638nm帯高出力赤色半導体レーザの加速信頼性

特集論文
638nm帯高出力赤色半導体レーザの
加速信頼性
満山 弘*
門岩 薫**
八木哲哉**
Reliability Study on High Power 638 nm Red Laser Diode
Hiroshi Mitsuyama, Kaoru Kadoiwa, Tetsuya Yagi
要 旨
レーザディスプレイ向け赤色光源として亜鉛の熱拡散に
平均故障時間(Mean Time To Failure:MTTF)と光出力
よる端面窓構造を導入した638nm帯BS(Broad Stripe)−
密度
(Pd)依存性を調べた結果,ほぼ線形の関係が見られ,
LD(Laser Diode)について加速信頼性試験を行い故障モー
CODによる素子寿命はPdの3.2乗に反比例することが分
ドと加速信頼性に関して検討を行った。光出力(Po)とケ
かった。この加速係数から,このLDにおけるTc:40℃,
ース温度(Tc)を変化させた通電試験を実施した結果,通
Po:0.5W・CW(CWContinuous Wave)でのCODによる
電に伴い突然に光出力がゼロとなる突然劣化と,徐々に光
MTTFを求めると41,000時間であることが明らかになった。
出力が下がる緩慢劣化が見られた。突然劣化の原因を調査
一方,緩慢劣化モードでの加速係数を算出してMTTFを
するためにEL(Electro−Luminescence)像を解析した結果,
推定すると84,000時間となった。このことから,このLD
端 面 で の 光 学 的 端 面 瞬 時 破 壊( Catastrophic Optical
の同条件でのMTTFはCODが支配的で,推定寿命は
Degradation:COD)であることが判明した。このLDの
41,000時間であり,レーザディスプレイの赤色光源として
CODモードの加速性については,m(形状パラメータ)値
問題なく使用できることが明確となった。
暗線
99.9
1,200hr
90.0
累積故障率(%)
後端面
前端面
から磨耗故障モードであることが判明した。各通電条件の
50.0
4,500hr
条件A
条件B
条件C
10.0
5.0
1.0
0.5
m:3.5
1,800hr
0.1
1.E+01
1.E+02
1.E+03
1.E+04
通電時間(hr)
窓領域
突然劣化を起こしたLDの裏面EL像
CODモードのワイブルチャート
99.9
8,900hr
1.E+05
条件A
条件B
条件C
条件D(推定)
1.E+04
累積故障率(%)
CODによるMTTF(hr)
90.0
50.0
10.0
5.0
1.0
0.5
220,000hr
12,000hr
条件A
条件B
条件C
条件D
m:2∼4
21,000hr
0.1
1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06
通電時間(hr)
1.E+03
1.E+04
1.E+05
1.E+06
光密度(W/cm2)
MTTF(COD)の光密度依存性
緩慢劣化モードのワイブルチャート
レーザディスプレイ用638nm帯高出力赤色半導体レーザの劣化解析と故障モード特定及び加速性の推定
劣化解析を行い,突然劣化の原因は端面での光学的端面瞬時破壊(COD)であることが判明した。MTTFと光出力密度(Pd)依存性を調べ,
CODによる素子寿命はPdの3.2乗に反比例し,Tc:40℃,Po:0.5W・CWでのMTTFは41,000時間であった。一方,緩慢劣化モードで
の加速係数から推定したMTTFは84,000時間となった。すなわちこのLDのMTTFはCODが支配的であることが明確となった。
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高周波光デバイス製作所 **同製作所(工博)
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