「情報技術によるインフラ高度化」社会連携講座(第2期) 年次シンポジウム

「情報技術によるインフラ高度化」社会連携講座(第2期)
年次シンポジウム
日
場
時:平成27年4月22日(水) 16:00∼18:00
所:東京大学 山上会館2階 大会議室
次 第
1. 開会
2. 開会ご挨拶
東京大学大学院 情報学環
教授
3. 講座活動報告
東京大学大学院 情報学環
特任教授
坂村 健
石川 雄章
4. パネリストご講演
「社会インフラの損傷や劣化状態を監視するモニタリングシステムの技術開発」
□早稲田大学 理工学術院社会環境工学科 教授 依田 照彦
「社会インフラの維持管理におけるビッグデータ時代の到来」
□北海道大学大学院 情報科学研究科 教授 長谷山 美紀
5. パネルディスカッション
「情報技術によるインフラ高度化」社会連携講座(第2期)
年次シンポジウム ご講演の概要
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早稲田大学 理工学術院社会環境工学科 教授 依田 照彦 様
講演題目:社会インフラの損傷や劣化状態を監視するモニタリングシステムの技術開発
社会インフラの高齢化・老朽化に伴い、効率的な点検・診断・維持管理の重要性が高まってい
る。社会インフラの安全性向上と長寿命化、劣化対策、重大事故の撲滅、防災力強化などは当然重
要なこととして位置づけられる。過去の社会インフラの損傷事例を具に検討すると、地震や衝撃の
ように短時間で損傷が発生する現象を除けば、じわじわと損傷や劣化が進む現象に対しては基本的
に前兆が見られる。つまり、この前兆を正確に見つけられるかどうかが技術力(モニタリングシス
テム)のカギとなる。
モニタリングシステムを維持管理・更新の現場で活用していくことが、技術者不足や維持管理・
更新コスト縮減のために必要であると期待されているものの、現段階では本格的な現場導入には至
っていない。このような現状に鑑み、2014 年 12 月に設立されたモニタリングシステム技術研究組合
(RAIMS)では、損傷・劣化の状態監視を社会インフラの維持管理業務に適用するため、センサや通
信・データ解析技術等を活用したモニタリングシステムの社会インフラ分野への実用化導入を図る
ことを目標に活動を開始した。
この技術研究組合では、モニタリング技術を維持管理業務で活用することを前提に、道路・高速
道路の管理者、ゼネコン、建設コンサルタント、電気・通信メーカー、センサ・設備メーカーと各
分野の専門家の総力を結集して、分野間の横断的な体制を構築し、モニタリングシステムの基準
化・標準化に向けた研究を進め、社会貢献につなげることを企画している。モニタリング技術のテ
ーマの設定にあたっては、社会インフラを管理する側のニーズに合致した最適なモニタリングシス
テムの早期実用化が喫緊の課題であると考えている。早ければ 2,3 年で最初の成果を出したい。そ
れとともに、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)事業との整合性を考え、持続的
な維持管理・更新市場の創造とモニタリング技術の海外展開を念頭に置いている。
本講演では、モニタリングシステム技術研究組合(RAIMS)の研究活動の紹介を通じて、社会イン
フラにおけるイノベーションに向けた取り組みについて説明する。
北海道大学大学院 情報科学研究科 教授 長谷山 美紀 様
講演題目:社会インフラの維持管理におけるビッグデータ時代の到来
橋梁やトンネル等の構造物の適切かつ効率的な維持管理を実現するためには、教育を受けた技術
者の統一的な要領に基づいた点検が必須であり、社会インフラを維持管理する事業体では、以前よ
りそれを実施してきた。長く蓄積された点検データには、この分野の貴重な知識とノウハウが含ま
れており、社会インフラの大量老朽化時代に直面する現在において、その活用が重要な役割を担う
ものと考える。
講演者は、東日本高速道路㈱(NEXCO 東日本)との共同研究を通して、点検構造物の場所、点検箇
所の位置、工種、材料種別や点検の際に撮像された画像、損傷の種類の識別や程度の判定結果など
大量かつ多様なデータを解析する技術を実現している。この技術により、構造物の維持・補修に新
たな知見が見出され、事業の効率化や高度化が期待できるだけでなく、他業種への展開や海外展開
など新たなサービスを生み出す可能性がある。社会インフラの維持管理にも、ビッグデータ時代が
到来したと言える。
実際に、実現された技術に基づき、画像を含む多様な点検データを解析することで、損傷評価を
支援し、精度を向上するデータ解析基盤が開発されている。この解析基盤は、損傷評価の支援だけ
でなく、技術者が損傷評価を行う際の見落としを抑止するための気づきを与える可視化インタフェ
ースを備えている。将来は、利用の継続により蓄積された操作履歴データを分析し、技術伝承の役
割を担う機能の実現も目指している。
本講演では、まずビッグデータ解析について簡単に説明し、その後、開発された解析技術を紹介
し、実際の点検データに適用した結果と今後の解析技術の発展イメージについて説明する。