猛暑対策は「守りの管理」に徹すべきなのか! - 東洋グリーン

TOYO GREEN
NEWSLETTER ON TURF SEED
August
2010
No.94
梅雨明けから全国的に猛暑が続いていますが、この暑さは国内だけではありません。
今年猛暑に襲われた米国ではグリーンの芝生の被害が懸念されることから、ついに
USGAグリーンセクションから非常事態宣言が出されました。その中では「守りのコース管
理」が推奨され、厳しい残暑が心配されるなかでの適切な対策となります。一方、そろそろ
痛んだグリーンを早めに回復する方策を考えるときではないでしょうか。
猛暑対策は「守りの管理」に徹すべきなのか
上:ピシウムによる根の機能不全
ピシウムによる根の機能不全は、夏のストレス時に症状が現れ、急速に進展、枯
死に至る病害です。トレッドウェイ博士らにより、春秋にピシウム菌が感染して根の
機能が破壊されるために夏場のストレスに耐えられなくなる病害であることが見出さ
れ、この時期の殺菌剤予防散布が有効とされています。
決定的な治療法はまだ見つかっていません。もし発症した場合は、メタラキシル・
ホセチル・プロパモカルブなどのピシウム剤の集中散布により進展を止めると同時
に、刈高を上げ、刈込回数を減らし、目砂などの機械的な負荷を避け、シリンジング
を行なう、などのストレス軽減処置を行います。そして、薄めの窒素を葉面散布でス
プーンフィードすることで回復を早めることが有効とされています。
ウエットウィルトは、高温とグリーン表層の過湿が重なると根が機能しなくなり、水
が吸えなくなり、土は湿っている(ウェット)のに、体内の水が足りない=萎れる(ウィ
ルト)状態になることで起こる生理障害です。やはり決定的な治療法はなく、根本的
解決には、土壌透水性の改善が必要です。もし発症した場合は、シリンジングで土
壌は濡らさず、芝は枯れないようにしのぐしかありません。刈込によるダメージも出
やすくなるので、刈高を上げ、刈込回数を減らすことが必要です。
下:ウエットウィルト
写真 夏に発症するベントグリーンの被害の事例
USGAグリーンセクションではこの夏「非常事態宣言」ともいうべき記事を発表しました。そこでは各地で猛暑によるグリーン
の被害が多発しているとして、「扇風機の利用」「ベンティング」「刈高を上げる」「刈り込み回数を減らす」「根に合わせた水管
理」「殺菌剤の定期処理」「通行の制限」など、『守りのコース管理』を推奨しています 。「守りの管理」とありますが、猛暑が続
き厳しい残暑が懸念される中では、このような管理は夏越し後の芝生の回復を手助けする有効な対策になります。
これらの対策に加えてこの時期もピシウム病、タンソ病などに対して殺菌剤による予防散布を継続し、芽数が減少したグ
リーンへは早めに追い播きをすることで芝生密度を回復させることができます。「L-93」はペンクロス(標準品種)よりウエット
ウィルトに強く、採用コースではニューベントの中ではサッチ堆積が少ないことが評価されています。「962」はピシウムによる
根の機能不全に強く、採用コースの現場データや研究データからペンクロスよりも高温条件で発芽・生育が可能なことが高く
評価されています。グリーンの追い播きやインターシーディングには、現場の評価事例が多い「L-93」や「962」を用いること
が、グリーンの早期回復を積極的に図る有効な対策のひとつとなるのではないでしょうか。
参考資料
① WORLD WAVE 連載129号 「米国各地でグリーンにサバイバルの危機」 2010年9月号 ゴル
フ場セミナー 124-127ページ
② 「ベントグリーンを夏越しさせる8つのステップ」 弊社ホームページ
③ WORLD WAVE 連載106号 「ピシウムによる根の機能不全の病原、Pythium volutum にほぼ
確定」 2008年8月号 ゴルフ場セミナー 122-125ページ
④ トレッドウェイ博士 米オンライン誌「Turfgrass Trends」
⑤ Yiwei Jiang & Kehua Wang [Growth, Physiological, and Anatomical Responses of Creeping
Bentgrass Cultivars to Different Depths of Waterlogging] Crop Science 2006年11-12月号 24202426ページ
⑥ Clark Throssell, Ph. D. [CUTTING EDGE] Golf Course Manegiment 2006年9月号 106ページ
⑦ ペーター・H・デルノーデン博士 USGA Green Section Record誌 2006年3-4月号
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