お 知 ら せ - 網走開発建設部

平成27年5月7日
お
知
ら
せ
おおまがりぜき
件 名 網走川大 曲 堰 が土木学会北海道支部技術賞を受賞しました。
お知らせ内容
おおまがりぜき
平成 25 年度に完成しました網走川大 曲 堰 が、このたび土木学会北海道支部技術賞を受賞し、
去る平成 27 年 4 月 23 日に行われた土木学会北海道支部総会にて表彰されました。
この賞は、北海道内において、土木事業の計画、設計、施工等に関し、土木技術の進展に顕
著な貢献をしたと認められるすぐれた技術(技術、業績、工法、構造物等)に対して授与され
おおまがりぜき
るものであり、網走川大 曲 堰 における、網走湖の水環境の改善、魚類をはじめとした河川環境
への配慮、網走湖におけるヤマトシジミの資源量の回復などを、総合的に評価していただきま
した。
以前は湖水浴ができた網走湖ですが、流域の発展に伴い、生活排水、工場排水、事業所排
水、農畜水産系排水等の汚れた水が湖に流れ込むようになり、水質が悪くなりました。その
汚れた水の中には、植物プランクトンの栄養源となる栄養塩類が多く含まれており、それが
下層の塩水層に大量に沈んでいます。
また、湖の底にたまった枯死した植物プランクトンや水草などが分解するときに、酸素が
消費されて塩水層が無酸素状態になっています。この塩水層が上昇すると、アオコや青潮な
どの水質障害が起こり、シジミやワカサギなどの魚介類が大量に死ぬ被害が発生します。
このような問題の解決、網走湖の豊かで美しい自然環境を次世代に残すため、平成 16 年 6
月に「網走川水系網走川環境改善緊急行動計画(清流ルネッサンスⅡ)」を策定し、地域住
おおまがりぜき
民、自治体等と協力して水質改善を図っています。網走川 大 曲 堰 はその一翼を担う施設で
す。
問合せ先
所
網走開発建設部
属
役
治水課
課
網走開発建設部 北見河川事務所
職
名
氏
長
岩崎
上席治水専門官
名
代
表
電
話
政司
0152-44-6445
西村 弘之
0157-23-6118
【網走湖の概要】
網走湖は、上部が淡水層、下部が塩水層の二層構造を呈する汽水湖で、下部の塩水層は海水の逆流によって
形成されたもので、湖体積の半分近くを占める塩水層(下層)は無酸素状態となっています。また、網走湖は
自然が豊かで、その周辺は網走国定公園に指定され、多くの観光客の利用があるとともに、ヤマトシジミ、ワ
カサギの漁獲量は道内の約 8 割を占めており、重要な内水面漁場となっています。
■湖水流出時
湖水位が潮位より高い
網走湖
網走市
ヤマトシジミ
場合には湖水が流出する。
淡水層
大空町
網走湖
塩水層
オホーツク海
ヤマトシジミ
ワカサギ
■海水流入時
潮位が湖水位より高い
場合には海水が流入する。
美幌町
津別町
網走湖
淡水層
塩水層
図1:網走川流域図
オホーツク海
図2:網走湖の構造
図3:北海道内の生産地別漁獲割合(平成 19~23 年平均値)
【網走湖の水質問題と水環境改善に向けた取組み】
以前は湖水浴ができた網走湖ですが、流域の発展にともない、生活排水、工場排水、事業所排水、農畜水産
系排水等の汚れた水が湖に流れ込むようになり、水質が悪くなりました。その汚れた水の中には、植物プラン
クトンの栄養源となる栄養塩類が多く含まれており、それが下層の塩水層に大量に沈んでいます。
また、湖の底にたまった枯死した植物プランクトンや水草などが分解するときに、酸素が消費されて塩水層
が無酸素状態になっています。この塩水層が上昇すると、アオコや青潮などの水質障害が起こり、シジミやワ
カサギなどの魚介類が大量に死ぬ被害が発生します。
このような問題の解決に向け、網走湖の豊かで美しい自然環境を次世代に残すため、平成 16 年 6 月に「網走
川水系網走川環境改善緊急行動計画(清流ルネッサンスⅡ)
」を策定し、地域住民、自治体等と協力して水質改
善を図っています。
青潮による魚の酸欠死
アオコ発生の様子
【網走川大曲堰の諸元と機能について】
基本諸元
名称:網走川大曲堰
地点:網走川 KP7.0
構造:鋼製起伏ゲート
(潜り堰、最大天端高 EL0.2)
諸元:L=20.7m、2門
(右岸第 1 ゲート、左岸第 2 ゲート)
操作:遠隔・自動制御(北見河川事務所)
操作期間:11 月 1 日~3 月 31 日
操作条件:逆流時のみ起立
大曲堰位置
網走川
網走港
網走湖
0km
図4:位置図
・逆流時にゲートを起立し海水流入を抑制、順流時はゲートを倒伏。
・網走湖の塩淡境界層上昇を抑制する。
・海水流入が卓越し、網走湖における主要魚類(ワカサギ、シラウオ、カラフトマス、シロサケ)の生態及び
舟運に対する影響が小さい 11 月 1 日~3 月 31 日までを操作期間とした。
オホーツク海
網走湖
順
流
網走川
ゲート倒状
オホーツク海
網走湖
逆
流
網走川
ゲート起状
建設中の大曲堰
図5:大曲堰概念図
図6:大曲堰一般図
3km
【網走川大曲堰の効果について】
・網走湖への海水流入を制御し、塩淡境界層を降下させることで、無酸素状態である塩水層の巻き上がり(青
潮)
(図 7)及び淡水層への栄養塩の溶出・拡散を減少させる(リン供給量の減少)
(図 8)
。
塩淡境界層制御前
塩淡境界層制御前
強風
青潮の発生
塩淡境界層が上昇すると栄養塩の溶出面積
が大きくなり富栄養化が進む
アオコ発生
淡水層
風下の淡水層が押し下げられた
ことにより風上の塩水層が上昇
淡水層
強風により淡水層
が押し下げられる
塩淡境界層
塩淡境界層
塩水層
(高濃度の栄養塩)
塩水層(無酸素)
制御後
制御後
強風
アオコ発生の抑制
淡水層
淡水層
塩淡境界層が低下すると栄養塩の溶出面積
が小さくなりリン供給量が減少する
リン濃度の低下
降下
降下
塩淡境界層制御
塩淡境界層
塩水層
(高濃度の栄養塩)
塩水層(無酸素)
図7:塩淡境界層制御による青潮発生の抑制効果
塩淡境界層
図8:淡境界層制御によるアオコ発生の抑制効果
・H17 年度(H18 年 1 月)から、仮ゲートによる試験運用を開始、H25 年度(H26 年 1 月)から本施設での
本格運用を開始。近年、塩淡境界層水深は概ね 6m で安定している。H22 年以降、青潮は発生していない。
(図 9)
・清流ルネサンスⅡの指標である T-P についても、塩淡境界層の降下に伴い、概ね目標値(0.07mg/l)を満足
している。
(図 11)
・H17 年にかけての塩淡境界層(塩水層上端)の上昇により、無酸素の塩水層に暴露された水深 2.0m~4.0m
に分布するシジミの資源量が減少した。H19 年以降、シジミの資源量は回復傾向にある。
(図 10)
湖水位
塩淡境界層標高
塩淡境界層水深
青潮発生
-4
2
-2
0
0
H17 にかけ塩淡境界層が上昇
-2
H18 年 1 月より実験開始
2
-4
4
-6
6
-8
8
-10
塩淡境界層水深(m)
湖水位・塩淡境界層標高(m)
水深 2.0~4.0m のシジミが激減
4
10
H6
H8 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 H24 H26
図9:塩淡境界層の推移と青潮発生状況
青潮発生なし
図10:標高別ヤマトシジミ推定個体数の推移(10mm 以上)
図11:網走湖における総リン(T-P)の推移