平成25年12月号 - JA愛知中央会

農 政 対 策 資 料
平成25年12月
農政をめぐる情勢
目
次
Ⅰ
TPP交渉、年内妥結を断念・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
Ⅱ
平成26年産米の生産数量目標決定・・・・・・・・・・・・・・・7
Ⅲ
農林水産業・地域の活力創造プランを正式決定・・・・・・・・・12
Ⅳ
予算・税制改正をめぐる情勢・・・・・・・・・・・・・・・・・15
(参考)農林水産業・地域の活力創造プラン・・・・・・・・・・・・23
J
A
愛
知
中
央
会
今月号のあらまし
Ⅰ
TPP交渉、年内妥結を断念
12月10日、シンガポールで開かれていたTPP閣僚会合が、閉幕した。
農産物などの関税撤廃や知的財産保護、国有企業との競争条件など難航分野で
の各国の意見の隔たりが埋まらず、10月に合意した年内妥結という目標は実
現できなかった。閉幕後に発表された共同声明には、「残された課題に柔軟性
を持って作業を続け、来月、再び閣僚会合を開く」と明記された。
Ⅱ
平成26年産米の生産数量目標決定
平成 26/27 年の米の需給見通し、平成26年産米における生産数量目標等を
内容とする「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」が11月28日了
承された。11月29日には、国から都道府県別の生産数量目標が示され、愛
知県の生産数量目標は、136,330トン(面積換算値26,890ha)で、
25年産比では、全国平均3.3%減を下回る2.7%減となった。
Ⅲ
農林水産業・地域の活力創造プランを正式決定
政府は12月10日、農林水産業・地域の活力創造本部を開き、農業などの
活性化策をまとめた「農林水産業・地域の活力創造プラン」を正式決定した。
プランでは、①需要拡大、②需要と供給をつなぐ連鎖(バリューチェーン)の
構築、③生産現場の強化、④多面的機能の維持・発揮、の4本柱に政府を挙げ
て取り組むこととし、農業・農村全体の所得倍増を目指すとした。なお、農協
のあり方等については、規制改革会議等での議論を踏まえ、来年6月のプラン
改定時に盛り込まれる見通しとなっている。
Ⅳ
予算・税制改正をめぐる情勢
政府は12月12日、平成25年度補正予算案が閣議決定された。農林水産
関係では総額4,310億円が措置され、農地中間管理機構関連で400億円、
水田フル活用をはじめとする「攻めの農業実践緊急対策」で350億円を確保
するなど、農政改革を前倒しで推進するものとなった。同日には、「平成26
年度予算編成の基本方針」も閣議決定され、「農林水産業・地域の活力創造プ
ラン」を着実に実施する方針が明記された。
また、自民・公明両党は同日、与党税制改正大綱を決定した。JAグループ
の重点要望では、肉用牛免税、農林漁業用経由・A重油に対する石油石炭税の
還付措置などが延長されたほか、相続税納税猶予農地を公共事業の用に供した
場合の利子税の免除が初めて認められた。
Ⅰ
TPP交渉、年内妥結を断念
―
難航分野で、各国の意見の隔たり埋まらず ―
(1)閣僚会合の結果
○
12月10日、シンガポールで開かれていたTPP閣僚会合が、交渉に進展
はあったとしながらも、
「残された課題に柔軟性を持って作業を続け、来月、再
び閣僚会合を開く」とする共同声明(別紙1)を発表し、閉幕した。農産物な
どの関税撤廃や知的財産保護、国有企業と民間企業の競争条件など難航分野で
の各国の意見の隔たりが埋まらず、10月のTPP首脳会合で合意した年内妥
結という目標は実現できなかった。
○
共同声明では「交渉妥結に向けた実質的な進展がみられた。各国は残された
課題の大部分について合意可能な着地点を確認した。残された課題について柔
軟性を持って作業を続ける」としたうえで「参加各国にとって、野心的で包括
的な高い水準の協定は、雇用を創出し、成長を促進し、国民に機会を提供し、
地域統合と多角的貿易体制の強化に貢献するために必要不可欠。このため、今
後数週間にわたって交渉官による集中的な協議を継続し、来月、再び閣僚会合
を開く。」とした。
○
目標だった年内妥結ができなかったのは、来年秋に中間選挙を控え成果を急
ぐはずの米国が、最大のヤマ場とみられた閣僚会合で譲歩しなかったのが最大
の要因とみられる。米国は、知的財産分野などで意見がぶつかる新興国との対
立を解消しきれず、農産物関税や自動車をめぐる日本との協議でも強硬な姿勢
を最後まで変えなかった。妥結を急ぐあまり譲歩を重ね、米議会や業界団体な
ど、国内からの反発を招くことを恐れたとみられる。
○
閉会後の共同記者会見で、甘利TPP担当相の代理として閣僚会合に出席し
た西村内閣府副大臣は、
「合意に至るまでには、まだ作業が必要だが、課題が明
確になり、多くの分野で進展があった。来年1月に顔を合わせて協議しようと
いうことなので、この勢いを失うことなく、さらに議論を深めていく。引き続
き、高いレベルの協定に向けて、日本としても全力で努力したい」と述べた。
○
また、アメリカのフロマン通商代表は、「会合の結果に非常に満足している。
自由化の水準の高い野心的で包括的な協定を達成するため照準を定めることが
でき、目標に向けてさらに一歩近づくことができた」と述べ、会合には成果が
あったと強調した。
1
○
マレーシアのジャヤシリ首席交渉官は、難航している「国有企業と民間企業
の競争条件」を巡る議論について、
「交渉はまだ続いている。私たちの抱く懸念
に対処するため、適切な柔軟性が得られるよう引き続き協議を続ける」と述べ、
今後も慎重に交渉に臨む考えを示した。
○
オーストラリアのロブ貿易・投資相は、「交渉参加国が12か国にも上れば、
交渉全体は困難さを増すものだ。4日間の協議では正しい姿勢が示された。こ
の姿勢を維持することができれば、すばらしい協定となるだろう」と述べた。
ニュージーランドのグローサー貿易相も、
「交渉の勢いは加速している」と述べ
るなど、各国は、交渉が来年にずれこんでも早期の妥結に向けて努力を続ける
姿勢を強調した。
○
次回の閣僚会合は1月下旬で調整されており、1月上旬にも首席交渉官が再
度集まり、閣僚会合に備えて関税など難航分野の論点を整理する見通しである。
来年4月には、オバマ大統領のアジア歴訪が予定されているため、この4月が
妥結に向けた次の節目になるとの見方もある。
○
自民党TPP交渉派遣議員団は10日、関税交渉などの議論が年明けに持ち
越されたことを受けて「これまでと同様、TPP対策委員会を中心に全党挙げ
て国益の確保に全力を尽くす」との声明(別紙2)を発表した。
○
JA全中は10日、萬歳会長の談話(別紙3)を発表した。来年1月に再び
閣僚会合が開かれ、大詰めの交渉が行われることを踏まえ、
「引き続き、自民党
および国会決議が必ず実現されるよう、広範な国民各層との連携を一層深め、
組織の総力を挙げた取り組みをすすめていく」として決議の順守を求める決意
を示した。
(2)JAグループの取り組み経過
○
閣僚会合に先立つ12月3日、JAグループを始めとする農林水産業団体や
消費者団体など9団体は「TPP決議の実現を求める国民集会」を日比谷野外
音楽堂で開催した。農林漁業者や消費者ら3,500人が参加し、重要品目を
関税撤廃対象から除外することなどを求めた国会や自民党の決議を厳守するよ
う求める決議を採択した。集会後には、国会周辺をデモ行進して強い危機感を
アピールした。
2
○
集会の実行委員長を務めたJA全中の萬歳章会長は、重要品目などの「聖域」
を確保できないと判断した場合、交渉からの脱退も辞さないことが衆参農林水
産委員会や自民党の決議に明記されていることを強調し、7日からシンガポー
ルで開かれるTPP閣僚会合では決議を守り、
「国民の信頼を裏切るような結果
をもたらさないよう強く要請する」と述べた。
○
集会終了後、萬歳会長らは国土交通省と内閣府を訪れ、TPP交渉について
緊急要請を行った。衆参農林水産委員会などの決議を守り抜くよう念押しする
とともに、情報開示もできる限り行うよう求めた。太田国交相は「選挙公約は
国民との約束であり、断固として守る。強い姿勢で交渉して実現していく」と
答えた。西村内閣府副大臣は「ぎりぎりの交渉をする中、心して取り組んでい
る」と慎重に対応する考えを示した。
○
萬歳会長は4日にも、林農相と岸田外相に、国会や自民党の決議を守りぬく
よう要請した。林農相は「総理はじめ、内閣一糸乱れず、決議を踏まえて全力
を挙げ臨んでいる」と述べ、岸田外相は「(衆参農林水産委員会などの)決議は
大変重たいものだ。絶対守らなければならない。それを踏まえ、国益を守るた
めに努力している」と述べるなど、両大臣とも決議を踏まえて交渉する考えを
示した。
3
別紙1
環太平洋パートナーシップ参加国閣僚・代表声明
(仮訳)
2013年12月10日
シンガポール
我々、オーストラリア、ブルネイ・ダルサラーム、カナダ、チリ、日本、マレーシ
ア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、ベトナムの閣僚
及び代表は、シンガポールにおいて4日間の閣僚会合を終えたところであり、環太
平洋パートナーシップ協定の完了に向けた実質的な進展が見られた。
この会合の間に、我々は、テキストの主要な残された課題の大部分について潜在的
な「着地点」を特定した。我々は、これらのテキストの課題と市場アクセスの課題
を仕上げるために、柔軟性を持って作業を続ける。
全ての参加国にとって、2011年にホノルルで設定された目標を達成する、野心
的で包括的な高い水準の協定は、雇用を創出し、成長を促進し、各国の国民に機会
を提供し、地域統合と多角的貿易体制の強化に貢献するために必要不可欠である。
したがって、我々は、今後数週間、そのような協定に向けた集中的な作業を継続す
ることに決めた。また、我々は、ステークホルダーとの協議を促進し、自国の政治
プロセスと連携する。
交渉官による追加的な作業に続いて、我々は、来月に再度会合を開催する予定であ
る。
4
別紙2
TPPシンガポール会合の終了に当たっての声明
平成25年12月10日
自由民主党TPP交渉派遣議員団
12月7日からシンガポールにおいて開催されたTPP閣僚会合が、本日終了し
た。
我々は、会合中、政府と密接に連絡を取り合い、国益に適った交渉となるよう後
押しした。
今回の会合において、いくつかの困難な課題について最終の詰めが残ったが、日
本の経済成長だけでなく、アジア・太平洋地域の安定にも寄与する21世紀型の新
しい経済統合に向けて大きく前進した。物品関税交渉については、西村副大臣以下、
政府交渉団が国益を守るために決議を最優先し交渉では一歩も譲らず、決着は持ち
越され、引き続き協議することとなった。我が党は、これまでと同様、TPP対策
委員会を中心に、全党挙げて国益の確保に全力を尽くす決意である。
なお、この際、国益を最大限に実現すべく交渉を行った西村副大臣、政府関係者
の努力に対して、深甚なる敬意を表する。また、交渉参加以来、今会合の直前まで
強力なリーダーシップで政府交渉団を指揮し先頭に立って交渉に当たった甘利大
臣に改めて敬意を表するとともに一日も早い健康回復を祈念する。
5
別紙3
シンガポールTPP閣僚会合に関する全中会長談話
本日、シンガポールで開催されていたTPP閣僚会合が閉会し、今後
も残された課題について協議を続けていくことが確認された。西村副大
臣をはじめとする政府交渉団ならびに交渉を力強く支援した自由民主党
議員団が、昼夜を分かたず強い姿勢で交渉に臨まれたことに敬意を表す
るものである。
TPP交渉は、今後交渉官による集中的な協議を経て、来月再び閣僚
会合が開催されることになった。TPP交渉は、妥結に向けた山場の交
渉が今後も重ねられ、厳しい局面が続く状況に変わりはなく、JAグル
ープは、引き続き、自民党および国会決議が必ず実現されるよう、広範
な国民各層との連携を一層深め、組織の総力を挙げた取り組みをすすめ
ていく。
JAグループは、担い手づくり、農商工連携・6次産業化など所得増
大に向けた販売力強化の実践などにより、持続可能な農業を実現し、消
費者・国民との信頼に基づき、安全・安心な農畜産物を安定的に供給す
るという我々の責務を果たし、全力で取り組んでいく所存である。
平成25年12月10日
全国農業協同組合中央会
会
6
長
萬 歳
章
Ⅱ
平成26年産米の生産数量目標決定
― 愛知県は対前年比 2.7%減の 136,330 トン、面積換算 26,890ha ―
(1)25/26 年の需給見直し
○
農水省は、11月28日に「食料・農業・農村政策審議会食糧部会」を開催し、
26年産米の生産数量目標を含めた「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指
針」の改定について審議し、了承を得た。
○
基本指針では、25年6月末の民間在庫量を224万トンに確定させたうえで、
作況102となった25年産の生産量818万トンを積み上げ、25/26 年の供給
量を1,042万トンと見込む。これに対し需要量は、平成 24/25 年の需要実
績を781万トンで確定したうえで、トレンド(回帰式)により、25/26 年の需
要見通しを787万トン、26/27 年の需要見通しを778万トンとした。この結
果、26年6月末の民間在庫量は、近年で最も多い255万トンになると見通し
ている。
◆
平成 25/26 年の主食用米等の需給見通し
(単位:万トン)
主食用米等
平成25年6月末民間在庫量
A
224
平成25年産主食用米等生産量
B
818
C=A+B
1,042
D
787
E=C-D
255
平成 25/26 年主食用米等供給量計
平成 25/26 年主食用米等需要量
平成26年6月末民間在庫量
○
なお、需給見通しの注釈として、
「平成 25/26 年の需給状況からみて、販売の
見込みが立たなくなった主食用米が、需要が期待できる加工用米、飼料用等に販
売されることが想定される」としている。
(2)26年産米の生産数量目標
○
26年産米の全国の生産数量目標は、昨年の需要実績が当初の見通しである
799万トンより18万トン減少したことや、近年のトレンドにおいて需要が毎
年8万トン減少していることを勘案し、25年産米より26万トン(18万トン
+8万トン)減の765万トンと設定した(前年比3.3%減)。
7
○
都道府県別の生産数量目標については、昨年度同様に、各都道府県の6中4の
需要実績の平均値を基本に、一定の配慮措置(①作付面積が生産数量目標(面積
換算値)を下回った実績、②県間調整による生産数量目標の減少、③過去政府に
売り渡され備蓄米となっている数量(18・19・21 年産)、④東日本大震災に伴う
県間調整)を行っている。
○
こうした考え方により、農水省は、11月29日に都道府県別の生産数量目標
を公表した。(別紙1参照)。本県に対しては、前年産から3,800トン減の
136,330トンが通知された。本県の生産数量目標は、全国平均3.3%減
を下回る2.7%減となった。なお、面積換算では750ha減の26,890
haとなる。
○
また、県内の市町村別の生産数量目標は、平成25年12月16日、愛知県米
需給調整推進会議において、別紙2のとおり決定された。
(3)酒造好適米の運用見直し
○
農水省は、26年産米より、酒造メーカー等における清酒の需要増等に対応し
た酒造好適米の増産分は、主食用米の生産数量目標の増減に左右されることなく、
その枠外で生産できる運用見直しを行うこととしている。
○
なお、需要増に対応した増産かどうかは、酒造メーカーの25年度における酒
造好適米の使用実績との比較により確認することとし、増加分については、新規
需要米として扱うこととしている。
◆ 生産数量目標の枠外となる対象範囲のイメージ
当年度における酒造好適米
の計画使用量
酒造メーカー A
酒造メーカー B
酒造メーカー C
基準年(H25 年度で固定)
【H25.7~H26.6】における
酒造好適米の使用実績
清酒生産量の増、特定名称酒の生産割合
の増等に対応した酒造好適米の使用量の
増加分
生産数量目標の枠内
26 年産米より生産数量目標の枠外とできる
8
別紙1
9
別紙2
平成26年産米の市町村別の生産数量目標
(単位:トン、ha)
市町村名
生産数量目標
a=b+c
主食用
面積換算値
種子用・学校
b
田等
c
名古屋市
2,718
533
2,718
-
一宮市
4,635
978
4,532
103
瀬戸市
644
131
644
-
春日井市
1,213
241
1,206
7
犬山市
1,962
426
1,962
-
江南市
295
66
295
-
小牧市
1,670
330
1,670
-
稲沢市
4,863
1,012
4,859
4
尾張旭市
178
36
178
-
岩倉市
513
107
513
-
豊明市
1,137
225
1,137
-
日進市
1,257
249
1,257
-
清須市
402
83
402
-
北名古屋市
887
180
887
-
長久手市
476
96
453
23
東郷町
1,076
212
1,069
7
豊山町
206
42
206
-
大口町
857
180
857
-
扶桑町
280
62
280
-
津島市
2,243
436
2,243
-
愛西市
6,347
1,272
6,344
3
弥富市
6,072
1,155
6,072
-
あま市
2,106
417
2,106
-
大治町
281
56
281
-
蟹江町
680
133
680
-
飛島村
2,230
427
2,230
-
半田市
1,497
288
1,489
8
常滑市
2,514
475
2,514
-
東海市
810
158
810
-
10
市町村名
生産数量目標
a=b+c
主食用
面積換算値
種子用・学校
b
田等
c
大府市
919
179
919
-
知多市
1,415
270
1,415
-
阿久比町
1,449
276
1,449
-
東浦町
1,611
306
1,611
-
583
113
583
-
美浜町
1,666
322
1,666
-
武豊町
737
142
737
-
岡崎市
8,255
1,573
8,189
66
碧南市
1,662
320
1,662
-
刈谷市
4,244
814
4,244
-
安城市
10,137
1,924
9,832
305
西尾市
11,300
2,174
11,230
70
知立市
1,394
268
1,394
-
高浜市
736
141
736
-
幸田町
2,581
501
2,548
33
豊田市
14,057
2,806
14,014
43
みよし市
1,382
275
1,382
-
新城市
5,007
998
4,930
77
設楽町
1,114
223
1,114
-
東栄町
174
36
174
-
豊根村
82
19
82
-
豊橋市
7,366
1,453
7,366
-
豊川市
4,126
822
4,126
-
蒲郡市
188
39
188
-
田原市
4,096
838
4,096
-
135,581
749
南知多町
県計
136,330
26,838
(26,890)
※ 面積換算値は、市町村別の各年産米の生産数量目標を、配分基準単収で除して算定。
県計値は市町村の積み上げ数値であり、国から県への配分面積 26,890ha を下回っている。
11
Ⅲ
農林水産業・地域の活力創造プランを正式決定
―
○
首相「農政の大改革を実現していく」
―
政府は12月10日、農林水産業・地域の活力創造本部(本部長=安倍晋三首
相)を開き、農業などの活性化策をまとめた「農林水産業・地域の活力創造プラ
ン」を正式決定した。これは、今後10年程度を見据えた農林水産政策改革のグ
ランドデザインとなるもので、目標として農業・農村全体の所得倍増を掲げた。
○
同日の本部で安倍首相は「農業や農村全体の所得を今後10年間で倍増させる
ことを目指し、輸出の促進による新たな需要の拡大や農地集積による生産性の向
上を進め、40年以上続いてきた生産調整を見直していく。このプランを着実に
実行し、農政の大改革を実現していく」と強調した。また、関係府省の閣僚らは
食育、輸出、食品表示、鳥獣害対策などで連携し、プランを着実に実行していく
決意を示した。
○
プランでは、①需要拡大、②需要と供給をつなぐ連鎖(バリューチェーン)の
構築、③生産現場の強化、④多面的機能の維持・発揮、の4本柱に政府を挙げて
取り組むこととし、強い農林水産業と活力ある農山漁村を実現することを目指す
ため、項目ごとに数値目標や具体的施策を示した。
○ 「需要拡大」では、輸出促進の他、加工・業務用野菜の生産、学校給食向け供
給など国内の需要拡大を目指すとした。
○ 「需要と供給をつなぐ連鎖(バリューチェーン)の構築」では、6次産業化の
ための異業種との連携を後押しし、関連市場の規模を10兆円に拡大するとした
ほか、農協の果たす役割の重要性に言及した。
○ 「生産現場の強化」では、新設する農地中間管理機構(農地集積バンク)によ
り担い手へ農地集積を進めること、および、経営所得安定対策の見直しにおいて
は、麦や大豆、飼料用米の本作化による水田フル活用を進め生産調整の見直しな
どの改革を目指すとした。
○
「多面的機能の維持・発揮」では、農業の成長産業化を目指す施策とは別に、
地域政策の核として日本型直接支払制度(多面的機能支払い)を創設するほか、
農山漁村活性化のために、福祉、教育、観光など、地域の資源を生かした分野と
の連携を進めるとした。
12
○
こうしたプランの方向性を踏まえ、農水省は平成26年度末をめどに、食料・
農業・農村基本計画の改訂に着手する。また、農協のあり方等について引き続き
協議を進める規制改革会議、産業競争力会議での議論を踏まえ、来年6月を目途
に、「農林水産業・地域の活力創造本部」において、プランの改訂を行うとして
いる。
13
資料1
14
Ⅳ
予算・税制改正をめぐる情勢
(1)平成25年度補正予算
○
政府は、12月12日臨時閣議を開き、来年4月の消費税率の引上げに備えた
経済対策を盛り込んだ総額5兆5,000億円の平成25年度補正予算案を決定
した。
○
経済対策の実行にともなう国費として、東京オリンピックに向けたインフラ整
備など「競争力強化策」に1兆4,000億円、「女性・若者・高齢者・障害者
向け施策」に3,000億円、「復興、防災・安全対策の加速」に3兆1,000
億円、消費税率引き上げに伴う「低所得者や子育て世帯への影響緩和策」などに
6,500億円が盛り込まれた。財源は、税収の上振れ分や、剰余金などで確保
できることから、国債の追加発行は行われない。
○
農林水産関係は総額4,310億円、うち公共は1,728億円、非公共は
2,582億円が措置された。農地中間管理機構関連で400億円、水田フル活
用をはじめとする「攻めの農業実践緊急対策」で350億円を確保するなど、農
政改革を前倒しで推進するものとなった。このほか、輸出対応型の施設整備
195億円、配合飼料価格の高騰に伴う異常補てん財源の確保110億円等が盛
り込まれた。
また、24年度補正予算で措置された燃油価格高騰対策、鳥獣被害防止緊急捕
獲等対策の26年度までの期限延長が盛り込まれた。(別紙1)
○
補正予算は、年明けの通常国会冒頭で審議され、可決成立後、予算執行される
ことになる。
15
別紙1
平成25年度農林水産関係補正予算の主要事項
総
額
公
4,310億円
共:1,728億円
非公共:2,582億円
○ 農地中間管理機構による集積・集約化活動【400億円】
・農地中間管理機構の設立準備及び機構の運営、農地の出し手に対する協力金の
交付、農地情報の電子化等を支援
○ 攻めの農業実践緊急対策【350億円】
・水田フル活用に資する低コスト生産のための高効率機械の導入や施設の機能向
上、効率的流通加工体制づくりのための施設の合理化、高収益作物への転換等
を支援
○ 次世代施設園芸導入加速化支援事業【30億円】
・実需者・生産者等が連携し、施設の大規模な集約化によるコスト削減や周年・
計画生産等の取組を支援
○ 加工・業務用野菜生産基盤強化事業【10億円】
・輸入が多い加工・業務用野菜への転換を推進する産地に対し、安定生産に必要
な土壌・土層改良等を支援
○ 経営体育成支援事業【7億円】
・地域の中心経営体等に対し、農業用機械・施設等の導入を支援
○ 攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業【100億円】
・低コスト生産・高収益農業を実現する革新的な技術体系の実証や、民間企業等
による事業化に向けた研究及び異分野と融合した共同研究を支援
○ 6次産業化ネットワーク活動整備交付金【20億円】
・農林漁業者等が地域の多様な事業者と連携して取り組む加工・販売に必要な機
械・施設等の整備を支援
16
○ 輸出対応型施設の整備【195億円】(一部公共)
・輸出先国のHACCP基準等を満たすための水産加工・流通施設の改修や漁港
施設の整備、高品質な農水産物の輸出に資する卸売市場の整備や輸出青果物の
長期保存が可能な低温貯蔵施設等の整備を支援
○ 水田フル活用実践緊急対策【282億円】
・水田における低コスト生産のための高効率機械の導入や施設の機能向上、飼料
用米等を利用・保管する機械等の導入を支援するため、攻めの農業実践緊急対
策(水田見合分230億円(再掲))、畜産収益力向上緊急支援リース事業(飼
料用米等見合分52億円)
○ 配合飼料価格高騰緊急対策【110億円】
・配合飼料価格の高騰に伴う畜産農家に対する異常補てん財源を確保するととも
に、畜産農家に対する融資の無担保・無保証人化枠を拡大
○ 施設園芸に係る燃油価格高騰対策(事業期限延長)24 年度補正 425 億円
・施設園芸に係る燃油価格高騰時の補てん金の交付等を行う燃油価格高騰緊急対
策について、26年度まで1年間延長
○ 畜産収益力向上緊急支援リース事業【70億円】
・飼料用米の円滑な生産等を推進するため、その利用・保管に係る機械等の導入
や、その他畜産振興に必要な機械等のリースを支援
○ 鳥獣被害防止総合対策交付金【30億円】
・ICTを活用した捕獲新技術の実証、処理加工施設及び捕獲技術高度化施設の
整備を支援
○ 鳥獣被害防止緊急捕獲等対策(事業期限延長)
24 年度補正 129 億円
・鳥獣捕獲者に対し頭数に応じて捕獲活動経費の助成等を行う鳥獣被害防止緊急
捕獲等対策について、26年度まで1年間延長
○ 新規就農・経営継承総合支援事業【99億円】
・就農前後の青年就農者・経営継承者への給付金の給付、雇用就農を促進するた
めの農業法人での実践研修等への支援
17
(2)26年度予算編成の基本方針
○
政府は12月12日、「平成26年度予算編成の基本方針」を閣議決定した。
経済再生と財政健全化を両立させるため、「聖域なく予算を抜本的に見直したう
えで、経済成長に資する施策に重点化を図る」と強調し、税収で政策経費をどれ
だけ賄っているかを示す「基礎的財政収支」について「4兆円を上回る改善を図
る」と明記した。
○
農林水産関係では、政府・自民党が策定した「農林水産業・地域の活力創造プ
ラン」を着実に実施する方針を明記し、「今後10年間で農業・農村の所得を倍
増させる目標の実現を目指す」とした。
平成26年度予算編成の基本方針(抜粋)
Ⅱ 強い日本、強い経済、豊かで安全・安心な生活の実現
4.地域活性化・都市再生、農林水産業・中小企業等の再生、地方分権
(2)農林水産業・地域の活力創造
「農林水産業・地域の活力創造プラン」を着実に実施し、今後10年間で
農業・農村の所得を倍増させる目標の実現を目指す。
担い手への農地集積・集約化を進める農地中間管理機構の整備、新規就農
者の確保、経営所得安定対策と米の生産調整の見直し、食料自給率・自給力
の向上に向けた水田のフル活用、生産基盤の整備などの生産現場の強化を図
り、農業の競争力強化を進める。
食の安全と消費者の信頼確保を前提に、農商工連携等による6次産業化や
新技術を活用した強みのある農畜産物の創出や生産振興、輸出促進、日本食・
食文化の国内外での拡大、食産業の海外展開等を推進する。
森林が温室効果ガス吸収源としての役割を果たしていることも踏まえ、新
たな木材需要の創出や国産材の安定的・効率的な供給体制の構築等を推進す
るとともに、国産水産物の消費・輸出拡大、収益性の高い持続可能な漁船漁
業・養殖業の実現に不可欠な基盤整備等に取り組む。
こうした取組により「強い農林水産業」を実現するとともに、農業・農村
の有する多面的機能の維持・発揮を図るための新たな直接支払制度の創設や、
都市と農山漁村の教育交流など活力ある農山漁村の構築に関する施策を通じ
て、「美しく伝統ある農山漁村」を創り上げる。
18
○
26年度予算は、農地中間管理機構の創設や経営所得安定対策と米の生産調整
の見直し、日本型直接支払の創設など、生産現場の強化を図り、農業の競争力強
化を進めるための新たな農業政策を実行する最初の予算であることから、予算総
額の増額など万全な予算確保が求められる。
○
このような情勢の下、JAグループは、12月17日に、東京の憲政記念館に
おいて、年末の予算編成等における農業関係予算総額の確保、経営所得安定対策
の見直しに伴う関連予算の拡充等に向けて、「26年度農業関係予算対策全国代
表者集会」を開催した。
○
本集会には、JAグループ愛知からも、倉内中央会会長ほかJA常勤役員等8
名が出席するとともに、同日、議員会館において、県選出の自民党国会議員に対
して26年度農業関係予算に関する要請(別紙2)を行った。
19
別紙2
平成26年度農業関係予算に関する要請
政府・与党は、農地中間管理機構の創設や経営所得安定対策の見直しなどを踏
まえて、農林水産業・地域の活力創造プランを策定した。
今後、このプランに基づき、農業者の所得増大や食料自給率・自給力の向上を
図るためには、地域実態を踏まえた政策の確立と万全な予算の確保が必要である。
特に、26年度予算においては、農業関係予算の増額と経営所得安定対策等の見
直しに伴う関連予算の拡充が不可欠である。
ついては、26年度予算編成にあたって、農業関係予算の大幅な増額が図られ
ることを強く要請する。特に、下記事項については、特段のご配慮をお願いする。
(1)多面的機能支払いの創設にあたっては、安定した仕組みとなるよう法制化す
るとともに、生産現場で取組み易く、わかり易い仕組みとするとともに、県・
市町村財政の実態を踏まえ、国費で負担すること。
(2)新たな水田農業政策の展開のためには、水田フル活用や地域の担い手づくり
などについて、ブロックローテーションや作付地の集団化など、これまでの産
地での取組みを損なうことなく、現場での円滑な対応が図られるよう推進する
ことが必要であり、地域の実情や取組みに応じて地域の裁量で活用可能な産地
交付金の大幅な増額等、万全な予算の確保を図ること。
(3)飼料用米については、長期的・計画的な安定供給、全国的な保管・流通体制
の整備等、飼料用米の使用拡大に必要な生産・流通・製造体制の構築を図るこ
と。また、配合飼料価格の高騰に対応して、配合飼料価格安定制度については、
十分な予算を確保するとともに、制度の強化を図ること。
平成25年12月17日
J A グ ル ー プ 愛 知
20
(3)与党税制改正大綱決まる
○
自民、公明両党は12月12日、26年度与党税制改正大綱を決定した。軽自
動車税の増税や給与所得控除の縮小など家計関連の増税が目立つ一方、復興特別
法人税の前倒し廃止など、個人に厳しく企業に優しい税制改正となった。消費税
の軽減税率は「税率10%時に導入する」と明記されたが、対象品目や財源の手
当てなど詳細は検討を続け、26年12月までに結論を得るとした。
○
農業関係の税制では、農林漁業用A重油に対する石油石炭税の免税・還付措置
の3年延長、肉用牛売却による農業所得の課税特例も3年延長とした。また、相
続税納税猶予農地を公共事業の用に供した場合の利子税の免除が7年間という
時限措置ながら初めて認められた。
○
重点要望事項とした農地中間管理機構の整備に伴う課税の特例措置創設に関
しては、機構が取得する農地の登記に必要な登録免許税を減税するほか、出し手
が機構に農地を貸し付けた場合の相続税などの納税猶予を継続するとした。一方、
機構に農地を貸し出す場合の固定資産税の免税措置は検討事項となった。農水省
は機構に農地を貸し出す動機付けにつながるメリットとして要求したが、総務省
は保有し続ける場合に課税を強化することで農地を貸し出す動機付けにする手
法もあるとの考えを示したため、両省で折り合いがつかず、
「総合的に検討する」
こととなった。
○
なお、軽自動車税は27年4月以降に自家用乗用車の新車を購入する場合、現
行の1.5倍とするが、「農業者らの負担を考慮」することを明記し、農家が使
う自家用・貨物用の軽トラックは1.25倍に抑えるとした。
○
このほかの、主な要望事項の取り扱いについては、次頁のとおりとなった。
21
JAグループの主要な要望事項の結果
税目
所得税
法人税
個人住民税
相続税・贈与税
エネルギー関係
諸税
その他
要望事項
肉用牛の売却による農業所得の課税の特例措置の3
年延長
農業経営基盤強化準備金制度における対象交付金の
見直し
相続税等の納税猶予を受けた農地を公共事業の用に
供するために譲渡した者に対する利子税の免除
都市農地が公共収用等のために譲渡される場合の相
続税納税猶予等の継続措置の拡充
農林漁業用軽油に対する石油石炭税(地球温暖化対策
のための課税の特例による上乗せ分)の還付措置の延
長
農林漁業用A重油に対する石油石炭税(地球温暖化対
策のための課税の特例による上乗せ分を含む)の免
税・還付措置の延長
農地中間管理機構(仮称)の整備に伴う課税の特例措
置の創設等
最終案
○
(3年)
○
26 年度予算分
○
7年
○
・出し手が農地を機構に譲渡した場合に課税される
所得税及び法人税の特別控除の拡充等
・出し手が機構に農地を貸し付けた場合の相続税・
贈与税の納税猶予の継続
・機構が購入する農地の登記に係る登録免許税の減
税措置の創設
・農地中間管理機構(仮称)に貸し付けられた農地
に係る固定資産税・都市計画税の非課税措置の創
設
○
800 万特別控除
○
22
○
3年
○
3年
○
△
△
総合的に検討
Plan-Do-Check-Action
農 政 を め ぐ る 情 勢
平成25年12月24日
編集・発行
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