回転型風力発電出力安定化装置による 周波数品質改善の検討

回転型風力発電出力安定化装置による
周波数品質改善の検討
E98023
1.
江崎
公太
はじめに
指導教員
藤田
吾郎
たため,B 系統に関するデータは省略した。
従来の風力発電施設(ウィンドファーム)では系
次に,シミュレーション結果の例を示す。図 3
統への周波数偏差の増大等の悪影響を抑えるため
は負荷変動 (標準偏差),図 4 は風力の変動を考慮
に高電圧用半導体素子を用いた DC リンク方式の
したウィンドファームの出力電力 (平均値
[1]
出力安定化装置が採用されてきた 。しかし,この
0.5P[MW], 標準偏差) である。図 5・6 はそれぞれ
方式は安定化装置のコストが高くなってしまい,
提案する回転型出力安定化装置を導入しない場合
ウィンドファーム建設の際に多少なりともマイナ
と導入した場合の系統周波数偏差である。
スの影響を与えていた。そこで本稿では,DC リン
図 5・6 を見れば判るように,明らかに回転型周
ク方式と異なる新たな安定化装置である,「回転型
波数安定化装置を導入した場合の方が,周波数の
[2]
出力安定化装置」 の実用化に向け,計算機シミュ
変動が抑制されている。また,系統周波数偏差の
レーションを行ない,実際の系統に導入した際の
標準偏差値を見ると,未導入時は約 0.055[Hz],導
系統周波数変動等の改善効果を検討する。
入時は約 0.0073[Hz]となり数値の上からも周波数
変動が抑えられていることが判る。
2.
システム構成
提案する回転型出力安定化装置の構造の概要を
図1に示す。本装置は風力発電機において発電さ
れた電力を同期電動機によって回転エネルギに変
換し,それを可変速機によって電力に逆変換を行
う。この際,同期電動機の入力と回転速度,可変
速機の出力を制御装置の入力信号とし,可変速機
の二次巻線電圧を制御する事によって出力の安定
化を図り,系統の周波数変動等を実用上問題のな
い程度まで低減させる。
3.
検討結果
図1
回転型出力安定化装置の構成
本研究では MATLAB と SIMULINK を用いた。図
2 が検討に用いたモデルで,これは A・B の 2 系統
が直流連系で接続されたモデルとなっている。A
系統には表 1 に示す設備が含まれている。また,
風力発電機は A 系統にのみ接続されている。
本モデルでは周波数は 50[Hz]を基準とし,周波数
偏差は pu 値を用いて表している (図 2)。ただし,
以下の検討例は直流連系を行わないケースを扱っ
表1
A 系統内各定格容量
設備
負荷容量
LFC 対象火力機
LFC 対象水力機
LFC 非対象機
風力発電機出力
容量[MW]
5000
1750
1300
1700
500
まとめ
4.
参考文献
今回の検討では単純化したモデルでシミュレー
「分散型電源技術と電力系統の将来展望」, 電気協同
[1]
ションを行ったが,今後は,風力発電機出力・負
研究, Vol.56, No.4, pp.37-47, 2001
荷変動の現実に近いモデルの作成・系統モデルの
小松貴彦, 小柳薫, 舟橋俊久, 奈良秀隆, 藤田吾郎, 柿
[2]
精密化・他系統との連系の考慮などさらに精密な
本哲郎, 「ウィンドファーム向け回転型系統連系装置
モデルを作成し,回転型出力安定化装置の実用化
の適用検討」, 電力技術・電力系統技術合同研究会資
に向けて各種解析を行う予定である。
料, PE-00-38, PSE-00-43, 2000
Load
P
winP
WindGen.
Pgen
Ptransfer
winP/Aload
WinOut
Aload
wgrid
P
Load
Wconv
Terminator
Randam Load A
Rotary Frequency
Converter
Randam Load
50
frequency
1
Freq.
M_Out
10s+1
System A
delta_omega1
Gen. Out
delta_omega1
HVDCP/Aload
delta_Tm1
OvserverOut
Demux
Out
delta_omega2
delta_omega2
ObErr
Saturation
HVDC Power
HVDCP/Bload
delta_Tm2
OBSERVER
HVDC Controler
1
Freq.
M_Out
10s+1
System B
Bload
P
Load
Red System A
Blue System B
Cyan Wind Gen.
Magenda HVDC
Randam Load B
図2
検討用モデル
1.001
0.2
0.15
周波数偏差(A系統)[Hz]
1.0006
1.0004
1.0002
1
0.9998
0.9996
0.1
0.05
0
-0.05
-0.1
0.9994
-0.15
0.9992
0.999
1000
1500
2000
図3
2500
時間[sec]
3000
3500
-0.2
1000
4000
負荷変動
図5
0.2
0.15
周波数偏差(A系統)[Hz]
0.8
0.75
0.7
WF出力[puMW]
負荷変動(A系統)[puMW]
1.0008
0.65
0.6
0.55
0.5
2000
2500
時間[sec]
3000
3500
4000
周波数変動(安定化装置なし)
0.1
0.05
0
-0.05
-0.1
0.45
0.4
1000
1500
-0.15
1500
図4
2000
2500
時間[sec]
3000
ウィンドファーム出力
3500
4000
-0.2
1000
図6
1500
2000
2500
時間[sec]
3000
3500
周波数変動(安定化装置有り)
4000