研究課題:緩和医療に携わる医療従事者の育成に関する研究 課題番号

研究課題:緩和医療に携わる医療従事者の育成に関する研究
課題番号:H22―がん臨床―一般―004
研究代表者:国立大学法人筑波大学大学院人間総合科学研究科
1.
講師
木澤 義之
本年度の研究成果
本研究班の目的は、わが国の緩和ケアの均てん化に資するため、全国のがん診療拠点病院
をはじめとするがん診療を行っている病院において専門的な緩和ケア実践の核となっている
緩和ケアチームが 1)どのように活動すれば効果的に活動できるかその指針を作成し 2)
効果的に活動するための教育プログラムを開発・実践し、その効果的な教育方法を明らかに
することである。加えて、緩和ケアチームと協働して基本的な緩和ケアを実践するがん診療
に携わる医師、看護師、コメディカルスタッフの教育方法についても検討を行うことである。
以下に 3 年間の研究の 1 年目に当たる本年度の成果を述べる。
(1)緩和ケアチームに対する教育プログラムの開発と実施:緩和ケアチームの質の向上を
目的に、緩和ケアチームの質の向上のための研修プログラムの開発と実施を行った。昨年度
の実施状況、参加チームの状態からより基礎的な研修が必要と考えられたことから、本年度
は昨年度開発した緩和ケア基礎研修会を 2 回(8 月札幌、10 月大阪)
、本年度新たに開発した
中級用研修会を 2 回、東京で実施、もしくは実施予定である。
また、これと並行して全国で活動している緩和ケアチームの活動の実態を把握するために、
全国のがん診療拠点病院および緩和ケア研修会指導者の所属施設、日本緩和医療学会の専門
医・暫定指導医の所属施設、日本緩和医療学会の認定研修施設 836 施設を対象とした緩和ケ
アチームの活動実態に関する全国調査を実施中である。
(2)緩和ケアチーム研修会の評価:緩和ケアチームの活動の評価尺度を用いて研修会の
評価を実施し、研修会参加チームを対象に 6 カ月後まで追跡調査を実施した。交絡因子はあ
るが、全体として研修会参加者の活動は有意に向上しており、今年度まで実施してきた緩和
ケアチーム研修会の有用性が明らかとなった。
(3)緩和医療に携わる医師の育成に関する研究
① すべてのがん診療に携わる医師に対する緩和医療の基本的な教育プログラム(PEACE)
および教育用の教材の追加作成:昨年度までに作成された PEACE プログラムの追加モ
ジュールー今後のことを話し合うの改訂のため、全国のホスピス緩和ケア病棟に対し
てアドバンスケアプランニングに関する調査を実施し、教育資料の作成を行った。
② 緩和ケアの基本教育に関する指導者研修会の評価に関する研究:平成 20-22 年度に行
われた緩和ケアの基本教育に関する指導者研修会修了者を対象として質問紙調査を行
い、緩和ケア指導者研修会の有用性、緩和ケア教育に関する自信、緩和医療に対する
行動変容、緩和ケア研修会の開催状況などに関する調査を実施中である。
③ 全国で行われている緩和ケア研修会の評価(参加者の知識、自身、行動変容)を目的
として来年度ウェイティングリストコントロールを用いたランダム化比較試験を計画
している。本年度は研究のための評価尺度の作成のため、デルファイ法を用いた評価
指標の作成を行い同評価表の信頼性および妥当性の検証を今年度中に行う予定である。
④ 昨年度開発された小児科医対する緩和ケア教育プログラムである CLIC(Care for
Life-threatening Illness in Childhood)のプログラムの開発及び修正を行うととも
に、2 回のプログラムの実施に伴う研修会の評価を行った。参加者はプログラムの有用
性を高く評価し、満足度は高かった。今後プログラムの評価が課題である。
(4)緩和ケアに携わる看護師の育成に関する研究
① 昨 年 度 ま で に 開 発し た 看 護 師に 対 す る 基 本的な 緩 和 ケ ア 教 育 プロ グ ラ ム ELNEC
〈End-of-Life Nursing Education Consortium〉日本語版の改訂:ELNEC-J のガイド改
定に際して、ELNEC-J 指導者に実際の活用についてメール調査したところ、回収率は約
30%で、教育プログラムがあまり実施されていないことが問題であることがわかった。そ
の一つの理由として、ガイドの内容が、現在の日本の実情に合っていないことや指導者が
すぐに使えるものになっていないという問題点があり、内容を改定することになった。本
年度中に改訂は終了する予定である
② ELNEC-J プログラムの評価
指導者養成プログラムの評価を既存の尺度を用いて行う予定である。また、来年度からエ
ンドユーザー研修階の評価を行うため、評価尺度の作成を実施中である。
(5)緩和ケアに携わるコメディカルスタッフの育成に関する研究
① 薬剤師の教育プログラムの開発:本年度はデルファイ変法を用いて緩和ケアに携わる薬剤
師の学習目標を確定させる予定である。来年度以降は作成された学習目標をもとに現場の
薬剤師を対象としたニーズ調査を行い、緩和医療に携わる薬剤師の能力の底上げを目的と
した基礎的な教育プログラムを作成する予定である。
② 心理士の育成に関する研究:他の研究班(がん助成金内富班)と協力し 「緩和ケアチー
ムの臨床心理士に求められる能力」を明らかにするための研究を実施中である。また、昨
年度までに実施したがん医療における心理士の実態調査の分析をさらに進める予定である。
3.研究成果の意義及び今後の発展性
本年度は3年計画の研究の1年目であり、本研究の実施により緩和医療に携わる医療従事
者の育成のさらなる発展の第一歩とを踏み出すことができた。
まず緩和ケアチームの育成に関しては①緩和ケアチームに対する新たな教育プログラム(
中級用プログラム)が開発され②緩和ケアチームの教育プログラムの有効性が明らかとなり
、本年度は国立がんセンターと協力して約50施設の緩和ケアチームに対して研修を実施す
ることにより全国のがん診療拠点病院の緩和ケアチームの質の向上に寄与した。また、緩和
ケアチームの活動実態に関する実態調査を実施し、全国で、どれくらいの患者が緩和ケアチ
ームを利用しているかを明らかにした。緩和医療に携わる医師の育成に関しては、①基本的
な緩和医療の研修プログラム(PEACE および CLIC)の追加と修正、プログラムの改訂が行わ
れ②緩和医療の基本教育に関する指導医研修会の有効性が明らかとなった。また、緩和医療
に携わる看護師の育成に関しては、緩和ケアの基本的な教育プログラムである ELNEC-J の改
訂が行われ、指導者研修会の有効性の評価が行われ、エンドユーザー研修会の評価尺度の開
発が開始された。本研究によって開発された緩和ケアチーム、医師、看護師に対する教育プ
ログラムが総合的に実施されることにより、多くの患者に早期から、効率的に緩和医療が実
践されることが期待できる。今後は、開発されたプログラムの有効性を検証し、より効率的
効果的なプログラムの作成および現行プログラムの修正および改善を図るとともに、コメデ
ィカルに対する具体的な教育プログラムの作成を行う必要性がある。
4.倫理面への配慮
本研究は、患者家族を対象としたものではなく、医療従事者を対象とした調査および教育
プログラムの作成およびその有効性の検証に関する研究である。調査は氏名や施設名が特定
できぬようコード化して行い、解析を行った。また、得られた結果は統計学的処理に使用し
個人のプライバシーは守られる旨を文書にて説明した上で調査を行った。
5.発表論文
1)
Ise Y, Morita T, Maehori N, Kutsuwa M, Shiokawa M, Kizawa Y:Role of the
community pharmacy in palliative care: A nationwide survey in Japan.J Palliat.
Med. Jun;13(6):733-737(2010)
.
2)
Miyashita M, Yasuda M, Baba R, Iwase S, Teramoto R, Nakagawa K, Kizawa Y,
Shima Y. Inter-rater reliability of proxy simple symptom assessment scale between
physician and nurse: A hospital-based palliative care team setting. Eur J Cancer
3)
4)
5)
Care. 2010; 19: 124-30.
Ogawa, A.,Shimizu, K.,Akizuki, N., Uchitomi, Y.: Involvement of a Psychiatric
Consultation Service in a Palliative Care Team at the Japanese Cancer Center
Hospital, Jpn J Clin Oncol,: 2010 [Epub ahead of print]
Nakazawa Y, Miyashita M, Morita T, Umeda M, Oyagi Y, Ogasawara T. The
Palliative Care Self-reported Practices Scale (PCPS) and the Palliative Care
Difficulties Scale (PCDS): reliability and validity of 2 scales evaluating self-reported
practices and difficulties experienced in palliative care by health professionals. J
Palliat Med. 2010; 13(4): 427-37.
Sasahara T, Miyashita M, Umeda M, Higuchi H, Shinoda J, Kawa M, Kazuma K.
Multiple evaluation of a hospital-based palliative care consultation team in a
university hospital: Activities, patient outcome, and referring staff's view. Palliat
Support Care. 2010; 18: 1-9.
6) 伊勢雄也, 森田達也, 前堀直美, 轡基治, 塩川満, 木澤義之:麻薬小売業者間譲渡許可
免許の有用性に関する調査研究.Palliative Care Research,5(2):213-218 (2010).
6.研究組織
①研究者名
②分担する研究項
③最 終 卒 業 校 ・卒業年
④所属 研究機関
目
次・学位及 び 専 攻 科 目
及び現在の専門
木澤
義之
研究総括
森田
達也
岡村
仁
緩和医療に携わる
医師の育成に関す
る研究
理学療法士・作業
療法士の育成に関
する研究
⑤職名
筑波大学医学専門学群・平成 筑波大学大 学院人 講師
3 年卒・学位なし・緩和医療 間総合科学研究科
学、総合診療医学
京都大学医学部・平成 4 年卒 聖隷三方原病院、緩 部長
和支持治療科
・学位なし・緩和医療学
広島大学大学院・平成 3 年卒 広島大学大 学院保 教授
健学研究科、精神医
・医学博士、精神医学
学
大滝
純司
橋爪
隆弘
佐藤
哲観
小川
朝生
山本
亮
永山
淳
多田羅竜平
高橋美賀子
宮下
光令
笹原
朋代
中澤葉宇子
岩満
優美
伊勢
雄也
緩和医療の教育方
法に関する研究
緩和ケアチームの
育成に関する研究
緩和医療に従事す
る医師の育成に関
する研究
緩和医療に携わる
精神腫瘍医の育成
に関する研究
緩和医療に従事す
る医師の育成と評
価に関する研究
緩和医療に携わる
小児科医の育成に
関する研究
小児科領域におけ
る緩和医療の教育
普及に関する研究
緩和医療に携わる
看護師の育成に関
する研究
看護師の育成の評
価に関する研究
効果的な緩和ケア
チームのモデル形
成に関する研究
緩和ケアチーム育
成の評価に関する
研究
緩和医療に携わる
臨床心理士の育成
に関する研究
緩和医療に携わる
薬剤師の育成に関
する研究
筑波大学医学専門学群・昭和
58 年卒・医学博士、総合診
療医学・医学教育学
秋田大学医学部大学院・平成
東京医科大学
教授
医学教育学・総合診
療科
秋田市立秋 田総合 医長
2年卒・医学博士・外科学 病院、外科
弘前大学大学院医科学研究 弘前大学医 学部附 講師
科平成 5 年卒・医学博士・麻 属 病 院
麻酔科
酔科学
緩和ケア診療室
大阪大学大学院・平成 16 年 国立がん研 究セン 室長
卒・博士(医学)・精神医学 ター東病院 精神腫
瘍学開発部
筑波大学医学専門学群 平 佐久総合病 院総合 責任医
成 8 年卒・学位なし・総合診 診療科
長
療・緩和医療学
総合診療・緩和ケア
九 州 大 学 大 学 院 医 学 研 究 ピースクリ ニック 院長
院・平成 12 年卒・医学博士、 中井、内科、小児科、
成長発達医学
在宅緩和医療
滋賀医科大学医学部平成 8 大阪市立総 合医療 医長
年卒
センター緩 和医療
科兼小児内科
専門看
聖路加看護大学大学院・平成 聖路加国際病院
11 年卒・看護学修士、がん がん看護、緩和ケア 護師
看護学
東京大学大学院医学系研究
科健康科学・看護学専攻修士
課程平成 9 年卒、保健学博士
東京大学大学院医学系研究
科健康科学・看護学専攻・平
東北大学大 学院医 教授
学系研究科 保健学
専攻
筑波大学大 学院人
講師
間総合科学研究科
成 19 年卒・緩和ケア看護学 緩和ケア看護学
東京大学大学院医学系研究 国立がん研 究セン
科健康科学・看護学専攻・平 ター(中央病院臨床 看護師
成 22 年卒、保健学修士
試験・治療開発部)
同志社大学文学研究科博士 北里大学大 学院医 教授
・後期過程、単位取得退学・ 療系研究科・医療心
平成 10 年卒・博士
理学
星薬科大学大学院博士課程 日本医科大 学付属 主任
前期・平成 9 年卒・薬学博士 病院薬剤部
緩和医療薬学