講演会・特別講義 報 告 書 「米国のナースプラクティショナーの 紹介と日本の高度実践看護師(APN) に必要なフィジカルアセスメント」 鈴木美穂先生 (がん研有明病院 副看護部長) ニューヨーク州 東京 日時 2015年6月6日(土)10:30~12:00 場所 富山大学杉谷キャンパス看護学科棟1階11教室 [講演会・特別講義] 米国のナースプラクティショナーの 紹介と日本の高度実践看護師(APN) に必要なフィジカルアセスメント がん研有明病院 副看護部長 東京 ニューヨーク州 鈴木美穂先生 2015. 6. 6 貴重な機会です。 ぜひ、ご参加 ください。 (土) 10:30-12:00 富山大学杉谷キャンパス 看護学科棟1階11教室 〈オランダ医療システム視察研修〉 主催 とやま総合診療イノベーションセンター(CIGM) (076-415-8867) ・ 総合診療部 共催 大学院看護学専攻 授業科目「フィジカルアセスメント」コース 平成27年6月6日(土) 講演会・特別講義 「米国のナースプラクティショナーの紹介と 日本の高度実践看護師(APN)に必要なフィジカルアセスメント」 鈴木美穂先生(がん研有明病院 副看護部長) 1 東京 ニューヨーク州 ナース・プラクティショナーとは • Advanced Practice Registered Nurse (APRN: 米国のナース・プラクティショナーと 日本の高度実践看護師(APN)に必要な フィジカルアセスメント 高度実践看護師)のひとつ • APRNとは次の4つのこと: • Certified registered nurse anesthetists(看護麻酔師) • Certified nurse midwives(助産師) • Certified nurse practitioners(ナース・プラクティショナー) • Clinical nurse specialists(クリニカル・ナース・スペシャリスト) 2015年6月6日 がん研有明病院 副看護部長 鈴木美穂 2008年7月Consensus Model for APRN Regulation https://www.ncsbn.org/170.htm 3 4 ナース・プラクティショナー ナース・プラクティショナー 全国共通認定試験に合格・ 更新 2.資格(Qualifications) • To be recognized as expert health care providers and ensure the highest quality of care, NPs undergo rigorous national certification, periodic peer review, clinical outcome evaluations, and adhere to a code for ethical practices. Self-directed continued learning and professional development is also essential to maintaining clinical competency. • Additionally, to promote quality health care and improve clinical outcomes, NPs lead and participate in both professional and lay health care forums, conduct research and apply findings to clinical practice. American Association of Nurse Practitioners http://www.aanp.org/all-about-nps/what-is-an-np 1.教育とトレーニング(Education & Training) • All NPs must complete a master's or doctoral degree program, and have advanced clinical training beyond their initial professional registered nurse preparation. Didactic and clinical courses prepare nurses with specialized knowledge and clinical competency to practice in primary care, acute care and long-term health care settings. • 修士または博士課程 • 高度な臨床実践トレーニング • 看護師 5 6 ナース・プラクティショナー ナース・プラクティショナー 4.業務(Services) • Autonomously and in collaboration with health care professionals and other individuals, NPs provide a full range of primary, acute and specialty health care services, including: • Ordering, performing and interpreting diagnostic tests such as lab work and x-rays. 検査やレントゲンのオーダー、実施、解釈 • Diagnosing and treating acute and chronic conditions such as diabetes, high blood pressure, infections, and injuries. • Prescribing medications and other treatments. • Managing patients' overall care. 診断、治療、処方 • Counseling. • Educating patients on disease prevention and positive health and lifestyle choices. 3.免許と実践の場 (License & Practice Locations) • NPs are licensed in all states and the District of Columbia, and practice under the rules and regulations of the state in which they are licensed. They provide highquality care in rural, urban and suburban communities, in many types of settings including clinics, hospitals, emergency rooms, urgent care sites, private physician or NP practices, nursing homes, schools, colleges, and public health departments. • 州からの免許(看護師も) • ケア提供の場:診療所、病院、ER・UC、個人開業、 ナーシングホーム、学校、保健・公衆衛生、など 2 1 7 8 ナース・プラクティショナー ナース・プラクティショナー 5.アプローチ(Unique Approach) • What sets NPs apart from other health care providers is their unique emphasis on the health and well-being of the whole person. With a focus on health promotion, disease prevention, and health education and counseling, NPs guide patients in making smarter health and lifestyle choices, which in turn can lower patients' out-of-pocket costs. NPは全米に20万人 6.Why NPs are important: • NP credibility - NPs are more than just health care providers; they are mentors, educators, researchers, and administrators. • Lower health-care costs - By providing high-quality care and counseling, NPs can lower the cost of health care for patients. • Patient satisfaction - With almost 600 million visits made to NPs each year, patients report an extremely high level of satisfaction with the care they receive. • Primary care shortage solution - NPs provide approximately 205,000 solutions to the primary care shortage facing America today. ヘルス・プロモーション、疾病予防、 健康教育、カウンセリング 10 NPの専門領域(NY州の例) NPの養成 http://www.op.nysed.gov/prof/nurse/np.htm Nurse Practitioner in: • Acute Care • Adult Health • College Health • Community Health • Family Health • Gerontology • Holistic Care • Neonatology • 現在は修士以上 (1996年から) • 2015年までにNPの最低教育をDoctorate (Doctor of Nursing Practice: DNP)にすると 発表。 2023年ごろになりそうとのこと • c.f. PhD in Nursing • Obstetrics/Gynecology • Oncology • Pediatrics • Palliative Care • Perinatology • Psychiatry • School Health • Womens Health 11 12 カリキュラム例 Physical Assessment 計42単位(臨地実習735時間を含む) コア (12単位) APN必修 (9単位) 看護学修士必修 3Ps 研究 理論 倫理 保健システム ±統計学 • 目標: • OSCE(医療面接や身体診察) • H&P (History & Physical Examination)が書けること 対象別 (15~18単位) ・フィジカルアセスメント プライマリケア ・病態生理学 (I, II. III) ・薬理治療学 急性期 教科書は: ベイツ診察法 リンS.ビックリー、ピーターG.シラギ著 福井次矢、井部俊子日本語訳監修 メディカル・サイエンス・インターナショナル 高齢者 小児 etc 選択科目 3 2 フィジカルアセスメント フィジカルアセスメント つづき • History taking(病歴聴取)とPhysical examination • 主観的データ • 個人情報:年齢、性別、職業、配偶者の有無など • 情報源:通常は患者。家族や友人、紹介状、診療録であることも。 • 信頼性:患者の記憶力、信頼度、気分 • CC 主訴 • HPI(History of Present Illness) 現病歴:主訴について詳しく聴く。症状がどの ように出現したか。OLDCART OPQRST 症状や病気に対する本人の考えやどのように感じているかを含める。 システムレビューで関連する部分を含める HPIに関連する薬剤、アレルギー、喫煙歴、飲酒歴を含めることも。 • PMH(Past Medical History)/PSH(Past Surgical History) 既往歴:小児期の病 歴を含める。成人後の少なくとも内科、外科、産婦人科、精神科の病歴を列挙 する。健康管理(Health maintenance)を含む(予防接種歴、スクリーニング検査 〔定期健診、がん検診、等〕) • 家族歴:兄弟姉妹、両親、祖父母の年齢と健康状態、死亡年齢と死亡原因の概 略または図示。家族が高血圧、冠動脈疾患、がんなどの疾患に罹患しているか • 個人歴と社会歴:学歴、現在の家族構成、個人的な趣味、生活習慣、宗教 S:病歴聴取をしながら、診断仮説をたてる ⇒ 臨床推論は始まっている O:客観的データ • PE:VS、身長・体重・BMI、フィジカルイグザミネーション Assessment/Impression:もっとも可能性のある疾患とそ の理由(鑑別診断の採用と除外) 計画 Plan 普通の馬、シマウマ、ユニコーン プライマリ・ケア 1,2,3 • 山本則子:老年看護学12(2):83-88、2008 • 5単位 2 時間の座学と1時間のセミナー、15時間の実習/週 • NP教育で特徴的だったこと―「あらゆる珍しい病態の治療方 • 210時間の実習/学期 計630時間 法についてエキスパートになる必要はない。正常と異常を判 断でき、一般的な病態について定式化されたケアができること、 珍しい病態を見つけたら、専門医に紹介できることが役割で ある」 普通の馬-正常 シマウマー風邪ひき ユニコーンー珍しい難病 • 普通の馬とシマウマの区別をし、シマウマをケア、ユニコーン を見つけたら専門医に送る • ANP/GNPコースは735時間必要 • 1学期目:大学・企業の保健室や健診センターなど、健康な人びとを対 象にしたところ (婦人科を含む) • 2学期目:プライマリ・ケア診療所や外来 • 3学期目:病院、老人ホーム、専門診療所など、各NP専門領域に関連 するやや複雑な病状管理を必要とする人を対象としたところ • 座学では、疾患の概念を学ぶ • セミナーでは、ケーススタディとCapstoneプロジェクト 座学 疾患例(つづき) • 保健・予防 • 循環器:高血圧、脂質代謝異常、CHF • 保健統計(死因、喫煙率、肥満率、など) • 呼吸器:感冒、肺炎、COPD、喘息、結核 • 1次予防(予防接種、健康教育、など) • 血液:貧血 • 2次予防(スクリーニング:がん、感染症、など) • 消化器:胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎 • 腎・泌尿器:腎盂腎炎、尿路感染症 • 疾患 • 皮膚:乾癬、カンジダ、接触性皮膚炎、伝染性膿痂疹、帯状疱 • 生殖器:前立腺肥大、避妊、細菌性膣症、STD 疹、熱傷、など • 内分泌:糖尿病、甲状腺機能障害 • 眼・耳鼻咽喉:結膜炎、中耳炎、副鼻腔炎、伝染性単核症、溶 連菌感染(Strep Throat) • 筋・骨系:変形性関節炎、痛風、腰痛 • 神経:頭痛 • 精神:うつ病 4 3 19 セミナーでは: ケース・スタディ例-1 臨床推論(Clinical reasoning)のトレーニング • ディスカッションの進め方 • ジョージは73歳、肥満男性。2週間前からのひどい 胸やけで受診。2週間前に結婚式に参加してからとき どき胸骨の裏をつつくような上腹部の痛みが気になり だしたという。マーロックスを服用してみたが、効かな い。現在1日1瓶(1L)ほどマーロックスを飲んでいる。 その痛みは夜に悪化し、時に何か食べると軽減する が、とくに食後1時間と寝るときに気になる。でも、1日 中起こりうるという。昨夜は痛みで目が覚めるほどひ どかった。それで、怖くなって本日受診した。 • 既往歴:昨年うつ症状あり。しかし友人と釣りに行くよ うになり回復。手術歴:なし。タバコ2箱/日。機会飲酒。 • この現病歴に関連して、どんな質問を付け加えるか。 • どんなROS(Review of Systems:系統別症状)を確認すべき か。各システム5-10個挙げよ。 • 鑑別診断は?その理由は? • どの部分のフィジカル・イグザミネーションをするか。 • 現時点で、省略してもよいと考えられるところは? • オフィス(診療所)でできる診断検査はあるか。また、どんな 結果で除外するか。 • 最も可能性の高い診断は? • この時点でするべきそのほかの診断陳述があるか。 • 治療計画 • 看護ケアの短期目標、長期目標 21 22 造血幹細胞移植病棟NPの仕事 NP業務 • Memorial Sloan Kettering Cancer Center • 約470床 がん専門病院 • RN 2221人(2013 Annual Report) • CNS 43人, Leader 40人, NP 296人 (2012 Annual Report) 7:00 Hospitalistまたは当直研修医から申し送りを受ける 7:15頃~ バイタルサインや血液検査結果確認 必要に応じて輸血や輸液、電解質補正をオーダー 7:45頃~ Pre-round:ひとりで担当患者(5~6人)を診察し、病状や問題 を確認 Attending MDとラウンド:担当患者のプレゼンテーションをし、 ともに回診し、治療方針を確認 9:00頃~ • Adult BMT Service • Attending MD 約20人、NP/PA 約14人 午後 • 入院患者管理体制 • 2チーム ブルーとホワイト • 各チーム:約12-25患者 • 1人のAttendingドクター(2週毎当番制) • 1人のFellow(4週毎ローテーション) 17:00頃~ • 1人の臨床薬剤師 • 3~4人のNP/PA 19:00 ・検査や薬のオーダー ・他科コンサルテーション(感染症科、消化器内科、呼吸器内科 など) ・他部門との連絡 (PT/OT, SW, 栄養士, ケース・マネジャー, 保険会社など) ・入院・退院準備 ・処置(造血幹細胞の注入、CVラインの抜去、等) ・記録 ラウンド:朝からの患者の変化や介入結果の報告、免疫抑制剤量 の確認、翌日の予定確認 Hospitalistまたは当直研修医に申し送る 23 入院時 ・フィジカル・アセスメント ・入院時オーダー ・血液検査(血算、生化、凝固系) ・胸部レントゲン ・12誘導心電図 ・安静度 ・食事(Low microbial diet) ・リハビリテーション部コンサルテー ション ・Hydration ・抗細菌薬、抗HSV/VZV薬、抗真菌薬 ・制吐薬 ・胃炎予防薬(PPI) ・VOD予防薬(ヘパリンまたはウルソ) ・G-CSF ・ビタミン剤(葉酸、VB12、VK) ・月経抑制薬(未閉経女性) ・患者の常用薬(降圧剤、抗うつ薬な ど) ・MRSA, VRE colonization surveillance ・化学療法薬剤部への連絡 24 退院準備 ・点滴薬(免疫抑制剤、抗HSV/VZV薬、抗真 菌薬、ビタミン、KCL、Mgなど)を漸次内服 に変更。 ・ 退 院 後 の 暮 ら し 方 を 再 確 認 ( 自 宅 か Hope Lodge*か、ケア提供者の有無、訪問看護や訪 問PT/OT・ヘルパーの必要性など)。 ・ソーシャル・ワーカーとケース・マネジャー に退院予定日を連絡。 ・在宅ケアが必要な場合、その紹介状をケー ス・マネジャーに渡し、調整を依頼。 ・Hickman等のtunneledカテーテルを挿入した まま退院する場合は、看護師から患者・家族 (ケア提供者)にカテーテルケア指導をして も ら う 。 抜 去 す る 場 合 は 、 Interventional Radiologyの予約。 ・高額の処方薬(免疫抑制剤や抗真菌薬など) がある場合、保険会社の処方薬部門に電話し、 Prior authorizationを得る。 ・初回外来受診予約。 ・サバイバーシップ外来予約(同種移植 Day100頃) 小児心臓外科NPインタビュー http://www.youtube.com/watch?v=qILRhVIvtCM *American Cancer Societyが無償で提供している宿泊施設。 鈴木美穂: 日本外科学会雑誌, 114(4): 219-22, 2013 5 4 高度実践看護師教育課程の定義 日本におけるAPNs 一般社団法人日本看護系大学協議会 高度実践看護師教育課程認定規程 • 専門看護師 (Certified Nurse Specialist) • 第2章第2条 高度実践看護師教育課程は、専門看護師教育課 • 認定看護師 (Certified Nurse)? 程およびナースプラクティショナー教育課程により構成する。 • 助産師? • 専門看護師教育課程は、保健・医療・福祉現場において、複 雑な健康問題を有する患者にケアとキュアを統合し、卓越し た直接ケアを提供するとともに、相談、調整、倫理調整、教 育、研究を行い、ケアシステム全体を改善することで、看護 実践を向上させる高度実践看護師を養成する教育課程とする。 • ナースプラクティショナー教育課程は、保健・医療・福祉現 場において病院・診療所等と連携して、現にまたは潜在的に 健康問題を有する患者にケアとキュアを統合し、一定の範囲 で自律的に治療的もしくは予防的介入を行い、卓越した直接 ケアを提供する高度実践看護師を養成する教育課程とする。 • 保健師? • 特定行為に係る研修を受けた看護師? • ナースプラクティショナー 共通科目B審査基準 (JANPU) 特定行為に係る看護師の研修制度 科目名 • http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070423.html 審査基準 フィジカルアセスメント 複雑な健康問題をもった対象の身体状況につ いて系統的に全身を診査 し、臨床看護判断を 行うために必要な知識と技術について教授する 科目 が設けられていること 制度の趣旨 • 2025年に向けて、さらなる在宅医療等の推進を図っていくた めには、個別に熟練した看護師のみでは足りず、医師又は歯 科医師の判断を待たずに、手順書により、一定の診療の補助 (例えば脱水時の点滴(脱水の程度の判断と輸液による補 正)など)を行う看護師を養成し、確保していく必要があります。 このため、その行為を特定し、手順書によりそれを実施する場 合の研修制度を創設し、その内容を標準化することにより、今 後の在宅医療等を支えていく看護師を計画的に養成していく ことが、本制度創設の目的です。 病態生理学 エビデンスに基づき、対象の全身にわたる病態 生理学的変化を解釈、 臨床看護判断を行うた めに必要な知識と技術について教授する科目 が 設けられていること 臨床薬理学 緊急応急処置、症状調整、慢性疾患管理に必 要な薬剤を中心に、薬剤使 用の判断、投与後 の患者モニタリング、生活調整、回復力の促進、 患者 の服薬管理能力の向上を図るための知識 と看護技術を教授するための 科目が設けられ ていること 日本の高度実践看護師に必要なフィジカル アセスメント • とにかく臨床推論 • フィジカルアセスメント ≠ フィジカルイグザミネーション 6 5 講演会・特別講義 「米国のナースプラクティショナーの紹介と日本の高度実践看護師(APN)に必要なフィジカルアセスメント」 参加人数 日時 平成27年6月6日(土) 10:30~12:00 講師 がん研有明病院 副看護部長 場所 看護学科棟1階11教室 参加者 38人(学内 16人、学外 22人) 【学内】 16人 (人) 医学部看護学科1年 6 2年 1 看護学科教員 3 大学 2 看護部 3 医学科教員 1 【学外】 22人 (人) 富山県看護協会訪問看護ステーション ひよどり富山 4 千石ケアサービス 1 富山市障害福祉課 1 富山市中央保健福祉センター 5 富山市民病院 1 富山県立中央病院 栗山病 院 富山福祉短期大学 1 南砺市訪問看護ステーション 5 高岡市民病院 2 1 1 7 富山大学附属病院 とやま総合診療イノベーションセンター 〒930-0194 富山県富山市杉谷2630
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