横浜医学,₆₅,₄₉₅-₅₀₂(₂₀₁₄) 原著 横浜市における小児科医の熱性けいれんに関する調査 ₁) ₁) ₁) 本 井 宏 尚 ,藤 原 祐 ,渡 辺 好 宏 , ₁) ₁) ₂) 武 下 草生子 ,森 雅 亮 ,宇南山 貴 男 ₁) 横浜市立大学附属市民総合医療センター 小児総合医療センター, ₂) 宇南山小児科医院 要 旨: 【緒言】熱性けいれんは小児科医が日常的に診療する救急疾患である.熱性けいれん(Febrile Seizures: FS)は概ね良好の経過をたどるが,細菌性髄膜炎,急性脳炎・脳症,代謝性疾患,てんかん などとの鑑別を要するため,慎重な対応が必要である.本邦では₁₉₉₆年に福山らにより「熱性けいれ ん指導ガイドライン」が作成されており,多くの小児科医が本ガイドラインに準じて診療にあたって いると思われる.しかし,実際の診療では問診,保護者への説明内容,ジアゼパム坐薬の予防投与の 適応,治療内容は様々である. 【目的】ガイドラインの遵守状況を把握し,勤務形態や医師経験年数 による FS に対する考え方・診療方法の違いなどを明らかにする.また,ガイドラインに記載のない けいれんを誘発する可能性のある薬剤の使用方法,画像検査の適応について臨床医の考え方を調査す る.【対象・方法】₂₀₁₃年 ₈ 月から ₉ 月の期間に横浜市立大学小児科同窓(同門)会員にファックス でアンケート調査用紙を配布・回収した.【結果】調査依頼総数は₂₁₉名,回収総数は₅₉名であり回収 率は₂₇%であった.多くの小児科医はガイドラインに準じて診療しているが,細部では医師毎に対応 が異なることが分かった. 【結論】横浜市で勤務している多くの小児科医はガイドラインに準じて診 療している.FS は外来で遭遇する機会の多い予後良好疾患であるが,FS の中に重症疾患が隠れてい ることを常に念頭に置き,ガイドラインに基づいた一貫性のある的確な検査・治療がなされることが 重要だと考えられる. Key words: 熱性けいれん(Febrile seizures) , 熱性けいれん指導ガイドライン(Febrile seizures instruction guidelines) , ジアゼパム(Diazepam) ,抗アレルギー薬(Antiallergic drug) , 抗てんかん薬(Antiepileptic drug) イドライン」が作成されており,多くの小児科医がガイ 緒 言 ドラインに準じて診療にあたっていると思われる.しか 熱性けいれん(Febrile Seizures: FS)は小児科医が日常 し,実際の診療では問診,保護者への説明内容,ジアゼ 的に診療する救急疾患である.本邦での FS 有病率は ₇ ~ パム(Diazepam: DZP)坐薬の予防投与の適応,治療内容 ₈ %とされており,欧米における ₂ ~ ₅ %よりも高い . は様々である可能性がある. 発症者の半数以上は生涯 ₁ 回のみであり, ₂ 回は₂₅~ 今回我々は,横浜市立大学小児科同窓(同門)会員を ₅₀%, ₃ 回以上は ₉ %である ₁ ).FS は概ね良好の経過を 対象に現行のガイドラインに則った質問項目を含んだア たどるが,細菌性髄膜炎,急性脳炎・脳症,代謝性疾患, ンケート調査をした.ガイドラインの遵守状況を把握し てんかんなどとの鑑別を要するため,慎重な対応が必要 て,勤務形態や医師経験年数による FS に対する考え方・ である. 診療方法がいかに異なるかを明らかにし,さらにガイド 本邦では₁₉₉₆年に福山らにより「熱性けいれん指導ガ ラインの記載内容に関して文献的考察を加えて報告す ₁) 本井宏尚,横浜市南区浦舟町 ₄ -₅₇(〒₂₃₂-₀₀₂₄)横浜市立大学附属市民総合医療センター 小児総合医療センター (原稿受付 ₂₀₁₄年 ₈ 月 ₉ 日/改訂原稿受付 ₂₀₁₄年₁₀月₁₇日/受理 ₂₀₁₄年₁₀月₂₀日) 495
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