全文情報 - 労働委員会関係 命令・裁判例データベース

山 形 、 昭 63不 4 、 平 2.12.6
命
申 立 人
同
被申立人
令
長井市職員労働組合
長井市職員労働組合現業評議会
長井市
主
1
書
文
被申立人は、申立人長井市職員労働組合現業評議会から申入れのあった昭
和 62年 11月 27日 付 け 「 1987年 確 闘 現 業 評 議 会 独 自 要 求 に つ い て 」 の 要 求 事 項
について、団体交渉に誠意をもって応じなければならない。
2
被申立人は、申立人長井市職員労働組合現業評議会の労働組合性を否定す
る言動により、申立人長井市職員労働組合現業評議会の組織運営に支配介入
してはならない。
3
申立人らのその余の申立ては棄却する。
理
第1
1
由
認定した事実
当 事 者
(1) 申 立 人 長 井 市 職 員 労 働 組 合( 以 下「 市 職 労 」と い う 。)は 、被 申 立 人 長
井 市( 以 下「 市 」と い う 。)に 勤 務 す る 職 員 を も っ て 組 織 さ れ て お り 、上
部 団 体 と し て 全 日 本 自 治 団 体 労 働 組 合( 以 下「 自 治 労 」と い う 。)山 形 県
本 部 に 加 盟 し て い る 。 ま た 、 市 職 労 は 、 地 方 公 務 員 法 第 58条 の 適 用 を 受
け る 一 般 職 の 地 方 公 務 員( 以 下「 非 現 業 職 員 」と い う 。)と 地 方 公 務 員 法
第 57条 に 規 定 す る 単 純 な 労 務 に 雇 用 さ れ る 一 般 職 の 地 方 公 務 員( 以 下「 現
業 職 員 」と い う 。)及 び 地 方 公 営 企 業 法 第 2 条 第 1 項 に 規 定 す る 事 業 に 従
事 す る 一 般 職 の 地 方 公 務 員( 以 下「 企 業 職 員 」と い う 。)と で 構 成 さ れ て
いるいわゆる混合組合である。
な お 、 本 件 申 立 時 の 組 合 員 数 は 、 約 320名 で あ る 。
(2) 申 立 人 長 井 市 職 員 労 働 組 合 現 業 評 議 会( 以 下「 現 評 」と い う 。)は 、市
に勤務する職員中、現業職員及び企業職員とで構成されており、組合員
は、いずれも同時に市職労にも加入している。また、現評は、独自の規
約を有し、独自の決議機関である総会を有し、独自の執行機関である役
員会を有している。
な お 、 本 件 申 立 時 の 組 合 員 数 は 、 約 50名 で あ る 。
(3) 市 は 、 地 方 自 治 法 第 1 条 の 2 に 定 め る 普 通 地 方 公 共 団 体 で あ り 、 本 件
申 立 時 の 職 員 数 は 、 約 720名 で あ る 。
2
昭 和 62年 11月 27日 以 前 に お け る 現 評 の 活 動 状 況
- 1 -
(1) 現 評 は 、 現 業 評 議 会 の 組 織 化 と い う 自 治 労 方 針 の 下 で 、 昭 和 58年 10月
7 日 、 63名 の 現 業 職 員 及 び 企 業 職 員 に よ り 結 成 さ れ た 。
(2) 現 評 の 組 合 員 は 、 同 時 に 市 職 労 に も 加 入 し て い る こ と ・ 市 が 、 現 業 職
員及び企業職員と非現業職員の双方の使用者であること・労働条件等の
労使間の課題については、現業職員及び企業職員と非現業職員とが一体
のものが多いこと等の理由から、毎年の春闘・現業職員の賃金の格差解
消闘争等における現評の活動は、市職労と一体となることが多かった。
また、現業職員の賃金に関する市との交渉についても、現評単独で行
われたことはなく、交渉の状態は、外形上、現評結成以前と比べて変化
はなかった。
(3) 現 評 は 、 独 自 の 活 動 と し て 、 以 下 の よ う な こ と を 行 っ て い た 。
ア
賃金交渉資料の収集及び作成
イ
合理化に関しての職場の実態調査及び職場内の意思統一
ウ
学習会・交流会
(4) 更 に 、 現 評 単 独 で 以 下 の 文 書 を 市 側 に 提 出 し た 。
ア
昭 和 60年 6 月 25日 付 け 「 1985年 春 闘 並 び に 賃 金 等 に 関 す る 『 長 井 市
職員労働組合現業評議会独自要求書』の提出について」
イ
昭 和 60年 11月 29日 付 け
「 1985確 闘 現 業 賃 金 等 に関 する要 求 について」
ウ
昭 和 62年 3 月 23日 付 け 「 教 育 委 員 会 交 渉 の 申 し 入 れ に つ い て 」
エ
昭 和 62年 3 月 23日 付 け 「 市 長 交 渉 の 申 し 入 れ に つ い て 」
(5) (4)に 対 す る 市 側 の 対 応 は 、 そ れ ぞ れ 次 の と お り で あ っ た 、
アについては、文書による回答を行った。イについては、文書による
回答を行い、その後、現評及び市職労と市助役B1の間で交渉が行われ
た。ウについては、教育委員会は、交渉を受けられない旨回答した。エ
については、教育委員会と交渉をすべきである旨回答した。
3
本件「団体交渉申入れ」と市の対応
(1) 昭 和 62年 11月 27日 、当 時 の 現 評 副 議 長 A 1( 以 下「 A 1 」と い う 。)ら
は 、当 時 の 市 総 務 課 長 B 2( 以 下「 B 2 」と い う 。)に 、次 の 文 書( 以 下
「 11月 27日 付 け 文 書 」 と い う 。) を 提 出 し た 。
「
1987年 11月 27日
長井市長
B3
殿
長井市職員労働組合現業評議会
議長
A2
1987年 確 闘 現 業 評 議 会 要 求 に つ い て
日頃から地方自治発展のため御奮闘されている貴職に対し敬意を表
します。
さて、私たち自治体労働者、とりわけ現業労働者は地方行革による
合理化の嵐をまともに受け、非常にきびしい労働条件ながらも住民の
福祉向上、地域発展のため鋭意努力している所です。
自治省指導による行革大綱をテコとした最近における現業職場、福
- 2 -
祉施設切捨て合理化は直ちに市民福祉、市民サービスの低下に直結す
るものであり絶対に許されるものではありません。
また昨年の賃金改定では現業、非現業の格差は一向に改善されない
ま ま 、 県 内 13市 は お ろ か 置 賜 で も 最 下 位 レ ベ ル に 落 ち 込 み ま し た 。
私たち現業評議会は、市民の幸福と長井市の発展を願うと共に、生
活と権利を守り、地方自治を確立するために下記の要求を致します。
市 当 局 に お い て は 直 ち に 検 討 さ れ 、 誠 意 を も っ て 12月 4 日 ま で 文 書 で
回答されるよう求めます。
記
1
現業賃金について
(1) 非 現 業 と の 格 差 を な く す こ と 。
8市及び置賜でも最下位レベルという昨年の当局調査を踏まえ、
直ちに6級完全みねワタリに移行すること。
(2) 技 能 職 、 労 務 職 の 初 任 給 差 別 を 撤 廃 す る こ と 。
(3) 年 齢 別 最 低 保 障 賃 金 制 度 を 、 標 準 入 職 者 の 90% と す る こ と 。
(4) 採 用 年 度 の 違 い に よ る 内 部 格 差 を な く す こ と 。
(5) 賃 金 改 定 は 1987年 4 月 1 日 実 施 と す る こ と 。
2
労働協約の締結について
(1) 長 井 市 職 員 労 働 組 合 現 業 評 議 会( S .58.10.7 結 成 )は 、労 働 組 合
法 上 の労 働 組 合 である。現 業 職 員 の労 働 条 件 については労 働 基 準 法 、
地方公営企業労働関係法、地方公営企業法が適用され、現業職員が
加入する長井市職員労働組合現業評議会並びに長井市職員労働組合
との団体交渉で決めるものであり、協約を結ぶこと。
(2) 労 働 条 件 の 一 方 的 な 変 更 は 許 さ れ る も の で な く 全 て 長 井 市 職 員 労
働組合並びに長井市職員労働組合現業評議会との事前協議とし、文
書で確認すること。
3
現業職場の直営堅持及び人員の確保について
(1) す べ て の 自 治 体 業 務 は 直 営 で 行 い 、 市 民 サ ー ビ ス の 低 下 に つ な が
る下請け民営化は一切行わないこと。
(2) 退 職 に 伴 う 人 員 の 補 充 は 正 職 員 で 完 全 に 行 う こ と 。
(3) 兼 務 辞 令 の 発 令 は し な い こ と 。
(4) 定 時 補 助 職 員 は 定 数 化 し 、 正 規 職 員 と す る こ と 。
4
労働安全衛生体制の確立について
(1) 労 働 安 全 衛 生 委 員 会 を 早 急 に 発 足 さ せ る こ と 。
(2) 職 場 環 境 、 作 業 環 境 の 調 査 を 行 い 、 そ れ ら 整 備 の た め の 抜 本 的 な
対策を立てること。
(3) 公 務 災 害 の 発 生 を 防 止 す る こ と 。 特 に 学 校 、 調 理 場 で の 発 生 が 多
く、充分な防止策を講じること。
(4) 長 井 市 独 自 の 公 務 災 害 特 別 給 付 制 度 を つ く る こ と 。
5
家族介護休暇制度について
- 3 -
家族介護休暇制度はすでに県をはじめ6市6町で制度化しており、
早急に具体化を図ること。
6
分限条例の改正について
昭 和 56年 12月 に 改 正 さ れ た が 内 容 は 条 件 付 で あ り そ の 条 件 を な く す
こと。
7
36協 定 に つ い て
時間外勤務が必要な全職場で結ぶこと。水道、調理場の他に当面、
総務課、建設課の現業部門並びに図書館、学校職場で結ぶこと。
以
上
」
また、文書提出と同時に、A1らは、B2に対し、文書の要求事項に
ついて団体交渉を行うように口頭で申入れた。
(2) こ れ に 対 し 、 昭 和 62年 12月 9 日 、 市 は 、 次 の 文 書 ( 以 下 「 12月 9 日 付
け 文 書 」 と い う 。) を 現 評 に 提 出 し た 。
「
総
第
512
号
昭 和 62年 12月 9 日
長井市職員労働組合
執行委員長
A3
殿
長井市職員労働組合現業評議会
議長
A2
殿
長井市長
B3
1987年 確 闘 現 業 評 議 会 独 自 要 求 に つ い て ( 回 答 )
標記の件につきまして、別紙のとおり回答いたします。
(別紙)
(要求内容略)
1 (1) 技 能 労 務 職 員 の 給 与 は 、 地 方 公 営 企 業 法 第 38条 第 3 項 に 規 定 さ れ
ているように均 衡 の原 則 に基 づくものであることが要 請 されており、
当 該 職 員 の 従 事 す る 職 種 は 国 の 行 政 職 俸 給 表 (二 )の 対 象 職 種 と 基 本
的 に は 同 一 職 種 で あ る の で 、 国 の 行 政 職 俸 給 表 (二 )の 給 与 を 基 準 と
して定めるべきものであります。
(2) 初 任 給 は 、 そ の 職 務 に 必 要 と さ れ る 技 能 、職 務 遂 行 の 困 難 等 を 総
合的に勘案し定められるべきものであります。
(3) 技 能 労 務 職 の 給 与 は 、 地 公 企 法 に 定 め ら れ て い る よ う に 職 務 給 の
原則、均衡の原則に基づき決定されるべきものであり、要求に応え
ることはできません。
(4) 条 例 、 規 則 等 に 基 づ か な い 措 置 は で き ま せ ん 。ま た 、給 与 の 適 正
化からも国に準じない措置を講ずることはできません。
(5) 人 事 院 勧 告 を 尊 重 し 給 与 改 定 を 実 施 し ま す 。
2 (1) 長 井 市 の 技 能 労 務 職 員 の 加 入 し て い る 職 員 団 体 は 、地 公 法 第 52条
による職員団体であり、当該団体の交渉による協約締結はありませ
- 4 -
ん。
(2) 交 渉 す べ き 事 項 に つ い て は 、 事 前 に 協 議 し ま す 。
3 (1) 地 方 公 共 団 体 は 、 地 方 自 治 法 第 2 条 第 13項 及 び 第 14項 に 規 定 さ れ
ているように最少の経費で最大の効果を挙げるとともに常に組織、
運営の合理化に努めなければなりません。したがいまして、今後も
事務事業の総見直しを行い、地方自治体が自ら執行しなければなら
ない事務事業以外の部分については、住民のコンセンサスを得なが
ら積極的に推進していきます。
(2) 民 間 委 託 化 の 方 向 で 検 討 し て い る 現 状 で は 、補 充 は 定 時 補 助 職 員
等で配慮していきます。
(3) 兼 務 発 令 に つ い て は 、 業 務 の 効 率 的 な 執 行 を 図 る た め に 行 う も の
であり、廃止する考えはありません。
(4) (2)の 理 由 に よ り 、 正 規 職 員 を 採 用 す る 考 え は あ り ま せ ん 。
4 (1) 衛 生 委 員 会 の 設 置 を 進 め て い き ま す 。
(2) 建 物 の 根 本 的 改 造 に 伴 う も の は 現 段 階 で は 無 理 で あ り ま す が 対 処
できる部分については検討いたします。
(3) 公 務 災 害 の 防 止 に つ い て は 、 所 属 長 を 通 じ 常 に 心 掛 け て い る と こ
ろですが今後ともその防止については努めてまいります。
(4) 公 務 災 害 に つ い て は 地 方 公 務 員 災 害 補 償 法 に 基 づ き 地 方 自 治 体 の
負担によって救済措置がなされております。
5
4週6休制度の導入を前提に、現在の休暇制度及び職務に専念する
義務の特例措置について抜本的見直しを行う中で配慮したい。
6
分限条例については、全体の奉仕者として常に市民から信頼され、
公 平 で な け れ ば な ら な い と い う 意 味 か ら も 、法 の 運 用 に つ い て は 厳
正であるべきだと考えているので現条例を改正する考えはありませ
ん。
7
36協 定 は 、 労 基 法 上 締 結 す べ き 職 場 に つ い て 締 結 し て お り ま す 。
」
(3) そ の 後 、 市 は 、 現 評 か ら の 再 三 の 申 入 れ に も か か わ ら ず 、 現 評 が 労 働
組合法上の労働組合ではないことを理由として、団体交渉に応じなかっ
た。
4
現評と市職労との関係
(1) 現 評 の 規 約 に 基 づ き 、現 評 議 長 は 、市 職 労 現 業 対 策 部 長 に 立 候 補 す る 。
市職労現業対策部長の主な役割は、現評と市職労との連絡調整である。
ま た 、 昭 和 62年 当 時 、 現 評 が 取 り 組 ん で い た 学 校 給 食 共 同 調 理 場 合 理
化問題については、現評だけでなく市職労も取り組むべき問題である等
の理由から、市職労の定期大会議案書に「現業評議会の闘い」と題する
報告を掲載している。
(2) 昭 和 62年 当 時 、 現 評 の 財 政 の 仕 組 は 、 概 ね 以 下 の と お り で あ っ た 。
ア
市職労は、市が行うチェックオフにより、市職労と現評の組合費を
- 5 -
一括して徴収する。
なお、市職労のみ加入の組合員と両組合加入の組合員の組合費算定
率に差はない。
イ
市 職 労 は 、一 括 徴 収 し た 組 合 費 の 中 か ら 、現 評 に 活 動 費 を 交 付 す る 。
なお、その支出科目は、交付金の科目ではなく、専門部活動費・活
動費・研修費等の科目である。
ウ
現評は、市職労からの交付金を財源として活動を行う。交付金の使
途は、現評が独自に決定する。
エ
第2
1
判
現評は、独自の予算書及び決算書を作成する。
断
申立人適格
(1) 被 申 立 人 は 、 次 の 旨 を 主 張 す る 。
市職労は、非現業職員が主体となって組織されている混合組合である
から、地方公務員法上の職員団体と解すべきであり、本件申立ての申立
人適格を有しない。
よって、以下判断する。
(2) 前 記 第 1 の 1 (1)認 定 の と お り 、 市 職 労 は 、 混 合 組 合 で あ る 。
ところで、混合組合も、非現業職員が主体となっているか否かにかか
わらず、その所属する現業職員及び企業職員の労働条件の維持向上を図
ることを目的とする団体である点においては、労働組合としての性格を
有するものというべきである。したがって、市職労は、労働組合法上の
労働組合として本件申立ての申立人適格を有するものと認めることが相
当である。
(3) ま た 、 被 申 立 人 は 、 次 の 旨 を 主 張 す る 。
現評は、市職労の一部組織にすぎず、労働組合法上の労働組合ではな
い。その理由として、①独自の財政が確立されていないこと(現評は、
組合費を徴収したことがない。市は、市職労の組合費に加算して現評の
組 合 費 を チ ェ ッ ク オ フ し た こ と が な い 。 昭 和 62年 当 時 の 市 職 労 の 予 算 に
は 、 現 評 に 対 す る 交 付 金 の 項 目 が な か っ た 。)、 ② 独 自 の 活 動 を 行 っ て い
な い こ と ( 昭 和 62年 当 時 の 市 職 労 の 定 期 大 会 議 案 書 に は 、 現 業 対 策 部 の
活動報告がなく、現評の定期総会議案書の活動報告がそのまま掲載され
て い た 。 昭 和 58年 現 評 結 成 当 時 、 現 評 の 活 動 方 針 と 市 職 労 の 活 動 方 針 が
同じものであった。現業職員等の労働条件に関する市側との交渉の態様
は 、 現 評 結 成 前 後 で 変 化 が な い 。)、 ③ 独 自 の 組 合 事 務 所 を 有 し て い な い
こと、④規約を実行していない点があること(職業的に資格がある会計
監 査 人 に よ る 監 査 を 受 け て い な い 。) が 指 摘 さ れ る 。
したがって、本件申立ての申立人適格を有しない。
よって、以下判断する。
(4) 前 記 第 1 の 1 (2)認 定 の と お り 、現 評 は 、独 自 の 規 約・決 議 機 関・執 行
機 関 を 有 し て い る 。ま た 、前 記 第 1 の 4 (2)認 定 の と お り 、現 評 は 、市 職
- 6 -
労からの交付金を財源として活動してはいるが、交付金の使途について
は現評独自で決定し、独自の予算書及び決算書を作成しているのである
から、現評は、独自の財政を有していると言うべきである。更に、前記
第 1 の 2 (2)~ (4)認 定 の と お り 、 現 評 の 活 動 は 、 戦 術 上 、 市 職 労 と 一 体
となることが多かったが、現評単独の活動も行ってきている。また、独
自の組合事務所を有しているか否か、職業的に資格のある会計監査人に
よる会計監査を受けているか否かは、当該組合が独立した組合であるか
否かの結論を左右するほどのものではない。
これら現評の実態等を総合的に判断すれば、現評は、労働組合法上の
独立した労働組合であり、本件申立ての申立人適格を有するものと認め
ることが相当である。
2
本件不当労働行為の成否
(1) 審 問 の 全 趣 旨 に よ れ ば 、 申 立 人 ら は 、 次 の 旨 を 主 張 す る 。
現 評 は 、 11月 27日 付 け 文 書 及 び 口 頭 に よ り 再 三 、 市 に 対 し て 団 体 交 渉
を 申 入 れ た 。 こ れ に 対 し 、 市 は 、 12月 9 日 付 け 文 書 を 現 評 に 提 出 し 、 現
評の労働組合性を否定するとともに、団体交渉を拒否した。これらの市
の行為は、現評に対する団体交渉拒否並びに現評及び市職労に対する支
配介入の不当労働行為である。
(2) こ れ に 対 し 、 被 申 立 人 は 、 次 の 旨 を 主 張 す る 。
11月 27日 付 け 文 書 は 、 団 体 交 渉 の 申 入 れ で は な く 、 文 書 に よ る 回 答 を
求めた質問書に過ぎない。また、市は、現評からの口頭による団体交渉
申入れも受けていない。
更に、市は、現評を市職労から独立した労働組合法上の労働組合とは
認 識 し て い な い た め 、 11月 27日 付 け 文 書 の 2 (1)を 、「 現 業 職 員 の 労 働 条
件につき市職労と労働協約を締結せよ」との要求であると理解した。そ
の た め 、市 は 、12月 9 日 付 け 文 書 の 2 (1)に よ り 、職 員 団 体 で あ る 市 職 労
とは労働協約を締結することはできない旨を回答したものであり、団体
交渉拒否及び支配介入の不当労働行為には当たらない。
よって、以下判断する。
(3) 12月 9 日 付 け 文 書 の 2 (1)に お け る 市 の 回 答 は 、現 評 が 労 働 組 合 法 上 の
労働組合ではなく、市職労の一部組織であることを前提としたものであ
る が 、現 評 は 、前 記 第 2 の 1 (4)認 定 の と お り 、労 働 組 合 法 上 の 労 働 組 合
で あ る 。 そ し て 、 前 記 第 1 の 3 (1)、 (3)認 定 の と お り 、 現 評 は 、 団 体 交
渉 を 市 に 申 入 れ た が 、前 記 第 1 の 3 (3)認 定 の と お り 、市 は 、団 体 交 渉 に
応じなかった。したがって、市は、正当な理由なく、現評からの団体交
渉申入れに応じなかったと言わざるを得ない。また、現評の労働組合性
を否定する言動は、現評の組織運営に対する支配介入と言わざるを得な
いが、この言動が、同時に、市職労の組織運営に対する支配介入である
とまで言うことは相当でない。
したがって、これらの市の行為は、現評に対する、労働組合法第7条
- 7 -
第2号及び第3号該当の不当労働行為である。
3
救済の方法
現評は、謝罪文の掲示をも求めるが、主文の命令をもって相当と判断す
る。
第3
法律上の根拠
以 上 の 認 定 し た 事 実 及 び 判 断 に 基 づ き 、 当 委 員 会 は 、 労 働 組 合 法 第 27条 及
び 労 働 委 員 会 規 則 第 43条 の 規 定 に よ り 、 主 文 の と お り 命 令 す る 。
平 成 2 年 12月 6 日
山形県地方労働委員会
会長
設楽作巳
- 8 -
㊞