チャンス! 経営情報通信 発行元: 平成 25 年 第 100 号 監修:税理士法人 ゴーイング ◆◆ 自社株式が大きな相続財産! 事業という財産に変えるには ◆◆ ( 税理士法人ゴーイング 税理士 山口 久行 ) 【Q】後継者に株式を移転しなければ相続時に大変だ、ということで毎年少しずつ贈与して きましたが、なかなか追いつきません。 経営承継円滑化法という制度は活用できるのでしょうか。 【A】 <同法は三本で構成されています> なぜ三本構成で自社株式取得を支援するの かといえば、事業後継者以外の相続予定者(推 定相続人)との遺留分問題が避けて通れない 問題だからです。 ②相続税納税猶予のケース(2/3 まで 80%猶予) 相続開始 相続開始前に確認申請の承認 税務署 税務署へ相続税申告 納税猶予制度 家庭裁判所 日本政策金融公庫等 遺留分の特例 承継資金制度 経済産業大臣へ申請 ①確認申請②認定申請 <本稿では納税猶予についてご紹介します> 納税猶予には二つの制度があります ①生前に一括贈与し贈与税納税猶予申請する。 ②相続の開始前に相続税納税猶予申請をする。 ※納税猶予は議決権株式総数の 2/3 まで。 <生前一括贈与か相続時かを選択できます> ※贈与から相続へそして又次の世代へ反復 活用も ①一括贈与のケース(2/3 まで 100%猶予) 贈与前に確認申請 特定の贈与者 <一括贈与時の一定の要件とは> A:贈与の課題は次の 3 つに分類されます ①自社株式を贈与する者の要件 ②受贈する後継者の要件 ③事業継続に関する要件 「贈与する側の特定の贈与者とは」 1 贈与する以前に代表権を有していたこと 2 贈与直前において同族の持分が過半数で あること 3 贈与の直前において筆頭株主であること A 議決権 総株数 100 税務署へ贈与税申告 特定贈与者の持分 がBの中で筆頭 代表者の相続税から適用する 選択 生前一括受贈から適用する 受贈時に認定申請 実際に贈与 B 同族持株数が Aの50%超 4 5 贈与時に、役員を退任(改正案は残留 OK) 特定の贈与者が所有している一定以上の 株数を一括して贈与すること 「受贈する側の特定後継者とは」 1 贈与の日において 20 歳以上であること 2 引き続き 3 年以上役員であったこと Copyright©2013:GOING Certified Public Tax Accountants’ Co. All Rights Reserved. 「一定要件の事業継続要件」 1 5 年間会社の代表であること 2 5 年間の株式保有義務(その後も条件あり) 3 5 年間の 80%雇用維持義務(改正案は緩和) <80%以上の雇用維持なんてとんでもない> このような経営環境下で事業継続さえも危う い時代なのに、常時 5 人以上の従業員の他に実 行時の雇用数の 80%基準はとても! しかし、改正案では要件の緩和と、達成でき なかった時の延滞税など、ペナルティーを大き く緩和する予定になっています。 平成 25 年度税制改正大綱(27 年1月1日から) 雇用維持等 適用要件の 緩和 適用除外と なった場合の リスク軽減 適用範囲の拡充 (親族外への贈与 も可能に) 経営者にとって要件が維持できなかった場合 のリスクは特に重大ですから‘延納や物納への 切替’ができるようになることや適用外となっ て納税額が発生した場合の延滞税低下は大きく、 また、改正後は経済産業大臣への確認申請が不 要になるなど手続き緩和も予定されています。 <中小企業ならば資産管理会社でも?> ①特定資産(貴金属、有価証券、遊休不動産、賃 貸不動産、ゴルフ会員権、現金、預金等)の合 計額が総資産価額の 70%以上は適用除外とな りますが、分母・分子ともに帳簿価額によっ て計算された割合となります。この趣旨は経 営の承継に限定し、資産承継を外す、という ことです。 ②風俗営業も同様に除外していますが、パチン コ、ゲームセンター等は対象となります。 対象外 ・資産運用型の 会社 ・資産保有型の 会社 性風俗営業に 近い事業会社 <生前一括贈与から得られる期待> ①生前に自身の意思で後継者に委譲できる …相続時のゴタゴタを事前に防止する目的 ②相続全体の設計イメージが整理整頓できる ③後継者のモチベーション向上 ④無税又は一部納税で経営権が移転可能 ⑤取引先、金融機関、社内の信頼醸成が促進 <贈与税ではなく相続税から本制度を使いたい> どうしても生前一括贈与はしないで相続時か ら、の方でも贈与税の事前確認申請と同様に相 続税の発生前に経済産業大臣に確認申請をして おかないと本制度は適用されないので注意が必 要です。 <生前一括贈与との主な違い> ①基本的に同じで、贈与とあるのを相続と読み 替えると概要はほぼ同じになります。 ②贈与税は 2/3 まで 100%納税猶予されますが、 相続税の納税猶予は 80%で 20%は納税です。 ③遺留分の民法特例は贈与時の確認申請時だけ にセットされた制度です。 (参)民法特例実績は全国的にも僅少です。 <確認申請と認可申請手続きの流れ、概要> 生前贈与税 経産大臣 確認申請 納税猶予 ・自社株贈与 ・経産大臣許可申請 自社株担保提供 任意選択で申請 遺留分特例 相続税 納税猶予 期限内申告必須 税務署申告 ※確認申請は1か月くらいかかります 経産大臣 確認申請 ・相続開始 ・計算大臣認可申請 自社株担保提供 期限内申告必須 税務署申告 <経営権 2/3 を確保したならば次の 1/3 は?> ①残りの自社株は相続時精算課税制度の併用も。 ②議決権株式を回収し、配当優先株式を発行す る等の種類株式発行で議決権株式を集中させ る 尚、後継者以外の黄金株保有はできません。 <改正案を待たずまず確認申請!> 申請してから約1か月かかり承認通知されま す。 突発的な相続等に備え、大臣確認を申請して おくことは大きな対策です。それ程困難な手続 きではない上に、一度提出しておけば効力は無 期限となります。 又、改正案の事業継続要件の緩和は改正前の 適用者にも遡り適用される予定です。 本誌は参考的な視点で提供するもので法的及び経済的判断の責任は一切負いません。 お問合せ:ナセル株式会社 東京都品川区南品川 4-2-32 品川税経会館 2F TEL:03-3471-0830 FAX:03-3471-0850 E-mail:[email protected] Copyright©2013:GOING Certified Public Tax Accountants’ Co. All Rights Reserved.
© Copyright 2024 ExpyDoc