精巣がん

精巣がん
精巣がんの特徴
精巣がんは、他の泌尿器がんと比較して、より若い患者さんに発生することが多い疾
患です。診断時に既に転移を有している患者さんも少なくありませんが、多くの場合、
抗がん剤治療に非常に良く反応し、比較的高い確率で治癒が望めます。
一方、精巣がんの患者さんの中には、がんの組織型、転移の部位と進行度から厳しい
予後が予測され、実際に思うような治療効果が得られない難治例もあります。
精巣がんの治療成績
転移のないステージⅠには精巣摘除術のみで追加治療せず厳重経過観察を行い、希望が
あれば補助療法を行います。ステージⅡ,Ⅲの転移例にはまず化学療法を 3~4 コース
行い、残存腫瘍があれば可及的切除を行います。
精巣がんとは
精巣がんは精巣内の精子を造る精細管上皮細胞から発生します。精巣の解剖、精巣が
んの統計、そして病因を説明します。
精巣がんの統計
10 万人当たりの発生率はおよそ 1 人で決して多くはなく、男性の全腫瘍の 1%程度
ですが、15~35 歳の男性においては最も多い悪性腫瘍です。
精巣がんの種類
精巣がんは、細胞の種類によって大きくセミノーマと非セミノーマに分けられます。
後者の方が転移を起こしやすく、より悪性の経過をとります。
精巣がんの症状
無痛性の精巣のしこりや、腫れが初発症状です。およそ 30~40%で下腹部の重圧感
や鈍痛があり、10%で急性の精巣痛があります。がんが進行し広い範囲に転移が出現す
ると、腹痛や呼吸困難、首のリンパ節の腫れ、体重減少、腫瘍の産生するホルモンの影
響で乳首の痛みや腫れなどもおこります。
精巣がんの治療
精巣腫瘍(セミノーマ)
病期 I(転移のない場合)
1.無治療経過観察(サーベイランス)
およそ 80%の患者さんが、無治療で経過観察をしていても再発しません。しかし、5
年程度は指示された間隔でしっかりと腫瘍マーカーや、CT、超音波検査のチェックが
必要です。特に 2 年以内は頻繁な検査が必要です。
再発しても、早期発見であれば、抗がん剤の治療を 2~3 ヶ月かけて行うことによりほ
ぼ完治可能です。
2.予防照射
精巣がんの組織型がセミノーマであった場合、転移好発部位の後腹膜に放射線治療を
する方法です。95%程度の非再発率が見込めますが、80%の患者さんに不必要な治療
をすることになる点、少ないながら放射線の副作用もある点、再発した時点での治療開
始でもほぼ救命可能である点などから、最近はサーベイランス(経過観察)が選択され
る場合も多いようです。
病期 II 以上(転移のある場合)
1.放射線治療
セミノーマの病期・A に選択されることがあります。90%程度の治癒率です。
2.化学療法±残存腫瘍切除
抗がん剤治療を 3~4 コース行い、腫瘍マーカーの陰性化を待って、残存腫瘍があれ
ばこれを摘出します、セミノーマの場合には、3cm 以下の残存腫瘍ならば経過観察で
も良いとされています。 摘出した残存腫瘍に、生きているがん細胞が認められた場合
には、抗がん剤治療を 2 コース追加します。腫瘍マーカーが陰性化しない場合には、救
済化学療法として、別の抗がん剤や、超大量化学療法などが試みられています。