非営利法人の課税上の論点からの類型化とその検討 石坂 信一郎(岐阜

非営利法人の
非営利法人の課税上の
課税上の論点からの
論点からの類型化
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類型化とその検討
とその検討
石坂 信一郎(岐阜経済大学)
近年、社会における非営利組織の重みが増しつつあり、それに伴い非営利組織の会計も
注目されている。公益法人、学校法人、社会福祉法人等のプライベート・セクターおよび、
国・地方公共団体、独立行政法人等のパブリック・セクターの会計の研究が盛んに行われ
るようになってきている。
法人税法上の非営利法人とは、法人税法上の公共法人(納税義務なし)
、公益法人等、人
格のない社団等の 3 つの類型であり、公益法人等と人格のない社団等については、収益事
業を行う際に法人税が課税される。現在の法人税法の下では、普通法人は全ての所得に納
税義務があり、非営利法人の行うような事業(例えば大学経営)を行った場合でも優遇税
制の恩恵に与ることができない。税制上の優遇を受けるならば、相応の非営利法人として
の法人格を取得することが必要となる。
本報告では、非営利法人の課税上の論点について整理を行い、その論点にもとづいて、3
つに類型化できる法人税法上の非営利法人の再度の類型化を試みてみる。その類型化をふ
まえた上で非営利法人の課税上の問題点を明らかにしてみたい。
非営利法人の課税上の論点としては、①収益事業にのみ課税されること、②収益事業が
34 業種として列挙されていること、③みなし寄附金制度が設けられていること、④利子・
配当が非課税であること、⑤軽減税率の適用のあることが考えられる。①については、社
団・財団法人では、準則主義と公益認定制度が導入され、公益性という概念の曖昧さは減
少した。しかし、なぜ非営利法人であっても収益事業には課税されるのかという根本的な
問題においては、明確な説明をすることが難しい。また、この論点は、③とも関連する。
それは収益事業には課税する一方で、公益社団・財団法人においては、大幅なみなし寄附
制度の優遇を与えていることである。この論点に関し、例えば一律に収益事業に課税する
のではなく、課税庁において、個々の法人について非課税の審査を行い、非課税の証明を
交付する等の方式も考えられる。②については、経済社会の発展とともに事業形態が多様
化するなかで、従来の収益事業を列挙する方式で課税の対象範囲を指定しきれるのかとい
う問題がある。現行方式に税務行政上の便宜性はあるだろうが、①と同様に個々の法人に
ついて非課税の審査を行うことにより、この問題は解決できると考えられる。
本報告では、これら 5 つの論点をもとに、非営利法人を(1)公益社団・財団法人、(2)非営
利型法人(一般社団・財団法人)、NPO 法人、人格のない社団等、(3)非営利型以外の一般
社団・財団法人等、(4)その他公益法人等(学校法人、社会福祉法人、認定 NPO 法人等)、
(5)特定医療法人に類型化することができた。そこから非営利法人の課税上の問題点を明ら
かにしてみる。