弁膜症の診断と治療 (3D経食道エコーを用いて) { 高松赤十字病院 循環器内科 宮崎 晋一郎 はじめに リウマチ性弁膜症が激減し、弁膜症の時代が終わった かに思えたが、21世紀に入って高齢化に伴い、加齢変 性による弁膜症が増加してきた。 加齢変性に伴う大動脈弁狭窄症は65歳以上の2〜7%に 見られる。 Framingham studyでは若年者から高齢者に至る全人 口の2.4%に僧帽弁逸脱による僧帽弁逆流症が認められ ることがわかった。 経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)が2013年10月よ り本邦で保険償還された。その他、経カテーテル的僧 帽弁尖クリッピング術(Mitral Clip)の治験も始まる予 定である。 大動脈弁手術件数 (日本胸部外科学会報告より) Euro Heart Survey ⇒中等度から重度 平均年齢 64±14歳 (Iung B, EHJ 2003;24:1231-43.) 香川県 症例数 1位 3D 経食道エコー 榊原記念病院 週刊朝日『いい病院ランキング』 経食道エコー 1500件以上 開心術 1298例 全国 第1位 弁膜症 317例 全国 第1位 経食道エコーの実際 検査時間は20−30分 プロポフォール3〜7ml程度使用 僧帽弁閉鎖不全症 原因 僧帽弁複合体(Mitral Complex) 僧帽弁尖 前尖 後尖 僧帽弁輪 腱索 乳頭筋 左房 左室 Carpentierの分類 ・リウマチ性 ・医原性:放射線、薬剤性 ・炎症性:Lupus ・感染性心内膜炎:穿孔 ・弁輪拡大 ・先天性:クレフト ・変性:flail/billowing leaflet ・感染性心内膜炎:腱索断裂 ・外傷性:腱索 or 乳頭筋断裂 ・結合織異常:Marfan ・先天性:ASD ・虚血性:乳頭筋断裂 僧帽弁逸脱症 全人口の2.4% ・左室機能障害 (心筋炎、虚血性、心筋 症など) 75歳、男性 心不全発症されて入院 72歳、男性 自覚症状なし、心雑音、2か月前にAf 47歳、男性 自覚症状なし、心雑音、心拡大を指摘されて来院 僧帽弁形成術 逸脱した弁尖に切除して縫合し、 僧帽弁のリングを挿入する手術 直後の術中経食道エコー ACC/AHA ガイドライン2014 経食道エコーでの判断が必要不可欠 39歳、男性 自覚症状なし、心雑音、心拡大 62歳、男性 自覚症状なし、心雑音、心拡大 大動脈弁狭窄症 一般住民におけるASの割合 (%) (Nkomo VT, Lancet 2006;368:1005) 原因 (Iung B, EHJ 2003;24:1231-43.) 正常の大動脈弁 赤:弁尖がValsalva洞に付着する線 青:ST junction 黄:Ventricular-aortic junction 緑:仮想の大動脈弁輪 様々なASの形態 様々なASの形態 3尖ともに石灰化 NCCに特に強い石灰化 交連部の癒合著明 LCCとRCC間及び交連部 に強い石灰化 2尖弁 (rapheなし、Lateral 型) 経胸壁心エコーでの弁口面積の評価方法 1. 連続の式 2. Planimetry 法 どちらも誤差を生じやすく 経胸壁エコーの限界 連続の式による大動脈弁口面積 1個1個の誤差が 大きな誤差に D ALVOT = π x (D/2)2 TVILVOT (パルスドプラ法) TVIAV (連続波ドプラ法) AVA = ALVOT x TVILVOT / TVIAV Planimetry法による大動脈弁口面積 ・弁尖を正確に抽出困難 (本当に弁尖の先?) ・断面が1mmずれただけで 大きな誤差 ・石灰化が強いと見えない 0.76cm2 0.68cm2 日本循環器学会 弁膜症ガイドライン ここが困る!!! 70歳 男性 自覚症状なし、心雑音 AVA=0.94cm2 石灰化が強く弁口がはっきり見えない例 AVA=0.80cm2 ACC/AHA ガイドライン2014 経皮的大動脈弁留置術 Transcatheter Aortic Valve Implantation:TAVI CE Mark Indication symptomatic aortic stenosis •aortic valve area <0.8 cm2 high risk for operative mortality •Logistic EuroSCORE> 20 •STS SCORE > 10 Implantation: •transapical or transfemoral 大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療 { Edwards SAPIEN valve Medtronic CoreValve Fraility Porcelain aorta History of chest radiation Patent coronary bypass grafts 手術適応があって 外科的弁置換ができないな ら 経皮的に弁置換を ESC guideline 2012 ACC/AHA ガイドライン2014 TAVRについての記述 経皮的大動脈弁バルーン形成術 Percutaneous Transcatheter Aortic Valvuloplasty :PTAV 感染性心内膜炎 80歳女性 9年前に大動脈弁置換(AVR)術後 う歯あり。最近皮膚生検施行歴あり。 血液培養:Streptococcus Viridans陽性 59歳 女性 無治療の糖尿病(HbA1c 14.3%),う歯あり。 血液培養:Streptococcus agalactiae(B群)陽性 78歳 男性 HD患者、ステロイド使用 血液培養:黄色ブドウ球菌陽性 弁輪部膿瘍 人工弁機能不全 弁置換術後に生じる主な問題 1. 構造的変化に伴う機能不全 ・生体弁➡弁膜の線維化や石灰化に伴って狭窄や逆流が生じる。 ・機械弁➡血栓や人工弁周囲の組織増生(パンヌス)によって狭窄、逆流が生じる ただし、軽度の経弁的な逆流であれば問題なし。 ・弁周囲逆流➡弁周囲の縫合不全による。溶血性貧血も。 2. 血栓塞栓症 機械弁での血栓弁の頻度は0.3〜1.3%/人・年 3. 感染性心内膜炎 ・疣腫➡逆流や弁閉塞 ・弁周囲膿瘍 経胸壁エコー 人工弁によるアーチファクトのた めに原因特定が困難 54歳、男性 心不全症状あり、心雑音 裏(左室)から見上げる 3D経食道エコーは世界を広げた 1. 自分の頭の中で2D画像から構築していた 立体感をそのまま見せてくれる。 ➡弁の状態のイメージを容易にした。 2. 実際に心停止下で手術する外科医に、動いている 弁の様子を見せることができる。 ➡外科医と同じ視点で議論がしやすくなった。 外科医にとっても術前のイメージがしやすくなった。 3. 3D画像から逆に任意の2D断面に切っていくこと で正確な部位や原因の特定を可能にした。 ➡弁膜症の診断の正確さが向上し、手術適応の有無 の判断や術式の選択の手助けになった。 経食道エコーが有用な症例 1. 僧帽弁逸脱症があるようだが、重症度が分からな い。僧帽弁形成術が可能かどうかがわからない。 2. ASが中等度以上ありそうだが、石灰化が強くて 重症かどうかの判定が困難な場合。 3. 連合弁膜症があり、それぞれの重症度判定が困難。 手術すべき時期がわからない。 4. 人工弁の入っている患者に新たに心雑音を聴取し た。心不全傾向になっている。 5. 弁膜症のある患者に原因不明の熱が続いている。 弁膜症外来を毎週木曜午後に 開いております。 ❏ マルチパーパスで全身の検査が施工できる ハイエンドプレミアム装置の導入。 当院では、Live3D経食道検査ができる装置を 香川県下では初めて導入しております。 心エコー ご清聴ありがとうございました
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