大 規 模 公 共 事 業 に お け る 費 用 便 益 分 析

Λ論
説V
大規模公共事業 における費用便益分析
︱︱米 国大統領 命令 一二八九 二号等 を参考 に︱︱
初 め に
一
費用便益分析 の概略とメリット、及び それに対する批判論
二 米国連邦行政法 における費用便益分析 の活用︱規制分析枠組 み︱
〓
一
米国連邦行政法 における公共事業 に関する費用便益分析
︱大統領命令 一二八九二号とガイドライン、OMB審査 の役割 ︱
終わりに
初 め に
位 田
本 論 稿 は、 大規模公 共事業 におけ る費 用便 益 分析 の活 用 に ついて、 そ の先進 国 であ る米 国連 邦行政 法、中 でも大
、
コ︻
”
統領命令 ︵
o
8一
お 0﹂単︶とそれ に基 づ く行政管 理 予算 局 68 R 3 〓営 ”零 88一“●無”a 零け 以下OMB︶ の試
みを考 察 し、 そ こ から 日本 におけ る費 用便 益分析 の改善 に資 す る示唆 を得 る ことを目的 とし て いる。
これま で筆者 は、行 政活 動 の効率 化 と環境 保護 の両立 を達成 す る ことが でき る手段 とし て、 及び行 政裁 量 に対 す
る司 法 統 制 の 一手 段 と し て活 用 で き る 手 法 と し て、費 用 便 益 分 析 6o∽
︲“83 一 >〓 ︼
一
く静 ︶と費 用 対 効 果 分 析
︼
6o∽
¨
”∪識の
一
3 に注 目 し、米 国連 邦 行政 法 におけ る これら の分析 の法的 な枠 組 みおよび 司法審査 の
o
おB協 >3 ︼
く∽
事業 での費用便益分析 の活用 の改善点 に ついて示唆を得 ることを目的 とする。
事業 に関する費用便益分析 の内容を考察 して いく こととする。そこから、日本 におけるダ ム建設など の大規模公共
そ こで、本論稿 では、規制分析手法とし ての費用便益分析 にも触れ つつ、米国連邦行政法下 における大規模公共
よう にな ってき て いる。
お いても 一九 九〇年 代 以降 、大 統領命令 によ って大規 模 公共事業 に費 用便 益 分析 を活用 す る ことが義 務 付 けら れる
るも のであ り、規 制 分 野だ け でなく、 大規模 公共事業 の分 野 でも活 用可能 な分析 枠組 み であ る。米 国連 邦行 政 法 に
が大 きな争点 の 一つとし て挙 が って いる。 も とも と費 用便 益 分析 は、 あ る施 策 が経済 や社会 に与 え る影響 を分析 す
ッ場ダ ムや徳 山ダ ムな ど のダ ムを めぐ る事 件 では、 こ の種 の大規模 公共事 業 が果 た し て必要 だ った のかと いう こと
る法律 が少 なく、規定 され て いる場合 も公共事業 に関 す る法律 が中 心 にな って いた。法律 に規 定 され て いな い場合
︵
の費 用便 益分析 の活 用 は、主 とし てダ ムや高 速道 路等 の建設 と い った大規 模 公 共事 業 にお いて用 いら れ てき起。 八
あ り、規 制 分析 手 法 とし て の費 用便 益分析 を中 心 とし てきた。
一方 、 日本 にお いては費 用便 益分析 が規定 さ れ て い
と ころ で、 これま で の筆 者 の考 察 は、米 国 で の費 用便 益分析 が長年 にわた って規制 分析 に用 いら れ てきた ことも
内容 を考 察 し てきた。
立正法学論 集第 45巻 第 1号 (2011)
費用便 益分析 の概略 と メリ ット、及びそれ に対す る批判論
1 費 用便 益 分析 と は何 か?
費用便益分析 とは、ある政策 の実施 に伴 い発生する社会的費用と社会的便益を できる限り金銭価値 に置き換 えて
理があ る。 この点、土地改良法八条 は費用対効果分析を規定 して いると 一般 には理解 されて いるため、同条 に基づ
開発施策 と貿易施策、ダ ム開発施策 と環境保護施策 のよう に、基本的な目的が異なる施策間 の比較 に用 いるには無
異なり、費用対効果分析 では施策ご とに単位が異なるため、類似 の目的をも つ複数 の施策間 の比較 には有効だが、
価値 に置き換 えることなく比較する手法 であ る。す べての価値を金銭 と いう単 一の価値 で評価 する費用便益分析 と
これに対 し、費用対効果分析 は、施策 の実施 に伴 い発生する社会的費用と社会的便益を、必ず しもす べてを金銭
策選択 の際 に活用することが できると いう メリ ットはあ る。
この両者を比較することで、事前 の費用便益分析が現実 とどれくら いかけ離 れて いたかを確認し、それを今後 の政
途中で行う費用便益分析を含む︶の費用便益分析を両方 とも行う こと により、
われていな い。しかし、事前 と事後 ︵
析を実施 する﹂と い った場合、事前 の費用便益分析 のみを指し、途中 の、ある いは事後 の費用便益分析 はあまり行
費 用便益分
施し ている途中 に行う費用便益分析、及び政策 を実施後 に行う事後 の費 用便益分析があ るが、通常、﹁
なる施策間 の比較が可能 となると いう利点がある。 また、あ る政策を実施する前 に行う事前 の費用便益分析 と、実
す手法 であ る。す べての価値を金銭価値 と いう 一つの価値基準 に統 一し て置き換 えて評価するため、政策目標 が異
評価するも のであり、総社会的便益 から総社会的費用を引 いて算出 される社会的純便益が最大 になる施策を探 し出
大規模公共事業 における費用便益分析 (位 田 央)
101
く費 用対 効 果分析 によ って計 画 が立 てら れた農業 用水 用 のダ ム の建 設 を めぐ る各 種 の事 件 で、 原告側 が当 該費 用対
効 果分析 におけ る環境 への影響 の評価 が な い、あ る いは悪影響 が正確 に評価 さ れ て いな いと いう主 張 を行 う のは、
違 法性 を争 う にはあ まり効 果 がな いと言 え る。
2 費 用 便 益 分 析 を 用 いる こ と の メ リ ット
費 用便 益分析 を用 いる こと のメリ ット とし ては、次 の点 が挙げ ら れ る。第 一に、 より良 い選択 を行 政 が行 え るよ
う にな る こと、第 二 に、 民主的 な政策 形成 が可能 にな る こと、第 二 に、 司法審 査 の桐密度 を上げ ら れ る ことが挙げ
ら れ る。
第 一の点 に ついては、費 用便益 分析 を用 いる と、社会 的純便 益 を極 大化 す る施策 を多 く の選択 肢 から見極 め る こ
とが可能 にな り、政策 決定 者 によ る合 理的 な政策 決定 が行 え るよう にな る。 また、費 用便 益 分析 は複 数 選択 肢間 の
よう になることで、行政機関 の裁量判断 の是非を審査 することが容易 になる。
第 二 に司 法 審 査 の観 点 か ら は、 費 用 便 益 分 析 の過 程 を 記 録 に残 し 、 これ を 後 から 裁 判 所 が審 査 す る こ と が でき る
な る。
︲
︵
2︶
て いる のかが明確 にな る こと から、 こ の分析結 果 を公表 す る こと で行政機 関 の考 えが 一般 によく理解 でき るよう に
第 二 に、 民主 主義 の観点 に ついて、費 用便 益分析 を用 いる こと で、各 選択肢 にど れだ け の価 値 を行 政機関 が お い
お いて必ず複 数 の選択 肢 を比較検 討 させ る こと にな り、 より良 い政策 判断 が行 え るよう にな る。
比較考 量 に用 いら れ る こと から、費 用便 益 分析 を行 政機 関 に義 務付 け る こと によ って、行 政機 関 の政策 判 断過 程 に
立正法学論集第 45巻 第 1号 (2011)
3 費 用便 益 分 析 に対 す る批 判
費用便益分析 に対する批判 としては、大 きく三 つの問題が指摘 されてきた。第 一が、技術上 の問題 であ る。第 二
が遅 くな る可能 性 があ る。 また、時 間 だ け でな く、実施 には費 用 が かかる ことも問題 とな る。 やや古 い数字 であ る
が、
一九 八〇年 代 の米 国 では、連邦 環境保 護庁 ︵
EPA︶が主要 な費 用便 益 分 析 の実 施 一件 あ た り平 均 し て約 七〇
さら に、費 用便 益 分析 を実 施 す る こと は、 そ れ自 体 に時 間 が かかるため、同 分析 を用 いる こと によ って政策 決定
限定 され たも の にな る﹂ と の指摘 があ る。
ことが可能 にな ってきた。 し かし、 これら のモデ ルにも まだ疑 間視 す る意 見 も あ り、 ﹁
活 用 でき るケ ー スは かな り
近年 では ﹁ヘド ニック手法 ﹂ や ﹁
仮 想評価 法 ︵
CVMこ 等 の分 析 モデ ルが 提 示 され、 環 境 の価 値 も 金 銭 化 す る
てく る。
ら に ついては費 用便 益 分析 に反映 し にく いが、 これら の金銭化 し にく い価 値 こそ、 環境保 護等 には必ず 必要 にな っ
また、金銭 化 が非常 に困難 な価値 が存在 す る。例 えば 、自 然 や人命 の価 値等 、金 銭化 が困 難 な価値 があ り、 これ
く ま でも予測値 に基 づく も のであ って、誤 差等 が当 然生 じ得 る。
レ や イ ン フ レ率 等 はあ
とし て必ず しも信頼 でき るも のではな いと いう 問 題 が あ 犯。例 えば 、割 引 率 貧︼
∽
85 けみ朝
政策 の効 果 予測 にあ た り、社会科 学 上 の、あ る いは自 然科 学 上 の モデ ルや数値 が必要 とさ れ るが、 これら が依然
0 技 術 上 の問題点
が、倫理上 の問題 であ る。第二が、行政裁量 に対する司法審査 の欄密度を上げ るには役 に立 たな いと いう問題 であ
2
つ。
央)
大規模公共事業 にお ける費用便益分析 (位 田
103
用便 益 分析 の違 法性 が争 わ れた。連 邦控 訴 裁判所 は、 全 国 ハイ ウ ェイ交 通安 全 局 が作成 し た九 つの選択 肢 に関 す る
あ る。 同事件 では、新 し い交 通規制 に関 す る規 則制 定 に際 し て、当 該規 則 の将 来 におけ る社会 的 影響 を調査 し た費
また、米 国 の下級 審 判例 を見 てみると、 米国連 邦 控訴 裁判所 が扱 った事 件 に 6sドヽヾU ヽヽミざ ∽ヽこ ぐこさ黒 が
バーし て いる かどう か に司法審 査 を留 め て いる。
所定 の記載事 項﹂ を カ
こ の裁判 所 の判断 は、費 用対 効 果分析 の算 定根拠 の是非 には全 く触 れ ておらず 、 形式 的 に ﹁
変更 は ﹁
土地 改良 法施 行規 則 一五条各 号 所定 の記載 事項 を 一応 網羅 し た﹂ と指摘 し、違 法 性 はな か った と判断 し た。
行 政庁 の広範 な裁量 に任 せら れ て いる﹂ と指 摘 したう え で、同計 画決定 とそ の
に基づ く費 用対効 果分析 に内 容 は ﹁
例 えば 、費 用対効 果分析 の是非 を めぐ る事件 であ るが、川 辺川ダ ム事件第 一審 判決 では、第 一に土地 改良 法 八条
る可能 性 があ る。
る ことは科 学裁 判 にな り かねず、 また裁判 所 の能 力 を越 え てし ま いかねな いた め、 かえ って逆 に司法審査 を抑制 す
査 を行 いやすく な る のかと いう疑 間 があ る。費 用便 益 分析 が行 わ れ て いると、 そ の設定 され た数値 を細 かく検 討 す
費 用便 益 分析 を用 いると裁判所 が行 政機関 の裁 量 を審 査 しや すくな ると いう点 に ついて、本 当 に裁判 所 が裁量審
0 裁量 の司法審 査 の相密度 を 上げ るには役 に立 たな いと いう 問題
した とし ても、金銭 評価 そ のも のを 受 け入 れ る こと に抵抗 があ る。
ま た、 人命 を そも そも金銭 化 し て良 いのかと いう疑 間 があ る。 人命 など は、 た とえ正確 な金銭 評価 モデ ルが完成
個 人間 の分 配的 正義 に反 す る場合 もあ る。例 えば 、幼 児 や老 人 も 一般成 人 と同様 の費 用負 担 を負 う こと にな る。
0 倫 理上 の問題点
万ド ル、年 間総額 で 一億 ド ルを費 やし て いたと の指摘 があ る。
(2011) 104
立正法学論集第 45巻 第 1号
、
二六 三頁 にわ た る費 用便 益 分析結 果 を重視 し、 そ こで各規 則案 に ついて網 羅的 に論点 が列 挙 され 費 用便 益分析 が
、
実 施 され て いた ことを基 に、 たとえ行 政機関 の分析 に不正確 な点 や誤 りが たく さ んあ った とし ても 当 該行 政機関
、
。
の意 思決定 を恣 意的専 断的 なも のだ と言 う ほど のも のではな いと判断 し た こ の判決 では 費 用便 益 分析 の内容 の
妥当 性 を検討 す る ことなく、 形式 的 に費 用便益 分析 に関 す る多 量 の記述 があ ると いうだ け で、当該費 用便 益 分析 を
、
、
る。技 術 上 の問題点 に ついては、 日 々、新 し いモデ ルを構築 し て いく必要 があ り また 倫 理上 の問題 点 に ついて
、
以上 のよう に、費 用便 益 分析 は行 政意 思決定 にお いて有 効 な手段 であ ると同時 に 問題 があ る ことも明 ら か であ
4 小 括
いると司 法審 査 が深化 す ると いう わけ ではな いと考 えら れ る。
、
や効 果 の算 定根拠 そ のも のを審 査 す る こと にな る。 こ のよう に米 国 にお いても 専 門的 な数 値 が多 く出 てく る費 用
、
便 益分析 に ついては、 司法審査 を抑制 的 に行 う と いう考 え方 が有 力 であ り 必ず しも行 政機 関 が費 用便 益 分析 を用
が行 わ れ て いる か否 かだ け にそ の審 査 を とど め る こと、第 二 に、専 門 的 な数 値 を扱 わな い場合 には、裁 判官 が費 用
れば 、第 一に、専 門的 な数値 を扱 う場合 には これを専 門家 に委 ね、 裁判所 は合 理的 な範 囲内 で の選択 肢 の比較 考量
こ の問題 に関 し、米 国 の ∽cR一
① 教授 は、費 用便 益 分析 が科 学 上 の不確 実 な事 実 に基 づ いて行 な わ れ て いる場
,
合 には、 裁判 所 は費 用便 益 分析 に ついて ソ フト ・ル ック審査 を採 用 す べきだ と主張 し て いる。 同教授 の考 え方 によ
って いる か、 そ の際 、重 要 な考慮 要素 を落 とし て いな か った かと いう観点 から の司法審 査 を行 う にとど ま る。
こ のよう に米国 の判例 にお いても、 行政 機関 が実 施 した費 用便 益分 析 に関 し ては、選択 肢 間 の比較考 量 を必ず 行
妥当 なも のと判 断 し て いる。
央)
大規模公共事業 にお ける費用便益分析 (位 田
は、社会 的 弱者 への配慮 な ど、 でき る限 り の工夫 が必要 であ ろう。
司 法審 査 が実 際 には深 化 し て いな いと いう問 題点 に ついては、∽ca一
①ヨ 教 授 が主 張 さ れ て いる ソ フト ・ル ック
す る。
義務付 ける。第 二に、執行部内行政機関 は費 用便益分析を実施 した場合、そ の結果をO MB に提出 し、そ の審査
が年間 一億ド ル以上 の経済的影響があると予想 される規制を制定 する場合 に、必ず費用便益分析を実施することを
これら の費用便益分析を義務付 ける大統領命令 に共通する内容 は以下 の二点 であ る。第 一に、執行部内行政機関
益分析が義務付けられてきた。
九 一号、同 一二四九 八号、同 一二八六六号、同 一三 二五八号 により、執行部内行政機関 による規制制定時 の費用便
益分析 の具体的な内容 に ついて規定 して いる法律 はほとんどな い。法律 によるよりは、 むしろ、大統領命令 一二二
米国連邦行政法 にお いても、法律 による費用便益分析 の義務付 けはそれほど多く行 われて いな い。また、費用便
1 大 統 領 命 令 一三 二九 一号 以降 の規 制 分 析 手 法 と し て の費 用便 益 分 析
二 米 国 連 邦 行 政 法 に お け る 費 用 便 益 分 析 の活 用 ︱ 規 制 分 析 枠 組 み ︱
そ こで、次章 以下 では、費 用便 益 分析 の内 容 に ついてだ け でなく、 OM B の機能 に ついても若 干考察 す る ことと
審査 を選択 肢 の比較考 量 の有無 にとど め ることが可能 にな ると言 え る。
審 査 は明 ら か にO M Bを活 用す る こと抜 き には考 えら れな い。 O MBが技 術的 な面 で対応 し て いる から こそ、 司法
(2011) 106
立正法学論集第 45巻 第 1号
)
︵
以下OMB審査︶を受 け る ことを義 務 付 け る。 こ のO M B審 査 に お いて適 切 な費 用便 益 分 析 が実 施 さ れ て いな い
。
と判 断 された場合 には、 執行部内 行 政機関 は当 該規制 を制定 す る ことが できな いと され て いる
、
次 に、各 大統領命令 が具体 的 にど のよう な内 容 の費 用便 益 分析 を義 務付 け て いる のか に ついて そ の具体 的 な内
一貫性 、 予測 可能 性 、履行費 用、 そ の規 制 を遵守 す るた め に必要 と され る費 用、 柔軟性 、 配分
のイ ンセ ンテ イブ 、
記 され て いる。
、
。
第 二 に、規制 を制定 す る際 には費 用便 益 分析 に基 づ き、最 も費 用効 果的 な規制 を制定 す る そ の際 技 術 革新 ヘ
ついて費 用便 益分析 を求 め る こと、 な らび に、 数値化 できな い要 因 に ついても でき る限 り分析 に盛 り込 む ことが明
目 の点 に ついてはO M B審査 に政策 調整 機能 を持 た せた点 に特 徴 があ る。
技 術的 な点 を規 律 す る規 定 に ついては、 以下 の五点 が主要 な規 定 とな る。第 一に、実 現可能 な す べて の規 制案 に
。
一つ目 の分 野 は技 術 的 な点 を規 律 す る規定 であ る。 二 つ目 の分 野 は政策 調整的 な規定 であ る 二 つ
ことが でき る。
大統 領命令 一二八六六号 におけ る費 用便 益分析 の内 容 に関 す る規定 は、 そ の目的 から大 きく 二 つの分 野 に分 け る
も そ のまま用 いら れ てきた。
に関 す る注意事 項 を挙げ て いる。 な お、 大統領命令 一二八六 六号 は同 一三 二五 八号 により、ブ ッシ ュ政権 にお いて
、
大 統領命令 一二八六六号 は、規 制 分析 にお いて、前 述 の費 用便 益 分析 の問題点 を克 服 す るた め に 同分析 の内容
0 大統 領命 令 一二八六 六号 の主 な内容
2 大 統 領 命 令 一二 八 六 六 号 の内 容 ︱批 判 を 克 服 す る た め に具 体 的 な 内 容 の提 示 ︱
容 が規 定 され て いる大 統領命令 一二八六六号 で確 認 す る。
央
大規模公共事業 にお ける費用便益分析 (位 田
107
上 の影響 、衡 平 さを考慮 し なけ れば なら な い。 ここ では、費 用 の負 担 が老 人、年 少 者等 の社会 的 な弱者 へ集中 しな
いよう に考慮 す る ことが求 めら れ ており、費 用便 益分析 の欠 点 を補 う た め の考慮 事 項 とな って いる。
第 二 に、規 制案 に ついて の必要性 と重 要性 に関 す る最 も合 理的 で入手 可能 な科 学的 、技術 的 、経済的 、 そ の他 の
とを前 提 に、 世代間 の公平 さや特定 のグ ループ に ついて の効 果 発生率 等 を含 め て、 可能 な かぎ り量的 に記述 す る こ
9﹃
oc︻
鶴>よ は費 用便 益分析 の問題点 の克 服 のため、主 に次 のよう な点 に注意 す るよう指 摘 し て いる。
第 一に、配 分効 果 に ついて、規 制 の費 用 を負担 す る人 とそ の便 益 を享 受 す る人 が同 じ ではな いことが よくあ る こ
︵
に含 め る内 容 、第 二 に規 制活 動 の必要性 、 及び代 替 的 な アプ ローチを採 れ る可能 性 の確 認、第 二 に分析 アプ ロー尭、
︵
︵
第 四 に費 用便 益 分 析 の計 量 方 法 と注 意 事印 、第 五 に法 律 や大 統 領 命 令 の分析 要 件 と の整 合 性 を 保 つこ詢 であ る。
Q﹃
o亀R>よ におけ る費 用便 益分析 の内 容 に ついては非常 に多 岐 にわた って いる。 そ の内容 は、第 一に規 制 分析
のが、 二〇〇 三年 にO M B から出 された 0︻
﹃
oc︼
ミ>よ であ る。
計 量 モデ ルを用 いて金銭化 を行 う のかが まだ よく わ から な い規 定 にな って いる。 これら の点 を より具体的 に示 した
を実 施 す れば良 いのか、例 えば自 然 環境 のよう な そ の価値 の金銭 化 が困難 な対象 に ついては、 具体 的 にど のよう な
大統領 命令 一二八六六号 は費 用便 益 分析 の内 容 に ついてまだ抽 象 的 で、 不十 分 であ る。 ど のような費 用便 益 分析
>︲ヽ
O o¨
3c一
o﹁
数 値化 が どう し ても困 難 な場合 には、 そ れ自 体 を明記 す る ことが求 められ て いる。
化 し て出 す。費 用 と便 益 の両方 に ついて、 環境 保護 に関 わ る要 素 な ど数値 化 し にく い要素 も でき る限 り数値 化 し、
出 す。 第 五 に、健 康 と安全 、自 然 環境 のよう な規制 案 から予想 さ れ る費 用 の評価 を、実 行 可能 であ れば す べて数 値
情 報 に基 づ いて分 析 を行 列。第 四 に、規 制 案 から予想 さ れ る便 益 の評価 を、実 行 可能 であ れば す べて数 値 化 し て
立正法学論 集第 45巻 第 1号 (2011)
)
とが求 めら れ る。
7
︵
5︶
、
第 二 に、将 来 の世代 は現時 点 で の政策 形成 に参 加 できな い以上 現代 の世代 が将来 の世代 の利 益 を考慮 し て判断
。
し、割 引率 は通常 用 いら れ る三% な いし七% によ る計 算 に加 え て、 より低 い割 引率 を用 いた分析 も考慮 す る
、
第 二 に、未 成年者 に ついては本 人 のWTPを正 しく計 量 す る手段 が ほとんどな いので 子供 の安全 と健康 に対 す
鶴>よ では、 環境 等金 銭化 し にく い価 値 を数 値 化 す る場 合
るそ の両親 のWTPを用 いる ことが求 めら れ る。98c︸
に、 主 とし てC VMを用 いる こと、 そ の際 にWTPを採 用 す るが、未成 年者 には向 いて いな いと いう問題点 にも注
慮 し て いると言 え る。
、
R>よ は こ の点 にも配
めると同時 に、 O MB審 査 や そ の後 の司法審査 が行 いやすく す る ことも重要 であ り 98c︼
型 一般 の人 々が理解 しや す い内 容 にな って いる ことを求
要素 を理解 す る ことが できな ければ なら な いと され て い 。
、
。
第 四 に、透 明性 が確 保 され て いな け れば 良 い費 用便 益 分析 と は言 えな い 費 用便 益 分析 はそ の基本 とな る想 定
、
方法、 記録 が明確 に公表 さ れ、評価 に伴 う不確実 な事 実 に ついてき ちん と提 示 し て いて 第 二者 が分析 の基本 的 な
意 し て対応 す べき ことが求 めら れ て いる。
大規模公共事業 における費用便益分析 (位 田 央
109
(2011) 110
〓一
米 国 連 邦 行 政 法 に お け る 公 共 事 業 に関 す る 費 用 便 益 分 析
︱ 大 統 領 命 令 一二 人 九 二 号 と ガ イ ド ラ イ ン、 O M B審 査 の役 割 ︱
1 米 国 の公 共事 業 におけ る費 用便 益 分 析
受 け る。
一方 、内 務 省開 拓 局 は西 部開 拓 のた め の水 資 源開 発 を行 って い犯。 T VA は テネ シー川流 域 のダ ムを管 轄 し て
2
︵
6︶
いる。 T VA以外 の陸 軍 工兵 隊 と内 務 省開拓 局 は執 行 部内 行 政機関 であ るた め、大 統領命令 一二八九 二号 の適 用 を
隊 はダ ムなどを建 設 す る際 に、費 用便 益分析 を実 施 し てき て いる。
ならな い経費 GxR・X 8 こ序 g ヽ
8 9”け
一
と を明 ら か にす るよう求 めら れ て いる。 以上 のよう に、同
月 げЧcs﹄
o
∽
,
法 の規 定 は必ず しも費 用便 益 分析 を明文 で規定 し たも のではな いが、 こ の規定 を基 に、
一九 二六年 以来 、陸 軍 工兵
陸軍工兵隊 は洪水管理法 η︼
2 >o
c に基づき、全国 の水資源開発 の管理を所掌し ており、洪水被害 の
8鮎o8け
﹃
防止事業を主たる任務 として いるが、同法 は米国連邦行政法 にお いても っとも古く から費用便益分析を規定 した法
律 である。同法 の規定 によると、陸軍工兵隊 a あ >ヽ
じ が治水用 のダ ムなどを建設する に際
ヨくoo﹃
8①
﹃
場 R∪ 一
配
・
>
しては、洪水管 理法 の下、﹁
a改善案 によ って連邦が受ける利益 ︵
﹁&o
2 〓け
3 、0連邦政府 が負担 しなければ
︻
o
ヽ
o
<
0 ダ ム建設を管轄す る連邦機関
米 国 連 邦 法 に お い て、ダ ム建 設 は 主 に陸 軍 工 兵 隊 と 内 務 省 開 拓 局 Oo
ヨo
詳 R 多o日
19 冒︻
●”
o”︻
Φ
営 R
、及び テネ シー河流域開発公社 38
”の
︻
﹄
一
o
”
日”
8︶
ぎ澤く一↓く>︶がそれぞれ管轄 して いる。
8∽
∽
8 く﹄ Q >〓一
立正法学論集第 45巻 第 1号
)
、
大統領命令 一二八九 二号 は連邦 政府 が資 金 を支 出 す るイ ン フラ整備 のた め のプ ログ ラ ム に ついて 費 用便 益 分析
毎年 の予算措置が五千万ド ルを超 えるプ ログ
第 一に、 主 要 な イ ン フ ラ スト ラ ク チ ャー整 備 のた め のプ ログ ラ ム ︵
︵
、
ラ型︶ に ついて、 イ ンフラ スト ラクチ ャー に責 任 を有 す る執行 部内行 政機 関 に対 し 費 用便 益 分 析 の実 施 が義 務 付
2 大 統 領 命 令 一二 八 九 二 号 の具 体 的 な 内 容
に ついて確 認 す る。
を実施 す る ことを義 務付 け てきた。次節 で大統 領命令 一二八九 二号 に規定 さ れ て いる費 用便 益分析 の具体 的 な内容
央
的 な権利 を創設 す るも のではな い。
、 影響 が大 き
な お、大統 領命令 一二八九 二号 は執行 部内 の内 部管 理上 の規 程 であ り、同命令 によ って いかな る人 に ついても法
。
第 四 に、連邦 の許 可 を得 て いるイ ンフラ ストラ クチ ャーを整備 す る州 や地 方 でも費 用便 益分析 の活 用 を促進 す る
。
な費 用 や便 益 に ついては、計 量的 な手 法 だ け でなく、 質的 な方 法 を用 いる ことも考慮 しな け れば なら な い
等 も含 め て、広 く選択 肢 を比較 考 量 しな け れば な らな い。 また、計 量化 が困 難 であ る にも か かわらず
用 と便 益 に ついては、 そ れが わ かるよう に記載 す る必要 があ る。
、
第 二 に、金銭 化 にあ た って注意 す べき事 項 とし て、 以下 の三点 を挙げ て いる。 まず 便 益 や費 用 に不確 実 な事実
和
、
があ る場 合、 それを適 切 に処 理 し ておく ことが求 めら れ て ﹂ 。 次 に、需 要 の維持 や施 設 の管 理運営 施 設 の拡 大
化 できな い便 益 と費 用 は、市 場 で計 量 可能 なも の に置 き換 え る等 の工夫 が必要 であ
、
。
第 二 に、便 益 と費 用 は可能 な限 り最 大 限 の範 囲 で計 量 し、金銭 評価 しな け れば な らな い そ の際 環境等 の金銭
制。 そ れ でも金銭 化 できな い費
けら れ て いる。
大規模公共事業 にお ける費用便益分析 (位 田
111
3 0 M B審 査 の役 割
大統 領命令 一二八九 二号 は費 用便 益 分析 の実 施 と同時 に、 O MB審査 も義 務 付 け て ﹂綱。 ここ でヽ規 制制定 に関
す るO M B審 査 に ついては、議 会 が法律 によ って各 行 政機関 に付与 し た行政 裁量 への侵害 に該当 す ると いう違憲論
があ った。 し かし、 公共事業 の予算 に絡 ん で のO MB審 査 は、大統 領 の予算編成 を助 け ると いう O MB の本 来 の機
米 国 では大 統領命令 一二八九 二号 により、陸 軍 工兵 隊 と内 務 省開拓 局 が実 施 す るダ ム開 発 には費 用便 益 分析 が義
0 法令 の段階
4 大 統 領 命 令 一二 八 九 二 号 と 日 本 のダ ム関 連 諸 法 令 等 と の比 較
示す ことが可能 にな り、同時 に、 それが実 際 に分析 に用 いら れ て いる かを確 認 す る ことが可能 にな って いる。
あ ると考 えら れ る。 これ により、 O MB は技術的 に最先端 の分析 手 法 を すぐ に取 り入れ て、統 一的 に各 行政機 関 に
う と予算 面 で制約 を受 け るた め に、間接 的 に拘 束 され ると考 えら れ る。 こ の意味 で回状 は日本 の通達 に近 いも ので
て いる。Q︻
8︼
ミ は O M B から の情 報 提 供 であ って、 そ れ自 身 には法 的 拘 束 力 はな く、 た だ O M B の方 針 に逆 ら
と ころ で、 こ こ で Q︻
8︼
R の法 的 性 質 であ るが、 O M B自 身 は国 民 に対 す る法 的拘 束 力 はな いも のと し て捉 え
つ。
フ
公 共事 業 に対 す るO M B審査 は、大 統 領命 令 によ って義 務 付 けら れ た費 用便 益 分 析 を、 まず Q﹃
8︼
鷺>よ によ
ってそ の内容 を 一層 詳細 に示し、 そ れ に従 って行 政機関 が実 施 し た分析 の内容 を検 討 す ると いう手続 きを採 って い
能 を果 たし て いるだ け であ り、違 憲論 は採 り得 な い。
立正法学論集第 45巻 第 1号 (2011)
務 付 けら れ て いる。 そ れ に対 し、 日本 で のダ ム開 発 に関 す る費 用便 益 分析 に ついて の規 定 はど のよう にな
って いる
のか。
、
、
まず 、農 業 用水 用 にダ ム に ついては、前述 した よう に 土地 改良 法 八条 三項 によ り 費 用対効 果分析 が義 務 付 け
、
ら れ て いると され て い型。 それ以外 のダ ム開 発関連諸 法令 にお いては 特 定多 目的ダ ム法 にお いて費 用 に関 す る規
。
定 は存 在 す るが、費 用便 益 分析 や費 用対効 果分析 に関 す る規 定 は存在 しな い
、
また、ダ ム建 設 に直 接 かかわ る規 定 ではな いが、土地収 用法 二〇条 三号 の要 件適 合性 に ついて 徳 山ダ ム事 件 に
、
当 該土地 が そ の事業 の用 に供 さ れ る こと によ って得 ら れ る公 共 の利 益 と 当 該 土 地 が
お いて岐阜 地 方裁判 所 は、 ﹁
。
、
同指 針 は Q︻
8︼
ミ>よ と比 較 す る と、 以 下 の点 で問 題 が あ る と言 え る 第 一に 同指 針 で は代 替 案 の比 較 検 討
。
の必要 性、 及び代 替案 とし てあげ る べき選択 肢 の限界 が明示 され て いな い 費 用便 益分析 は複 数 の選択 肢 を比較検
、
用便 益 分析 に関 し、事 業 間 の整合 性 を確 保 す る こと 各種 の便 益 評価 法 が そ のも っとも効 果的 な使 用方 法 ととも に
︵
記載 され て いる こ四、 及び 再評価 の枠組 みが設定 し て いる。
ガイドライ ン︶の レベ ル
0 通達 ︵
、
。
公共事業 評価 の費 用便益 分析 に関 す る技 術指針 ﹂ を出 し て いる 同指 針 は 費
国土交 通省 は平成 一六年 二月 に ﹁
の実 施 や そ の内容 が規定 され て いる法令 はな い。
。
ると考 え ら れ るが、 同規 定 にお いて費 用便 益分析 の実施 やそ の内容 が規定 さ れ て いるわ け でな い
、
費用対効果分析を含む︶
以上 のよう に、ダ ム開 発 にお いて、 日本 では土地 改良 法 八条 三項 を除 き 費 用便 益 分 析 ︵
、
そ の事業 の用 に供 され る こと によ って失 わ れ る利 益 とを比較考 量 し た結 果 前 者 が後者 に優越 す ると認 めら れ る場
。
合 に、 こ の要件 に適 合 す ると解 す る のが相当 であ る﹂ と判 示 した こ の比較考 量 に費 用便 益分 析 は非常 に有 効 であ
大規模公共事業 における費用便益分析 (位 田 央)
113
討 し、 そ の中 から社会 的 準便益 を極 大化 す る選択 肢 を選び出 す こと にそ の意義 があ る。 必ず複 数 の選択 肢 を比較考
慮 しな ければ費 用便 益 分析 を実施 す る意味 がな い。 し かし、 あ ら ゆ る選択 肢 を取 り上げ て、検 討 す る ことも現実 的
ではな い。 でき る限 りたく さん の選択 肢 を比較考慮 す る こと の必要性 と、 不必要 な選択 肢 を比較考慮 しなく ても良
いよう に 一定 の限界 を設定 す る こと の両方 が必要 であ る。
第 二 に、 同指針 では社会 的 な不平等 の解 決 に ついては システ ムが提 示 さ れ て いな い。 こ の欠 点 を完 全 に払拭 す る
こと は技 術 上 できな いとし ても、 あ る程度 、社会 的 な不平等 を緩 和 す る手段 を講 じ なけ れば 、費 用便 益 分析 は社会
に受 け入 れら れな いであ ろう。特 に未成年 者 の便 益 の算定 に ついて の工夫 は、大規模 なダ ム建設 と いう将来 世代 に
同命令 等 では、技 術 上、 および倫 理上 の問題点 に対 し ては、 まず前 提 とし てあ ら ゆる要素 を可能 な限 り金銭 化 す
号 と o︼
おc︼
ミ>よ は 一定 の解 決策 を提 示 し て いる。
技 術 上、倫 理上、あ る いは司法審査 上 の問題点 があ ると いう費 用便 益分析批 判 に対 し て、大統領命令 一二八九 二
終 わ り に
ら の情報 は常 に開 示 され、検 証 の対象 とす る必要 があ るだ ろう。
象 とし た のかを、後 から見 た人が検 証 できなけ れば 、 正 し い費 用便 益 分析 が実施 された か否 かが わ からな い。 これ
がな い。 そ のた め、便 益 を算出 す る のにど のよう な算 定 モデ ルを 用 いた のか、 あ る いはど こま で の要素 を算定 の対
第 二 に、同指針 には情 報開 示 に ついて の規定 が な い。費 用便 益 分析 はそ の算定 方 法 に ついてまだ確 立 し た モデ ル
と っても重要 な問題 に ついてはどう し ても必要 だ と言 え る。
立正法学論 集第 45巻 第 1号 (2011)
)
、
る ことを前提 に、環境 等金銭 化 し にく いも のに ついては主 とし てC VMを採 用 し つつ 多様 な手法 を駆使 し て評価
を行 う ことを各 行政機 関 に促 し て いる。 ま た、 そ の際 に、将来 世代 への割 引率 上 の配慮 等、 社会 的 な分配 上 の不公
平 にも十 分配慮 す る ことを求 め て いる。
特 に大規模 な公共事業 に ついては、完 全 で唯 一の分析結 果 を出 す ことは不可能 であ り、 いく つか の モデ ル値 を示
したうえ で、 よ り妥当 な選択 肢 を政策 決定者 が選択 す る必要 があ る。 また、 分析 上 の情報 に ついて の開 示制度 は、
法令 上義 務 化 し てお いた方 が良 い。
司法審 査 の深化 が進 まな いと いう問題点 に対 し ては、 同命令 により OM B審査 を義務 付 け る こと で、科学 裁判 を
ては、少 なく とも事前 と事後 の費 用便 益分 析 を実施 し、 そ の双方 を比較検 討 す る ことも法令 により義 務化 す べき で
一定 の金額 以上 の投資 が必要 とな る公共事業 にお い
を用 いて投資 の在 り方 を再検 討 す る ことは重要 な こと であ る。
て数千億 円 を投資 す る大 規模 なダ ム建 設 では、資 源 の無 駄遣 いの繰 り返 し は許 されな いので、事後 の費 用便 益 分析
析 を実 施 す る ことを法令 上義 務化 す る ことも検 討 の余 地 があ る。徳 山ダ ムや 八 ッ場ダ ム のよう に数十 年 間 にわた っ
最後 に、同命令 等 とは別 に、ダ ム開 発 のよう な大規 模 な公共事業 では、事前 のだ け ではな く、事後 の費 用便 益分
的弱者 への配慮 や情 報開 示 と い った点 に ついては、法令 で規定 す る ことは十 分可能 であ ろう。
定 的 な も のがあ るわけ でな いこと から、 法令 よ り は通達 の方 が よ り融 通が利 く と いう点 で利 点 があ る。 ただ、社会
る文書 によ って、費 用便 益 分析 の内容 を具体的 に指 示 し て いる。 これ は、費 用便 益 分析 の計 量 モデ ルが必ず しも確
ま た、 米 国 でも法令 によ って費 用便 益分析 の内容 を規定 す るよ り は、98c一
円>よ と いう 日本 では通達 に該 当 す
的 な選択 肢 の比較考 量 に重点 を置 く と いう ことが でき るよう にし て いる。
避 け つつ、 裁判 所 の役割 を全 う さ せ るた め に、技 術 的 な問題点 を な る べく O M B審査 で対応 させ、 司法審査 は伝統
大規模公共事業 における費用便益分析 (位 田 央
115
立正法学論 集第 45巻 第 1号 (2011)
あ ろう。 これら の配慮 があ って初 め て、費 用便 益分析 は有 用 な意 思決定 手段 足 り得 る。
︵
1︶ 大統領命令 は、合衆国憲法第 二条 と法律 に基づ いて大統領が出す法的拘束力 のあ る文書 であ る。費用便益分析を 一般的 に課す
大統領命令 の合憲性 に ついては、拙稿 ﹁
米国大統領 による規則制定統制 の合憲性 ︱費用便益分析 の義務付けと規則制定 の調整を例
として︱﹂ ﹃
法政策学 の試 み 。第六集﹄信山社、 二〇〇四年、 二七五頁以下参照。
ダ ム建設 における費用便益分析 ・費用対効果分析﹂立正大学法制研究所研究年報第 一二号、 二〇〇七年、三頁以下参照。
︵
2︶ 拙稿 ﹁
︵
3︶ 費用便益分析が全 ての考慮要素 に ついて金銭評価を行う のに対し、費用対効果分析 は施策 の実施 に伴 い発生する社会的費 用と
社会的便益を、必ずしもす べてを金銭価値 に置き換えることなく比較する手法 である。費用便益分析 は金銭 と いう統 一の価値基準
に置き換えることで、取りうる選択肢を全 て比較検討することが可能 になる。それ に対し、費用対効果分析 は評価基準が同じも の
の選択肢間 の比較 にとどまる。
︵
4︶ 拙稿 ﹁
米国連邦行政法 における費用便益分析 と多 元的統制 ︱序説﹂ ﹃
法政策学 の試 み 。第 二集﹄信山社、 二〇〇〇年、
一五 一
頁以下、同 ﹁
費用便益分析 とその司法審査 ︱米国連邦行政法を参考 にして︱﹂立正法学論集第 二八巻第 二号、 二〇〇 五年、九九頁
以下参照。
5︶ 一般的な政策評価 に関する法律 とし ては、﹁
︵
行政機関が行う政策評価 に関 する法律﹂が 二〇〇 一年 から施行 されて いる。同法
九条 には ﹁
事前評価 の実施﹂と いう規定があ る。 ここでは費用便益分析 や費用対効果分析が明示されているわけではな いが、政策
の事前評価を行う ことが義務付けられているため、 これら の分析が活用される可能性があ る。
︵
6︶ 我が国 においては、費用便益分析や費用対効果分析を義務付けている法律はほとんどな い。数少な い法律として、土地改良法
八条が農業用水用ダ ム等 の土地改良事業を実施する場合 に費用対効果分析を義務付 けている。但し、同法 では費用対効果分析 の内
。
容 に ついては規定がほとんどなく、費用と効果 の算定根拠を明示すること のみが義務付 けられている ︵
同法施行規則 一五条︶
︵
7︶ 農林水産省は農業用水用 のダ ムの建設 と いった土地改良事業 にお いては土地改良法 八条 に基づく費用対効果分析を実施 し てき
た。同省 は他 にも、
一九七六年度以降、沿岸漁業整備開発事業 で、
一九九七年度以降、林道事業や漁港整備事業 の新規事業 で費用
便益分析を実施して いる。旧建設省道路局 では、
一九九七年度以降、新規道路プ ロジ ェクトには費用便益分析を義務付け て いる。
また、同省河川局 でも、
一九九八年以降、既存 の事業 の見直しに費用便益分析を活用するよう にな って いる。
大規模公共事業 における費用便益分析 (位 田 央)
117
平成 一三年政令第 二二三号︶ の 一部改正 により、 二〇〇八年 一〇月 一日 から
︵
8︶ 行政機関が行う政策 の評価 に関する法律施行令 ︵
>︶ の実施が義務付けられる。 RIAは規制を実施 する前 にこの効果など の影
”o
規制 の事前評価 ︵
日0おけ>●”︼
場お ¨”H
”L諄8ヽ︼
響を、代替案も含 めて分析するも のであり、 これにより、我が国 においても規制活動 にお いて費用便益分析や費用対効果分析が活
用される可能性が高ま っていると言 える。
一九九〇年代 から用地 の買収などが本格化した。 二〇〇 四年 には事業費
︵
9︶ 八 ッ場ダ ムは 一九五〇年代 から建設計画が立案され、
が改定 され、総事業費 四六〇〇億円 に上 る大規模公共事業 となり、 このころから反対運動が法廷 に持 ち込まれるよう にな った。反
対運動 による法廷闘争 は、 八 ッ場ダ ム建設事業費 四六〇〇億円 のうち、各県が負担する費用 の支出 の差し止 めを求 める住民訴訟 と
して展開 された。 二〇〇九年五月 の東京地裁判決を皮切りに、前橋地裁、千葉地裁と いず れも原告側敗訴 の判決が出 て いる。 これ
ら の事件 はす べて東京高裁 に控訴されて いる。
0︶ 徳山ダ ム事件最高裁判所判決 二〇〇七年 二月 二二日。本件 は 一九九八年 一二月 に建設大臣 ︵
当時︶が土地収用法 に基づ いて行
︵
1
った事業認定 の取消訴訟 と、 二〇〇 一年五月 に岐阜県土地収用委員会が行 った収用裁決 の取消訴訟として展開 された。主要な争点
は、土地収用法第 二〇条 一号、 二号該当性だ った。原告側 は本件事業認定 の基礎 とな った水需要予測が不合理 であること、本件事
業 により環境的利益が失われることを主張した。最高裁判所 はこの原告 の訴えを退け、事業認定、土地収用裁決 のいずれも違法性
はなか ったと判断して いる。
1
こ
れまでの我が国 における裁判 の内、判決 の結果を費用便益分析や費用対効果分析が左右した事例 として川辺川ダ ム事件 一審
︵
︶
1
熊本地裁 二〇〇〇年九月八日判決、判例時報 一七八九号 一七頁以下参照︶がある。土地改良法八条 と同施行規則 一五条、並
判決 ︵
び に川辺川ダ ム事件 の詳細 に ついては、拙稿前注 ︵
2︶八頁以下参照。
2︶ 費用便益分析 の基本形は、社会的便益 ︱社会的費用 =社会的純便益 ∨○となる政策を望まし い政策 として、選択肢ご と に社会
︵
・
的純便益を算出して比較する。貨幣価値 に変換 できな い便益や費用がある場合 には、社会的純便益 =社会的便益 ︱社会的費 用 ︱貨
幣単位 で評価 されな い費用を計算することになるが、貨幣単位 で評価されな い費用が社会的便益 ︱社会的費用よりも小さ いか否 か
は、政策決定者が行う ことになる。
。o
、
3︶ ω。“﹃
ュ¨
︼
↓ >Z>rく∽H
∽︲
Oo●o
おo︲
∞
OO
け
P ””
ユ●” ●0メ♂︼
一
OB P O﹃
oP N
︵
o
”o
o口Oo
﹃
ヨo 00∽↓︲ω”Z”﹁︼
o
oお ”い0﹁﹃
” く︼
︲
,
,
,
∞
立正法学論集第 45巻 第 1号 (2011)
4︶ 事後 の費用便益分析を実施する試 みがあまり行 われな いのは、政策実現 の途中 や事後 に当該事業が無駄だ ったことを費用便益
︵
︲
分析 によ って明らかにしても、既 に多額 の資金がそ の事業 に振り向 けられており、その政策を途中 で止 めたりすることが困難な場
合が多 いからである。ただし、途中 の費用便益分析を行う ことで経費 の節約が可能 にな ったり、事後 の費用便益分析を実施 するこ
とで、将来、同種 の政策を実施しようとする場合 に貴重な情報を提供することは可能 になる。ミ ヽ単 ︸や
5︶ ミ 1 ド
︵
﹂
・
6︶ 費用や便益 は異なる指標 ︵
︵
金額、人数、濃度等︶ によ って算出 されるが、それらを 一定 の方式 で単 一の指標 にし て、加減乗除
︲
等を行な って得られる。 このため、金銭価値 に統 一する費用便益分析 と異なり、費用対効果指標 の値 の絶対値 は意味 を持 たず、当
該数値がたとえ正 にな ったとしても、当該施策 による純便益が正 になるとは限らな い。
7︶ 例 えば、利水を目的とするダ ム建設 の場合 では、費用対効果分析 では周辺 の環境や地域産業 への影響などは考慮 されな い。
︵
︲
8︶ 土地改良法 八条 三項 には、﹁
︵
前項 の調査 ︵
都道府県知事が行なう土地改良事業計画及び定款 に ついての審査 のために供 される、
・
農用地 の改良、開発、保全 又は集団化 に関する専門知識を有 する技術者が提出する調査報告 一筆者注︶は、当該土地改良事業 のす
べての効用と費用とに ついての調査を含むも のでなければならな い﹂と規定 され ており、フ﹂の規定 は 一般 に費用対効果分析を規
定したも のである﹂とされている。阿部泰隆 ﹃
政策法学講座﹄第 一法規、 二〇〇三年、
一四〇頁以下参照。
9︶ 但し、筆者 は、土地改良法 一条 二項 にお いて、 ﹁
︵
土地改良事業 の施行 に当た っては、そ の事業 は、環境と の調和 に配慮 し つつ、
・
国土資源 の総合的な開発及び保全 に資するととも に国民経済 の発展 に適合するも のでなければならな い。﹂と規定されて いること、
そ の結果、土地改良事業 にお いては ﹁
農業生産性 の向上﹂ ︵
土地改良法第 一条 一項︶と環境 と の調和 と いう 二 つの法目的を同時 に
達成 することが求められること等 から、費用対効果分析 ではなく、費用便益分析を用 いる べきだと考える。拙稿前 注 ︵
2︶六頁以下
参照。
0︶ も っとも、費用便益分析 の役割 は行政機関 の政策判断 のみではなく、立法過程を含む政策決定過程全般 にお いて重要 な役割を
︵
2
担う ことが できる。 この点 に関し、米国 で実施されて いる費用便益分析を含 んだ規制影響分析 RIAを ﹁
広く政策決定 ・立法過程
に付随した客観化、情報化 のツールとして重要性を有するも のと位置付 け
要があ
る
必
ろ
﹂
︵
米
丸
恒
治
﹁
う
規制影響分析制度 の導入
、 二〇〇五年、五五頁参照︶
と課題﹂公正取引委員会委託調査報告書 ﹃
﹁
教育 ・福祉 。医療分野 の事業活動 と競争政策﹂ に ついて﹄
との指摘がある。
央)
大規模 公共事業 における費用便益分析 (位 田
119
︲︶ 費用便益分析を実施することによ って、行政機関がど のような価値基準 に従 って選択肢間 の比較考量を行 ったかが行政記録 に
︵
2
h
一
ュ “●0”●0∞o一 ”0
P
残 されることになり、 これによ って間接的 に行政裁量統制 に資するとされている。〇︹
日0
日 o﹄〓“●“いo
”●︼
′0﹃
〓H
Φ
∞﹃︲
ウ
ヽ”︻
O
∞
∞
﹃すoC●︻
申0く0
け
P
け
﹃
●日0
●け¨に
o ∞H
0一∽”
”け
o∽︵
o﹁
o”﹃
”日 0﹁﹁
ヽりヽ
・H
・
,
、
、
、
2
に
あ
社
科
学的な命題を前提 とするが、それ
費
益
分
析
は
政
策
の
効
果
予
測
た
り
会
用
便
︵
2︶ 費用便益分析 の技術上 の問題 として ﹁
補償原理は意思決定 の循環を生ず る
らが必ずしも信頼 できるも のではな い﹂ こと、及び費用便益分析がそ の基礎を置く経済学 の ﹁
多く の費用便益指標 は計測 に伴 う様 々な誤差を避 けられ﹂な いと いう点が指摘 され
ため、整合的な社会決定が できな い﹂うえ、﹁
一〇九頁以下参照。
費用便益分析 の基礎﹄東京大学出版会、 二〇〇〇年、
て いる。常木淳 ﹃
、
3
︵
2︶ 費用便益分析を実施する際 には様 々な要因 の金額を算出するが 算出 された金額を単純 に合算するのは不適切な場合がよくあ
る。その原因として、第 一に、社会 にお いては便益や被害 は即時 に現れるも のに限定 されず、時間を考慮 することが必要 にな るこ
一般 に、
と、第 二に、特 に便益 はアンケート調査 によ って算出する場合があるが、 この場合、人々の好 みが調査 に反映 されるが、
人は将来 の便益よりも現在 の便益を大きく見積もる傾向 があるので、 これを修正する必要があ る。 この修正 の際 に用 いられるのが
一年
割引率 である。例 えば、割引率を 一〇% とし、毎年 一万円 の価値がある選択肢 に ついて二年後、三年後 の価値を計算す ると、
目は 一万円、 二年目は 一万円 十 一二 =約九〇九 一円、三年 目は 一万円十2 ・一× 一二 ︶=約 八二六四円 になる。
、
4︶ ヘド ニック法 ︵
︼
口o
Oo●お り﹃
︵
8 〓0 oe とは、環境 アメ ニティなどが地代や賃金 に与える影響を計測することで 環境等 の
2
権利 の配分 ・裁量 の
授 はこの ヘド ニック法を算定手法として推奨されている。福井秀夫 ﹁
便益を評価する方法 である。福井秀夫教,
行政法 の発展と変革 上巻﹄有斐閣、 二〇〇 一年、四三二頁参照。
統制 と コースの定理﹂塩野宏先生古稀記念 ﹃
5
︼
すoO¨oく〓︶とは、人 々から ア ンケート によ って対象物 に ついて の支払意 思額
︵
ooユ︼
●鴨 ユ く“︼
口”一
o● 〓oけ
2︶ 仮想評価法 ︵
︼
︼
﹄
︵
〓●”うo
1︼
●”●o
霧 ざ ”88■ ョ ↓>︶を直接聞き出す算定方法 であ る。 WTA に つ
ヨ︼
口 8 も Ч¨■ ↓﹁︶や受入補償額便益 ︵
,
′●”︼
いい
︼
o¨一
NΦ
い”﹂
′●”︼
﹄
﹃︺o●ヨつ
いてよは、
σo・︺い・H
︲ωo
一
”︼0︵﹁0〓o
∽“●0で︻
“●”∞oコ︼
o
●一卜H
いo
∽rO
ヽ
∽Oo∽
くヽ
く∽
く∽
””てヽP
6︶ ヘド ニック法や仮想評価法以外 の便益算定方法として、評価対象 に相当する私的財 に置き換えるための費用を基 に算定 す る代
︵
2
↓ 2 o 〓 手oO¨
手o﹂¨”o〓︶や、対象地 までの旅行費用を基 に算定するトラ ベルコスト法 ︵
け
”o
替法 ︵
o
ュ 08”〓o
8
く
8
〓o
日0
●︼
一九
公共事業 と環境 の価値 ICVMガイドブ ックー﹄菊池書館、
↓0〓︶がある。 これら の便益算定方法 に ついては、栗山浩 一 ﹃
九七年、
一一頁以下参照。
立正法学論集第 45巻 第 1号 (2011)
7︶ ヘド ニック法 に ついては、﹁
。栗山前注 ︵
6とハ七頁参照。ま
︵
土地市場が完全競争的と いう仮定 のもとでなければ評価 できな い﹂
2
2
た、CVMは影響を受ける住民に対するアンケート調査 に基づ いて実施 されるため、 アンケートの設間 の内容 によ っては回答 が正
確なも のとならな い場合が発生する可能性があり、また、 アンケートの前提 となる情報が対象となる住民 に十分 いきわた って いる
ことが必要 であるが、時宜 に適 った情報 の開示が可能 かどうかと いう問題点がある。
8︶ 山崎治 ﹁
公共事業 の事前評価﹂ ンファレンス二〇〇六年 二月号 二五頁以下、 二六頁参照。
︵
2
9
、
聾B”●︶0︻
︵
♂
2■5 ∽
●げo
︻
●﹄
●m・”●0そ
P ”け9
o
o
”・く﹂
ぶ〓S Sο稼 H
2︶ ω。“ヽ
,
0︶ 人命 の金銭化等 に ついては、 ﹁
、
︵
す べての便益 ・費用が必ずしも金
算 になじむ け では
銭
換
わ
な
か
く
り にそれが可能 であ った に
3
。
2
せよ、そ の貨幣額 の個人間比較 に合理性 と倫理的妥当性を見出しえな い﹂との指摘があ る。常木前注 ︵
2I 一〇頁以下参照
︲︶ 前注 ︵
1︶
︵
参照。川辺川ダ ム事件 一審 における最大 の争点 は、農林水産大臣が 一九八四年 に決定し、
一九九 四年 に 一部変更 した、
3
1
土地改良法 に基づく事業計画 の違法性 であ った。すなわち、同事業計画 の決定、変更 に際して行われた土地改良法 八条 と、同法施
行規則第 一五条 に基づく費用対効果分析 の違法性が争点 とな っていた。
、
2
。
︵
︶
米
国
に
お
い
て
も
最
高
裁
所
が
費
し
ど
判
便
益
分
析
の
内
容
に
い
て
審
査
が
ほ
と
ん
用
つ
た
事
例
な
い
最
高
裁
所 で費用便益分析 が争点
判
3
にな った事件 のほとんどは、費用便益分析 の実施 の是非 であ って、その内容 に ついては、ミο
゛ミヽ
お よぶ 、粉ゞ ヾ ∽さや
どヽ ゛
﹁民ミ ミミ ヽミざ さ oP ふ∞C ∽ S 8田 を除 いて、争 われて いな い。
ヽ
,
3
どヽきヽヽヽ ヽミざ ∽゛0こ ヽ
︵
いH﹃ い
OH
∞
∞
一∪ 0 0■・︼
Φ
∞
望
3︶ ︵
。﹁ヽふヽ﹁
4︶ 例 えば、ミο
や﹂
、3ゞ ヽ ∽きさ ﹁ヽS ヽ
︵
きヽ くヽ
おま
やヽヽミざ き 6P ふ∞c ∽ S﹂認∞では、全国 ハイウ エイ交通安全局
ヽ
3
,
エアーバッグ、もしくは シ,
が、
ート ベルトを装備するよう義務付 ける規則を、第 一に自動車会社は エアーバッグ ではなく シート ベ
ルトを装備 することを好 むこと、第 二に乗車する人は シート ベルトを取り外して乗 ることが多 いことを理由 に、便益が小 さ いとし
て廃止したことに対 して、保険会社等が廃止 の違法性を争 った。最高裁 は、第 一に仮 にシートベルトの便益が小さく ても直 ち に規
則を廃止することは許 されず、 シート ベルトの装着を禁止して、
エアーバッグ の装備を義務付 ける等 の他 の選択肢があ ったはず で
あり、 これを考慮 しなか った のは専断的 である、第 二にシート ベルトを多く の人がはずすためにベルトの着 用率が向上しな いと の
認定は、人 々が情性 でベルトをはず さな いと いう ことを考慮していな いので不十分 であるとし、当該規則 の廃止決定 は恣意的専断
的裁量濫用 であると判断した。
央)
大規模公共事業 にお ける費用便益分析 (位 田
5︶ 米国連邦行政法 にお いては、行政裁量 に対する司法審査 は、通常、連邦行政手続法 に規定 され て いる恣意的専断的濫用基準
︵
3
、
、
。
、
a c∽o ∽o
98只じ︶ に基づき ハード ・ルック審査が行われる ハード ・ルック審査 とは 第 一に 行政機関が選択肢間 の比
、
、
、
較考量をする際 に、考慮す べき選択肢を全 て考慮 して いるかどうか 第 二に 考慮 の内容が十分だ ったか と いう 二点を裁判所が
、
審査すると いう手法 である。 ソフト ・ルック審査 は、行政機関が費用便益分析を実施し ている場合 には 当該分析 の内容 に ついて
o〓 教授は指摘し ている。
は、 この ハード ・ルック審査よりもより緩やかな審査を行う べきだと ∽●3け
6
N
一
9
”OZ〓uZ↓︶N
o
o
o︲P
N ”けP
メ >Z∪ ↓口∪ UZく日
∽バ >Z∪ 刀U>∽OZ ∽>﹃U↓くヽr>´
︵
3︶ ∽・・路2P ”日
7︶ OMBは 一九 二 一年予算会計法 ︵
ω“0”2 ”●0>8o“ユ一
●”>S R 8Nヽ”c口 r Z9 R占P S ∽S S︶ により創設 された
︵
3
,
、
。
予算局、以下B oB︶を前身 とする大統領が直轄する行政機関 である 一九六〇年代 に入り 連邦政府 の
ω“お ca owa ”P ︵
,
、
、
,
規制活動が増大すると、邦政府 による規制 の総数 の抑制、及び規制相互 の調整 の必要性が高 まり 一九七〇年 ニクソン大統領 は
一
”8 品”●︼
S”
o●コ”●Z9 NR 88・∞O ” ” ”● 8ド
B oBをOMBに改編し、そ の権限を拡大し、新し い目的を付け加えた ︵
。現在 のOMB の役割 は、予算、プ ログ ラム、行政管 理、規制政策 に関 し て大統領を助 けることであ る。より具体的 には、
8ざ︶
、
第 一に大統領が議会 に提出 する予算案を作成 し、それが法律 とな った後 にはそれを執行すること 第 二に大統領が連邦行政機関を
、
管理し、議会 の立法 に関 して政権 の立場を明らかにし、法律を執行するのを助 けること 第二 に ハイ レベルの規制分析を提供 する
こ3 oR・
1あ︼
ミ■■■ ■〓8す0●X ∞oく、
0﹃
ことである。∽ヽ
0日げ、
””●営゛諄ざ●ヽo日げ oくR〓0
い 〓〓¨
、 し
、
8
れ
れば、費用便益分析を議会 と会計検査院
︵
3︶ 数少な い例 として 一九九六年議会審査法 は 主要な規制 に ついて も 実施さ て い
費用便益分析﹂ に ついて規定 して いる法
U 含︾。議会審査法以外 にも ﹁
いg 9 0 ∽∽ 曽員じ ︵
総裁 に提出するよう規定 している ︵
3 法の
津>●”︼
出
︼
際 >∽
ユ ”●Oo8︹ωo●o﹁
〇﹄
80Bo
り¨
8 2 ”一
律はあるが、例えば、農務省リ スク評価及び費用便益分析局設置 ︵
よう に、費用便益分析 の実施を規定 しているのではなく、農務省 の他 の部局が費用便益分析を実施 する場合 にその援助を実施 する
。
︵
こ︶
⊆ ∽ 0 ∽8tS浄 C︶︶
部局を設置するにとどま っており、費用便益分析 の実施自体 に ついては規定して いな い法律 もあ る ︵
9
H
∞︸
c
”
H
∞
H
o
Φ
N
卜
0
﹁
O
ヽ
H
一
O
P
同
L
︵
︶
r
o
o
ヽ
o
﹃
x
。
。
口
く
o
∞
3
0︶ 国XO
Φ∞
9
o
∞
一
卜
Φ
〇りo ”o
9H
一
Oo
Pい
︵
﹃H
ocけ
くoO﹃
”H
4
,
Φ
Φ
”
一
OP ∞0 ﹁ ” い∞
∞
P〓
︼ O0 H
︵
O
ヽ
0
﹁
o
口け
く
4.︶ UXO
2︶
ド
o
o
ヽ﹁o
O ”o
∞い
い
pN
Oo
”〇
国Xo
︵
ヽH
o
oLくoO︻
∞ 卜
4
立正法学論 集第 45巻 第 1号 (2011)
︵わ
つ︶ 国Xoo●Lくo のイCo﹃ PN∞0い ∽ooL o● P︵”γ
︶
4 ︶ ”x
︵4
σ︶G γ
。。口け﹄
くo O ﹃Ooヽ H一∞op ∽ooL o● H︵
5 ︶ 国
︵4
σ︶︵
X。。●け一
﹃γ
くo O ヽOo﹁ H一∞いρ ∽ooL o● P︵
同x。。●け﹄
げ︶︵じ
くo O ︻Lo﹃ 日N∞Oρ ∽ooLo● P︵
︵6
∞︶︵
0︶含γ
4 ︶ 同x。。﹂Lくo O ヽOo﹁ H一∞OP ∽ooL o● 0︵
“︶︵
7︶
︵4
8
︵
︶
B
は大統領が連邦行政機関 に政策 や管 理 のため の指揮 する のを助 け るため の主要 な手段 とし て o﹄
O
M
4
8●︼
ミ を出 す ことがあ
る。Q8●︻
ミ とは、OMBが大統領 の政策上 の指示や指針を連邦行政機関 に伝える際 に用 いられる手段 の 一つである。日本 では通
達 に該当する性質を有 している。他 に ω●一
︼
¨
oけ
3 と呼ば れるも のがあ る。連邦行政機関 はこの 0一
︼
¨
8口一
ミ や ω“︼
oけ
3 によ って大統
領 の政策 に関する情報を得 ることが できる。
一般的 に、Q8口一
営 はそ の効果が 二年以上継続するも のに ついての情報 を伝 え、ω●︸
おけ
一
3 は 一時的な効果をもたらすも のに ついての情報を提供するのに用 いられて いる。
9︶ 〇〓ω O︼
︵
日8γ 費用便益分析 の詳細 に ついては、大統領命令 一二八六六号 の内容を具体化するため に 一九九六年
8Lミ>よ ︵
4
に出 された 08”
﹄
︲ωo
〓0●¨
︼
3︼
●o
●8 やo日 〇〓ω に基づ いて いたが、そ の後、大統領命令 一二八六六号 とそれを継続するとした同
一三二五八号 の解釈指針 とし て三〇〇三年 に改めて 0︼
8Lミ>よ がOMBから出 された。
0 ︶ ○ ぞ︻ω O 守 L
︵5
o “﹃> ︱卜 S oo3 ヽ> H●暉 oO●oけ一
oP
︵︲
5 ︶ ﹄ヽヽ ω 弓 すo Z ooO ︹o﹃ ﹃oOoヽ”︼ ” o”●︼”けo﹃Ч > oL o●
﹂ヽ ∪
> 営
お 2 > 0も﹃o”oすo9
ヽ ● ヽ
2 ︶ ヽヽ 0 > 〓
︵5
oヽ●”L くo 刀 omc︼
”けoいく > ou︻o”0す09
ヽ
3 ︶
︵5
︵臼Л︶ ヽヽ U ︻Oo●ユ 喘く︻
●” “●α マ︻o ∽●﹃一
●∞ ” o●oい け ”う0 0 o∽”9
︶
,
︵5 ︶ ヽヽ ﹁ ∽
2 ︼
ヾ ﹂ >
︼ お ︼”
け
イ
o
●
o
●
“
”
5
つ
o
●
2
5 o●け
く
o
,
6 ︶ ヽゝ ∪ >
︵5
一 お L > oもヽo”oす0″ ∪ ぉ 吋 ¨
0●け﹂o●“一 国 職 oo一
・ ●” ヽ一
,
7 ︶ ﹂ヽ 同 HO
︵5
o●L ヽ﹁︼
●” ”●0 マ︻o”∽●﹃︻
●” ω O●oい け ”●0 0 o∽けp ∪ い
∽oo●●け ” ”けOp 一 H●けo﹁”o●oヽ”L O●”︼∪ ﹄
のoo●●● ●” 劃副引単牟 バ午入 きりヽ か0
・
ればなるほど、分析している時点 での将来 の世代 の便益が小さく評価 されることになる。そ のため、将来 の世代 にと ってより重要
になると想定 される価値 に ついては、割引率を低く設定する工夫が必要 になる。
)
大規模公共事業 における費用便益分析 (位 田 央
〓o”〓〓 ”う0
●” 一
Ooくo︼
口” ωo●o 一 “●0 0o∽け 同∽Lロロ”けop ∞ マ︻o●OLN︻
oも︼
いく﹂
●” ωo●0蟄一 ”●0 00∽けp ︺
︵¨∞︶ ﹄ヽ 同 HOo●一︼
o”∽●﹃一
●∞ ”●0 マ︻
・
,
公 害 等 の環 境 上 の リ ス ク は未
算 ∽ 8 o〓 こ お
o房 ヨ ロ 8 ︼ ”●0 ∽臥 oξ ” ︻
“R ︼
o口 R ”o﹂“o一い
9 く ”︼
,
∽臥 o一ヽ 国o●R ︼
お ”●0 03
、
,
、
成年者 にも及 ぶが、CVM,を用 いてこの価値を算定する場合 未成年者が環境上 の価値を正しく把握 できな い可能性が高 いため
、
どうしても保護者 の価値判断 に委ねられてしまう。 この点 に ついて、98Lミ>よ は部分的 に費用対効果分析 を用 いて 対象 とな
。
る未成年者 の人数を明記する等 の工夫を採用することを勧 めている
σ〓︼
”∽
刀 oも︻0一“o一
けく o﹁ ” o∽‘︼
U ∽L ●p”一oタ ト nイ ”●∽o“﹃0●0マ ”●0
け ”●ヽ O o∽けP Uおくo︼
o●︼
口” ω o●o識 け “う0 0 o∽け
いく︼
●” ω o●oいい
︵m″︶ ﹄ヽ 国 ︼Oo●一”
●” ”●0 でいo”∽●﹃︻
ヽ
0 ︶ ∞∞ C ∽0 ∽∽ ﹃or
︵6
HΦΦや
︲︶ 同局は 一九〇 二年 に設立され、西部 一七州 におけるダ ム、水力発電所、運河を建設し、西部 の経済発展を促進し て いる。 フー
︵
6
ミ ”げoLト
ミー■■ ●3︻”oミ日”︼
バー ・ダ ムをはじめとして六〇〇以上 のダ ムを建設して いる。9ヽ 〓〓¨
、
、
れ 。 立当時 は、政府 の権限を有 し つつ、民間
2
︵
6︶ TVAは 一九二三年五月 テネシー河 の総合的な資源開発 のために設立 さ た 設
。
、
企業 と同様 の柔軟性も併 せ持 った新し いタイプ の政府企業 と位置付けられ ニューデ ィー ル政策 の 一翼を担 って いた 現在 も引 き
、
、
続きテネ シー河流域 の総合的な開発を担 って いる。特 に、 テネ シー河流域 において 水力発電 による安価な電力 の提供 経済 と農
。
ミくてヨ雪”88むげOLォミくこ o●F日
業 の発展、環境保全、総合河川管 理、技術革新をその業務 として いる で 〓ご¨
,
3 ︶ 国×。。●け¨
︵6
くo O ﹃Oo﹃ H一∞ΦP ∞ 0 ﹁ ” ∞い
同 x。。●け︼
くo O ヽOo︻ HN∞ΦP ∽o9 ド
、
、 , 、
、
4
直接的な投資 と補助金 として支出 される執行部内
︵
6︶ ここで いうプ ログ ラムには 運輸 水資源 エネ ルギ ー 環境保護 に対する
くooaq るsP ∽8ニ
行政機関 のプ ログ ラムを意味して いる。国x8諄一
5 ︶
︵6
6︶ 大統領命令 一二八九 二号 は ﹁
イ ンフラ ストラクチ ャー ヘの投資 は予想 される便益 と費 用 の体系的 な分析 に基づ いて実施 され
︵
6
くooaq ヽ8P ∽8る Cド
る﹂ とし、費用便益分析を義務付けて いる。国x8舞︻
︵8
6︶
UXooLけ︼
くo O ︻00﹃ H一∞OP ∽o9 ゛︵”γ 貧 Υ
同xoo●”︻
”ド
くo O ︻00ヽ ドN∞ΦP ∽o9 N︵
7 ︶ 同X。。口Lくo O ヽOo﹃ H一∞OP ∽o9 ト
︵6
9︶
︵6
立正法学論 集第 45巻 第 1号 (2011)
0 ︶ ∪X
︵7
Nγ
Oo●︹一
くo O ﹃Oo︻ H一∞oP ∽o9 N︵
”γ ︵Hン ︵
︲︶ 国XOo
︵
¨
Oo﹃H
N
∞
ΦP ∽o9゛︵
“け
くoO︻
“ΥSγ
7
2︶ ここで いう不確実な事実 とは、事実 そのも のだけでなく、それが発生する時期も含 むと
︵
7
されて いる。同x8二︻
圏8ヽ
くooaq H
∽o9N︵
∞γ
“γ︵
3︶ 国X。。
︵
︼
Oo﹁H
一
∞
ΦP ∽o
●け
くoO﹃
9∞︵
”γ→Υ
7
4︶ Ux。
︵
Qo
一
∞
ΦP ∽o9ヽ︵
いγ
。●LくoO﹃
︻H
”γ︵
7
5︶ Uxo
︵
︼ O﹃
O H
一∞
O ∽ い︵
Oγ
o
“”
く
o
o
ヽ
P
o
o
7
6︶ 国X8二一
︵
お8︶∽o
くooaq P
9ド この規定は大統領命令 にお いては標準的な規定 である。大統領命令 はあくまでも行政組織内
7
部 への命令 にすぎな いため、国民 には直接法的な効果をもたらさな いと いう ことを確認する規定 であ る。
7
︵
田8ヽ∽o
お Oaq H
9” なお、OMB に提出する際 には、98●︻
7︶ 国X8二一
ミ>よ の公共事業 バージ ョンである 0¨
8●︼
留>も卜に
お いて、分析手法 の概略が示されている。
8︶ 議会 が法律 によ って費用便益分析 の実施 の可否を決定する権限を行政機関 の裁量 に委ね にもか
︵
7
た
かわらず、OMB審査 によ っ
て費用便益分析 のモデ ルを特定することは、大統領単独 による国内政策 の形成 であ って、OMB審査 は行政機関 の裁量 に対 する重
大な侵害 となり、大統領 による議会 の権限 に対する重大 な侵害 となり、違憲 であ ると の指摘があ る。力88 F ω o●0 ↓F
お
Q
ヽ
r︻
]
︼
︼
Oo
︼
●L¨
∽o︵︼
Xoo
C一
く0﹁0■oヽ¨”︻
′”o
o
∽
●け
”︼Oo●一
︻
円
o︼oい﹂
●o
︻
υ﹃
αo
Φ
口︼
Nい
“富﹄
●”●●Ooヽ︼
OH
〇ぞ口o い
く”口︻
Xo
O
●け
く0︵
︻H
く
”“●一r●メ
ヽ∞
,
刀o二ol H
o
図一貧0
P N〓︲
∞じ
9
︵
7︶ OMB の前身 であるB oBは 一九 二 一年 予算会計法 により、大統領 が国家予算を編成 する際 にこれを助 ける技術的な組織 とさ
れ 。
た
0︶ OMBによると、98●︼
︵
ミ は連邦行政機関 に統 一指針を提供することによ って、大統領 による連邦行政機関 の管 理と政策方針
8
の徹底をより効果的 に行なうも のであるとし ている。でい Fご¨
ミ■■1 ■ 一
おすo●8 ¨oく、
︻
く”︼
︼
0ョげヽ
お 澤日一
”︼
,
,
︵ ︶ 拙稿前注 ︵
2︶六頁以下参照。
8.
2︶ この点 に関し、特定多目的ダ ム法第 四条 には、﹁
、
︵
国 交
土
通
大
臣
は
ダ
多
目
的
し
8
を
ム
新
築
よ
うとす るときは、そ の建設 に関 する
基本計画を作成しなければならな い﹂ と いう規定があり、そ の中 で、同条第 二項 にお いて、﹁
基本計画 には、新築 しよう とす る多
大規模公共事業 における費用便益分析 (位 田 央)
125
建設 に要する費用及び その負担 に関 する事項﹂
目的ダ ムに関 し、次 に掲げ る事項を定 めなければ ならな い﹂としてそ の第六号 に ﹁
と いう規定がある。しかし、 この規定は費用便益分析や費用対効果分析を求 める規定 ではなく、費用が大き い場合 にはダ ム建設を
中止せよと い った規定 ではな い。費用 の総額を算定せよと いう にすぎ な い。
3︶ 土地収用法 二〇条 は、﹁
国土交通大臣又は都道府県知事 は、申請 に係 る事業 が左 の各号 のす べてに該当す るときは、事業 の認
︵
8
事業計画が土地 の適 正且 つ合 理的な利 用 に寄与 するも のであ ること﹂
定をすることができる﹂ と規定し、同条第二号 にお いて、﹁
と規定 している。徳山ダ ム事件 では同項 の要件該当性が争点 の 一つとな った。
4︶ 徳山ダ ム事件岐阜地方裁判所平成 一五年 一二月 二六日、判例時報 一八五八号五四頁参照。
︵
8
5︶ 〓0¨
匡争”R>ヽお98︲Fヨ︼を参照。
〓”oどヽこ多”ヽ
︵
ヽ■■1日︼
8
6︶ 人 の生命 の価値を計量するには支払意思額、または慰謝料を使用し、 二酸化炭素 の排出濃度削減 に ついては排出権取引 の枠組
︵
8
みを活用すること、被災 に対する不安 に ついては代替市場や支払意思額を活用するなど、詳細な記述がある。