13 中 国 税 理 士 会 報 2015年 5 月10日(No.616) 判決・裁決紹介 法人税 (子会社株式の低額取得による受贈益/措置法42条の 6 における機械装置該当性) ①本件株式の譲受価額は、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式により計算 した株式の時価より低いことから、その差額は、受贈益の額として益金の額に算入す べきである、②水処理施設構築物は、本件機械設備とは機能・用途が異なり、社会通 念上一つの効用とはいえないため、機械設備の一部とは認められないとされた事例、 ③経費が計上漏れであるという請求人の主張に対し、債務確定主義により計算すると 一部は損金の額に算入すべきであるとして原処分の一部が取り消された事例(①平成 ₁₉年₁2月 ₁ 日から平成22年₁₁月30日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び過少 申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し・平26-06-02裁決) 【熊裁(法)平25-₁6】 【情報公開法第 ₉ 条第 ₁ 項による開示情報】 概 要 〔裁 決 の 要 旨〕 たのに対し、原処分の全部 とも認められ、本件株式の 又は一部の取消しを求めた 価額を併用方式により計算 事案である。 すると、 1 株当たり182,463 2 本件株式は、証券取引所 円となる。したがって、原 1 本件は、審査請求人が、 に上場されておらず、その 処分庁が認定した本件株式 ①請求人の役員及び従業員 気配相場もなく、第三者間 1 株当たりの価額182,463 から、請求人の子会社の発 における適正な取引価額も 円は、株式譲受けの時点に 行済株式総数の約50%の株 ないことから、いわゆる上 おける本件株式の適正な価 式を取得したこと、②取得 場有価証券等以外の株式で 額(時価)であると認めら した資産を、租税特別措置 ある。法人税基本通達 4 - れる。 法第42条の 6 第 1 項第 1 号 1 - 6 は、本件株式のよう ₃ 資産の低額譲受けがあっ に規定する特別償却の対象 に、株式を保有する法人が た場合においても、時価と としたことなどに関し、原 評価対象会社にとって評価 その対価の額との差額部分 処分庁が、①子会社の株式 通達188( 2 )に定める「中 については、無償による資 の取得価額は適正価額に比 心的な同族株主」に該当す 産の譲受けと同様に、その べて低額であるから、取得 るときは、当該株式は評価 差額は、収益の額として当 価額と適正価額との差額は 対象会社が「小会社」に該 該事業年度の益金の額に算 受贈益として益金の額に算 当するものとして、評価通 入すべきものと解されると 入すべきであり、②請求人 達の例によって評価するこ ころ、 本件株式譲受けの が取得した資産の一部は構 とを認めている。そうする 時点における本件株式の適 築物に該当するから措置法 と、評価通達179( 3 )に 正な価額(時価)は 1 株当 第42条の 6 第 1 項第 1 号の おいて、類似業種比準方式 たり182,463円であり、 本 要件を満たさないなどとし と純資産価額方式の併用方 件株式譲受けにおける 1 株 て法人税の更正処分等をし 式による評価を選択するこ 50,000円の額は時価より低 14 中 国 税 理 士 会 報 2015年 5 月10日(No.616) いことから、その差額は、 備は、ポンプ、散気装置、 主義により経理処理してい 受贈益の額として平成20年 攪拌機、ろ過装置、ばっき た費用があり、本件各事業 11月期の益金の額に算入す 装置等から成り、それぞれ 年度末において、それぞれ べきことになる。 本件槽の各部屋に設置され 債務が確定した日に未払金 4 措置法第42条の 6 第 1 項 て、水を送り出す、匂いを として経費に計上し、その 第 1 号に規定する機械及び 飛ばす、かき回す、ろ過す 日の属する事業年度の損金 装置は、法人税法第 2 条第 る等によって、水質を浄化 の額に算入すべきものと申 23号及び法人税法施行令第 する微生物の働きを活性化 し出ている。 13条第 3 号に規定する機械 させるためのものであるこ 7 本件経費のうち一部につ 及び装置と同じ意味に解さ とから、本件槽と本件機械 いては、①債務が成立して れるところ、ある資産が減 設備とは機能・用途が異な いる、②当該債務に基づい 価償却資産としての、構築 り、また、本件槽は、巨大 て具体的な給付をすべき原 物又は機械及び装置等のい なコンクリート製の構造物 因となる事実が発生してい ずれに該当するかは、当該 であることからすると、本 る、③金額を合理的に算定 資産が社会通念上一つの効 件機械設備とは社会通念上 できることの全ての要件を 用を有すると認められる単 一つの効用とはいえず、飽 満たしていたので、平成20 位ごとに判断するのが相当 くまで構築物であり、いず 年11月期の損金の額に算入 というべきである。 れも措置法第42条第 1 項に すべきである。 5 貯留槽及び処理槽(本件 槽)は、浸出水を一時的に、 規定する機械及び装置に該 裁決年月日 H26-06-02 当しない。 コード番号 F 0 - 2 -552 各工程の間だけ貯留するも 6 請求人は、支払日に費用 のである一方、本件機械設 を計上する、いわゆる現金 相続税 (無申告加算税 更正又は決定の予知) 原処分庁が、請求人自身の面接を経ずに無申 告加算税の賦課決定処分をした事案について、国税通則法第66条第 5 項の「調査」は、 机上調査も含む広い概念であることを明らかにした事例(平成24年分の贈与税に係る 無申告加算税の賦課決定処分・棄却・平26-07-28公表裁決) 【国税不服審判所ホームページ】 概 要 《要旨》 理士(本件税理士)に税務代 請求人は、国税通則法(通 理権限証書を提出させていな 則法)第66条《無申告加算税》 いので、面接時には、本件税 本事例は、国税通則法第66 第 5 項に規定する「調査」と 理士が請求人に代理して本件 条《無申告加算税》第 5 項に は、外部から認識することが 担当者の質問調査権の行使を 規定する「その提出が、その できる面接調査、すなわち質 受けたことにならないから、 申告に係る国税についての調 問検査権の行使をすることで 請求人に対する「調査」 が 査があったことにより当該国 あり、部内資料の収集のよう あったとは認められない旨主 税について…決定があるべき な手続は「調査」には当たら 張する。 ことを予知してされたもので ない旨、また、この点をおく しかしながら、通則法第66 ないとき」の「調査」の意義 としても、原処分庁の担当職 条第 5 項に規定する「調査」 について明らかにしたもので 員(本件担当者)は、請求人 とは、課税庁が行う課税標準 ある。 の代わりに税務署を訪れた税 等又は税額等を認定するに至 《ポイント》 15 中 国 税 理 士 会 報 2015年 5 月10日(No.616) る一連の判断過程の一切を意 となどが認められるから、こ 面接の内容を請求人に報告す 味し、課税庁の証拠書類の収 れら一連の行為は、課税庁が るという内容の委任契約が成 集、証拠の評価あるいは経験 行う課税標準等又は税額等を 立していたものと認められ 則を通じての課税要件事実の 認定するに至る一連の判断過 る。以上のことから、本件に 認定、租税法その他の法令の 程であると認められる。 ま おいては、通則法第66条第 5 解釈適用を経て決定に至るま た、面接時には、本件税理士 項に規定する「調査」があっ での思考、判断を含む包括的 が請求人に代理して本件担当 たと認められる。 な概念であり、税務調査全般 者の質問調査権の行使を受け を指すものと解されるとこ たことにならないという点に ろ、①原処分庁の職員は、署 ついては、請求人の本件税理 内資料の検討等により、請求 士への連絡、本件税理士と本 人の贈与税の申告が必要であ 件担当者の面接の状況等から ると見込まれると判断してい すると、少なくとも、本件税 東京高裁平成17年 4 月21日 ること、②本件担当者は、請 理士が、請求人に係る贈与税 判決(訟月52巻 4 号1269頁) 求人の贈与税の申告につい の申告の要否についての税務 て、本件税理士に面談し、資 署での面接において、請求人 裁決年月日 H26-07-28 料の交付や説明をしているこ に代理又は代行して応答し、 裁決事例集 J96- 1 -01 《参照条文等》 国税通則法第66条第 5 項 《参考判決・裁決》 出典:TAINS 平成27年 4 月 3 日現在 (TAINS は、一般社団法人日税連税法データベースが運営する税理士業務に役立つデー タベースサービスです) このコーナーでご紹介する「判決・裁決例」は、TAINS に収録されている「概 要」をそのまま掲載しています。判決等の全文は、TAINS でお読みください。 なお、税法データベースは日々更新されています。最新の情報でご確認ください。 TAINS(タインズ)ホームページ http://www.tains.org 税理士事務所等の内部規律及び内部管理体制に 関する指針の策定について【重要】 業務対策部 平成27年 1 月に改正された「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方」(平成20年財 務省告示第104号)により、 「税理士の使用人等が不正行為を行った場合の使用者である税理士等 に対する懲戒処分」として、内部規律や内部管理体制に不備があること等を事由に、税理士又は 税理士法人が使用人等の不正行為を認識できなかった場合についても懲戒処分の対象とすること が明確化されました。 これを踏まえ日税連業務対策部では、法第41条の 2 に規定する使用人等に対する監督義務を適 切に履行するための「指針」を策定しました。 ついては当該指針を参考にしていただき、適切な内部規律及び内部管理体制の整備を図られま すようお願いします。(詳細は、日税連及び中国会 HP をご覧ください。)
© Copyright 2024 ExpyDoc