期間では甲状腺機能は正常
・抗ミクロゾーム抗体・抗サイログロブリン抗体がみられる抗甲状腺抗体
◆被曝による甲状腺への影響
・甲状腺ホルモンの合成にはヨードが必要
・原子力施設には,放射性ヨードを含むものがある
(ウランの核分裂によって生成)
・事故などにより,放射性ヨードが流出
・ヒトの体内に流入
・体内に入った放射性ヨードは甲状腺に取り込まれる
・甲状腺に異常をきたす
→
甲状腺癌
*安定ヨード(放射能を持たないヨード)を投与し,甲状腺のヨード含有を飽和させる.
そうすることにより,放射性ヨードを取り込めないようにする
《一般臨床医学 各論まとめ》
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♪ 副 腎 ♪
《解 剖》
・左右の腎臓の上に位置する内分泌器官
・腎上体ともよぶ
・皮質と髄質に分けられる
・静脈の経路:右側は下大静脈へ
左側は左腎静脈へ
*精巣・卵巣静脈も同じ経路
《副腎皮質から分泌されるホルモン》 :視床下部・下垂体で調節される
◆コレステロールを原料にして作られ,ステロイドと総称される
1.アルドステロン:電解質コルチコイド
*球状層から分泌される Na+と水の再吸収,K+とH+の排泄を促進
2.コルチゾール:糖質コルチコイド
*主に束状層から分泌される
糖新生,免疫調節,ストレス応答etc
3.アンドロゲン:男性ホルモン(テストステロンなど)
*主に網状層から分泌される 作用は弱いが女性の腋毛や恥毛を生やす
《副腎髄質から分泌されるホルモン》
*カテコールアミン:アドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミン
《一般臨床医学 各論まとめ》
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《アルドステロン》
・Na+の再吸収促進
:特に遠位尿細管や集合管にて
+
+
・K と H の排泄促進
:Na+の再吸収と交換
*レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA 系)
レニン:細胞外液量の減少,血圧低下,交感神経興奮,立位などにより分泌促進
アンジオテンシン:血管平滑筋の収縮,アルドステロンや ADH の分泌促進
♪
【アルドステロン症】(Conn 症候群)
*アルドステロンの分泌が過剰になると・・・
・高血圧:Na+の再吸収促進による
・低 K 血症:周期性四肢麻痺.テタニー
・代謝性アルカローシス
*アルカローシスとテタニー
低 K 血症
↓
細胞内の K+が細胞外へ
↓
代わりに H+が細胞内へ
↓
アルカローシス
↓
血漿蛋白の周りの H+が減る
↓
代わりに Ca2+が蛋白に結合する
↓
低 Ca 血症
↓
テタニー
《一般臨床医学 各論まとめ》
p183
22
《コルチゾール》
①血糖上昇作用
・糖質代謝:蛋白質を分解し,糖新生とグリコーゲン蓄積の促進
末梢組織での糖の利用を抑制
・蛋白代謝:蛋白質の異化を亢進→体内の蛋白質を分解
・脂質代謝:状況により体内の脂質を分解する
②免疫,炎症の抑制:好中球増加,好酸球減少,リンパ球減少など
③骨形成低下:腸管からの Ca 吸収を抑制.破骨細胞増加
④血圧上昇作用:カテコールアミン,アンジオテンシンⅡの作用強化
⑤ストレスにより分泌増加:エネルギー代謝亢進
⑥サーカディアンリズム:分泌は朝高く,夕方低い
【クッシング症候群】
《原 因》 ・副腎皮質腫瘍:コルチゾールの過剰分泌
・クッシング病:下垂体腺腫による ACTH 過剰分泌
・異所性 ACTH 産生腫瘍:肺の小細胞癌などによる
・副腎皮質腫瘍:ACTH 非依存性
・医原性:ステロイド薬の長期投与・過剰投与による
《症 状》
・中心性肥満
・満月様顔貌
・赤色皮膚線条
・水牛様脂肪塊(野牛背)
・高血圧
・高血糖
・脂質異常症
・骨粗鬆症
・易感染性,浮腫 など
*その他
ACTH 過剰分泌による症状:色素沈着
アンドロゲンによる症状:多毛,無月経
アルドステロンによる症状:高 Na 血症,低 K 血症
《一般臨床医学 各論まとめ》