平成26年度 都立立川ろう学校経営報告 1 今年度の取組と自己評価 (1)取 ア 組 保育・学習指導 ・ 児童・生徒の相対的な学力を把握するために、小学部では 4・5・6年生で観点別学 力到達度診断を実施、中学部では年3回模擬試験を実施、高等部では高等部1年生全員 及び高等部2・3年生の希望者を対象に模擬試験を実施し、 児童・生徒の学習状況の実 態を把握した。その結果、日本語の読み書きに関する 児童・生徒の厳しい実態 とともに 算数・数学に関する実態が明らかになり、全教員が危機感を覚え、一体となって日本語 育成の研究を行ってきたが、算数・数学の定着 に関する研究にも取り組まなければなら ないという意識が深まってきた。 ・ 全教員を OJTのグループに分け、指導案に基づく研究授業を実施した。実施率は、 昨年度の 94%に比べ、本年度は 95.4%と上昇した。来年度は100%を目指す。 ・ 筑波技術大学(日本で唯一の聴覚障害者の大学)及び 葛飾ろう学校 をテレビ会議シス テムでつなぎ、高等部専攻科の修了研究に対し 評価をもらう授業を実施した。 昨年度か ら2年目となり、より一層 生徒は分かりやすく伝えることの大切 さを理解し、プレゼン テーションの改善に努めるようになった。 ・ 学校評価の「わかりやすい授業」については、 小学部児童で100%、中学部生徒9 4%と昨年度より22%及び4%ポイントが上がった。高等部生徒でも87%と 肯定的 回答率が高かった。保護者からの評価も高く、幼稚部、小学部、中学部では90%以上 となった。このことは、個に応じた指導が定着してきたことの成果と捉えることができ る。今後は、 さらに、授業内での個に応じた対応を充実させ一人一人の幼児・児童・生 徒の力を高めていく必要がある。 ・ 高等部の職業教育では、学習の成果を具現化するため、各種検定に積極的に挑戦させ た。情報処理検定では1級が2名、日本語ワープロ検定では1級が1名、準1級が3名、 文書デザイン検定及びパソコンスピード検定で1級が1名ずつと、放課後等を活用した 補習の成果が表れた。簿記検定は、1級原価計算に1名が合格し、後輩たちの励みとな っている 。 ・ 作文指導に力を入れた結果、 全国聾学校作文コンクールにおいて、 小学部5年生が銀 賞、6年生が銅賞を受賞した。 イ 自立活動 ・ 聴覚管理のマニュアル化と検査結果に基づく配慮点を共通化する聴覚管理のスタンダ ード化を 実現した。 ・ 小学部で日本語の力を育成するため の自立活動を推進し、 読書力検査の結 果が向上し た。 ウ 道徳教育 ・ 11月に 学校公開と道徳授業地区公開講座(小・中学部の道徳授業の公開と講演会) を同日開催した。昨年度は地域及び保護者あわせて 265名の参加であったが、今年度 は地域を含む外部からの参加が320名、保護者を合わせて400名以上の参加があり、 学校への期待が窺える。 エ 特別活動 ・ 体育的行事やクラブ・部活動の指導の充実を図った( 中学部と高等部普通科の部活動 加入率96%達成) 。本年度は、どの部活動も優秀な成績を収めた。好成績を挙げた大 会は校門前の掲示板やホームページを活用して 児童・生徒の活動意欲を喚起した。また、 寄宿舎後施設を有効活用するため、高等部では 部活動合宿を年2回実施した。 「小学部」ドッジボールクラブ:「立川ガンバ ろう」が、春の全国小学生ドッジボール 選手権大会東京都大会で第3位、南関東選手権大会でベスト8 「中学部」バレーボール部:都ろう学校大会準優勝、関東聾学校大会 優勝 卓球部:都ろう学校大会 男子団体3位、女子団体 優勝 「高等部」野球部:都ろう学校大会優勝、 関東聾学校野球大会優勝(3連覇) バレーボール部:都ろう学校春季大会優勝、都ろう学校総合体育大会優勝 、 関東聾学校大会準優勝 陸上部:女子やり投で 高体連陸上競技会8位、関東聾学校1 部女子 100m 優 勝・2部女子やり投優勝、全国聾学校 大会2部女子100m・砲丸投・ やり投優勝、男子やり投専攻科の部全国聾学校大会優勝 卓球部:都ろう学校大会女子個人戦優勝、男子個人準優勝、関東聾学校卓球 大会女子団体戦6位、全国聾学校卓球大会出場 オ 生活指導 ・ 基本的生活習慣(礼儀、規律含む)確立のための指導は、学校評価において、幼稚部 保護者、中学部保護者・生徒・ 教員ともに上昇した。幼稚部はあいさつや廊下でのマナ ーについて学部全体として保護者に伝えた結果が現れ、中学部は保護者会や生徒集会な どでルール、マナーについて繰り返し話したことで理解が深まった。小学部については、 児童・教員は達成できていると判断している 。 ・ 生徒の問題行動については、保護者や 関係機関と連携して再発防止に取り組んだ。 不 登校気味の生徒については、家庭支援センターや児童相談所と連携し、保護者支援も含 む体制を 模索し整備した。 カ 進路指導 ・ ボランティア活動や就業体験、産業現場等における実習は計画どおり実施した。 ・ 高等部卒業生の進路は、以下のとおりである。 普通科:四年制大学進学3名、本校専攻科 進学8名、一般就労 3名(3名共正社員)、 福祉就労 4名 専攻科: 一般就労9名 キ センター的機能 ・ 支援部を中心に「通級による指導」「きこえとことばの相談 」を計画的に 実施した。 「通級による指導」は3ケースのみであった。 ・ 「乳幼児教育相談」は、医療や保健関係者との連携を強化し た結果、昨年度は80件 であったが、本年度は95件以上に増加した。 ク 学校運営 ・ 都の言語能力向上拠点校として2年目を迎え、日本語の育成をテーマに全校的に実践研 究に取り組んだ。2月には、中間実践報告会を実施し、北海道から佐賀県まで、全国から 18名以上の参加者を迎え、成果を発表した。 ・ 学校運営連絡協議会を年3回開催。3回目に は来年度の改善提言を受けた。 ・ TAIMS(教育庁コンピュータシステムネットワーク) や教育用ICT を活用した 業務の能率化 を図った(成績管理、教材ライブラリーの整理等) 。 ・ 防災教育推進委員会を年3回実施して地域との連携を深めるとともに、都立学校教育 部と連携し、緊急地震速報や学校110番などを教室のディスプレイと連動させ、聴覚 障害があっても視覚的に緊急情報を周知するシステムの精度を高めた。 ・ 地域の少年消防団との連携訓練を本校で開催するとともに、地域の防災訓練に年間2 回、管理職及び主幹教諭、主任教諭、中学部野球部生徒が参加し、地域との連携を深め た。 ・ 主幹教 諭選考1 名合格 、主任教 諭選考 3名 合格。管 理職候 補育成の ため、西部学 校経営支援センター主催の経営セミナーに 主任教諭を参加させた。 (2)重点目標への取組と自己評価 ア イ ウ エ A=90% B=70% C=50% D=30% 教科指導(幼稚部の保育含む) ・発達段階に応じた日本語の力を育成することを目的とし、 学期中:月1回、夏季 全 校 研究 テー マを 日 本語 で考 える 力の育 成 とし た研 究を 休業中の集中研究:2 実施 回、研究報告会:1回 B ・ 高 等部 にお ける 生徒 の職 業ニ ーズ に応 じ た2 類型 (生産 技術類型、流通システム類型)の指導内容の見直しと各種 資格取得の促進 職業教育プロジェクト :年3回 B ・筑波技術大学と連携した高等部職業教育 の改善・充実 筑波技術大学との授業 交流:年2回、葛飾ろ う学校との授業交流: 年1回 B ・ 個 別の アセ スメ ント 等の 実施 及び 関係 教 員へ の結 果及び 配慮方針の周知( J-COS等の検査導入) 自立活動担当者会:年 5回 B ・ 立 川ス タン ダー ドの 作成 (外 部機 関の 手 話検 定を 活用し た手話のスタンダード化、聴覚管理のマニュアル化と検査 結 果 に基 づく 配慮 点 を共 通化 する 聴覚管 理 のス タン ダー ド化) 自立活動担当者会で検 討・作成 B ・ 一 人一 人の 聴覚 障害 の状 態等 に応 じ、 音 声、 文字 、手話 等のコミュニケーション手段を適切に活用した 日本語の 力をつける指導法の開発 日本語育成プロジェク ト研究:月1回 A ・「学校安全計画」に基づく発達段階に即した安全教育(施 設の安全利用、不注意による事故防止、不審者対応、登下 校時の交通安全、携帯電話、インターネット、薬物、性に 関すること等)の計画的な実施 安全指導:月1回、 セーフティ教室:年1回 防災教育推進委員会: 年3回 A ・ 他 学部 の行 事見 学や 授業 への 参加 、部 活 動の 試合 の応援 等及び中学部・高等部生徒による下学部との交流活動等の 校内交流の実施 各学部において年1回 以上 B ・労働関連機関や企業等との連携を強化した就労率の向上 年度内内定率 100% A ・個別の進学支援シートを活用した大学等進学者への支援 大学等訪問5回以上 独自の支援シート作成 A ・体育、クラブ活動、部活動(中・高:野球、バレーボール、卓 球、陸上)の充実 対外試合100試合以上 A ・ 都 教委 指定 「放 課後 子ど も教 室 」 によ る ドッ ジボ ールク ラブ、子ども手話教室の充実(学生ボランティアの活用と地域 連係)と安定した組織づくり ドッジボール:週1回土曜 日、手話教室:月 1回 A 生活指導・進路指導 特別活動・その他 開かれた学校づくりと 聴覚障害教育のセンター的機能 の発揮 ・学校公開による教育活動の公開と生徒募集 年1回程度 B ・医療・保健機関等と連携した乳幼児教育相談の充実 年間50ケース以上 A ・通級による指導の実施(小・中学生対象) 年間2ケース以上 B ・適切な就学・入学相談の実施 新入生の人数確保 B オ 円滑な学校運営体制の確立 ・メンタルヘルスに配慮した業務改善 3 学校安全衛生委員会 年4回 B ・TAIMS(教育庁コンピュータシステムネットワーク) 随時 を活用した業務の能率化 C ・「立川ろう学校情報セキュリティーポリシー」に基づく、 管理状況一斉点検 文書、個人情報(ファイル、USB、写真等)の適正な管 年3回 理 A ・定期的な服務研修による服務事故の防止 A 年間5回 次年度以降の課題と対応策 (1)課題 ・ 学習状況の定着に関する分析と外部模擬試験等を活用した学力向上の方策 ・ 幼児・児童・生徒増につなげる地域 等への教育活動のアピールとセンター的機能を 発揮した教育的支援の充実 (2)対応策 ア 聴覚障害教育の専門性の維持・継承と新しい時代に対応した指導法の開発のために ・ 「学力向上プロジェクト」による、新しい時代の聴覚障害教育の専門的な研究の推 進 ・ 「言語能力向上拠点校」として、幼児・児童・生徒の障害認識を柱とした手話から 日本語の読み書きにつなげる指導法の開発 、国語科の指導内容の精選 を行い、成果を 全国に発信する研究報告会の実施(2月) ・ 「職業教育プロジェクト」の継続と 時代のニーズに対応した新たな高等部職業類型 における教育課程内容の精選(総合技術系 及びライフデザイン系 の指導内容・方法の 確立) ・ テレビ会議システムを活用した筑波技術大学等と高等部情報系の連携授業 の継続 イ 幼児・児童・生徒増につなげる教育活動のアピールとセンター的機能の発揮のために ・ 道徳授業地区公開講座等を活用した道徳教育の 更なる工夫と放課後支援活動の組織 化 ・ 医療・福祉と連携した乳幼児教育相談の充実 ・ 「通級による指導」「きこえとことばの相談」の組織化とさらなる指導の充実 ・ スポーツ教育のさらなる充実とこころとからだの健康づくり ・ 大学、企業等の関係機関と連携した卒後のケア(個別の移行支援計画の作成、卒業 生の進路先訪問や近況報告会の開催、相談活動など) ・ ウ 地域と連携した安全教育、 聴覚特別支援学校としての専門性の向上と安全教育の推進 ・ 都立特別支援学校における一泊二日の宿泊防災訓練 を実施し、防災教育をさらに推 進 ・ 東京都及び立川市合同総合防災訓練への参加 による、自助・共助の力を育成
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