BCS-BEC クロスオーバー 量子スピン系 重い電子系

本研究室では主として、高温超伝導、新奇超伝導状態、重い電子状態、量子臨界現
象、量子スピン系等に興味を持って研究を行っています。実際には極低温・強磁場
における電子輸送測定や熱測定、走査型トンネル顕微鏡測定等、多角的なアプロー
チによりこれらの特異な電子状態を解明しています。また超純良単結晶の開発、人
工超格子による自然界には存在しない系の作製等、世界屈指の技術を用いて試料作
製も行っております。
BCS-BEC クロスオーバー
量子スピン系
通常の超伝導物質 ( BCS 極限 ) では、 電子の運動エネルギーは
反強磁性的にオーダーしようとするスピンが正四面体上に配置され
ペアを作るエネルギーよりも大きく、 ペア同士は重なりあっています
ると、 幾何学的フラストレーションの効果により、 2 つのスピンが
( 左図 )。 それに対して、 ペアを作るエネルギーが強くなった極限
正四面体の内側、 もう 2 つが外側を向くアイスルールに従うこと
( BEC 極限 ) では、 強く束縛された分子状のペアが作られペア同
が知られております。 このアイスルールを満たすパイロクロア型酸
士は孤立しています ( 右図 )。 本研究室では、 鉄系超伝導体の
化物はスピンアイスと呼ばれており、 励起状態において磁気モノ
電子状態と超伝導状態を調べることで、 電子の運動エネルギーεF
ポールが出現します (上図)。 本研究室では熱伝導率測定により、
とペアを形成するエネルギーΔがほぼ同程度であり、 BCS-BEC クロ
スピンアイス物質 Yb2Ti2O7 の素励起について研究し、 量子力学
スオーバー領域に位置している物質が存在することを発見しました。
に従う磁気モノポールを実験的に発見しました。 我々はスピンアイ
この状態を詳細に調べることにより、 新しい概念が得られると期待
スのみならず、 三角格子スピン液体やキタエフスピン液体等、 様々
されるため現在も精力的に研究を行っています。
な幾何学的フラストレーション系を研究しています。
重い電子系
Scanning
Tunneling
Microscope
Molecular
Beam
Epitaxy
MBE法を用いて
作製した人工超格子
電子間に強い相互作用が働く系では、例えば電子の有効質量が自由
薄膜作製に世界で初めて成功し、さらに原子レベルの分解能を持つ
電子の質量に比べ1000 倍以上になる「重い電子系」 など、特異な
走査型トンネル顕微鏡(STM)で薄膜を測定するシステムを構築しました。
電子状態が発現しています。 こうした強相関電子系の解明において
この装置を用いることで、 重い電子状態、近藤ホール、FFLO状態等
微視的な電子状態の直接観測が求められています。
特異な電子状態のほか、自然界に存在しない人工的に作製した
私たちは分子線エピタキシー(MBE)法による重い電子系化合物の
超格子の電子状態の解明を目指しています。