九州大学大学院医学研究院 麻酔・蘇生学教室

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Vol.19 No.1 2015
九州大学大学院医学研究院
麻酔・蘇生学教室
所 在 地 〒812−8582
福岡市東区馬出 3−1−1
公式サイト http://www.med.kyushu-u.ac.jp/kuaccm/
開 講 1962 年
教 授 外 須美夫
講 師 野田 英一郎(救命救急センター、診療講師)、辛島 裕士(医局長)
助 教 瀬戸口 秀一(手術部副部長)、神田橋 忠(メディカル・インフォメーションセンター)、
秋吉 浩三郎(手術部)、東 みどり子、清水 祐紀子(がんセンター)、徳田 賢太郎(集中治療部)、
牧 盾(集中治療部)
、塩川 浩輝(外来医長)、藤吉 哲宏(手術部)
、本山 嘉正(病棟医長)、
宮崎 良平(手術部)、白水 和宏(手術部)
、村上 雅子(特任助教)
そ の 他 研修医 4 名、大学院生 9 名
教室のあゆみ
本教室は、昭和37年に古川哲二初代教授を迎え、
す。
これら多岐にわたる標準および高度先進的外科治療
の約7,000例(平成25年度)を全て麻酔科管理で実施し
7 名のスタッフで開講しました。その後、集中治療部
ています。手術台全20台のうち、毎朝15〜17台のス
の開設(昭和43年)、ペインクリニックの発足(昭和45
タートとなりますが、懸命に働く医員約20名と謙虚に
年)、救急部の設立(昭和52年)と、臨床分野を拡充し
学ぶ研修医数名、そして心優しいスタッフ約10名で対
ていきました。前後して九州圏内の大学および基幹病
応しています。夕方から夜間にかけての延長手術や緊
院に麻酔科開設の中心となる人材を輩出しています。
急手術も多く、昼夜を分かたず、麻酔する喜びに皆打
昭和52年に吉武潤一第 2 代教授、平成 4 年に高橋成輔
ち震えています。
第 3 代教授、平成20年に外須美夫第 4 代教授が就任し、
全20室には室内監視モニターを設置し、患者の生体
現在に至っています。平成24年には開講50周年を迎
情報モニターの情報と共に中央監視室で一覧できる体
え、教室の更なる発展のために医局員一丸となって取
制を整備し、手術室における想定外の事象を複数の眼
り組んでいます。
で監視し、早期発見と迅速な対処に有効活用していま
す。また、当教室は女性医師が多いため、女性医師に
教室の活動
とって働きやすい職場となるように環境整備や人的支
➢臨床活動
九州大学病院は、がん拠点病院として悪性疾患の治
療を行うだけでなく、救命救急センターを有し、ヘリ
コプター搬送を含めた緊急対応を行い、地域の急性期
医療に貢献しています。また、高度先進医療に取り組
み、腎移植を週 2 例、肝移植を週 1 例、心臓移植も年
に 2 例程度行っております。その他、ハイブリッド手
術室( 2 室)を使用して、大動脈ステントグラフト挿入
術
(週に数例)
を行うとともに、経カテーテル的大動脈
弁置換術(TAVI)も始まりました。また、手術支援ロ
ボットを使用した鏡視下手術も積極的に行われていま
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診療風景(外教授によるSGカテーテル挿入)
Front Line
援を積極的に取り入れています。
ペインクリニック外来では、薬物療法を中心に、硬
います。研修医に対する教育にも力を入れており、初
期研修医であっても一人の医師としての自主性と責任
膜外ブロック、末梢神経ブロック、星状神経節ブロッ
感を育むことを重視しています。上級医の指示をただ
ク、トリガーポイント注射などを必要に応じて組み合
実行させるだけの指導は行わず、研修医自身の評価や
わせ、またX線透視下での三叉神経、神経根、交感神
判断を行った上で周術期管理方針を決定するようにし
経節ブロックなども行っています。また高周波熱凝固
ています。後期研修医は、日々の麻酔診療の中で多
療法や高周波パルス療法も積極的に併用しています。
岐にわたる患者の麻酔を豊富に経験するとともに、
患者の心理的背景や社会的背景を評価するように心が
集中治療や救急医療、ペインクリニック、緩和ケアを
け、心療内科やリハビリテーション部とも連携して集
ローテーションし、幅広い視野を持った麻酔科医とし
学的に治療を行っています。緩和ケアにも積極的に関
て成長できるように教育環境を整えています。
与しており、病院内の緩和ケアチームに専従医として
加わり全人的痛みのケアに従事しています。
教室行事
毎朝カンファレンスを開き、日々の症例報告・検討
➢研究活動
臨床研究では日々の疑問から生まれたテーマについ
を行っています。また毎月 1 回の症例検討会と外部講
て研究(循環系や血液凝固系など)を行っています。
師講演、週 1 回の論文抄読会、その他各種講習会・セ
基礎研究では①ラットのin vivo 標本あるいは脊髄スラ
ミナー・勉強会を開催するほか、毎年度末には関連病
イス標本からのパッチクランプ法を用いた麻酔薬の鎮
院を含めた「周術期医療懇話会」を開催しています。
痛作用の検討、②マウス脳梗塞モデルを用いた全身麻
教室の年中行事としては、医局旅行、夏の山登りや
酔薬の脳保護作用に関する検討、③鎮痛薬のTRPチャ
バーベキュー大会、同門会、忘年会、新年会などのほ
ネルに対する作用の検討、④ファルネシルトランスフェ
か毎月 1 回程度、人事異動に合わせた慰労会を開き懇
ラーゼ阻害薬の作用メカニズムの検討、⑤血管平滑筋
親を深めています
細胞を用いた静脈麻酔薬がアンジオテンシンII受容体
やカテコールアミン受容体、もしくはアポトーシスや
細胞の増殖に及ぼす影響の検討、などが現在進行形ま
たは今後の予定となっています。
今後の展望
全国的な麻酔科医不足やフリーランスなど、現在の
我々を取り巻く環境は必ずしも芳しいものではありま
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教育
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せん。その中で当教室は、ただの麻酔屋さんを育てる
のではなく、どこに出しても恥ずかしくないプロフェッ
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毎年医学部 6 年生(今年度は 9 名)をドイツのグーテ
ショナルな麻酔科医を育てる努力を今後も続けていき
ンベルク大学での麻酔科臨床実習( 4 週間)に参加させ
ます。知識や技術に加えて優れた人間性を持つ麻酔科
ており好評を得ています。お陰で麻酔科志望も増えて
医を養成するように努めていきます。
朝のカンファレンス後の集合写真
山登り(久住山)
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