鹿 児 島 、 昭 62不 1 、 平 元 .5.8 命 令 申 立 人 国鉄労働組合 申 立 人 国鉄労働組合鹿児島地方本部 被申立人 九州旅客鉄道株式会社 主 1 書 文 被 申 立 人 は 、 別 表 記 載 の 組 合 員 を 昭 和 62年 4 月 1 日 付 け で 被 申 立 人 の 社 員 に採用したものとして取り扱わねばならない。 2 被申立人は、別表記載の組合員の就労すべき職場及び職種について、申立 人らと協議しなければならない。 3 被 申 立 人 は 、 昭 和 62年 4 月 1 日 以 降 別 表 記 載 の 組 合 員 を 就 労 さ せ る ま で の 間に、同人らが被申立人より受けるはずであった賃金相当額(賞与・諸手当 を 含 む 。 た だ し 、 既 に 日 本 国 有 鉄 道 清 算 事 業 団 か ら 支 払 わ れ た 金 額 を 除 く 。) を同人らに支払わねばならない。 4 被申立人は、本命令受領後速やかに、下記の文書を申立人らに手交しなけ ればならない。 記 平成元年 月 日 国鉄労働組合 執行委員長 A1 殿 国鉄労働組合鹿児島地方本部 執行委員長 A2 殿 九州旅客鉄道株式会社 代表取締役 B1 当 社 が 、 昭 和 62年 4 月 1 日 付 け で 職 員 を 採 用 す る に 際 し 、 貴 組 合 の 組 合 員 を貴組合の組合員であること及び貴組合の組合活動をしたことを理由に採用 しなかったことは、今般、鹿児島県地方労働委員会において、労働組合法第 7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。 よって、ここにその責任を認め、今後このような行為を繰り返さないこと を誓約いたします。 理 第1 1 由 認定した事実 当事者等 (1) 被 申 立 人 九 州 旅 客 鉄 道 株 式 会 社 ( 以 下 「 会 社 」 と い う 。) は 、 昭 和 62 年 4 月 1 日 、 日 本 国 有 鉄 道 改 革 法 ( 以 下 「 改 革 法 」 と い う 。) に 基 づ き 、 - 1 - 日 本 国 有 鉄 道( 以 下「 国 鉄 」と い う 。)が 経 営 し て い た 旅 客 鉄 道 事 業 等 の うち、九州地方における旅客鉄道事業等を承継して設立された会社で、 肩 書 地 に 本 社 を 置 き 、 職 員 数 は 本 件 審 問 終 了 時 約 15,000名 で あ る 。 (2) ① 申 立 人 国 鉄 労 働 組 合( 以 下「 国 労 」と い う 。)は 、国 鉄 の 事 業 を 承 継 し て 設 立 さ れ た 承 継 法 人( 改 革 法 第 11条 に 定 め る も の を い う 。以 下 同 じ 。) 及 び 日 本 国 有 鉄 道 清 算 事 業 団 ( 以 下 「 清 算 事 業 団 」 と い う 。) に 勤務する者等で組織する労働組合であり、組合員数は本件審問終了 時 37,320名 で あ る 。 ② 申 立 人 国 鉄 労 働 組 合 鹿 児 島 地 方 本 部( 以 下「 鹿 児 島 地 本 」と い う 。) は 、国 労 の 地 方 組 織 で 、鹿 児 島 県 内 の 事 業 所 及 び 宮 崎 県 内 の 一 部 の 事 業 所 に 勤 務 す る 者 等 で 組 織 す る 労 働 組 合 で あ り 、組 合 員 数 は 本 件 審 問 終 了 時 227名 で あ る 。 な お 、 同 地 本 に は 、申 立 時 に 下 部 組 織 と し て 、鹿 児 島 県 支 部( 以 下 「 鹿 児 島 県 支 部 」 と い う 。) 及 び 宮 崎 県 支 部 が あ っ た 。 (3) 会 社 に は 、 現 在 、 国 労 の ほ か 、 国 鉄 動 力 車 労 働 組 合 ( 以 下 「 動 労 」 と い う 。 昭 和 26年 5 月 23日 結 成 。)、 鉄 道 労 働 組 合 ( 以 下 「 鉄 労 」 と い う 。 昭 和 43年 10月 20日 結 成 。)、全 国 鉄 施 設 労 働 組 合( 以 下「 全 施 労 」と い う 。 昭 和 46年 4 月 27日 結 成 。) 及 び 真 国 鉄 労 働 組 合 ( 以 下 「 真 国 労 」 と い う 。 昭 和 61年 4 月 13日 結 成 。)な ど 国 労 か ら 分 か れ て 結 成 さ れ た 組 合 に よ っ て 昭 和 62年 2 月 2 日 結 成 さ れ た 全 日 本 鉄 道 労 働 組 合 総 連 合 会 ( 以 下 「 鉄 道 労 連 」と い う 。)に 所 属 す る 九 州 旅 客 鉄 道 労 働 組 合 、昭 和 62年 1 月 25日 国 労から分かれて結成された九州鉄道産業労働組合(以下「九産労」とい う 。) 等 の 組 合 が あ る 。 な お 、 九 産 労 を は じ め と す る 各 鉄 道 産 業 労 働 組 合 は 、 昭 和 62年 2 月 28 日、日本鉄道産業労働組合総連合を結成した。 2 国鉄改革について (1) 第 2 次 臨 時 行 政 調 査 会 昭 和 56年 3 月 16日 、第 2 次 臨 時 行 政 調 査 会( 以 下「 臨 調 」と い う 。)が 発 足 し 、 翌 年 7 月 30日 、 第 3 次 答 申 ( 基 本 答 申 ) を 政 府 に 提 出 し 、 国 鉄 の 再 建 に 関 し て 分 割・民 営 化 に よ る 抜 本 策 の ほ か 、職 場 規 律 の 確 立 な ど 11 項目の緊急に措置すべき事項及び国鉄再建監理委員会(以下「監理委」 と い う 。) の 設 置 を 提 言 し た 。 (2) 監 理 委 の 設 置 と 緊 急 提 言 等 ア 第1次緊急提言 政府は、基本答申を受けて、日本国有鉄道の経営する事業の再建の 推 進 に 関 す る 臨 時 措 置 法 案 を 国 会 に 提 出 し 、 昭 和 58年 5 月 13日 、 同 法 が成立した。 同年6月、同法第4条により監理委が総理府内に設置され、監理委 は、①職場規律の確立、②私鉄なみの経営効率化、③赤字ローカル線 の廃止などを含む第1次緊急提言を政府に提出した。 - 2 - イ 第2次緊急提言 昭 和 59年 8 月 10日 、 監 理 委 は 国 鉄 の 分 割 ・ 民 営 化 を 明 示 し 、 ① 余 剰 人員対策、②用地売却、③私鉄なみの生産性と要員、④地方交通線の 廃止などを含む第2次緊急提言を行った。 ウ 最終意見 監 理 委 は 、 昭 和 60年 7 月 26日 、 ① 旅 客 部 門 を 6 地 域 に 分 割 、 ② 貨 物 部門は分離して1社にすること、③新幹線は一括して保有機構に所有 させ、旅客会社に貸付けることなどを内容とする「国鉄改革に関する 意 見 ― 鉄 道 の 未 来 を 拓 く た め に 」( 以 下 「 最 終 意 見 」 と い う 。) を 政 府 に提出した。 (3) 国 鉄 改 革 と 政 府 の と っ た 措 置 ア 昭 和 60年 7 月 30日 、 政 府 は 最 終 意 見 を 最 大 限 に 尊 重 す る 旨 の 閣 議 決 定を行った。 イ 昭 和 60年 10月 11日 、 政 府 は 監 理 委 の 最 終 意 見 に 沿 っ た 「 国 鉄 改 革 の ための基本方針」を閣議決定した。 ウ 昭 和 60年 12月 13日 、 政 府 は 昭 和 65年 度 ( 平 成 2 年 度 ) 当 初 ま で に 公 的 機 関 で 30,000名 の 国 鉄 余 剰 人 員 の 受 入 れ を 目 標 と す る な ど の 「 国 鉄 余剰人員雇用対策の基本方針について」を閣議決定した。 (4) 国 鉄 改 革 関 連 法 案 の 成 立 政府は国鉄の改革に関連する次の9法(以下「国鉄改革関連法」とい う 。) の 法 案 を 国 会 に 提 出 し 、 こ の う ち ア の 法 案 は 昭 和 61年 5 月 21日 に 、 残 り の 8 法 案 は 同 年 11月 28日 に 成 立 し た 。 この結果、国鉄の事業は6旅客会社等の承継法人に引き継がれるとと もに、国鉄は、清算事業団に移行し、承継法人に承継されない資産、債 務等の処理業務などを行うことになった。 ア 日 本 国 有 鉄 道 の 経 営 す る 事 業 の 運 営 の 改 善 の た め の 昭 和 61年 度 に お いて緊急に講ずべき特別措置に関する法律 イ 日本国有鉄道改革法 ウ 旅 客 鉄 道 株 式 会 社 及 び 日 本 貨 物 鉄 道 株 式 会 社 に 関 す る 法 律( 以 下「 鉄 道 会 社 法 」 と い う 。) エ 新幹線鉄道保有機構法 オ 日 本 国 有 鉄 道 清 算 事 業 団 法 ( 以 下 「 清 算 事 業 団 法 」 と い う 。) カ 日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就 職 の 促 進 に 関 す る 特 別 措 置 法 ( 以 下 「 再 就 職 促 進 法 」 と い う 。) キ 鉄道事業法 ク 日 本 国 有 鉄 道 改 革 法 等 施 行 法 ( 以 下 「 施 行 法 」 と い う 。) ケ 地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律 の一部を改正する法律 (5) 設 立 委 員 会 の 設 置 か ら 新 会 社 へ の 移 行 ま で ア 昭 和 61年 12月 4 日 、 運 輸 大 臣 は 、 継 承 法 人 の 設 立 委 員 を 任 命 し た 。 - 3 - 設 立 委 員 は 、 設 立 委 員 会 を 設 置 し 、 同 委 員 会 は 、 同 年 12月 11日 か ら 翌 年 3 月 17日 ま で の 間 、 新 会 社 の ① 職 員 の 採 用 基 準 の 決 定 、 ② 労 働 条 件 の決定、③国鉄が提出した採用候補者名簿による採用内定者の決定、 ④定款案などの決定のため4回開催された。 イ 昭 和 62年 2 月 16日 、 国 鉄 は 、 設 立 委 員 の 新 会 社 等 へ の 採 用 内 定 に 基 づき、職員に対し、設立委員長名の採用通知書を交付した。 ウ 昭 和 62年 4 月 1 日 、 改 革 法 に 基 づ き 、 国 鉄 が 行 っ て い た 事 業 は 新 会 社等に引き継がれ、国鉄は、清算事業団に移行した。 3 本件発生までの労使関係 (1) 職 場 規 律 問 題 ア 昭 和 57年 1 月 、 国 鉄 の 職 場 規 律 の 実 態 が マ ス コ ミ で 問 題 に さ れ 、 国 鉄は、職場規律の確立に関する運輸大臣の指示を受けて、ヤミ慣行・ ヤミ協定の是正、現場責任者と労働組合の分会との間で行う交渉制度 で あ る 現 場 協 議 に 関 す る 協 約 ( 以 下 「 現 場 協 議 協 約 」 と い う 。) の 改 善などを内容とする「現場規律の総点検及び是正について」を通達し た。 イ 昭 和 57年 7 月 19日 、 国 鉄 は 、 現 場 協 議 協 約 の 改 定 案 を 各 組 合 に 提 示 し た 。 鉄 労 、 動 労 及 び 全 施 労 は 、 同 年 11月 30日 、 国 鉄 と 改 定 に つ い て 妥 結 し た が 、 国 鉄 と 国 労 と の 交 渉 は 決 裂 し 、 同 年 12月 1 日 以 降 、 国 鉄 と国労との同協約は失効した。 ウ 国鉄は、職場規律を確立するため、現場協議により、認められてい た時間内洗身を廃止する措置を行ったが、これに対して国労は、長年 の慣行を無視するものであるとして、反対闘争を行った。 また、職場の管理者は、作業場の指示・伝達である点呼を行うに際 し 、起 立 し た ま ま「 ハ イ 」と 返 事 す る 立 席 呼 名 を 要 求 す る よ う に な り 、 これに従わなかったり、作業場等の質問をした者に対しては、点呼妨 害として取り扱い、昇給の減額、あるいは、勤務評定の対象としたほ か 、 従 来 、 あ ま り 問 題 と さ れ て い な か っ た バ ッ ジ ・ ワ ッ ペ ン ・腕 章 等 についても、その取りはずしを強要するようになり、着用者に対して は、本来の業務からはずすなどの対応を行った。 こ の ほ か 、「 職 場 に は 労 使 関 係 は な く 、 上 司 と 部 下 の 関 係 だ け だ 。」 として、現場協議により労使間の確認事項とされていた作業の方法・ 内容・安全面等の指示を業務命令として行うようになった。 (2) 国 鉄 改 革 と 各 組 合 の 対 応 ア 昭 和 57年 3 月 9 日 、 国 労 、 動 労 、 全 施 労 及 び 全 国 動 力 車 労 働 組 合 連 合 会 ( 以 下 「 全 動 労 」 と い う 。 昭 和 49年 3 月 31日 結 成 。) は 、 国 鉄 再 建問題四組合共闘会議を発足させ、国鉄の分割・民営化に反対の立場 をとった。 イ 国 労 は 、 そ の 後 、 分 割 ・民 営 化 反 対 の た め の 5,000万 人 署 名 運 動 や ワ ッペン着用闘争などを行ったが、動労及び全施労は、鉄労とともに国 - 4 - 鉄と労使共同宣言を締結し、分割・民営化に協力する立場を鮮明にし た。 ウ 昭 和 61年 10月 9 日 、 国 労 は 、 第 50回 臨 時 全 国 大 会 ( 修 善 寺 大 会 ) を 開催し、執行部は、労使共同宣言の締結等労使協調路線をとり、雇用 と組 織 を守 ることなどを内 容 とする運 動 方 針 案 を提 示 したが、翌 10日 、 同 方 針 案 は 否 決 さ れ る と と も に 、新 執 行 部 が 選 出 さ れ 、国 労 は 、分 割 ・ 民営化に反対する立場を維持することになった。 これに対して、旧執行部の提示した路線を支持する組合員は、地方 本 部 の 役 員 を 中 心 に 、 新 組 合 結 成 に 向 か い 、 昭 和 61年 12月 か ら 翌 年 1 月にかけて、九産労などの6鉄道産業労働組合を結成した。 九 産 労 は 、 昭 和 62年 1 月 25日 結 成 さ れ 、 同 月 28日 、 国 鉄 と 労 使 共 同 宣言を締結した。 (3) 余 剰 人 員 調 整 策 と 雇 用 安 定 協 約 昭 和 59年 7 月 10日 、 国 鉄 は 、 余 剰 人 員 対 策 と し て 、 ① 55才 以 上 の 者 については、定期昇給・賃金引上げ、昇職・昇格を行わないことによ る勧奨退職の促進、②一時帰休制度、③派遣制度(出向など)の拡充 の 3 項 目 ( 以 下 「 調 整 3 項 目 」 と い う 。) を 各 組 合 に 提 案 し た 。 国 鉄 と 動 労 、 鉄 労 及 び 全 施 労 は 、 同 年 10月 10日 、 調 整 3 項 目 に つ い て妥結したが、国労はその受諾を拒否したため、国鉄は、国労との交 渉を打ち切り、調整3項目に合意しない限り、雇用の安定等に関する 協 約 ( 以 下 「 雇 用 安 定 協 約 」 と い う 。) を 破 棄 す る と 通 告 し た 。 なお、雇用安定協約は、改革法の成立に伴い廃止された日本国有鉄 道 法 第 29条 に お い て 、「 業 務 量 の 減 少 そ の 他 経 営 上 や む を 得 な い 事 由 が生じた」場合には、本人の意思に反して免職又は降職することがで きると規定していることに対し、同条の発動による免職等はしないこ とを内容とするものである。 昭 和 60年 4月 9日 、国 鉄 と国 労 が調 整 3項 目 について妥 結 したため、 国 鉄 は 、 雇 用 安 定 協 約 の 破 棄 通 告 を 撤 回 し 、 同 協 約 は 、 同 年 11月 30日 まで存続することとなった。 し か し 、 同 年 10月 24日 、 国 鉄 は 国 労 が 依 然 と し て 調 整 3 項 目 に 非 協 力的であることを理由として同協約の再締結はできない旨申し入れ、 同 年 11月 30日 、 同 協 約 の 継 続 を 拒 否 し た 。 動 労 、 鉄 労 及 び 全 施 労 は 同 日 、国 鉄 と 雇 用 安 定 協 約 を 再 締 結 し た が 、国 労 は 、同 年 12月 1 日 以 降 、 同協約について国鉄と無協約状態となった。 (4) 進 路 希 望 ア ン ケ ー ト 調 査 の 実 施 ア 昭 和 60年 12月 11日 、 国 鉄 は 、 国 鉄 改 革 に 向 け て の 余 剰 人 員 対 策 の 一 環として、公務員等の公的部門への転出意向を把握するため、進路ア ンケート調査の実施を発表した。 調査項目は、公的部門として国・政府関係機関又は地方公共団体、 その他の進路先として、国鉄関連企業、一般産業界、旅客鉄道会社又 - 5 - は 貨 物 会 社 ・ そ の 他 の 新 事 業 団 体 等 に つ い て 、 1 な い し 10の 選 択 肢 が 付され、希望する進路先を優先順位の高い順に3つ選び、記入すると いうものであった。 イ こ の 進 路 希 望 ア ン ケ ー ト 調 査 に 対 し て 、 昭 和 61年 1 月 11日 、 国 鉄 が 発表したサンプリング調査の結果によると、動労、鉄労及び全施労の 組 合 員 は 、 ほ ぼ 100% の 者 が 、 国 鉄 が 指 示 し た と お り の 回 答 を 行 っ た が 、 国 労 の 組 合 員 は 、 そ の 51.7% の 者 が 優 先 順 位 を 記 入 せ ず 、 ま た 、 同 月 30日 に 発 表 さ れ た 進 路 希 望 ア ン ケ ー ト 調 査 の 最 終 結 果 に お い て も 、 28.2% の 者 が 優 先 順 位 を 記 入 し な か っ た 。 (5) 第 1 次 労 使 共 同 宣 言 の 締 結 昭 和 61年 1 月 13日 、 国 鉄 は 、 各 組 合 に 対 し て 、 国 鉄 改 革 が 成 し 遂 げ られるまでの間、①安定輸送の確保、安全輸送の維持のため諸法規を 遵守すること、②輸送サービスに従事する者としてリボン・ワッペン の不着用、氏名札の着用等定められた服装を整えること、③点呼妨害 等企業人としてのモラルにもとる行為の根絶に努めること、④鉄道事 業の再生のために必要な合理化は労使が一致協力して積極的に推進す ること、⑤余剰人員対策については、退職勧奨・派遣制度等を積極的 に推進し、新たな希望退職制度の法的な措置がなされたのちには、労 使 はその円 滑 な運 用 により目 標 の達 成 に向 けて積 極 的 に取 り組 むこと、 また、職員の将来の雇用の場の確保・拡充について、労使が一致協力 すること等を内容とする労使共同宣言(以下「第1次労使共同宣言」 と い う 。) を 提 案 し た 。 動 労 、鉄 労 及 び 全 施 労 は 、同 日 、第 1 次 労 使 共 同 宣 言 に 調 印 し た が 、 国労は、同宣言の内容は労働組合が自らの役割を放棄するものである として、調印を拒否した。 (6) 広 域 異 動 の 実 施 ア 昭 和 61年 3 月 4 日 、 国 鉄 は 、 各 組 合 に 対 し 、 北 海 道 及 び 九 州 に 勤 務 す る 職 員 を 対 象 に 、 3,400名 を 、 本 州 地 域 に 異 動 さ せ る 広 域 異 動 の 実 施を提案した。 この提案に対して、国労は同意しなかったが、鉄労、動労及び全施 労 は 、 同 月 14日 、 協 力 す る こ と を 表 明 し た 。 イ 同 月 20日 、 国 鉄 は 、 広 域 異 動 の 募 集 を 開 始 し た 。 動 労 は 、 募 集 に 積 極的に応じ、異動者のうち動労組合員が占める割合も高かった。動労 組合員が配属された職場では、要員として鉄道業務に就いていた国労 組合員が「玉突的」に余剰人員とされる例がみられた。 ウ 広域異動に応じた者の将来の配属については、 「本人の希望が最優先 に配慮される」とされた。 (7) 企 業 人 教 育 ア 昭 和 61年 4 月 3 日 、 国 鉄 は 、 職 員 70,000名 ( 管 理 者 10,000名 、 大 卒 者 5,000名 及 び 一 般 職 員 55,000名 ) を 対 象 に 、 企 業 人 教 育 を 実 施 す る - 6 - と発表した。 イ この教育は、職員ひとりひとりに企業人としての考え方と行動力を 身につけさせることを目的として行われ、その内容は、国鉄の現状・ 民間企業の存立基盤・活力ある職場づくりについての小グループによ る共同討議、団体行動訓練、部外講師による特別講義、ビデオ学習等 であった。 ウ 鹿児島県内における企業人教育は、管理者並びに鉄労及び動労の組 合員を対象に始められ、その後、国労の組合員に対して行われた。 エ 国 鉄 の B 2 職 員 局 次 長 が 昭 和 61年 4 月 22日 に 行 っ た 講 演 の 内 容 が 、 雑誌「汎交通」の同年8月号に発表されたが、この中で同人は、企業 人 教 育 に つ い て 、「 現 在 、 民 間 企 業 の た め の 企 業 人 意 識 を 持 た せ る た め に 、 70,000名 ほ ど 9 月 末 ま で に 教 育 を 完 了 す る 。 こ こ で 教 育 が な さ れますと、本人も希望し、あるいは成績を判定し、教育に触れて、民 間 人 としての気 持 ちを持 たせるようにしたということでありますから、 当然、本人の希望が優先的に配慮されるような条件を整えた形になり 得 る。それが例 外 なしということになる訳 ではございませんけれども、 プ ロ バ ビ リ テ ィ の 問 題 と し て は 、 そ う い っ た こ と で あ り ま す 。」 と 述 べている。 (8) 人 材 活 用 セ ン タ ー ア 人材活用センターの設置とその状況 (ア) 昭 和 61年 6 月 24日 、 国 鉄 は 、 派 遣 、 休 職 の 調 整 策 に 応 じ て い る 職 員を除く余剰人員を集中的に一括管理するため、人材活用センター を 設 置 す る と 発 表 し 、 同 年 7 月 1 日 、 全 国 1,010箇 所 に 人 材 セ ン タ ーが設置された。 (イ) 人 材 活 用 セ ン タ ー へ の 発 令 ( 担 務 指 定 ) は 、 一 般 異 動 又 は 兼 務 に より駅や区に配置したうえで行うこととされた。 (ウ) 人 材 活 用 セ ン タ ー へ 担 務 指 定 す る 職 員 に つ い て は 、 勤 務 成 績 に 基 づき、所属長がその権限と責任において適材適所の考え方で配置し たとされ、また、配置期間については、余剰人員の活用策として従 来行われていた短期ローテーション方式はとらず、通常の人事によ るものと同様であることとされた。 (エ) 昭 和 61年 11月 1 日 に お け る 全 国 の 人 材 活 用 セ ン タ ー の 設 置 数 及 び 配 置 者 数 は 、 1,438箇 所 、 18,510名 で あ っ た が 、 配 置 者 の 約 81% は 国労組合員であった。 な お 、 同 年 11月 1 日 に お け る 国 労 の 組 織 率 は 、 47.7% で あ っ た 。 イ 鹿児島県内の人材活用センターの状況 (ア) 鹿 児 島 県 内 に は 、 鉄 道 部 門 の 人 材 活 用 セ ン タ ー が 20箇 所 設 置 さ れ た ほ か 自 動 車 部 門 の 人 材 活 用 セ ン タ ー が 1 箇 所 設 置 さ れ 、 306名 が 配置された。 こ れ ら 306名 は 、 次 表 の と お り 、 担 務 指 定 が 行 わ れ た 17箇 所 の 人 - 7 - 材活用センターに配置されたが、担務指定時における所属組合別の 人 数 は 、国 労 組 合 員 304名 、鉄 労 組 合 員 2 名 で あ り 、配 置 者 の 99.3% が 国 労 組 合 員 で あ っ た 。 国 労 組 合 員 304名 の う ち 66.4% に あ た る 202 名は、国労を脱退し他組合に加入した。その内訳は、鉄労に加入し た 者 19名 、 動 労 に 加 入 し た 者 5 名 、 九 産 労 に 加 入 し た 者 178名 で あ った。国労所属を変えなかった者は、大多数の者が採用されず、志 布 志 保 線 区 で は 23名 全 員 が 、 鹿 児 島 自 動 車 営 業 所 で は 11名 全 員 が 不 採用となった。 人材活用センター配置者の採用状況 国 組合別 九 産 労 鉄 労 動 3 3 0 100 西 鹿 児 島 駅 11 2 2 2 0 100 鹿児島建築区 3 3 2 2 0 100 鹿児島機関区 31 3 1 1 0 100 28 19 19 0 100 吉 松 機 関 区 3 2 1 0 1 0 志布志機関区 9 1 1 0 1 0 7 6 4 2 66.7 鹿児島運転所 37 12 8 2 6 25 23 20 18 2 90 1 1 1 0 100 川 内 保 線 区 30 10 8 1 7 12.5 15 14 10 4 71.4 5 5 5 0 100 鹿児島保線区 53 20 11 3 8 27.3 22 21 18 3 85.7 10 10 10 0 100 吉 松 保 線 区 30 29 24 15 9 62.5 1 1 1 0 100 志布志保線区 26 1 1 1 0 100 1 0 0 0 - 1 1 1 0 100 1 1 1 0 100 1 1 1 0 100 者 率 率 0 100 者 者 者 者 率 1 用 用 1 率 3 1 用 3 採 伊 集 院 駅 不 採 用 者 数 2 50 数 2 用 4 採 4 数 5 置 駅 不 採 用 者 数 内 者 数 川 望 者 数 0 - 希 用 者 数 0 労 数 採 望 者 0 用 1 配 希 置 採 配 採 不 採 用 者 数 1 用 数 採 駅 配 置 者 望 水 状況 置 数 数 希 者 数 出 の名称 人材活用センター 数 用 者 数 配 採 望 者 採 希 置 不 採 用 者 数 配 採用 労 ( 人 、% ) 数 8 25 7 23 4 0 3 57.1 23 0 - 8 - 1 1 1 0 100 鹿児島電力区 19 鹿 児 島 信 号 13 通 信 区 (2) 志 布 志 駅 鹿児島自動車 営 業 所 28 (2) ( 注 )( 1 0 1 0 15 12 9 3 75 6 5 1 4 20 5 3 3 0 100 4 4 3 1 75 17 17 4 306 計 4 11 11 0 11 0 8 9 47.1 102 77 12 65 15.6 178 151 116 35 76.8 2 1 1 (2) (1) (1) 21 20 20 (2) (1) (1) 0 100 0 100 5 4 4 0 100 )は、担務指定時点において、当該組合に所属していた者。 (イ) 国 労 役 員 ( 組 合 三 役 及 び 執 行 委 員 。 た だ し 、 鹿 児 島 地 本 に あ っ て は青年部長、婦人部長及び特別執行委員を、鹿児島県支部及び分会 に あ っ て は 書 記 次 長 を 含 む 。 以 下 同 じ 。) 総 数 168名 の う ち 、 人 材 活 用 セ ン タ ー が 設 置 さ れ た 職 場 に 勤 務 す る 者 は 103名 で あ っ た が 、 そ の 46.6% に あ た る 48名 が 各 人 材 活 用 セ ン タ ー に 配 置 さ れ た 。 こ の う ち 54.2% に あ た る 26名 は 、 国 労 を 脱 退 し 、 他 組 合 に 加 入 し た 。 そ の 内 訳 は 、鉄 労 に 加 入 し た 者 1 名 、九 産 労 に 加 入 し た 者 25名 で あ っ た 。 国 労 所 属 を 変 え な か っ た 者 の 採 用 率 は 20% に す ぎ な か っ た 。 人材活用センターに配属された国労役員の採用状況 組合別 採 労 用 率 不採用者数 採 用 者 数 鉄 希 望 者 数 率 配 置 者 数 採 用 不採用者数 採 用 者 数 計 希 望 者 数 会 0 率 分 九 産 労 1 1 0 1 用 鹿 児 島 地 本 鹿児島県支部 配 置 者 数 採 労 不採用者数 採 用 者 数 分 希 望 者 数 区 配 置 者 数 採用 状況 国 ( 人 、% ) 3 3 1 2 33.3 4 4 3 1 75 19 17 3 14 17.6 20 17 12 5 70.6 1 1 1 0 100 22 20 4 16 20 25 22 15 7 68.2 1 1 1 0 100 分会役員の担務指定の状況についてみると、たとえば、鹿児島施 設分会では9名のうち執行委員長及び書記長を含む6名が、鹿児島 電通分会では9名のうち執行委員長及び書記長を含む4名が、川内 施 設 分 会 では7名 のうち執 行 委 員 長 及 び執 行 副 委 員 長 を含 む5名 が、 志布志施設分会では三役を含む6名全員が担務指定された。 な お 、 志 布 志 施 設 分 会 で は 、 全 役 員 数 22名 の う ち 19名 が 人 材 活 用 センターに配置された。 (ウ) 鹿 児 島 保 線 区 に 設 置 さ れ た 人 材 活 用 セ ン タ ー で は 、 国 労 を 脱 退 し 他組合に加入した者について、その担務指定を解き、鉄道業務に復 帰 させるとともに、国 労 組 合 員 を新 たに担 務 指 定 するという人 事 が、 つ ご う 4 回 行 わ れ た 。 こ の よ う な 人 事 異 動 は 、「 血 の 入 れ か え 」 と - 9 - 呼ばれた。 (エ) 人 材 活 用 セ ン タ ー へ の 担 務 指 定 者 は 、 人 材 活 用 セ ン タ ー 職 員 と し て 、増 収・経 費 削 減 策 な ど 本 来 の 鉄 道 業 務 以 外 の 業 務 を 行 い 、ま た 、 教育訓練を受けることとされたが、実際は、用地境の杭づくり、草 刈りなどであり、ほとんど一日中何も仕事を与えられないこともあ った。 (9) 職 員 管 理 調 書 の 作 成 ア 昭 和 61年 3 月 5 日 、 国 鉄 は 、 職 員 の 勤 務 評 定 の 資 料 と し て 、 各 鉄 道 管理局ごとに整備保管させていた職員管理台帳の様式が不統一であっ たため、新たに全国統一の様式による職員管理調書を作成するよう通 達した。 イ こ の 調 書 は 、 別 紙 の と お り 、 昭 和 61年 4 月 2 日 現 在 の 一 般 職 員 を 対 象に、基本事項、特記事項及び評定事項の各項目について記入し、同 月 7 日 ま で に 提 出 す る こ と と さ れ 、 調 査 対 象 期 間 は 、 昭 和 58年 4 月 1 日 か ら 昭 和 61年 3 月 31日 ま で と さ れ て い た 。 ウ 基 本 事 項 は 、 職 員 の 勤 務 箇 所 名 、 氏 名 、 年 令 、 住 所 な ど 10項 目 か ら なっている。 特記事項は、一般処分、労働処分、派遣、復職前提休職など7項目 からなり、このうち、一般処分については、発令日ベースではなく、 通告日ベースで記入することとされ、労働処分については、一般処分 と同 様 通 告 日 ベー スで記 入 し、昭 和 58年 7月 2日 処 分 通 知 を行 った「 58. 3闘争」から記入することとされた。 なお、一般処分は、業務上の事故などの私的事項を理由として行わ れる処分であり、労働処分は、組合活動をしたことを理由として行わ れる処分である。 評定事項は、職場の秩序維持(点呼妨害、体操不参加、管理者への 暴 言 等 を 含 む 職 場 の 秩 序 を 乱 す 行 為 の 有 無 )、 服 装 の 乱 れ ( リ ボ ン ・ ワッペン、氏名札、安全帽、安全靴、あご紐、ネクタイ等について、 指 導 さ れ た 通 り の 服 装 の 遵 守 如 何 )、 指 示 ・ 命 令 ( 作 業 指 示 ・ 命 令 の 真 剣 な 受 け 止 め 方 如 何 )、 勤 務 時 間 中 の 組 合 活 動 ( 勤 務 時 間 中 の 組 合 活 動 の 有 無 )、 現 状 認 識 ( 国 鉄 の 厳 し い 現 状 を 認 識 し 、 業 務 に 取 り 組 む 姿 勢 如 何 ) な ど 20項 目 の ほ か 、 総 合 評 定 ( 20項 目 に つ い て の 5 段 階 評価)の項目からなっていた。 (10) 改 革 労 協 の 結 成 昭 和 61年 7 月 18日 、 鉄 労 、 動 労 、 全 施 労 及 び 真 国 労 は 、 国 鉄 の 分 割 ・ 民 営 化 に 協 力 す る 立 場 か ら 、国 鉄 改 革 労 働 組 合 協 議 会( 以 下「 改 革 労 協 」 と い う 。) を 結 成 し た 。 (11) 第 2 次 労 使 協 同 宣 言 昭 和 61年 8 月 27日 、 国 鉄 は 、 改 革 労 協 と の 間 で 、 ①改革労協は、国鉄改革について、分割・民営化を基本とするという - 10 - 認識を持つに至り、労使は、国鉄改革に向かって一致協力して尽力する こと。 ②改革労協は、今後、争議権が付与された場合においても、鉄道事業 の健全な経営が定着するまでは、争議権の行使を自粛すること。 ③企業人としての自覚を有し、向上心と意欲にあふれる職員となるよ う必要な教育の一層の推進を図るとともに、労使それぞれの立場におい て、職員の指導を徹底すること。 などを内容とする第2次労使共同宣言を調印した。 これに対して、国労は、この宣言の内容は労働基本権の放棄につなが るとして、調印を拒否した。 (12) 国 鉄 の 動 労 に 対 す る 損 害 賠 償 請 求 の 取 下 げ 昭 和 61年 8 月 28日 、 国 鉄 は 昭 和 50年 11月 26日 か ら 同 年 12月 3 日 ま で の間、国労及び動労を含む官公労労働者がスト権の付与を求めて行っ た、いわゆるスト権ストに関し、国労及び動労を共同被告として提訴 していた総 額 202億 円 の損 害 賠 償 請 求 訴 訟 について、 「 動 労 は57年 以 来 、 国 鉄 の諸 施 策 に積 極 的 に協 力 をし、同 年 12月 以 降 ストライキを行 わず、 また、労使共同宣言において、国鉄改革が実現するまでの間、ストラ イキ等違法行為を行わないと宣言し、さらに、第2次労使共同宣言に おいて、新事業体移行後も健全経営が定着するまでは、ストライキ権 の行使を自粛することなど分割・民営化による国鉄改革に賛成し、一 致 協 力 し て 尽 力 す る 旨 約 束 し た 。」 と し て 、「 動 労 に つ い て は 、 202億 円訴訟を取り下げ、労使協調路線を将来にわたって定着させる礎とし た い 。」 と の 総 裁 談 話 を 発 表 し 、 同 年 9 月 3 日 、 動 労 に 対 す る 訴 え を 取り下げた。 (13) 全 国 の 組 合 別 組 合 員 数 の 推 移 並 び に 鹿 児 島 地 本 及 び 鹿 児 島 県 支 部 の 組合員数の推移 ア 全国の組合別組合員数の推移 全国の組合別組合員数は、次表のとおりである。 国 労 は 、 昭 和 61年 5 月 1 日 現 在 、 組 合 員 有 資 格 者 の 68.3% を 組 織 し て い た が 、 同 年 7 月 か ら 12月 ま で 毎 月 10,000名 を 超 え る 組 合 員 が 脱 退 し た こ と に よ り 、同 年 7 月 1 日 現 在 、66.4% で あ っ た 組 織 率 は 、同 年 11 月 1 日 現 在 で は 、 47.7% と 半 数 を 割 り 、 昭 和 62年 1 月 に は 、 20,000名 を超す組合員が脱退したことにより、同年2月1日現在の組織率 は 29.2% に 減 少 し 、 分 割 ・ 民 営 化 を 1 箇 月 後 に 控 え た 同 年 3 月 1 日 現 在 で は 27.9% の 組 織 率 で あ っ た 。 全国の組合別組合員数の推移 組合名 時点 昭和 61 年 国 労動 (人) 労 全動労 鉄 労 全施労 未加入 その他 5 月 1 日 162,971 31,351 2,373 28,867 1,588 9,158 2,210 6 月 1 日 161,181 30,892 2,372 28,994 1,643 9,819 2,313 - 11 - 7 月 1 日 157,116 31,181 2,356 30,369 1,858 11,169 2,513 8 月 1 日 145,982 31,478 2,272 33,188 2,568 10,803 8,844 9 月 1 日 135,761 33,042 2,311 36,141 3,721 9,795 15,002 10 月 1 日 121,925 33,946 2,192 39,252 4,921 9,455 20,511 11 月 1 日 110,010 35,166 2,137 42,080 5,705 9,086 26,257 12 月 1 日 98,242 35,236 2,319 43,683 6,168 9,720 33,441 昭和 62 年 1 月 1 日 85,349 35,854 2,058 44,609 6,900 8,289 42,640 2 月 1 日 64,721 35,237 2,029 44,098 5,084 8,077 62,770 3 月 1 日 61,353 34,690 2,222 43,328 5,197 8,010 64,866 イ 鹿児島地本及び鹿児島県支部の組合員数の推移 鹿児島地本及び鹿児島県支部の組合員数の推移は、次表のとおりで あ り 、 昭 和 62年 3 月 31日 現 在 の 組 合 員 数 は 、 昭 和 61年 7 月 1 日 現 在 と 比 較 し て 、 鹿 児 島 地 本 で は 16.4% 、 鹿 児 島 県 支 部 で は 12.0% に 著 し く 減少している。 鹿児島地本及び鹿児島県支部の組合員数の推移 区 分 61 年 7 月 1 日 (人) 12 月 1 日 62 年 3 月 31 日 4 月 1 日 鹿 児 島 地 本 2,529 1,639 415 275 鹿児島県支部 2,009 1,284 242 165 (14) 国 鉄 当 局 の 国 労 に 対 す る 考 え 方 ア 昭 和 61年 5 月 21日 、 国 鉄 の B 2 職 員 局 次 長 は 、 動 労 の 東 京 地 本 及 び 新 幹 線 各 支 部 三 役 会 議 に 出 席 し 、「 私 は 、 こ れ か ら 、 A 3 ( 当 時 の 国 労委員長)の腹をぶんなぐってやろうと思っています。……みんなを 不幸にし、道づれにされないようにやっていかなければならないと思 うんでありますが、不当労働行為をやれば、法律で禁止されています ので、私は、不当労働行為をやらないという時点で、つまり、やらな い と い う こ と は 、 う ま く や る と い う こ と で あ り ま し て … … 。」 と 発 言 した。 イ 昭 和 61年 10月 21日 、 国 鉄 総 裁 は 、 衆 議 院 の 日 本 国 有 鉄 道 改 革 に 関 す る特別委員会において、国鉄が国労との間で雇用安定協約を締結して い な い こ と に つ い て 、「 労 使 共 同 宣 言 に 調 印 の で き な い 、 あ る い は す ることに反対である組合に対しましては、私ども信頼を持てません。 したがいまして、雇用安定協約を結ぶことができないということでご ざ い ま す 。」 と 答 弁 し た 。 (15) 現 場 段 階 で の 国 鉄 の 態 度 国鉄は、全国各地で国労組合員に対して種々の脱退工作を行ったとさ れているが、鹿児島県内においても次のような現場管理者の言動や人権 侵害の事例がみられた。 - 12 - ア 意識改革 鹿児島県内の職場では、次の事例のように、現場管理者による意識 改革の強要等が国労組合員に対して行われた。 ・ 鹿 児 島 自 動 車 営 業 所 蒲 生 支 所 の 管 理 者 は 、バ ッ ジ を 着 用 し て い た A 4 に 対 し て 、「 私 の 言 う こ と が 聞 け な い の か 。 そ ん な こ と で は 採 用 さ れ ん ぞ 。 意 識 改 革 を し な け れ ば 駄 目 だ 。」 と 言 っ た 。 ・ 昭 和 61年 7 月 、 同 支 所 長 B 3 と 助 役 B 4 は 、 毎 月 14日 の 「 権 利 デ ー 」に腕 章 を着 用 した A4を本 来 の業 務 から はずした理 由 について 、 「 意 識 改 革 の で き て い な い 人 に 仕 事 を さ せ る わ け に い か な い 。」 と 言った。 ・ 昭 和 61年 5 月 16日 、鹿 児 島 自 動 車 営 業 所 の 蒲 生 支 所 に 出 向 い た 同 営 業 所 長 B 5 と 九 州 自 動 車 部 の 係 長 B 6 は 、 A 5 に 対 し て 、「 ネ ー ムプレートをつけてないですね。つけていない者は旧国鉄ですよ。 昇 給 ・ 昇 格 も も ち ろ ん し ま せ ん よ 。 そ れ で も い い の で す か 。」 と 言 った。 ・ 昭 和 61年 10月 頃 、 鹿 児 島 自 動 車 営 業 所 長 の B 5 は 、「 意 識 改 革 の で き た 人 と で き な い 人 の 血 の 入 れ か え を す る 。」 と 発 言 し 、 多 能 化 教 育 として 動 労 の 組 合 員 を広 島 鉄 道 学 園 で大 型 2種 の 免 許 を取 得 さ せ 、鹿 児 島 、国 分 、桜 島 、山 川 の 各 営 業 所 に 10名 配 属 し た 。こ れ に より、国労組合員が余剰人員とされた。 ・ 川 内 保 線 区 の 首 席 助 役 は 、 A 6 に 対 し て 、 昭 和 61年 9 月 頃 か ら 、 「 呼 名 点 呼 に 何 故 応 じ な い の で す か 。情 勢 が わ か っ て い ら っ し ゃ る の で す か 。」と 言 い 始 め 、同 年 10月 中 旬 頃 、「 仕 事 は 、誰 で も 経 験 を 積 め ば で き ま す 。要 は 意 識 の 改 革 で す 。明 日 か ら の 行 動 に よ っ て 判 断 し ま す 。」 と 言 っ た 。 ・ 鹿 児 島 駅 助 役 B 7 は 、昭 和 61年 11月 頃 か ら 、同 駅 長 室 に 一 人 一 人 呼 び 「 意 識 改 革 を し な い と 駄 目 だ 。」 と 言 い 始 め て い た が 、 同 月 本 務 を は ず さ れ 余 剰 人 員 グ ル ー プ に 組 み 入 ら れ た A 7 に 対 し て 、「 俺 の言 うことを聞 かなければ、後 で後 悔 することになっても知 らんぞ。」 と言った。 以 上 の ほ か 、 意 識 改 革 に つ い て 現 場 管 理 者 は 、「 意 識 改 革 と は 分 割 ・ 民 営 化 に 賛 成 す る こ と だ 」、 あ る い は 、「 意 識 改 革 を し な い と 新 会 社 に 採 用 さ れ な い 」、 ま た 、「 国 労 を 抜 け な い と 新 会 社 に 採 用 さ れ ない」などと発言していた事例もあった。 これらのことにより、意識改革とは国労を脱退することであると の職場雰囲気が醸成されたことが認められる。 イ 人権侵害 鹿児島自動車営業所の補助運行管理者A8は、国労バッジをはずさ な か っ た た め 、 昭 和 60年 7 月 頃 本 務 を は ず さ れ 、 延 べ 10日 間 ほ ど 、 桜 島の降灰除去作業を強制された。このため、これが人権侵害にあたる - 13 - ということで、鹿 児 島 地 方 裁 判 所 に訴 訟 を提 起 し、昭 和 63年 6月 27日 、10 万円の損害賠償が認められた。 4 採用手続について (1) 承 継 法 人 の 職 員 採 用 方 法 承 継 法 人 の 職 員 の 採 用 に つ い て は 、 改 革 法 第 23条 に よ り 、 ① 承 継 法 人 の設立委員等は国鉄を通じ、国鉄職員に対し、承継法人の職員の労働条 件 及 び 職 員 の 採 用 の 基 準 を 提 示 し て 職 員 の 募 集 を 行 い( 第 1 項 )、② 国 鉄 は、承継法人の職員となる意思を表示した者の中から承継法人の職員と なるべき者を選定して名簿を作成し、設立委員等は同名簿に記載された 者 の 中 か ら 採 用 す る と さ れ( 第 2 項 及 び 第 3 項 )、③ ま た 、職 員 の 採 用 に ついて、承継法人の設立委員がした行為及び同委員に対してなされた行 為は、それぞれ承継法人がした行為及び同法人に対してなされた行為と さ れ た( 第 5 項 )。こ の 採 用 手 続 に よ り 採 用 さ れ な か っ た 国 鉄 職 員 に つ い ては、その再就職の促進を図るための業務を清算事業団に行わせる(同 法 第 15条 ) こ と と さ れ た 。 (2) そ の 他 本 件 に 関 す る 規 定 以上のほか、国鉄改革関連法のうち、特に本件に関係する規定は次の とおりである。 改 革 法 第 12条 ( 経 営 の 安 定 の た め の 基 金 ) 国は、北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社及び九州旅客 鉄 道 株 式 会 社( 以 下「 北 海 道 旅 客 会 社 等 」と い う 。)の 設 立 に 際 し 、そ れ ぞれに基金を置かせるものとし、その運用により生ずる収益をその事業 の運営に必要な費用に充てることにより、北海道旅客会社等の経営の安 定を図るものとする。 2 日本国有鉄道は、北海道旅客会社等に対し、前項に規定する基金に 充てるために必要な金額に相当する額の債務を負担するものとする。 改 革 法 第 13条 ( 国 鉄 長 期 債 務 等 の 承 継 等 ) 国は、承継法人が日本国有鉄道から事業などを引き継ぐに際し、その 引き継いだ事業等の健全かつ円滑な運営を阻害しない範囲において、当 該承継法人に対し、日本国有鉄道の長期借入金及び鉄道債券に係る債務 ( 以 下「 国 鉄 長 期 債 務 」と い う 。)そ の 他 の 債 務 を 承 継 さ せ る 等 の 措 置 を 講ずるものとする。 2 国 は 、 前 項 の 規 定 に か か わ ら ず 、 北 海 道 旅 客 会 社 等 及 び 第 11条 第 1 項の規定により試験研究に関する業務を引き継ぐ法人に対しては国鉄 長期債務を承継させないものとする。 改 革 法 第 23条 ( 承 継 法 人 の 職 員 ) (第1項ないし第5項は省略) 6 第3項の規定により日本国有鉄道の職員が承継法人と職員となる場 合 に は 、 そ の 者 に 対 し て は 、 国 家 公 務 員 等 退 職 手 当 法 ( 昭 和 28年 法 律 等 182号 ) に 基 づ く 退 職 手 当 は 、 支 給 し な い 。 - 14 - 7 承継法人は、前項の規定の適用を受けた承継法人の職員の退職に際 し、退職手当を支給しようとするときは、その者の日本国有鉄道の職 員としての引き続いた在職期間を当該承継法人の職員としての在職期 間とみなして取り扱うべきものとする。 施 行 法 第 29条 ( 日 本 国 有 鉄 道 の 廃 止 に 伴 う 経 過 措 置 ) 旧 国 鉄 法 第 31条 の 規 定 に よ り 受 け た 懲 戒 処 分 及 び 改 革 法 附 則 第 2 項 の 規定の施行前の事案に係る懲戒処分については、なお従前の例による。 この場合において、同項の規定の施行後に懲戒処分を行うこととなると きは、清算事業団の代表者又はその委任を受けた者が懲戒処分を行うも のとする。 (第2項以下省略) 鉄道会社法附則第2条(設立委員) 運輸大臣は、それぞれの会社ごとに設立委員を命じ、当該会社の設立 に関して発起人の職務を行わせる。 2 設 立 委 員 は 、 前 項 及 び 日 本 国 有 鉄 道 改 革 法 ( 昭 和 61年 法 律 第 87号 。 以 下「 改 革 法 」と い う 。)第 23条 に 定 め る も の の ほ か 、当 該 会 社 が そ の 成立の時において事業を円滑に開始するために必要な業務を行うこと ができる。 再 就 職 促 進 法 第 20条 ( 承 継 法 人 の 優 先 雇 用 ) 承 継 法 人 は 、労 働 者( 指 定 法 人 に あ っ て は 、承 継 業 務 職 員 に 限 る 。)を 雇い入れる場合には、清算事業団職員を優先的に雇い入れるようにしな ければならない。 (3) 国 鉄 改 革 関 連 法 案 の 審 議 過 程 に お け る 政 府 及 び 国 鉄 総 裁 の 見 解 ア 昭 和 61年 11月 20日 、 参 議 院 の 日 本 国 有 鉄 道 改 革 に 関 す る 特 別 委 員 会 ( 以 下 「 参 院 国 鉄 改 革 特 別 委 」 と い う 。) で 、 国 鉄 総 裁 は 、 新 会 社 の 職員の採用の基準として勤務成績が示された場合の対応について、 「私 ども、それに基づきまして判断をする材料といたしましては、現在私 どもが持っております職員管理調書、この職員管理調書によりまして 判断をしていくことになるであろうというふうに思うわけでございま す。この調書のやり方、中身等は私ども客観的・公正なものとして内 部資料として持っておるものでございますので、そうした資料に基づ きまして、適切な制断のもとにおきまして名簿の作成になることにな るであろうというふうに思うわけでございまして、そうした後におき まして設 立 委 員 の御 判 断 を仰 ぐということに相 なろうかと思 います。」 と答弁した。 イ 昭 和 61年 11月 25日 、 参 院 国 鉄 改 革 特 別 委 で 、 承 継 法 人 は 国 鉄 職 員 以 外の者を採用することはできないのではないかとの質問に対して、運 輸 大 臣 は 、「 少 な く と も よ ほ ど 特 別 の 資 格 と か 特 別 の 能 力 を 要 求 さ れ る職種を除いたら、基本的には私は現在の国鉄職員のうちから採用さ れ る べ き も の で あ る と 思 い ま す 。」 と 答 弁 し た 。 - 15 - また、職員採用の決定において、労働組合加入の有無、加入組合の 別、日本国有鉄道法に基づく過去の労働処分の有無を基準とすること は、労働組合法第7条の規定からみて問題があるのではないかとの質 問 に 対 し て 、 運 輸 大 臣 は 、「 所 属 す る 労 働 組 合 に よ っ て 差 別 が 行 わ れ るようなものであってはならないと思います。職員の採用手続の過程 におきまして、いわゆる労働処分というものを具体的に明示するよう な形で勤務成績をお示しするようなことはあり得ないと思いますし、 あ っ て は な ら な い と 思 い ま す 。」 と 答 弁 し た 。 さ ら に 、 国 鉄 が 改 革 法 第 23条 第 2 項 の 規 定 に よ り 承 継 法 人 の 職 員 と な る べ き 者 を 選 定 す る と い う 法 律 上 の 資 格 に 関 し て 、運 輸 大 臣 は 、 「承 継法人の職員の具体的な選定作業は設立委員などの示す採用の基準に 従って国鉄当局が行うわけでありますが、この国鉄当局の立場と申し ますものは、設立委員などの採用事務を補助するものとしての立場で ございます。法律上の考え方で申しますならば、民法に照らして言え ば準委任に近いものでありますから、どちらかといえば代行と考える べ き で は な か ろ う か と 考 え て お り ま す 。」 と 答 弁 し た 。 次に、設立委員が採用通知を発する人員数について、名簿登載者数 の 場 合 の 同 数 に な る か と の 質 問 に 対 し て 、「 名 簿 の 作 成 後 に 特 殊 な ケ ース、たとえば、採用基準に全く外れるような事態が生じた場合、あ るいはそういう事実が判明した場合といったような、ごく限定された 例外は理論的にはあり得ると思います。しかし、そういうことを除け ば 、 私 は 当 然 そ う い う こ と に な ろ う と 思 い ま す 。」 と 答 弁 し た 。 (4) 参 議 院 国 鉄 改 革 特 別 委 員 会 の 附 帯 決 議 昭 和 61年 11月 28日 、 参 院 国 鉄 改 革 特 別 委 は 、 国 鉄 改 革 関 連 法 の 可 決 に あたり附帯決議を行った。その第9項には「国鉄改革の実施に当たって 国鉄職員の雇用と生活の安定を図るため十分な配慮をするべき事項とし て、①各旅客鉄道株式会社等における職員の採用基準及び選定方法につ いては、客観的かつ公正なものとするよう配慮するとともに、本人の希 望を尊重し、所属組合等による差別が行われることのないよう特段の留 意 を す る こ と 。」 が 示 さ れ た 。 (5) 承 継 法 人 の 職 員 の 募 集 及 び 採 用 の 決 定 に つ い て ア 本件会社の職員数 昭 和 61年 12月 16日 、 政 府 は 、 改 革 法 第 19条 第 1 項 に 規 定 す る 「 国 鉄 の事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関する基本計画」 (以 下 「 基 本 計 画 」 と い う 。) を 閣 議 決 定 し た 。 こ れ に よ る と 、 承 継 法 人 の 職 員 と な る 者 の 総 数 は 215,000名 と さ れ 、 こ の う ち 、 会 社 の 職 員 数 は 15,000名 で あ っ た 。 イ 職員採用の基準 昭 和 61年 12月 11日 、 第 1 回 設 立 委 員 会 が 開 催 さ れ 、 承 継 法 人 の 職 員 の採用の基準を決定した。 - 16 - 設立委員の提示した会社の職員の基準は、次のとおりであった。 「 1 昭 和 61年 度 末 に お い て 、 年 令 満 55才 未 満 で あ る こ と 。 2 職務遂行に支障のない健康状態であること。 なお、心 身 の故 障 により長 期 にわたって休 養 中 の職 員 については、 回復の見込みがあり、長期的にみて職務遂行に支障がないと判断さ れる健康状態であること。 3 日本国有鉄道在職中の勤務状況からみて、当社の業務にふさわし い者であること。 なお、勤務の状況については、職務に対する知識技能及び適性、 日常の勤務に関する実績等を、日本国有鉄道における既存の資料に 基づき、総合的かつ公正に判断すること。 4 「 退 職 前 提 の 休 職 」〔 日 本 国 有 鉄 道 就 業 規 則 ( 昭 和 60年 6 月 月 総 裁 達 12号 ) 第 62条 (3)ア 〕 を 発 令 さ れ て い な い こ と 。 5 「 退 職 を 希 望 す る 職 員 で あ る 旨 の 認 定 」〔 日 本 国 有 鉄 道 の 経 営 す る 事 業 の 運 営 の 改 善 の た め に 昭 和 61年 度 に お い て 緊 急 に 講 ず べ き 特 別 措 置 に 関 す る 法 律 ( 昭 和 61年 法 律 第 76号 ) 第 4 条 第 1 項 〕 を 受 け ていないこと。 6 日 本 国 有 鉄 道 に お い て 再 就 職 の あ っ せ ん を 受 け 、再 就 職 先 か ら 昭 和 65年 度 ( 平 成 2 年 度 ) 当 初 ま で の 間 に 採 用 を 予 定 す る 旨 の 通 知 を 受けていないこと。 なお、日本国有鉄道本社及び本社附属機関に所属する職員並びに 全 国 的 な 運 用 を 行 っ て い る 職 員 か ら の 採 用 の ほ か 、当 社 が 事 業 を 運 営する地域内の業務を担当する地方機関に所属する職員からの採用 を優先的に考慮するものとする。 」 ウ 職員の労働条件 昭 和 61年 12月 19日 、 第 2 回 設 立 委 員 会 が 開 催 さ れ 、 承 継 法 人 の 職 員 の労働条件が決定された。 そのうち、年次有給休暇及び賃金に関する規定は、次のとおりであ る。 「 ・有給休暇 有給休暇については、次のとおりとします。 年次有給休暇 付 与 日 数 は 、過 去 1 年 間 の 出 勤 率 8 割 以 上 の 者 に 対 し 、 勤 続 1 年 に 達 し た と き に 12日 、 以 後 1 年 を 増 す ご と に 1 日 ず つ 加 算 し 、20日 を 限 度 と し ま す 。有 効 期 間 は 2 年 間 と し ま す 。な お 、日 本 国 有 鉄 道 の職員としての勤続年数は、会社の職員としての勤続年数とみなし ま す 。ま た 、勤 続 年 数 が 1 年 未 満 の 者 に つ い て は 、勤 続 3 ヶ 月 の 出 - 17 - 勤率が8割以上の場合に、6日を付与します。 ・賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及びの時期並び に昇給 別 紙 1( 省 略 )参 照 。な お 、採 用 時 の 基 本 給 は 、採 用 さ れ る 職 名 、 年 令 、学 歴 職 務 経 験 等 に 応 じ て 決 定 さ れ ま す が 、 概 ね 現 行 と 同 水 準 を保障します。 」 エ 採用候補者名簿の提出及び採用決定 昭 和 61年 12月 24日 、 設 立 委 員 か ら 承 継 法 人 の 職 員 の 労 働 条 件 及 び 採 用の基準を提示された国鉄は、承継法人の職員の採用候補者名簿の作 成を行うため、全職員に対し、承継法人における職員の労働条件及び 採用の基準を記載した書面並びに意思確認書の用紙の配付を始めた。 昭 和 62年 2 月 7 日 、 国 鉄 は 、 承 継 法 人 の 職 員 と な る べ き 者 の 名 簿 を 作成し、設立委員に提出した。 昭 和 62年 2 月 12日 、 第 3 回 設 立 委 員 会 が 開 催 さ れ 、 設 立 委 員 は 国 鉄 から提出された名簿のとおり採用内定者を決定した。 オ 採用通知書の交付 昭 和 62年 2 月 16日 以 降 、 国 鉄 は 、 採 用 が 内 定 し た 者 に 対 し 、 所 属 長 を通じて次のような採用通知書を交付した。 昭 和 62年 2 月 12日 殿 九州旅客鉄道株式会社設立委員会 委員長 採 用 通 B8 知 あ な た を 昭 和 62年 4 月 1 日 付 け で 採 用 す る こ と に 決 定 い た し ま し たので通知します。 なお、辞退の申し出がない限り、採用されることについて承諾が あったものとみなします。 一方、採用の内定のなかった職員に対しては、口頭で不採用の通知 がなされたが、その際、不採用の理由について、所属長からの説明は 行われなかった。 カ 配属先等の通知書の交付 昭 和 62年 3 月 16日 以 降 、 国 鉄 は 、 承 継 法 人 の 職 員 に 内 定 し た 者 に 対 して、配属先等に関する次のような通知書を交付した。 - 18 - 昭 和 62年 3 月 16日 殿 九州旅客鉄道株式会社設立委員会 委員長 通 B8 知 昭 和 62年 4 月 1 日 付 け で 、 あ な た の 所 属 、 勤 務 箇 所 、 職 名 等 に つ い て は、下記のとおりとなります。 記 所 属 勤務箇所・職名 等 級 賃 金 記 事 (6) 組 合 別 の 採 用 状 況 ア 鹿児島鉄道管理局管内(鹿児島県及び宮崎県の一部)の組合別の採 用 状 況 は 、 次 表 の と お り で あ り 、 希 望 者 2,724名 に 対 し 、 2,482名 が 採 用 さ れ 、 採 用 率 は 91.1% で あ っ た 。 組 合 別 の 採 用 率 は 、 国 労 が 40.3% で あ っ た の に 対 し 、 鉄 労 99.9% 、 動 労 99.8% 、 九 産 労 90.4% で あ っ た 。 鹿児島鉄道管理局管内の組合別採用状況 組合別 採用者数 不採用者数 採用率 国 労 290 117 173 40.3 鉄 労 823 822 1 99.9 動 労 913 911 2 99.8 九産労 691 625 66 90.4 その他 7 7 0 2,724 2,482 242 計 イ 希望者数 (人、%) 100 91.1 鹿児島県内における組合別の採用状況は、次表のとおりであり、希 望 者 2,228名 に 対 し 、 2,080名 が 採 用 さ れ 、 採 用 率 は 93.4% で あ っ た 。 組 合 別 の 採 用 状 況 は 、国 労 が 44.4% で あ っ た の に 対 し 、鉄 労 99.9% 、 動 労 99.7% 、 九 産 労 90.6% で あ っ た 。 - 19 - 鹿児島県内における組合別採用状況 組合別 希望者数 採用者数 (人、%) 不採用者数 採 用 率 国 労 162 72 90 44.4 鉄 労 717 716 1 99.9 動 労 758 756 2 99.7 九産労 585 530 55 90.6 その他 6 6 0 2,228 2,080 148 計 100 93.4 組合別の採用率の格差が顕著な職場の例として、たとえば、川内保線 区、志布志保線区及び鹿児島自動車営業所の採用状況は、次のとおり である。 なお、川内保線区及び志布志保線区の国労以外の組合に所属する者 は、全員国労から組合所属を変えた者である。 川内保線区 組 合 別 (人、%) 希望者数 採用者数 不採用者数 採 用 率 12.5 国 労 8 1 7 鉄 労 47 47 0 100 動 労 8 8 0 100 九 産 労 24 20 4 83.3 計 87 76 11 87.4 志布志保線区 組合別 (人、%) 希望者数 採用者数 不採用者数 国 労 35 4 31 鉄 労 16 16 0 100 九産労 8 8 0 100 計 59 28 31 鹿児島自動車営業所 組 合 別 ウ 採 用 率 希望者数 11.4 47.5 (人、%) 採用者数 不採用者数 採 用 率 国 労 13 1 12 7.7 動 労 44 44 0 九 産 労 44 34 10 77.3 計 101 79 22 78.2 100 国労役員の採用状況 (ア) 鹿 児 島 地 本 、 鹿 児 島 県 支 部 及 び 同 支 部 の 分 会 の 役 員 168名 の う ち 73.2% に あ た る 123名 は 、 国 労 を 脱 退 し 、 他 組 合 に 加 入 し た 。 そ の 内 訳 は 、 鉄 労 に 加 入 し た 者 10名 、 動 労 に 加 入 し た 者 1 名 、 九 産 労 に 加 入 し た 者 112名 で あ っ た 。 - 20 - 国労役員の採用状況 組 合 別 役員数 (人、%) 希望者数 採用者数 不採用者数 採用率 国 労 45 37 18 19 48.6 鉄 労 10 8 8 0 100 動 労 1 1 1 0 100 九 産 労 112 94 80 14 85.1 計 168 140 107 33 76.4 (イ) 鹿 児 島 地 本 の 役 員 の う ち 在 籍 の 3 名 は 九 産 労 に 脱 退 加 入 し 、 採 用 希望者2名のうち1名が採用された。 (ウ) 鹿 児 島 県 支 部 の 役 員 の 採 用 状 況 は 、 次 の と お り で あ る 。 (人、%) 組合別 国 役員数 希望者数 採用者数 不採用者数 採用率 労 3 3 1 2 33.3 九産労 7 7 4 3 57.1 計 10 10 5 5 50.0 (エ) 鹿 児 島 県 支 部 の 分 会 役 員 の 採 用 状 況 は 、 次 の と お り で あ る 。 (人、%) 組合別 役員数 希望者数 採用者数 不採用者数 採用率 国 労 42 34 17 17 50 鉄 労 10 8 8 0 100 動 労 1 1 1 0 100 九産労 102 85 75 10 88.2 計 155 128 101 27 78.9 な お 、 志 布 志 施 設 分 会 で は 、 分 会 三 役 を 含 む 全 役 員 22名 の う ち 21名 は、国労所属を変えず、会社への採用を希望したが、全員不採用とな り、鉄労に加入した1名は、採用された。 (7) 会 社 の 発 足 ア 昭 和 62年 3 月 4 日 、 運 輸 大 臣 は 、 改 革 法 第 19条 第 5 項 の 規 定 に 基 づ く「国鉄の事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継に関する実施計 画 」( 以 下 「 実 施 計 画 」 と い う 。) を 認 可 し た 。 国 鉄 改 革 関 連 法 、 基 本 計画及び実施計画によれば、承継法人は、北海道旅客鉄道株式会社、 東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株 式会社、四国旅客鉄道株式会社、日本貨物鉄道株式会社、新幹線鉄道 保有機構、鉄道通信株式会社、鉄道情報システム株式会社、財団法人 鉄 道 総 合 技 術 研 究 所 及 び 会 社 の 11法 人 と さ れ 、ま た 、こ れ ら 11法 人 は 、 国 鉄 の 事 業 又 は 業 務 の す べ て を 引 き 継 ぎ 、 国 鉄 の 資 産 の 約 85% を 帳 簿 価 格 に よ り 、 長 期 債 務 は 約 34% を そ れ ぞ れ 引 き 継 ぐ こ と と さ れ 、 残 り の資産及び債務は清算事業団が引き継ぐこととされた。 - 21 - さらに、新会社の設立に際して発行する株式は、国鉄がすべて引き 受 け 、 こ れ は 昭 和 62年 4 月 1 日 以 降 、 清 算 事 業 団 に 帰 属 す る こ と と さ れた。 イ 昭 和 62年 3 月 17日 、 第 4 回 設 立 委 員 会 が 開 催 さ れ 、 会 社 の 役 員 候 補 者及び定款案などが決定された。 ウ 昭 和 62年 3 月 25日 、 会 社 の 設 立 総 会 が 開 催 さ れ た 。 選 任 さ れ た 会 社 の 役 員 は 次 表 の と お り 、 常 勤 役 員 11名 の う ち 8 名 が 国 鉄 の 役 員 又 は 職 員であった者である。 会社常勤役員名簿 役 職 名 氏 名 代表取締役会長 国鉄時代の役職名 九州電力㈱ 取締役相 談 役( 元 国 有 鉄 道 理 事 ) B9 社長 B1 常務理事兼九州総局長 常 務 取 締 役 B 10 本社運転局長 〃 B 11 本社総裁室審議役 〃 取 監 外部団体・民間企業の役職名 B 12 九州電力㈱ 大村発電 所次長 〃 B 13 新日本製鉄㈱ 開発事 業開発企画部担当部長 〃 B 14 〃 B 15 〃 B 16 熊本鉄道管理局次長 〃 B 17 鹿児島鉄道管理局次長 B 18 九州総局事業開発部長 締 査 役 役 本社旅客局総務課長 九州総局総合企画部企 画調整室長 - 22 - エ 鹿児島鉄道管理局の幹部職員の九州旅客鉄道株式会社における役職 名は、次表のとおりである。 氏名 国鉄時代の役職名 九州旅客鉄道㈱へ移行後の役職名 B 17 総 務 部 長 鹿児島支店長 B 19 文 書 課 長 西鹿児島駅長 B 20 地 方 交 通 線 部 長 鹿児島支店運輸課長 B 21 宮崎営業事務所副長 〃 補佐 B 22 事 業 開 発 室 補 佐 鹿児島保線区長 B 23 人 事 課 長 鹿児島支店総務課長 B 24 労 働 課 長 鹿児島支店総務課副長 B 25 主 計 課 長 本社総合企画本部企画副長 B 26 運 輸 部 長 本社関連事業部勤務 B 27 営 業 課 長 本社販売課副長 B 28 都城駅長 〃 補佐 B 29 工 務 部 長 本社関連事業部開発担当部長 B 30 〃 保線課長 鹿児島支店工務課長 B 31 〃 工事課長 大分支店工務課長 B 32 工 事 課 補 佐 鹿児島支店営業担当副長 B 33 信 号 通 信 課 長 社員研修センター研修室長 B 34 電 力 課 長 鹿児島支店電気担当課長 - 23 - オ 昭 和 62年 4 月 1 日 、 会 社 が 発 足 し 、 業 務 が 開 始 さ れ た 。 (8) 清 算 事 業 団 の 状 況 ア 昭 和 62年 4 月 1 日 、 改 革 法 及 び 清 算 事 業 団 法 に 基 づ き 清 算 事 業 団 が 設立された。清算事業団は、国鉄から移行した法人で、承継法人に承 継されなかった国鉄長期債務等の償還、土地その他資産の処分等の業 務を行うとともに、承継法人に採用されなかった者等その身分が国鉄 から清算事業団に承継された者で再就職促進法により「再就職を必要 と す る 職 員 」( 以 下 「 清 算 事 業 団 職 員 」 と い う 。) の 再 就 職 の 促 進 を 図 る た め の 業 務 を 平 成 2 年 3 月 31日 ま で の 3 年 間 行 う こ と を 目 的 と し て いる。 イ 清 算 事 業 団 職 員 は 、具 体 的 な 業 務 を 明 示 さ れ ず 、 「 企 業 開 拓 」と 称 し て企業訪問するよう命ぜられる等のほか、大半の時間を「自学自習」 するよう命ぜられている。 ウ 清算事業団職員は、昇給・昇格はなく、また、期末手当についても 会 社 と 採 用 さ れ て い る 職 員 と 比 較 し て 低 額 で あ る 。 た と え ば 、 昭 和 63 年 夏 期 手 当 に つ い て み る と 、 会 社 に 採 用 さ れ た 者 は 2.1箇 月 の 支 給 に 対 し て 、 1.5箇 月 の 支 給 で あ っ た 。 エ 国鉄時代の同一の賃金であった者で、会社に採用された者と清算事 業 団 に 配 属 さ れ て い る 職 員 に つ い て 、 昭 和 62年 4 月 1 日 か ら 1 年 間 の 給与を例をあげて比較すれば次のとおりである。 (例1) 勤続年数 旧 職 名 62.4所属 基 本 12 年 保線副管理長 清算事業団 九州旅客鉄道㈱ 給 182,500 円 189,700 円 扶 養 手 当 10,000 円 12,000 円 通 勤 手 当 3,800 円 総 支 給 額 196,300 円 毎月の差額 201,700 円 5,400 円 賞与(夏) 288,750 円 423,570 円 賞与(冬) 404,250 円 564,760 円 小 693,000 円 988,330 円 計 賞与の差額 295,330 円 年間の差額 360,130 円 - 24 - (例2) 勤続年数 旧 職 12 年 名 専務車掌 62.4所属 基 本 清 算 事 業 団 九州旅客鉄道㈱ 給 171,200 円 176,900 円 扶 養 手 当 13,300 円 12,000 円 通勤手当 11,400 円 68,398 円 住宅手当 16,750 円 乗務手当等 総 支 給 額 212,650 円 毎月の差額 257,298 円 44,648 円 賞与(夏) 276,750 円 396,690 円 賞与(冬) 387,450 円 528,920 円 664,200 円 925,610 円 小 計 賞与の差額 261,410 円 年間の差額 797,186 円 (例3) 勤続年数 旧 職 名 62.4所属 基 本 19 年 技術係 清 算 事 業 団 九州旅客鉄道㈱ 給 212,400 円 226,500 円 扶 養 手 当 10,000 円 5,000 円 乗務手当等 総 支 給 額 通勤手当 11,000 円 住宅手当 1,000 円 通勤手当 2,000 円 住宅手当 2,500 円 他 1,277 円 234,400 円 毎月の差額 240,277 円 5,877 円 賞与(夏) 333,600 円 486,150 円 賞与(冬) 467,040 円 648,200 円 800,640 円 1,134,350 円 小 計 賞与の差額 333,710 円 年間の差額 404,234 円 - 25 - (9) 補 充 採 用 昭 和 62年 5 月 15日 、会 社 は 、昭 和 62年 6 月 1 日 付 け で 採 用 す る 411名 を 内定した。鹿児島支店管内の組合別採用者数及び採用率は、次表のとお りである。 なお、この補充採用においても、採用されなかった者に対して、不採 用の理由は明らかにされなかった。 (人、%) 組 合 別 国 希望者数 不採用者数 採 用 率 労 157 4 153 2.5 九 産 労 65 42 23 64.6 そ の 他 6 2 4 33.3 228 48 180 21.1 計 5 採用者数 本件申立についての被申立人の対応 被申立人は、本件は審問を行うまでもなく、法律判断によって処理され るべき事案であるので、申立人らの申出に係る証人に対して反対尋問権を 行使する必要を認めず、法律判断に必要な主張立証を行うときを除き、審 問 手 続 には関 与 しないとして、事 実 審 理 を行 った審 問 にはすべて欠 席 した。 第2 1 判 断 当事者の主張 (1) 申 立 人 の 主 張 要 旨 ア 被申立人の職員として、設立委員から採用通知を受けた者の組合所 属別採用率をみると、申立人ら組合に所属する組合員は、他組合に所 属する者の採用率と比較して著しく低く、不当な差別的取扱いを受け た。 イ これは、国鉄の行った不当な選別行為を設立委員がそのまま承認し た こ と に よ る 。 設 立 委 員 は 、 改 革 法 第 23条 に よ り 、 国 鉄 を 通 じ 、 そ の 職員に対して被申立人の職員の労働条件及び採用の基準を提示して募 集を行い、被申立人の職員となる者に対し、採用通知を発することと されていたのであるから、申立人ら所属の組合員の労働条件について 決定的な影響力を持つものとして使用者の地位に立ち、かつ、その責 任を負うべきである。 ウ 被申立人の職員の採用に関して、設立委員がした行為及び設立委員 に 対 し て な さ れ た 行 為 は 、 改 革 法 第 23条 第 5 項 に よ り 、 そ れ ぞ れ 承 継 法人たる被申立人がした行為及び被申立人に対してなされた行為とさ れているのであるから、被申立人は、設立委員及び国鉄が一体となっ て行った本件選別行為の責任を負うべきものである。 エ さ ら に 、国 鉄 と 被 申 立 人 と の 関 係 に つ い て み る と 、事 業 等 の 同 一 性 、 権 利 義 務 の 承 継 、人 的 構 成 の 同 一 性 、労 務 政 策 の 一 貫 性・連 続 性 な ど 、 両者の間に、明らかな実質的同一性が認められるのであって、この点 からも、被申立人は、本件選別行為の責任を負うべきものである。 - 26 - (2) 被 申 立 人 の 主 張 要 旨 ア 被申立人は、改革法に基づき、国鉄の経営していた事業を承継する 法 人 として新 たに設 立 された株 式 会 社 であって、その雇 用 する職 員 は、 同法により新規に採用したものであって、国鉄と国鉄職員との間に存 在した従前の雇用関係が当然承継されるものではない。 イ なお、被申立人と国鉄との関係については、実質的同一性などの関 係があるとして、雇用関係上の責任が被申立人に承継されるとするこ とは、改革法の立法趣旨からして誤りである。 ウ 被申立人の職員として採用されるためには、国鉄が独自の責任と判 断のもとに作成した名簿に記載される必要があったが、この名簿に記 載されていなかった本件不採用者に対して、設立委員は採用通知を発 する権限はなく、したがって、同人らに対して使用者としての権限を 行使し得る立場にはなかったのであり、被申立人を使用者として救済 を求める余地はない。 エ 申立人らの請求する救済内容は、改革法の手続きによらず本件不採 用者との間に雇用関係を生ぜしめ、かつ、基本計画に定められた採用 人員枠を無視することとなり、また、企業に保障された採用の自由を 侵すものであり、かかる内容の救済命令を発することは、労働委員会 の裁量権を逸脱するものである。 以上、要するに、本件申立ては、使用者に該当しない者を被申立人 としたものであり、かつ、法令上実現することが不可能なことを求め る も の で あ っ て 、 労 働 委 員 会 規 則 第 34条 第 1 項 第 5 号 及 び 第 6 号 に 該 当するので却下されるべきである。 2 当委員会の判断 (1) 被 申 立 人 適 格 ア 改 革 法 第 23条 に 基 づ き 、 本 件 不 採 用 者 ら を 国 鉄 が 承 継 法 人 の 職 員 と なるべき者の名簿に記載せず、設立委員が同人らに対し採用通知を発 しなかったことについて、会社が被申立人としての適格を有するか否 かについて判断する。 (ア) 改 革 法 に 基 づ く 採 用 手 続 ① 前 記 第 1 の 4 の (5)の エ で 認 定 し た と お り 、 承 継 法 人 の 職 員 の 採 用 は 、設 立 委 員 が 承 継 法 人 の 職 員 の 労 働 条 件 及 び 採 用 の 基 準 を 決 定 し た こ と を 受 け て 、国 鉄 が 、承 継 法 人 の 職 員 と な る べ き 者 を 選 定 し 、そ の 名 簿 を 設 立 委 員 に 提 出 し 、名 簿 に 記 載 さ れ た 者 を 対 象に採用通知を発した。 ② 国 鉄 は 、職 員 の 採 用 基 準 に 基 づ き 、国 鉄 職 員 の な か か ら 、承 継 法 人 の 職 員 と な る べ き 者 を 選 定 し た が 、採 用 の 基 準 の 第 3 項 は 職 員 は「 日 本 国 有 鉄 道 在 職 中 の 勤 務 の 状 況 か ら み て 、当 社 の 業 務 に ふ さ わ し い 者 」で あ る こ と と し 、勤 務 の 状 況 に つ い て は「 日 本 国 有 鉄 道 に お け る 既 存 の 資 料 に 基 づ き 、総 合 的 か つ 公 正 に 判 断 」す - 27 - る こ と と さ れ て お り 、そ の「 ふ さ わ し い 者 」の 具 体 的 判 断 基 準 は 国鉄に委ねられている。 ③ 前 記 第 1 の 4 の (3)の イ で 認 定 し た と お り 、 運 輸 大 臣 は 、 国 鉄 が作 成 する 名 簿 に登 載 さ れる 人 数 と設 立 委 員 が採 用 通 知 を発 す る 人 数 は 一 致 す る 旨 の 答 弁 を し て い る が 、 前 記 第 1 の 4 の (5)の エ で 認 定 し た と お り 、設 立 委 員 は 、昭 和 62年 2 月 7 日 国 鉄 か ら 提 出 さ れ た 名 簿 に 記 載 さ れ た 者 を 対 象 に 、同 年 2 月 12日 、全 員 に 採 用 通知を発している。 ④ 前 記 第 1 の 4 の (3)の イ で 認 定 し た と お り 、 採 用 手 続 の お け る 国 鉄 の 立 場 に つ い て 、 運 輸 大 臣 は 、「 設 立 委 員 な ど の 採 用 事 務 を 補 助 す る も の と し て の 立 場 」 で あ り 、「 民 法 に 照 ら し て 言 え ば 準 委 任 」に 近 く 、ど ち ら か と い え ば「 代 行 」と 考 え る べ き 旨 の 答 弁 をしている。 (イ) 国 鉄 と 承 継 法 人 の 実 質 的 関 係 承継法人は、国鉄改革関連法に基づき、国鉄とは法人格を別にす る株式会社として設立された私法人であるが、両者の実質的関係に ついて、以下の事実が認められる。 ① 事業、資産 前 記 第 1 の 4 の (7)の オ で 認 定 し た と お り 、 会 社 は 、 国 鉄 が 経 営 し て い た 九 州 地 域 に お け る 旅 客 鉄 道 事 業 等 を 引 き 継 ぎ 、昭 和 62 年4月1日会社設立と同時に営業を開始していること。 前 記 第 1 の 4 の (7)の ア で 認 定 し た と お り 、 会 社 は 、 国 鉄 か ら 旅客鉄道事業に必要な資産を帳簿価格で引き継ぐこととされてい ること。 鉄道会社法附則第5条によれば、会社には、国鉄の負担により 基 金 が設 けられ、会 社 の経 営 の安 定 を図 るものとされていること。 鉄道会社法附則第5条において、会社の設立に際して発行され る株式は、全部国鉄が引き受けるものとされていること。 ② 会社の役員及び職員 前 記 第 1 の 4 の (7)の ウ で 認 定 し た と お り 、 会 社 の 常 勤 役 員 11 名のうち、その大部分は国鉄出身者が占めていること。 改 革 法 第 23条 の 規 定 に よ り 、 会 社 の 職 員 は す べ て 国 鉄 職 員 か ら 採 用 し 、ま た 、再 就 職 促 進 法 第 20条 に よ れ ば 、会 社 の 設 立 後 の 職 員 の 採 用 に つ い て 、元 職 員 で あ る 清 算 事 業 団 職 員 を 優 先 的 に 採 用 しなければならないと規定されていること。 ③ 会社の労働条件等 改 革 法 第 23条 第 7 項 及 び 前 記 第 1 の 4 の (5)の ウ で 認 定 し た と お り、会 社 採 用 時 の 基 本 給 は、概 ね国 鉄 の 水 準 を 保 障 す る とさ れ 、 会 社 の 職 員 と し て 採 用 さ れ る 者 の 退 職 手 当 に つ い て は 、会 社 を 退 職する時に、国鉄の職員としての在職期間を通算して支給するこ - 28 - と と し 、ま た 、有 給 休 暇 の 付 与 日 数 に つ い て も 、国 鉄 の 勤 続 年 数 を通算することとしていること。 施 行 法 第 29条 第 1項 によれば、国 鉄 が行 った懲 戒 処 分 の結 果 は、 会 社 に 採 用 さ れ た 後 も そ の 効 果 が 継 続 し 、ま だ 行 わ れ て い な い 懲 戒 処 分 に つ い て は 、清 算 事 業 団 の 代 表 者 又 は そ の 委 任 を 受 け た 者 が行うこととされていること。 イ 以 上 の こ と か ら 判 断 す る と 、採 用 手 続 に 関 し て は 、上 記 ア の (ア)で 述 べたとおり、設立委員が承継法人の職員として採用通知を発するにつ いて、設立委員が行うべき採用・不採用の実質的選定を国鉄に代行さ せたものと解するのが相当であり、国鉄が採用手続において行った職 員 選 定 行 為 は、設 立 委 員 自 身 の職 員 選 定 行 為 であるとみるべきである。 そ し て 、 改 革 法 第 23条 第 5 項 は 、 職 員 の 採 用 に つ い て 設 立 委 員 が し た行為は、承継法人がした行為とみなすと規定している。 したがって、国鉄が行った職員選定及び名簿登載行為は、承継法人 の行為とみなすべきである。 また、国鉄と承継法人との関係については、後者は国鉄改革関連法 に よ り 、 前 者 の 事 業 及 び そ の 経 営 形 態 が 分 割 ・民 営 化 さ れ た こ と に 伴 い設立された私法人であり、国鉄とはその法人格を異にしていること は 認 め ら れ る も の の 、 上 記 ア の (イ)で 述 べ た と お り 、 両 者 の 間 に は 、 そ の 事 業 内 容 の 連 続 性 、資 産 の 承 継 関 係 、役 員 及 び 職 員 の 人 的 連 続 性 、 会社の株式の保有関係及び労働条件の継続性が認められ、実質的な同 一性があるものと言わなければならない。 要するに、会社は、本件不採用者との関係において、被申立人適格 を有するものと解するのが相当であって、国鉄が行った会社の職員の 選定及び名簿登載行為に不当労働行為があれば、その責任は会社に帰 属するものである。 (2) 改 革 法 第 23条 と 救 済 命 令 ア 被 申 立 人 は 、 改 革 法 第 23条 の 手 続 に よ ら ず に 、 本 件 不 採 用 者 ら の 採 用を命ずることは、企業に保障されている採用の自由に抵触するもの であり、労 働 委 員 会 の裁 量 権 を逸 脱 する違 法 なものであると主 張 する。 し か し な が ら 本 件 の 場 合 は 、会 社 の 職 員 の 採 用 に つ い て 、改 革 法 第 23 条が、会社の職員となるべき者を国鉄職員に限定し、かつ、会社が成 立した時点において国鉄職員であることとしており、対象者を広く一 般から募集する通常の新規採用とは、その性質を異にするものと言わ なければならない。 ま た 、 国 鉄 と 会 社 の 間 に 実 質 的 同 一 性 が あ る こ と は 、 前 記 2 の (1) のイで判断したとおりである。このような場合において、不当労働行 為があると認められるとき、労働委員会が、その原状回復措置として 救済命令を発することは、労働委員会の裁量権の範囲であり、企業の 採用の自由に抵触するものではない。 - 29 - イ 被 申 立 人 は 、 改 革 法 第 23条 の 手 続 に よ ら な い で 職 員 を 採 用 す る こ と は で き な い の で あ っ て 、 そ れ 以 外 の 方 法 で 採 用 す る こ と は 改 革 法 第 23 条に違反し、法律上実現不可能なものであると主張する。 しかしながら本件の場合は、会社の職員の採用に際し、不当労働行 為 が な か っ た と す れ ば 、 本 件 不 採 用 者 ら は 改 革 法 第 23条 の 採 用 手 続 に 基づいて採用され得るものであり、同人らの採用を命ずる救済は、採 用に関し不利益取扱いがなかったと同じ状態に本件不採用者らを取り 扱えという事実上の取扱いを求めるものであって、不当労働行為の原 状回復措置であるから、改革法の規定に反するものではない。 (3) 本 件 不 採 用 に つ い て ア 不採用行為の不利益性 (ア) 前 記 第 1 の 4 の (8)で 認 定 し た と お り 、本 件 不 採 用 者 ら の 身 分 は 、 再 就 職 促 進 法 が定 める3年 間 に限 定 され、その後 の身 分 については、 特 段 の法 律 上 の規 定 がなく明 確 でないことから、本 件 不 採 用 者 らは、 将来に大きな不安を抱いており、また、同人らに対する再就職のた めの業務も不十分で、大半の時間を自学自習するよう命ずるなど、 実際には放置した状態にあり、本件不採用者らは、精神的な苦痛を 被っている。さらに、収入については、会社の社員と比較して、著 しく低下していることが認められる。 イ 顕著な外形的差別 会社の職員の採用結果については、国労組合員と鉄労及び動労の組 合員並びに九産労の組合員との間に、採用率において次のような顕著 な差別が認められる。 (ア) 前 記 第 1 の 4 の (6)の ア で 認 定 し た と お り 、 所 属 組 合 別 の 採 用 状 況 についてみると、国 労 組 合 員 の採 用 率 が40.3% であったのに対 し、 鉄 労 組 合 員 及 び 動 労 組 合 員 の 採 用 率 は そ れ ぞ れ 99.9% と 99.8% で あ り 、 九 産 労 組 合 員 の 採 用 率 は 90.4% で あ っ た 。 ま た 、 国 労 組 合 員 と しての意識が特に強く団結が強固であった職場においては、その採 用率は一層低かった。 (イ) 前 記 第 1 の 4 の (6)の イ で 認 定 し た と お り 、 国 労 組 合 員 と 国 労 か ら他組合に所属を変えた者の採用状況についてみると、国労から他 組合に所属を変えた者は全員採用された職場があるなど、国労組合 員の採用率は、国労から他組合に所属を変えた者の採用率と比較し て著しく低かった。 (ウ) 前 記 第 1 の 3 の (8)の イ の (ア)で 認 定 し た と お り 、 人 材 活 用 セ ン タ ーに配属された国労組合員で国労所属を変えなかった者の採用状況 についてみると、全員が採用されなかった職場があるなど、国労所 属を変えた者の採用率に比較して著しく低かった。 (エ) 前 記 第 1 の 4 の (6)の ウ で 認 定 し た と お り 、 国 労 役 員 と 、 採 用 通 知がなされる直前に国労所属を変えた国労役員の採用状況について - 30 - み る と 、 国 労 役 員 の 採 用 率 が 48.6% で あ っ た の に 対 し 、 鉄 労 又 は 動 労 に 加 入 し た 者 の 採 用 率 は 100% で あ り 、 九 産 労 に 加 入 し た 者 の 採 用 率 は 85.1% で あ っ た 。 ウ 不当労働行為意思 (ア) 国 鉄 の 国 労 に 対 す る 姿 勢 ① 前 記 第 1 の 3 で 認 定 し た と お り 、国 労 は 、国 鉄 の 分 割・民 営 化 に よ る 国 鉄 改 革 に 終 始 反 対 し 、国 鉄 が 国 鉄 改 革 の 一 貫 と し て 行 っ た 現 場 協 議 制 度 の 是 正 を 含 む 職 場 規 律 の 確 立 、長 年 の 労 使 慣 行 の 是 正 、調 整 3 項 目 、広 域 異 動 と い っ た 提 案 に 対 し 、反 対 な い し 消 極 的 な 態 度 に 固 執 し た た め 、国 鉄 は 、国 労 と の 現 場 協 議 協 約 及 び 雇 用 安 定 協 約 の 継 続 を 拒 否 す る な ど 、労 使 関 係 は 深 刻 な 対 立 の 道 を歩んだ。 前 記 第 1 の 3 の (15)で 認 定 し た と お り 、 現 場 段 階 に お い て は 、 国労を抜けないと採用されないのではないかとの職場雰囲気が醸 成され、意識改革の必要性が強調された。 ま た 、国 労 バ ッ ジ を は ず さ な か っ た 国 労 組 合 員 を 酷 暑 の 中 、桜 島の降灰除去作業をさせるなど、人権侵害の事例もあった。 さ ら に 、 前 記 等 1 の 3 の (8)の イ で 認 定 し た と お り 、 余 剰 人 員 対 策 として設 けられた県 内 の人 材 活 用 センター に国 労 組 合 員 を集 中 的 に 配 置 し 、そ の 配 置 者 の 大 部 分( 99.3% )は 国 労 組 合 員 で 占 め ら れ た 。そ し て 、人 材 活 用 セ ン タ ー で は 、い わ ゆ る 血 の 入 れ か えが行われていたのである。 な お 、全 国 的 に は 、昭 和 62年 11月 に お け る 国 労 組 合 員 の 人 材 活 用 セ ン タ ー へ の 配 属 率 は 、当 時 の 国 労 の 組 織 率 を 上 回 っ て い た 等 の状況が発生している。 そ の 結 果 、前 記 第 1 の 3 の (13)の イ で 認 定 し た と お り 、人 材 活 用センターの設置時期以降、国労組合員の大量の脱退が始まり、 国 鉄 の分 割・民 営 化 直 前 の鹿 児 島 県 支 部 の国 労 組 合 員 数 は、昭 和 61 年 7 月 の 組 合 員 数 の 12% に 激 減 し て い る 。 以 上 の 事 実 に よ れ ば 、国 鉄 は 国 労 を 嫌 悪 し 、国 労 組 合 員 に 雇 用 不安と動揺を与えて国労の弱体化を進めたことが認められる。 (イ) 職 員 管 理 調 書 前 記 第 1 の 4 の (3)の ア で 認 定 し た と お り 、 国 鉄 は 、 承 継 法 人 の 職員となるべき者の選定にあたり、職員の採用の基準第3項の「日 本国有鉄道における既存の資料」として職員管理調書を利用したと 認められるが、この職員管理調書には、次のような問題点がある。 前 記 第 1 の 3 の (9)の ウ で 認 定 し た と お り 、 特 記 事 項 の う ち 労 働 処分について、通告日ベースで記入し、調査対象期間の始期となる 労 働 処 分 を 昭 和 58年 7 月 2 日 付 け で 処 分 通 知 を 行 っ た「 58.3 闘 争 」 としたことは、それ以前に国労とともに活発な組合活動、争議行為 - 31 - を行っていた動労組合員の処分歴を評定の対象から除外することと なり、他方、国労組合員に不利に働くと容易に推測されること、評 定 項 目 の 11「 職 場 の 秩 序 維 持 」、12「 服 装 の 乱 れ 」、13「 指 示 命 令 」、15 「 勤 務 時 間 中 の 組 合 活 動 」及 び 20「 現 状 認 識 」は 、職 場 規 律 の 強 化 ・ 国鉄改革に反対していた国労組合員及び組合役員等の活動家に不利 に働くと推測されることなどである。 エ 不当労働行為の成否 上記アないしウから判断すると、国鉄が本件不採用者らを名簿に登 載しなかった行為は、国鉄の分割・民営化に反対していた国労を嫌悪 し、本件不採用者ら国労組合員を会社の職員の採用手続を利用して、 実質的な整理解雇措置として、国鉄の分割・民営化に賛成していた他 の組 合 に所 属 する組 合 員 と差 別 して行 った不 利 益 取 扱 いであり、かつ、 申立人ら組合の弱体化を図った支配介入であると判断せざるを得ず、 労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。 そして、本件不当労働行為によって生じた責任は、設立委員が国鉄 に代行させていた事情、国鉄と会社の実質的な同一性の事情を考える と 、 会 社 が 負 う べ き こ と は 、 前 記 2 の (1)の イ で 判 断 し た と お り で あ る。 なお、本件申立てに関し、申立人らは、いわゆる大量観察を中心と した立証を行い、別表記載の組合員らが積極的に会社に採用されるべ きであったという個別的立証については、一応の疎明にとどまってい る。 しかし、この点については、被申立人が不採用の理由を明らかにせ ず、審問に出頭して積極的な反論、反証を行わなかった事情のもとで は、やむを得ないと判断する。 3 救済方法 別 表 記 載 の 組 合 員 ら は 、 平 成 2 年 3 月 31日 ま で の 雇 用 は 確 保 さ れ て い る とはいえ、それ以降については、何ら身分上の保障はなく、現状でも極め て不安定な状態に置かれている。 そこで、当委員会は、全員が国労所属を理由になされた不当労働行為に より不採用になったのであるから、最も実効性のある原状回復措置として 主文第1のとおり命ずることとした。 なお、現実問題として、これらの原状回復措置を行えば、会社の設立時 の職 員 定 数 を超 え、新 たな経 営 問 題 を発 生 させるという認 識 もあり得 るが、 これは、今後、会社の責任で解決すべき課題である。 そして、本件不採用者ら個々人の就労すべき職場及び職種については、 会社の発足後の事情等を考慮し、労使間の協議に委ねることが適当である と判断し、主文第2のとおり命ずることとした。 ま た 、 本 件 不 採 用 者 ら が 昭 和 62年 4 月 1 日 以 降 会 社 の 職 員 と し て 就 労 す るまでの間、同人らが受けるはずであった賃金相当額(既に清算事業団か - 32 - ら 支 払 わ れ た 金 額 を 除 く 。)を 会 社 に 支 払 わ せ る こ と が 必 要 で あ る か ら 、主 文第3のとおり命ずることとした。 次に、申立人らは陳謝文の掲示をも求めているが、主文第4をもって足 りると考える。 よ っ て、当 委 員 会 は 、労 働 組 合 法 第 27条 及 び労 働 委 員 会 規 則 第 43条 を 適 用 し 、 主文のとおり命令する。 平成元年5月8日 鹿児島県地方労働委員会 会長 (別表 略、別紙 濱島速夫 略) - 33 -
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