ニワトリα-トコフェロール輸送タンパク質が 鶏卵ビタミン E 量に及ぼす影響 明治大学農学部農芸化学科食品科学研究室 准教授 竹中 麻子 ■ 目 的 鶏卵はビタミン E を多く含む食品のひとつである。ニワトリが飼料から経口摂取したビタミン E は リポタンパク質に含まれる形で血中を循環後、卵巣を経て卵黄成分になる。この過程で、飼料中のビ タミン E 同族体の中でα-トコフェロールが選択的に卵黄に輸送・蓄積されるが、その機構の詳細は明 らかにされていない。本研究では、卵黄へのα-トコフェロールの選択的輸送に、哺乳類の肝臓でα-ト コフェロール選択輸送を行なっているα-トコフェロール輸送タンパク質(α-TTP)が寄与しているのか どうかを検討することを目的とした。卵黄中α-トコフェロール濃度が異なる 2 種の鶏を用い、α-ト コフェロール選択輸送の差異とα-TTP の発現量について検討を行った。 ■ 方 法 1) 配合飼料で褐色産卵鶏 (ロードアイランドレッド;RIR、5 羽)および白色産卵鶏(白色レグホン;WL、 5 羽)を 2 週間飼育し、飼料中・血中・卵黄中のトコフェロール同族体(α-、β-、γ-、δ-トコフェ ロール) 濃度を HPLC により測定した。 2)RIR および WL の各臓器で発現しているα-TTP mRNA 量を、RT-PCR により検出・定量し、発現の 臓器分布と RIR と WL の発現量の比較検討を行った。 ■ 結果および考察 1)飼料中・血中・卵黄中のトコフェロール同族体の濃度をもとに、α-トコフェロールの選択輸送活 性をα-トコフェロール/γ-トコフェロール比(α/γ比)で評価した。飼料中のα/γ比は 0.371 であっ たが、血漿中では WL が 2.91、RIR が 1.48 となり、卵黄中では WL が 1.87、RIR が 4.68 となった。 したがって、WL では飼料から血中への移行過程でα-トコフェロールの選択輸送活性が高いのに対 し、RIR では飼料から血中および血中から卵黄中の両方の移行過程でα-トコフェロールの選択輸送 が行なわれていることが示された。この結果から、血中から卵黄への移行段階での選択性の違いが RIR における高濃度の卵黄α-トコフェロール蓄積の原因である可能性が示された。 2)肝臓、卵巣α-TTP mRNA 量には RIR と WL で有意差はなかった。他の臓器ではα-TTP mRNA 量は RT-PCR の検出限界以下であった。 ■ 結 語 RIR では、WL と異なり、血中から卵黄への移行段階でα-トコフェロールが選択的に輸送されてい る可能性が示された。しかし、肝臓・卵巣で発現しているα-TTP 量には、mRNA レベルでは RIR と WL の間で差がみられなかった。 51
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