Title Author(s) Citation Issue Date 大阪大学医学部附属病院「手術部」紹介 水谷, 綾子 大阪大学看護学雑誌. 5(1) P.56-P.59 1999-03 Text Version publisher URL http://hdl.handle.net/11094/56669 DOI Rights Osaka University 大阪大学看護学雑誌VoL5No1(1999) 大阪大学医学部 附属病院 「 手術部」紹介 水 谷 綾 子 INTRODUCTIONTONEWSURGICALCENTER A.Mizutani 中央 手 術 部 運 営 部 会 が発 足 し、 現 在 の 手術 部運 営 部 会 に 1.は じめ に 続 く も の とな った。昭 和63年12月 か ら手 術 部 前 部 長 池 田卓 也 助 教 授 の も と、病 院移 転 計 画 が 進行 し、 現 在 の ク 大 阪 大 学 医学 部 附 属 病 院 手 術 部 は、1993年 の病 院移 リ ー ンホ ール 型 手術 部 が平 成5年9月1日 転 に際 し、 日本 国 内 の み な らず 海 外 の最 先 端 の手 術 部 の に オ ープ ン し た。 設 計 と運 営 を参 考 と し、 看 護 業 務 の効 率 化 と手 術 の 安全 3.シ 対 策 強 化 を 目標 にお い て 設計 が な され た。 す な わ ち 、北 ステ ム紹 介 海 道 大 学 の 清 潔 ホ ール シ ス テ ム と、 東 京 大 学 の 搬 送 ロボ ッ トや コ ンテ ナ シス テ ム を参 考 に し、 「 阪大 方 式」とい う べ き コ の字 型 の ク リ ー ン ホ ール シ ス テ ム を構 築 し、 患' 1)ク リー ンホ ール シ ステ ム 手 術 に使 用 した 器械 類 は、 部 内の洗 浄 室 で洗 浄 ・セ ッ ト 者 ・職 員 ・材 料 の動 線 を整 理 す る と と も に、 清 潔 エ リア 化 され た後 、材 料 部 に専用 エ レベ ー ター で 降 ろ され る。材 と非 清 潔 エ リ ア のゾ ー ニ ング を無 理 な く実 現 した(図1)。 料部 で 滅菌 後、 再 び ク リー ンホー ル に搬 送 ロッボ ッ トで搬 こ こで は 、 高 い水 準 の手 術 を安 全 に施 行 す るた め に必 入 され 保 管 され る。 現 在 運 用 され て い る コ ンテ ナ 数 は 約 須 の 手 術 室 環 境 を維 持 し、 高 度 な 技 術 を提 供 す るた め に 450個 、種 類 は 約240種 類 に もお よ ぶ 。ガ ーゼ 類 、縫 合 設 計 さ れ た大 阪 大 学 医 学 部 附 属 病 院手 術 部 の 管 理 運 営 に 糸 、 デ ィス ポ 製 品等 の手 術 用 材 料 もす べ て ク リー ンホ ー つ いて 、そ の 一 部 を を紹 介 す る。 ル で管 理 して い る が、これ らは 約3000種 類 に もお よぶ 。 さ らに、 ク リー ンホー ル では 手術 器械 の展 開 と各 手術 室 へ 2.手 術 部の 沿革 の材 料 の 提 供 が行 わ れ、 ま さ に 当 手術 部 の 中枢 とい え る 。 2)環 境 ガ ス ・微 粒 子 監 視 シ ステ ム 昭和33年 、 そ れ ま で 各 科 毎 に運 営 を して い た 手術 室 手術 室 を含 む 手術 部 全 域 にわ た っ て、 笑気 ・揮 発 性 麻 を 中央 化 し、 全 科 で共 同 使 用 す る こ とが 実 施 さ れ た。 昭 酔 薬 ・ホ ル マ リ ンガ ス ・EOG等 和33年6月1日 量 と、0.3u以 上 の 空 中浮 遊 微 粒 子 数 の連 続 測 定 が行 わ れ 、 初 代 中央 手 術 部 長 小 澤 凱 夫 教授(第 の 医療 ガ ス濃 度 の 残 存 一 外 科)の も と、 中央 手 術 部 の活 動 が 開 始 した 。昭和36 て い る。 測 定値 を表 示 す るモ ニ タ ー を各 手 術 室 と部 長 室 、 年4月 、 文 部 省 か ら大 阪 大学 に手 術 部 の 設 置 と助 教 授 、 婦 長 室 等 に配 置 して あ り、 基 準 値 を越 え た場 合 警 報 を発 助 手 の配 置 増 が 認 め られ 、 名 実 と もに 中央 手術 部 の確 立 し手 術 室 で勤 務 す る者 の安 全 を守 って い る。 をみ た。 昭和45年 度 か ら専 任 部長 が置 か れ る こと とな り、 大阪大学医学部附属病院看護部 一56一 大 阪 大 学看 護 学雑 誌Vo1.5Nol(1999) 3)滅 一 方 向 の 供 給 ・回 収 系 と な っ て い る 菌 水供 給 シ ステ ム 。 部 内 に集 中型 滅 菌 水 製 造 装 置 を設 置 し、2系 統 の配 管 シ ス テ ム を交 互 に使 用 す る こと に よ り、 配 管 の メ ンテ ナ ンス と滅 菌水 供給 経 路 の感 染 防止 を よ り厳 密 に行 え る よ う配 慮 して い る。 製 造 され た滅 菌 水 は部 内12カ 所 の手 洗 い 装 置 と手術 器 械 洗 浄 装 置 に供 給 され て い る。 5)バ イ オ ク リー ン手術 室 ク ラス100の 垂 直 層 流 型 バ イ オ ク リー ン手 術 室 を2 室 有 し、 さ らにバ イ オ ク リー ン手 術 室 が レイ ア ウ トさ れ て い る エ リア 全体 を汎 用清 潔 エ リアか ら アイ ソ レ ー トし て い る。 現 在 、 開心 術 、 腎移 植 術 、 整 形 外 科 のイ ンプ ラ 4)手 術 器 械 コンテ ナ 自動 回収 洗 浄 シ ステ ム ン ト挿 入 手術 、 生体 肝 臓 移 植 等 に使 用 して い る。 手術 器 械 の滅 菌 ・展 開 ・使 用 ・回収 ・洗 浄 ・補 充 と い う一連 の 流 れ を、 密 閉 コ ン テナ にセ ッ トした 形 で 行 う シ ス テ ム で あ る。 各 手 術 室 の直 接 介 助 看 護 婦 は 手 術 終 了後 、 6)物 品管 理 シ ステ ム 手術 用 消耗 品 と薬 剤 の流 れ を総 合 管 理 す る コ ン ピ ュ ー 回収 用 コ ンテ ナ に使 用 後 の器 械 を詰 め、 各 手 術 室 前 の搬 タ ー シ ス テ ム で あ る。約150種 送 ロ ボ ッ トス テ ー シ ョン に コ ンテ ナ を置 き搬 送 ロボ ッ ト 料 表 がセ ッ トされ 、 予 定 手 術 の前 日 には 使 用 予 定 物 品 が を呼 ぶ。 搬 送 ロ ボ ッ トが コ ンテ ナ の 回収 と洗 浄 室 まで の 症 例 ご と に準 備 され る。 手 術 終 了後 に使 用 数 を チ ェ ッ ク 搬 送 を行 い、 洗 浄 室 で は 自動 的 に コ ン テナ 開 封 か ら洗 浄 す る事 で 、 単 に発 注 ・納 入 処 理 や 在 庫管 理 を行 うだ け で 乾 燥 ま で が行 われ る。 高温 に よ る消 毒 行 程 が 組 み 込 まれ な く、 医 事 請 求 用 伝 票 の作 成 、 患 者 別 の 手 術 コ ス ト計 算 てお り、 ス タ ンダ ー ドプ リコー シ ョン を実 現 して い る。 が で き る。 この よ うに、 使 用 前 後 の手 術 器 械 が 交 叉 す る こ とな く、 図1ク リー ンホ ール シ ステ ム 一57一 類 に分 類 され た 術 式 別 材 大 阪 大 学 看護 学 雑 誌VoL5No1(1999) 7)手 術部総合情報 システム 室 内 の 空 気 を廊 下 へ 流 さな い 空調 設 計 を採 用 し、 前 室 に 手 術 オ ー ダ リング 、 術 前患 者 情 報 の収 集 、 手 術 病 歴 デ は 使 用 後 の 器 械 等 を洗 浄 消毒 す る た め の ウ オ シ ャー ス テ ー ター ベ ー ス の整 備 だ け で な く、 ポケ ッ トベ ル の呼 び 出 リ ライ ザ ー が 設 置 され て お り、 手術 部 内へ の 汚 染 の 拡 大 しな ど手 術 部 内 の コ ミ ュ ニ ケー シ ョン支 援 を 目的 に 開発 を防 止 して い る。 され た 。 各 手 術 室 で 術 後 請求 用 術 名 の入 力 が 可 能 で あ り、 5)看 入 力 され た 情 報 は 医 事 担 当事 務 員 にオ ン ライ ンで 伝 達 さ れ 、 業 務 の 簡 素 化 と 医事 請求 漏 れ の防 止 に貢 献 して い る。 護婦勤務体制 変 則2交 代 制 を 採 っ て い る 。 勤 務 時 間 は 日 勤8:30~ 17:00、 夜 勤15:30~9:00で 8)手 術 部 映 像 管 理 シ ス テ ム あ る。 平 日 の 日 勤 は 婦 長 を 含 め25~26名 手 術 室 を含 め部 内 に設 置 され た カ メ ラか ら の映 像 を コ 夜 勤 は 平 日3名 ン トロー ル セ ン ター や 術 中情 報 セ ン ター 、 ラ ウ ン ジな ど 休 日祝 日は2名 、休 日祝 日 は2名 、 で 対 応 し て い る 。月 間 勤 務 表 には 夜 勤 、 日勤 、 ク リー ン ホ ール 、居 残 が 示 され る 。 部 内 の主 要 箇 所 で 見 る こと が で き る。 こ の シス テ ム によ り手 術 の進 行 状 況 を含 め部 内 の状 況 の把 握 が 容 易 に行 え 日勤 業 務 の 概 略 る。 また 、 各 手 術 室 に設 置 され た術 野 用 カ メ ラか ら の映 【日勤 】17~18名(婦 像 は、 看 護 ス タ ッ フ の教 育 に も役 立 って い る。 長 、 ク リー ン ホー ル 担 当 、 居 残 りを除 く) 手 術 の 直 接 介 助 、 間 接 介助 を行 う。 4.管 理 ・運 営 【ク リー ンホ ー ル 】3名 1名 は 副 婦 長2名 1)手 術部 運営部会 を月 単位 で交 代 制 と し、 ス タ ッ フ教 育 と シス テ ム の ス ム ー ズ な運 用 に あ た る。 他 の2名 月1回 、 各 科 運 営 委 員 の 出席 の も と手 術 部 運 営 部 会 が タ ッ フは 手 術 部 経 験3年 以 上 で 手 洗 い 介助(直 開催 され 討 議 、 決 定 、 伝 達 が な され る。 のス 接 介 助) の看 護 婦 指 導 に あた れ る看 護 婦 を1週 間毎 の 交 代 と して い る。 手 術 開 始 前 、 ク リー ンホ ー ル勤 務者 は 直 接 介 助 者 2)職 員 構 成(他 部 か ら の派 遣 を含 む) のガ ウ ン着 用 、 器 械 展 開 等、 手術 準備 の介 助 と指 導 にあ 部 長1名 、 副 部 長1名 、 専 任 教 官3名 、 病 棟 婦 長1名 、 外 来 婦 長1名 、 副 婦 長2名 、 看 護 婦32名 、 看 護 助 手1 た る。 午 後 か らは、 翌 日手術 の コ ンテ ナ、 材 料 、 必 要 物 品 の準 備 、 翌 々 日の 手 術 の滅 菌依 頼 状 況 の 確 認 等 、 手 術 名、 薬 剤 師1名 、 臨 床 工 学技 師3名 、 技 術 員2名 、 レ ン が 日々 ス ム ーズ に進 行 す るた め 、 先 々 の準 備 点 検 が 大 切 トゲ ン技 師2名 、 医事 掛 員1名 、 事 務 職 員2名 。 で あ る6と く に近 年 内 視 鏡 の 増 加 と改 良 に よ るデ ィス ポ 清 掃 業 務 、物 品管 理 は外 注 化 して い る。 製 品 のめ ま ぐ る し い変 化 の 対 応 、 内視 鏡、 ラ ッ ク等 定 数 不 足 に よ る運 用 の方 法 な どク リー ンホ ー ル 勤 務 の副 婦 長 3)手 術 ス ケ ジ ュ ール の 決 定 の役 割 は 大 き い。 手 術 の 申 し込 み は、 各 科 担 当 医 が病 棟 ま たは 外 来 か ら コ ン ピ ュー タ ー 入 力 し た も の を手 術 日2日 前 の午 前11 【 居 残 り】2名 1名 は リー ダ ー で 経 験 年 数 は5年 以 上。 当 日の手 術 の 時 に締 め切 って い る。 そ の後 手 術 部 で 、 手 術 室 ・入 室 時 状 況 に合 わ せ 食 事 交 代 の采 配 、 交 代 要 員 、 緊 急 手 術 の受 間 ・担 当麻 酔 医 ・看 護 婦 を決 定 し、 手 術 予 定 が 確 定 す る。 け入 れ 、 手 術 室 の準 備 、 終 了 手 術 の 洗 浄後 の コ ンテ ナ セ 確 定 した 手 術 予 定 表 は 各 病 棟 、 外 来 で プ リン トア ウ トす ッ ト組 、 翌 日 の手 術 準 備 品 の 点検 、 夜 勤 へ の 申 し継 ぎ後 、 る事 が で き る 。 緊 急 手 術 に 関 して は電 話 に よ る受 付 の後 17時 以 降 夜 勤 者3名 で 手 術 の介 助 が で き る ま で 居 残 っ 入 力 を して い る。 て 介 助 す る。 他 の1名 は 予 定 手 術 の介 助 、 緊 急 手 術 の 介 助 、 手 術 室 4)手 術室 全 部 で18室 の 準 備 、 コ ンテ ナ セ ッ ト組 、 食 事 交 代 要 員 等 、 日々手 術 を有 す る。そ の 内 訳 は、一 般 手 術 室11室 外 来 手 術 ・局 麻 手 術 用 手 術 室3室 、ESWL用 室 、バ イ オ ク リ ー ン手術 室2室 、感 染 症(MRSA、 、 内 容 、 日勤 人 数 に よ り業 務 の 内 容 が 多 少 異 な るが リー ダ ー の 指 示 に よ り手 術 が 円滑 に行 え るよ う に業 務 を行 い、 手 術 室1 17時 結 核 等)対 応 手術 室1室 で あ る。 こ の感 染 症 対 応 手術 室 は 以 降 は 夜 勤 者 のみ で手 術 の 介 助 が 行 え る まで 居 残 っ て 介 助 す る。 一58一 大阪大学看護学雑誌VoL5Nol(1999) 夜 勤 業務 の概 略 リー ダ ー は17時 以 降 の残 って い る手 術6~7件 い時10件 、(多 以 上 の 時 もあ る)を 夜 勤 者 と居 残 り、 お よ び 日勤 者 で 残 っ て も らえ る 人 で 采 配 す る。19時 以降 は 主 に 夜 勤 者 で 手 術 の介 助 、 器 械 の 洗 浄 、 セ ッ ト組 、 手 術 室 準 備 、 緊 急 手 術 等 を 行 う。 朝8時15分 入 室 の患 者2名 は 夜 勤 者 が 受 け る。 5.お わ りに 移 転 後 新 病 院 にお いて ク リー ンホ ー ル シス テ ム を導 入 し、 器 械 ・材 料 の動 線 を変 えた こ と によ り ク リー ンホ ー ル 勤 務 と い う今 ま で未 経 験 の新 し い業 務 が 増 え た 。 こ の シ ス テム の採 用 に よ り間接 介 助 看 護 婦 は 、 以 前 よ り患 者 の介 助 に専 念 す る事 が で き る よ う に な った 反 面 、 ク リー ン ホ ール 看 護 婦 は器 械 展 開 の介 助 の みな らず 、 直 接 介 助 看 護 婦 の指 導 も必 要 とな りそ の 責任 と負 担 は 大 き い。 手 術 用 滅 菌 赫 料 が ク リー ン ホ ール で一 括 管 理 され る よ う に な り、在 庫 数 や滅 菌有 効 期 限 の チ ェ ッ クが 容 易 に行 え る よ うに な っ た。 しか しな が ら、 コ ン テナ シス テ ム の導 入 に よ り器 械 が ク リー ンホ ー ル に滅 菌 保 存 され るた め 、 新 人 に とっ て の 自己 学 習 の機 会 を 設 け る ことが 困 難 にな っ て い る。 ま た 、 本 年度 よ り物 流 管 理 シ ス テム を稼 働 させ た もの の 高 額 な特 定 治 療 材 料 を 多 品 目少量 在 庫 す る手 術 部 の 特性 を反 映 した シ ス テ ム に 成 熟 させ る に は も う少 し 時 間 が必 要 で あ る 。 当手術 部 にお け る 年 間 手 術 件 数 は 約5700件(平 成9 年 度)で あ り、 全 国 の 国 公 立 大 学 附 属病 院 の なか で は最 も多 い。 しか し、 依 然 と して 手 術 部 利 用者 か らは手 術 件 数 増 加 へ の期 待 が 大 きい な か 、 近 年 の 手術 技 術 の 高度 化 、 内 視 鏡 手 術 の増 加 、 デ イ サ ー ジ ャ リー や 移植 医療 へ 向 け て の体 制 作 りな ど、 先 進 医 療 の 担 い手 と して の 責任 を果 た す べ く、 看 護 婦 の勤 務 体 制 、 業 務 効 率 の さ らな る検 討 が 必 要 とな って い る。 一59一
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