クールペッパーページ 09「地球空洞説の検証③」/黒月樹人 Cool Pepper Page 09 “INSPECTION③ OF THE HOLLOW EARTH THEORY” By Tree man (on) BLACK MOON (Kinohito KULOTSUKI) クールペッパーページ 07「地球空洞説の検証①」では、半径 r の惑星が中に空洞を発達 させて、 半径 R の中空の惑星になり、 表面積が 3 倍になったとしたとき、 半径 R は r の 1.732 倍となるが、このときの、膨張した惑星の殻の厚みは、半径 R の 0.069 倍となることを調 べた。 図 1 半径 r の球と、半径 R の球の断面 このような地球膨張説の、特別な理由として、地球の大陸移動の説明がうまくいくとい うことのほかに、大陸移動が始まるころに生息していたという、恐竜の骨格などの構造が、 現在の地球の重力に合っていないということがあげられている。現在の地球では、アフリ カゾウが陸上の最大動物である。ところが、化石で発見されている巨大な恐竜の体重は、 何倍ではなく何十倍にもなるという。このようなことを矛盾なく理解しようとするなら、 恐竜が生息していたころの地球の重力が、現在よりも小さかったと考えるのが自然である。 このことを、上記の地球膨張説が、どのように説明するかというと、膨張前の地球は、角 運動量の保存則を考慮すると、膨張後の地球より、大きな角速度をもつだろう。すると、 遠心力が大きくなって、重力が減る。このような流れである。 しかし、このような説明においても、定量的な議論はなされていない。大きな角速度は 得られるかもしれないが、遠心力には、回転半径の大きさも要素として含まれるが、こち らは小さくなってしまうではないか。やはり、これらの議論は、簡単なシミュレーション でよいから、近似計算としての計算を行って、物理量としての大きさの概算を求めるべき だ。このことを調べてみよう。 現在の地球の自転周期や半径は、観測されている値を用いるが、内部の構造については、 図 1 の右に描いてあるような、半径 R に対して、0.069R の厚みの殻をもつものと考える。 この殻を R の半径を 100 等分して小さいほうから数えて 93 番目 R(93)から 100 番目 R(100) の殻について、これらの殻についている質量と、回転軸からの半径 R(j)sinθを考慮し、ク ールペッパーページ 08「地球空洞説の検証②」で作った解析プログラムを改良して、角運 動量の総計を求められるようにした。これを利用して得られた、半径 R の殻型惑星がもつ 総角運動量を、図 1 の左にある、中心まで詰まった、半径 r の小さな惑星に適用すると、 0.1399 日で自転することになった。一日は 3 時間と 21 分である。 1 遠心力 c は、角速度ωと、回転軸からの距離ρを用いて、(1)となる。 c=-ω2ρ (1) 恐竜は地表で活動しているから、距離ρは、R=6378[km]から r=0.58R=3682[km]へと 0.58 の比で変わる。角速度は 1/0.1399=7.15 倍になるだろう。すると、遠心力は 7.15×7.15 ×0.58=29.7 倍ということになる。 ところが、現在の地球における表面重力に対して、赤道での最大となる遠心力を調べて みると、わずかに 0.3[%]であるという。比の値として 0.003 である。これが 29.7 倍になっ たとすると、0.089 であり、およそ 9[%]である。9 パーセントほど体重が軽くなるだけなの である。これでは巨大恐竜の謎は説明できないだろう。 もうひとつ、おかしなことがある。「地球空洞説の検証②」で作った解析プログラムを、 少し改良して、図 1 右の殻型地球の地表重力と、図 1 左の膨張前の小さな地球における地 表重力を求めたところ、膨張後の殻型地球の地表重力のほうが小さくなってしまったので ある。およそ 1/3 の大きさになる。考えてみると、これは当然のことだ。空洞に満たされた 殻型地球では、地表の一点に対して、大部分の殻部分が遠くに離れているから、重力は弱 くなる。図 1 左の、密集した形状のほうが、大きな重力となるのである。 これらの計算と考察から、地球の膨張によって、恐竜に加わる重力が大きくなったと考 えるのは、正しくないと言えるだろう。かつての地球には、現在では考えられないほどの 巨大な生物が生息していた。これは分かっている。しかし、なぜ生息できたのかは分から ない。地球が膨張して遠心力が小さくなったから重力が大きくなったと考えるのは妥当で はない。どちらかというと、この逆に、過去の地球は中空で、もっと大きかったのだが、 収縮して現在のようになったというストーリーのほうが、重力の変化に限れば、説明しや すいということなる。しかし、それだけのことである。地球が収縮しては、大陸移動が説 明できなくなる。謎は謎のまま残ってしまった。(2008.12.23) 2
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