基礎数学A演習 資料 松本 圭司 (Keiji Matsumoto) 北海道大学 大学院理学研究院 数学部門 平成 27 年 4 月 14 日 集合と写像の基礎 1 1.1 集合 いくつかのものをひとまとまりに考えた「ものの集まり」を集合 という. ただし, どんなものを取ってきても, それが その集まりにあるかないかがはっきり定まっているものでないといけない. 例1 (1) 開区間 (0, 1) は 0 < x < 1 をみたす実数の集合. (2) 自然数全体の集合は 1, 2, 3, . . . からなる. (3) 「大きな自然数の集まり」は, 1000 がこの集まりに属するかがはっきりきまらないので, 集合として扱わな い. 「999 より大きな自然数の集まり」は, 集合として扱う. ( ) ( ) 1 2 0 −1 (4) T = ,J= とそれらの逆行列たちの有限個の積 T m1 J n1 · · · T mk J nk (m1 , n1 , . . . , mk , nk 0 1 1 0 は整数) 全体は集合として扱う. この集合に入っているものは, 成分が整数の 2 × 2 行列になっていること はわかる. しかし, 成分が整数のどんな 2 × 2 行列がこの集合に入るかの判定は容易でない. 集合はアルファベットの大文字で表すことが多い. よく使う記号として, 自然数全体の集合 N, 整数全体の集合 Z, 有理数全体の集合 Q, 実数全体の集合 R, 複素数全体の集合 C がある. 集合 A に属しているもの a を A の元あるいは要素といい, a ∈ A あるいは A ∋ a で表す. a が集合 A に属さ ないとき, a ̸∈ A あるいは A ̸∋ a で表す. 集合 A の元が有限個のとき, A は有限集合であるという. A が有限集合 のとき, その元の個数を A の位数といい, |A| あるいは #(A) で表す. 元が1つもない集合を空集合といい, ϕ で 表す. ϕ も有限集合とし, |ϕ| = 0 である. 元の個数が無限個ある集合を無限集合という. 集合を表記する手段として, (1) 元をすべて列挙する. 例: 整数 n を 3 で割ったときの余りの集合 A は, {0, 1, 2}. (2) 元がその集合に属する条件を記載. 例: 座標平面 R2 内の原点中心半径 1 の内部の集合は, {(x, y) ∈ R2 | x2 + y 2 ≤ 1}. (3) 生成系を与える. 例: 3次元実ベクトル空間 V 内の1次独立な2つのベクトル v1 , v2 で張られる 2 次元部分空間は, ⟨v1 , v2 ⟩. 元が集合であるような集合も取り扱う. そのような集合を取り扱っていると喚起したい場合, 集合族といって区別 することがある. 問題 1 以下の集合を元がその集合に属する条件を記載せよ. 1 (1) 開区間 (0, 1) に属する有理数の集合. (2) 次数が3以下の x の実係数多項式の集合. (3) すべての成分が整数で行列式が 1 となる2次正方行列の集合. 2つの集合 A, B に対して, A の任意の元 a が B の元 (For ∀a ∈ A, a ∈ B) となるとき A は B に含まれる, B は A を含む, A は B の部分集合であるといい, A ⊂ B, B⊃A で表す. そうでないとき, つまり A の元 a で a ∈ / B となるものが存在する (∃a ∈ A s.t. a ∈ / B) とき A ̸⊂ B, B ̸⊃ A で表す. 空集合 ϕ は, すべての集合の部分集合と約束する. A ⊂ B と B ⊂ A が成立するとき, A と B は等しい といい A = B で表す. A ⊂ B で A ̸= B, A ̸= ϕ のとき A は B の真部分集合であるといい, A ⊊ B, B⊋A で表す. 問題 2 A ⊂ B かつ B ⊂ C ならば A ⊂ C を示せ. 問題 3 A = {0, 1, 2} とする。A の部分集合全体からなる集合族 A を元をすべて列挙することで表し, 位数 |A| を求めよ. 集合 A と集合 B に対して, A の元と B の元を全部あつめてできる集合を A と B の 和集合 あるいは A と B の 結び といい A ∪ B, B∪A で表す. A ∪ B は {x | x ∈ A または x ∈ B} であり, x∈A∪B ⇔ x ∈ A または x ∈ B, x∈ / A∪B ⇔ x∈ / A かつ x ∈ / B. 定義から以下が成立することを示すことができる. A ⊂ A ∪ B, B ⊂ A ∪ B, A = A ∪ A, (A ∪ B) ∪ C = A ∪ (B ∪ C). 最後の等式はかっこを省略することができることを意味するので, 単に A ∪ B ∪ C で表す. この集合は A, B, C の元を全部あつめてできる集合を意味する. より一般に集合 A1 , . . . , An (n は自然数) に対して, それらの和集合 ∪n i=1 Ai を n ∪ Ai = {x | ∃i ∈ {1, . . . , n} s.t. x ∈ Ai } i=1 で定める. さらに, 無限集合 I の元 i に対して, 集合 Ai が定まっているときに, それらの和集合 ∪ Ai = {x | ∃i ∈ I s.t. x ∈ Ai } ∪ i∈I Ai を i∈I で定める. I が自然数の集合 N のとき ∪ i∈N Ai を ∞ ∪ Ai で表す. 定義に極限を用いていないことに注意する. i=1 2 例 2 自然数 n で定まる閉区間 An = [1 n ] , 1 に対して ∞ ∪ An = (0, 1]. n=1 証明 • ∪∞ An ⊂ (0, 1] であること. ∪∞ 1 x を n=1 An の任意の元とする. ∃n ∈ N s.t. x ∈ An . これは ≤ x ≤ 1 をみたす自然数 n が存在してい n ∪∞ ることを意味する. この x は 0 < x ≤ 1 をみたすので x ∈ (0, 1] である. ゆえに n=1 An ⊂ (0, 1] である. ∪∞ • n=1 An ⊃ (0, 1] であること. 1 x を (0, 1] の任意の元とする. x ≤ 1 はみたしている. 1/x より大きな自然数 n をとると, 不等式 < x n ∪∞ 1 をみたす. この n に対して ≤ x ≤ 1 をみたすので x ∈ An である. ゆえに x ∈ n=1 An となり, n ∪∞ n=1 An ⊃ (0, 1] である. ∪∞ 以上より n=1 An = (0, 1]. □ n=1 集合 A と集合 B に対して, A にも B にも属している元を全部あつめてできる集合を A と B の 共通集合ある いは A と B の 交わり といい A ∩ B, B∩A で表す. A ∩ B は {x | x ∈ A かつ x ∈ B} であり, x∈A∩B ⇔ x ∈ A かつ x ∈ B, x∈ / A∩B ⇔ x∈ / A または x ∈ / B. 定義から以下が成立することを示すことができる. A ⊃ A ∩ B, B ⊃ A ∩ B, A = A ∩ A, (A ∩ B) ∩ C = A ∩ (B ∩ C). 最後の等式はかっこを省略することができることを意味するので, 単に A ∩ B ∩ C で表す. この集合は A, B, C すべてに属する元をあつめてできる集合を意味する. より一般に集合 A1 , . . . , An (n は自然数) に対して, それら ∩n の共通集合 i=1 Ai を n ∩ Ai = {x | For ∀i ∈ {1, . . . , n}, x ∈ Ai } i=1 で定める. さらに, 無限集合 I の元 i に対して, 集合 Ai が定まっているときに, それらの共通集合 ∩ Ai = {x | For ∀i ∈ I, x ∈ Ai } ∩ i∈I Ai を i∈I で定める. I が自然数の集合 N のとき ∩ 問題 4 自然数 n で定まる開区間 An = i∈N Ai を ( −1 n ∞ ∩ Ai で表す. 定義に極限を用いていないことに注意する. i=1 ) , 1 に対して ∞ ∩ An = [0, 1) n=1 となることを示せ. 3 集合 A と集合 B に対して, A の元であるが B の元でないものあつめてできる集合を A と B の 差集合 とい い A − B で表す. A ⊃ B のとき, A − B を A に対する B の補集合ともいう. 例 3 実数の集合 R に対する有理数 Q の補集合 R − Q は, 無理数全体の集合である. 考察の対象となる集合 X が定まっていて, 登場するすべての集合が X の部分集合となるときに, X をその考 察における普遍集合あるいは全体集合という. 全体集合 X が与えられているとき, X に対する集合 A の補集合 X − A を単に A の補集合 といい Ac で表す. 定義より Ac = {x ∈ X | x ∈ / A}, A ∪ Ac = X, (Ac )c = A, x ∈ Ac ⇔ x ∈ / A, A ∩ Ac = ϕ, ϕc = X, X c = ϕ, A ⊂ B ⇔ Ac ⊃ B c を示すことができる. 命題 1 (ド・モルガンの法則) (A ∪ B)c = Ac ∩ B c , (A ∩ B)c = Ac ∪ B c . 証明 (A ∪ B)c = Ac ∩ B c を示す. • (A ∪ B)c ⊂ Ac ∩ B c であること. x を (A ∪ B)c の任意の元とする. x ∈ / A ∪ B である. x は A の元でなくさらに B の元でない. ゆえに c c x∈A ∩B . • (A ∪ B)c ⊃ Ac ∩ B c であること. x を Ac ∩ B c の任意の元とする. x は A の元でもなくさらに B の元でもない. x は A ∪ B の元でない. よっ て x ∈ (A ∪ B)c . (A ∩ B)c = Ac ∪ B c は演習問題とする. □ 問題 5 以下を示せ. (1) (A ∩ B)c = Ac ∪ B c . (2) (A − B) − C = A − (B ∪ C). (3) A − (B − C) = (A − B) ∪ (A ∩ C). 集合 A と集合 B に対して, A の元 a と B の元 b との組 (a, b) 全体の集合を A と B の直積集合といい A × B で表す. A と B の直積集合は A × B = {(a, b) | a ∈ A, b ∈ B} と表記され, (a, b) ∈ A × B の a を第一成分あるいは第一座標, b を第二成分あるいは第二座標という. A と B と が異なる集合の時, A × B と B × A とは異なる集合とみなす. 例 4 A = {0, 1}, B = {f, g, h} のとき, A×A = {(0, 0), (0, 1), (1, 0), (1, 1)}, A×B = {(0, f ), (0, g), (0, h), (1, f ), (1, g), (1, h)}, B×A = {(f, 0), (f, 1), (g, 0), (g, 1), (h, 0), (h, 1)}, B×B {(f, f ), (f, g), (f, h), (g, f ), (g, g), (g, h), (h, f ), (h, g), (h, h)}. = 4 A と B が位数 m, n の有限集合ならば, 直積集合 A × B は位数 mn の有限集合となる. 集合 A1 , . . . , An (n は自然数) に対して, 直積集合 A1 × · · · × An を A1 × · · · × An = {(a1 , . . . , an ) | a1 ∈ A1 , . . . , an ∈ An } で定める. 1.2 同値関係 一般に, 集合 A の任意の2元の間にある関係 ∼ が成り立つか成り立たないかが指定されているとする. 関係 ∼ が A の任意の元 a, b, c に対して a∼a a∼b ⇒ b∼a a ∼ b, b ∼ c ⇒ a ∼ c (反射律) (対称律) (推移律) をみたすとき, この関係 ∼ は同値関係であるという. 例5 (1) 実数の集合 R に定義されている通常の等号 = は R の同値関係である. (2) m を 2 以上の自然数とする. 整数の集合 Z に ∼ を a ∼ b ⇔ a − b が m の倍数 で定めると ∼ は同値関係である. 実際, a − a = 0 = 0 × m なので, 反射律が成立. a ∼ b ならば ∃p ∈ Z s.t. a − b = m × p. ゆえに b − a = m × (−p) なので b ∼ a となり, 対称律が成立. さらに b ∼ c ならば ∃q ∈ Z s.t. b − c = m × q なので, a − c = m × (p + q) となり a ∼ c である. ゆえに推移律が成立. この同値関係に よって a ∼ b となるとき, a ≡ b mod m で表す. (3) 実数全体の集合 R に ∼ を a ∼ b ⇔ a − b が 2π の整数倍 で定めると ∼ は同値関係である. (4) 実 (m, n) 型行列全体の集合 Mm,n に ∼ を A ∼ B ⇔ 左基本変形で A を B にできる で定めると ∼ は同値関係である. (5) 実数係数多項式全体の集合 R[x] に ∼ を f (x) ∼ g(x) ⇔ f (x) − g(x) が (x2 + 1) で割り切れる で定めると ∼ は同値関係である. 問題 6 例 5 の (3), (4), (5) の ∼ が同値関係であることを示せ. A に同値関係 ∼ が定義されているとき, 同値な元を集めて A の部分集合が定義できる. この部分集合を ∼ に よる同値類という. 5 問題 7 A の同値関係 ∼ による2つの同値類 A1 , A2 は, A1 ∩ A2 が空集合でなければ A1 = A2 であることを 示せ. 集合 A は, すべての同値類の共通部分のない和集合となっている. 逆に, 集合 A が Ai (i ∈ I) たちの共通部分 のない和集合となっているとき, ∼ を a ∼ b を ∃i ∈ I s.t. x, y ∈ Ai で定義すると ∼ は同値関係となる. 集合 A に同値関係 ∼ があるとき, それによる同値類全体からなる集合族 {Ai | Ai は ∼ による同値類 } を A の同値関係 ∼ による商集合 という. 例6 (1) 例 5 の (2) の同値関係による Z の商集合は, {mZ, 1 + mZ, . . . , (m − 1) + mZ} である. ここで i + mZ は集合 {i + m × k | k ∈ Z} を表す. (2) 複素数 z の偏角 arg z は, 例 5 の (3) の同値関係による R の商集合のものと考えると都合がよい. (3) 例 5 の (3) の同値関係による R[x] の商集合が複素数の集合とみなせる. 問題 8 例 5 の (4) の同値関係による Mmn の商集合は, どのような集合となるかを答えよ. 1.3 写像 集合 A の各元 a に対して, 集合 B の元をただ1つ定める規則 f を A から B への写像といい, f : A → B, f : A ∋ a 7→ b ∈ B, b = f (a) 等で表す. 特に B が実数の集合 R (複素数の集合 C の場合も有) の部分集合となるとき, f を関数という. 集合 A を f の定義域という. 集合 B の部分集合 f (A) = {f (a) ∈ B | a ∈ A} を f の値域あるいは f による A の像とい う. 写像 f : A → B に対して, 直積集合 A × B の部分集合 Gf = {(a, b) ∈ A × B | a ∈ A, b = f (a)} を f のグラフ という. 写像 f : A → B が f (A) = B, (つまり for ∀b ∈ B, ∃a ∈ A s.t. f (a) = b) をみたすとき f は全射あるいは上への写像であるという. また a1 ̸= a2 ⇒ f (a1 ) ̸= f (a2 ) (またはその対偶 f (a1 ) = f (a2 ) ⇒ a1 = a2 ) をみたすとき f は単射あるいは一対一写像であるという. 写像 f が全射であり単射でもあるとき, f は全単射あ るいは上への一対一写像であるという. 写像 f が全単射のとき, B の任意の元 b に対して f (a) = b となる a ∈ A が一意的に存在する. 従って b ∈ B に対してこの a ∈ A を対応させる規則が定義でき, B から A の写像が得られ る. これを f の逆写像といい, f −1 で表す. 全射性や単射性を有しない一般的な写像 f : A → B に対しても B の任意の元 b に対して, A の部分集合 {a ∈ A | f (a) = b} (f で移すと b となる a ∈ A の集合) が定義できる. これを f による b の逆像といい f −1 (b) で表す (f の逆写像 が定義されているわけではない). この集合は空集合になることもありうるし, 多くの元からなる場合もある. f が 6 全単射のとき, 任意の b ∈ B に対して f −1 (b) がいつでも A の1元だけからなる集合になるので, 逆像を対応させ ることが写像となり, それが f の逆写像となる. 写像 f : A → B が全射または単射であることは, 対応の規則 f だけでなく集合 A, B の取り方で変化する. 写 像を考える際は, 集合 A, B の設定にも気を配ること. 例7 (1) A を R の部分集合とし, B を R+ = {x ∈ R | x ≥ 0} を含む R の部分集合とする. 2次関数 f : A ∋ x 7→ y = f (x) = x2 ∈ B を考える. A = B = R の場合, B から −1 をとると, f (a) = −1 となる a は R には存在しないので, f は全 射でない. また, A の異なる2元 3, −3 に対して f (3) = f (−3) = 9 となるので, f は単射でない. A = R, B = R+ の場合, f は全射となる. また, A が R+ の部分集合の場合, f は単射となる. A = B = R+ なら √ ば f は全単射である. そのとき f には逆写像が定義されるが, それは R+ ∋ x 7→ x ∈ R+ である. (2) 正弦関数 sin : R ∋ x 7→ y = sin x ∈ R は, 全射でも単射でもない. 写像の行先を R から閉区間 [−1, 1] に変更すると全射となる. 正弦関数 sin の 0 の逆像 sin−1 (0) は, sin−1 (0) = {x ∈ R | sin x = 0} = {nπ | n ∈ Z} であるので, 行先を変更しても正弦関数 sin は単射でない. 正弦関数 sin の定義域を閉区間 [ ] − π2 , π2 に変 更し, 閉区間 [−1, 1] への関数と考えると, この関数は全単射となる. この制限した関数には逆写像が定義で きるので, それを sin による逆像 sin−1 と区別し arcsin あるいは Sin−1 で表す. P を A の部分集合とする. f による P の像 f (P ) を f (P ) = {f (a) ∈ B | a ∈ P } で定める. Q を B の部分集合とする. f による Q の逆像 f −1 (Q) を f −1 (Q) = {a ∈ A | f (a) ∈ Q} (f で移すと Q に属する a ∈ A の集合) で定める. 命題 2 写像 f : A → B と A の部分集合 P, P ′ , B の部分集合 Q, Q′ に対して, 以下が成立する. P ⊂ P ′ ⇒ f (P ) ⊂ f (P ′ ), f (P ∪ P ′ ) = f (P ) ∪ f (P ′ ), f (P ∩ P ′ ) ⊂ f (P ) ∩ f (P ′ ), Q ⊂ Q′ ⇒ f −1 (Q) ⊂ f −1 (Q′ ), f −1 (Q ∪ Q′ ) = f −1 (Q) ∪ f −1 (Q′ ), f −1 (Q ∩ Q′ ) = f −1 (Q) ∩ f −1 (Q′ ), f −1 (f (P )) ⊃ P, f (f −1 (Q)) ⊂ Q. 問題 9 命題 2 を証明せよ. 7 2つの写像 f1 : A → B と f2 : A → B が, 任意の a ∈ A に対して f1 (a) = f2 (a) をみたすとき f1 = f2 と定める. 2つの写像 f : A → B と g : B → C に対して, 合成写像 g ◦ f : A → C を g ◦ f : A ∋ a 7→ g(f (a)) ∈ C で定める. 命題 3 写像 f : A → B と g : B → C がともに全射ならば, 合成写像 g ◦ f : A → C は全射. 写像 f : A → B と g : B → C がともに単射ならば, 合成写像 g ◦ f : A → C は単射. 証明 g ◦ f が全射であることを示す. g が全射なので C の任意の元 c に対して, g(b) = c となる b ∈ B が存在す る. f が全射なので, その b に対して, f (a) = b となる a ∈ A が存在する. g ◦ f (a) = g(f (a)) = g(b) = c となる ので g ◦ f は全射. g ◦ f が単射であることを示すことは演習問題とする. □ 問題 10 写像 f : A → B と g : B → C がともに単射ならば, 合成写像 g ◦ f : A → C は単射となることを示せ. 命題 4 写像 f : A → B, g : B → C, h : C → D に対して (h ◦ g) ◦ f = h ◦ (g ◦ f ). 証明 A の任意の元 a に対して, [(h ◦ g) ◦ f ](a) = [h ◦ (g ◦ f )](a) を示せばよい. 上記の左辺は [(h ◦ g) ◦ f ](a) = (h ◦ g)(f (a)) = h(g(f (a))), 上記の右辺は [h ◦ (g ◦ f )](a) = h((g ◦ f )(a)) = h(g(f (a))). □ 両者は一致している. 命題 4 から, 写像の合成についてはかっこを省略することができる. 命題 4 にある合成写像を単に h ◦ g ◦ f で 表す. 8
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