公民館等の社会教育施設での環境教育促進に向けて(提言)

公民館等の社会教育施設での環境教育促進に向けて(提言)
平成 27 年 4 月 1 日
地球環境関西フォーラム
環境教育・啓発部会
暮らしの中での環境教育促進事業ワーキンググループ
◎ はじめに
地球環境問題は、地球全体の非常に多岐にわたる領域に関わっている。それはまた、現
在進行中の問題であり、また最新の科学技術がその原因と人間社会への影響などを明らか
にしつつある。そのため、新たな情報や知見が日に日に増えており、私たちは学び続ける
必要がある。
そして、その解決には、環境に関する一般的な知識を有するだけでは不十分であり、私
たち一人一人が「自分自身の問題」として認識し、何が出来るかを考え、具体的な行動に
移していくことが必要である。
このような視点から、地球環境関西フォーラム 環境教育・啓発部会(以下、当部会)
では、これまで、学校教育の場での環境教育を活性化させる活動や、若者の環境意識を高
め具体的な行動に結びつけるための実践的な活動を行ってきた。そうした活動の成果や若
者の環境意識の現状を踏まえ、当部会では、次の課題として、より幅広い世代に対する環
境教育、すなわち生涯教育の視点での環境教育の充実に取り組むことにした。
その理由は第一に、小・中・高等学校における環境教育が着実に広がっている一方で、
その卒業後は環境関連情報に触れる機会が減るということである。第二に、健康で、社会
や地域に貢献したいという意欲を持った高齢者が増加していること。第三に、人口減少社
会が進展する中、国や地方自治体の財政状況は極めて厳しく、市民に今後の社会や地域づ
くりの担い手としての役割が一層求められる状況になっているということである。
それでは、幅広い年代層の市民が、環境に関する情報により頻繁に触れ、それを通じて
環境に配慮した行動を自然に促される、という状況をどのように生み出していくのか。ま
た、そのために、暮らしに身近な場面でどのようにして環境教育を充実させていくのか。
これらの課題を検討するため、平成 24 年 8 月、当部会の下に、暮らしの中での環境教
育促進事業ワーキンググループ(以下、WG)を設け、26 年度までの 3 年間にわたり、計
12 回の検討会での議論や、試行事業等を行った。本提言および資料は、ここでの議論や活
動結果を取りまとめたものである。
その中で、暮らしに身近な環境教育の「場」として意識したのは、
「社会教育施設」であ
る。社会教育施設には、図書館、博物館、公民館、青少年教育施設、生涯学習センター等、
様々な施設があるが、今回は特に市民にとって身近な施設である公民館に焦点を当てた。
今回の検討結果をごく簡単に紹介すると、公民館と環境教育は親和性が高く、また、環
境教育を通じて公民館は地域社会の中でより「身近で」
「信頼される」存在になる可能性を
大いに秘めている、ということである。
本提言および資料が、公民館をはじめとする社会教育施設に関わる皆さま、自治体等に
おいて環境問題や教育問題に携わる皆さま、また、NPO など様々な立場で環境教育に関
わる皆さまにとって、日々の活動の参考となることを願っている。
最後になりましたが、多忙ななか本 WG に参画いただいた行政、企業の委員の皆様、貴
重な知見をお寄せいただいた専門委員の皆様、外部講師の皆様に心から感謝いたします。
地球環境関西フォーラム 環境教育・啓発部会
暮らしの中での環境教育促進事業ワーキンググループ座長 篠﨑由紀子
1
目次
◎ はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
◎ 主なポイント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
第1章 取り組みの背景と「公民館」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
1-1.市民の地球環境問題への意識と行動 ・・・・・・・・・・・・・・・・
5
1-2.公民館に注目する理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
1-3.本提言における「公民館」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
1-4.公民館の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
(1) 施設数
(2) 職員数
(3) 予算
(4) 利用者等の環境問題に対するニーズ
(5) 社会教育施設運営上の課題
第2章 取り組みの流れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
2-1.当ワーキンググループ(WG)設立までの取り組み ・・・・・・・・・
8
(1) 関西の公民館へのアンケート調査
(2) 関西の社会教育関係者へのアンケート調査
2-2.当 WG 設立と、それ以降の取り組み ・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
(1) WG の設立
(2) WG における活動
第3章 公民館等における環境教育を一層充実させるために ・・・・・・・・・・・ 13
3-1.
「公民館等の社会教育施設ならでは」の環境教育とは ・・・・・・・・・ 13
(1) 「環境教育」の定義
(2) 公民館等が関わる環境教育の事例
(3) 地域の様々な課題に関わる環境教育
(4) ポイントは地域資源の活用
3-2.環境教育を行う上での実践ポイント ・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
(1) 魅力的な環境教育事業を企画するために
(2) 講師選定や参加者募集等にあたって
(3) 他施設との連携による活動充実
2
第4章 社会教育施設をサポートする機関・団体に求められること・・・・・・・・ 26
4-1.公民館等職員研修において、多面的な視点からの講座企画力養成をはかる
・・・・・・ 26
4-2.教育委員会と環境部局が緊密に連携する ・・・・・・・・・・・・・・ 29
◎ 終わりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
30
◎ 地球環境関西フォーラム
31
環境教育・啓発部会のあゆみ ・・・・・・・・・・
◎ 「暮らしの中での環境教育促進事業ワーキンググループ」メンバー等のリスト
・・・・・・ 32
◎ 付録:各行政の環境教育・環境学習関連サイトの紹介 ・・・・・・・・・・・・ 34
【参考資料】
(当フォーラム ウェブサイト
http://www.global-kansai.or.jp/ichiran/kyoiku-teigen.html に掲載)
・ppt ツール案
・公民館等の社会教育施設に望まれる環境教育プログラム
(提言記載内容への追加情報)
・ppt ツール作成上のヒント
・ppt ツール案を使用した、試行的な環境教育活動の実施経緯と
実施先でのご意見等
以上
3
主なポイント
市民の環境行動を一層高めるためには、身近な公民館等の社会教育施設での環境教育を
第1章
充実させることが効果的
一方で
公民館等においては、ヒト・モノ・カネ・情報等が不足しており、
第2章
環境を扱いたいとの意向をもちながら、実施できていないところが多い
そうした現状をふまえて、公民館等の社会教育施設が実施しやすく、かつ有効と考えられる環境教育
の方向性、実践ポイントとして、以下が考えられる
Ⅰ
公民館等の社会教育施設ならではの環境教育
第3章
①地域の様々な課題に関わる
3-1.
環境以外のより身近なテーマを切り口にし、より幅広い環境教育になることをめざす
②「地域資源」をうまく活用する
自然、生物、産業、住民の方々など、普段から各施設に関わりある対象を環境の観点で
とらえなおす
とともに、施設利用者の隠れたポテンシャルを意識する
Ⅱ
環境教育を行う上での実践ポイント
第3章
①魅力的な環境教育事業の企画の仕方
3-2.
・目的を明確に意識する
・「地域の課題」
「地域資源」を収集、整理する
・企画担当者が自ら楽しいと思えるプログラムを企画する
②講師選定や受講者募集等の方法
・行政のウェブサイト等の活用
・講師候補に事前にアプローチする
・金銭価値以外のメリットを講師に訴求する
・過去のイベント参加者との関係づくり
③他施設との連携による活動充実
Ⅲ
公民館等の社会教育施設をサポートする機関・団体に求められること
①公民館等職員研修において、多面的な視点からの講座企画力養成をはかる
②教育委員会と環境部局が緊密に連携する
4
第4章
第1章 取り組みの背景と「公民館」
1-1.市民の地球環境問題への意識と行動
環境問題に関する市民の知識は、着実に高まっている。例えば、内閣府「環境問題に関
する世論調査(平成 21 年および 24 年に実施)
」によれば、
「3R」の言葉の認知度は、平
成 21 年の 53.3%から 24 年は 58.1%に、
「生物多様性」の言葉の認知度は 36.4%から
55.7%にそれぞれ増加している(いずれも「言葉の意味を知っている」
「意味は知らない
が、言葉は聞いたことがある」を足した割合)
。
それでは環境について何らかの行動をとっている市民は、どのくらいいるだろうか。環
境省「環境にやさしいライフスタイル実態調査(平成 25 年度)
」によれば、「物・サービ
スを購入するときは環境への影響を考えてから選択する」人の割合は、平成 20 年度の
23.8%から 25 年度は 41.2%に、
「運転の際には、不必要なアイドリングや空ぶかし、
急発進はしない」は 57.0%から 64.6%に、それぞれ増加している。一方で「日常生活
において節電等の省エネに努める」は平成 20 年度の 67.0%から 21 年度に 88.7%にい
ったん増えたあと、その後は少し減少して 25 年度は 84.0%になっている。同様に平成
20 年度から 21 年度にかけて行う人の割合が増えてその後に減っている項目は、他にも「ご
みは地域のルールに従ってきちんと分別して出す」
「日常生活においてできるだけごみを出
さない」などがある。
環境への知識や関心は高まっており、何らかの環境配慮行動を行う市民は増えていると
みられる。その一方で個別の行動をみると、行う人の割合がいったん増えてもその後にや
や後退しているものがある。このことからも、環境への関心を具体的な動きにつなげるよ
うな啓発活動の果たす役割は、依然として大きいことがうかがえる。地球環境問題への認
識を、身近な生活レベルでの環境配慮行動につなげる継続的な取り組みが必要である。何
よりも幅広い層の市民にとって、何らかの形で環境を考える機会が継続してあることが望
まれる。
地球環境問題の解決に向けて、わが国、そして市民一人一人が、これまで様々な取り組
みを行ってきた。とはいえ、このままの取り組みを進めるだけで、地球環境問題が解決で
きるわけでは必ずしもない。地球環境問題を解決するためには、市民一人一人が、行動の
量と質を一層高める必要がある。
今後、地球環境問題に取り組むにあたっては、市民一人一人が、日々の生活の中で、特
段意識せずとも、地球環境問題に関する情報に触れるとともに、環境に配慮した行動を自
然と取るようになる状況を作り出せるよう、日々の暮らしに身近な場面での環境教育をさ
らに充実させていくことが重要といえよう。
5
1-2.公民館に注目する理由
当WGでは、身近な環境教育の場として、公民館に注目した。
その第一の理由は、公民館が市民の日々の生活にとって「身近」で「信頼できる」存在
だからである。文部科学省「学習活動やスポーツ、文化活動に係るニーズと社会教育施設
等に関する調査」
(平成 18 年度)では、公民館に対する市民のイメージとして、
「親しみ
やすい」
(41.7%)が最も多く挙げられており、次いで「信頼できる」(13.0%)も支持さ
れている。
第二の理由は、市民の「学習の場」に対するニーズと公民館の特徴がよく合致するから
である。同調査では、学習者が「今後行いたい学習活動に関する動機」として、
「身近な場
所でできる」
「費用がかからない」
「仲間づくり」が上位を占めている。また、現在学習を
行っていないが、今後何らかの学習を行いたいと考えている人の動機においても、
「身近な
場所でできる」
「費用があまりかからない」が上位を占めている。そして、学習活動の場と
しての認知度において公民館(81.8%)は、図書館(90.6%)に次ぎ 2 番目であり、博物
館・美術館(77.5%)や動物園・水族館・植物園(70.4%)を上回っている。
しかし、学習の場として公民館を実際に利用している人はまだまだ少ない。直近 6 か月
に何らかの生涯学習施設を利用した人(全体の 64.5%)のうち、公民館を利用したことが
ある人(19.2%)は、図書館(43.2%)の半分以下で、また、博物館・美術館(21.2%)
よりも少ない。施設数(公民館:15,399、図書館:3,274、博物館:1,262(文部科学省「社
会教育調査」
(平成 23 年度)より)
)を踏まえると、公民館はもっと多くの市民に利用さ
れる可能性がある。
公民館は、
「身近で」
「信頼できる」とのイメージを持たれており、幅広い世代の市民へ
の環境教育の場として、今後の可能性は非常に大きい。
1-3.本提言における「公民館」
公民館は、社会教育法第 20 条において、
「市町村その他一定区域内の住民のために、実
際生活に即する教育、
学術及び文化に関する各種の事業を行い、もつて住民の教養の向上、
健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的
とする」とされている。また、行う事業として、同法第 22 条で、①定期講座を開設する
こと、②討論会、講習会、講演会、実習会、展示会等を開催すること、③図書、記録、模
型、資料等を備え、その利用を図ること、④体育、レクリエーシヨン等に関する集会を開
催すること、⑤各種の団体、機関等の連絡を図ること、⑥その施設を住民の集会その他の
公共的利用に供すること、が挙げられている。
ただし上に述べたような、公民館と同じ機能・役割を担う施設であっても、地域によっ
ては、市民センター、コミュニティセンター、社会教育センター、市民館、交流館など様々
6
な名称を付けられた施設がある。また全国には、市町村が設置した「公立公民館」
(約 15,000
館)だけでなく、住民自らが設置・運営している「自治公民館」も約 77,000 館ある(公
立公民館数は文部科学省「社会教育調査」
(H23 年度)
、自治公民館数は全国公民館連合会
調査(平成 14 年度)より)
。
本提言における「公民館」とは、正式名称や呼称に公民館が付いているかいないかに関
わらず、社会教育法第 20 条に定められた目的達成のため、同法第 22 条で例示された事業
等を行っている施設として定義する。その中でも特に、館主催の行事を職員等が企画・運
営等に関わって実施している施設とする。
「公民館」には貸室業務のみを行っているところ
や、常勤スタッフがいないところも多くあるが、そうしたところは今回の提言で訴える、
環境教育の実施は難しいと考えられるため、考察の対象から除く。
また、図書館や博物館、科学館、生涯学習センター、青少年教育施設等においても、そ
れぞれの館主催の行事を実施している施設については、
「公民館」と同様、暮らしに身近な
環境教育の「場」となりえる「公民館等の社会教育施設」として、考察の対象に含める。
以下では狭義の公民館のみをさす表現として「公民館」、公民館を含めた社会教育施設を
さす表現として「公民館等」と記す。
1-4.公民館の現状
今回の考察の主対象である公民館について、現状を簡単にまとめる。
(1) 施設数
文部科学省「社会教育調査」
(平成 23 年度)によれば、類似施設を含む公民館の施設数
は 15,399 館と、11 年度調査において 19,063 館と過去最高を記録して以降、減少が続いて
いる。
(2) 職員数
平成 23 年度の職員数は 49,306 人で、14 年度調査で 57,907 人と過去最高を記録して以
降、減少が続いている。
(3) 予算
文部科学省「生涯学習センター・社会教育施設の状況及び課題分析等に関する調査」
(平
成 23 年度)において、直近3か年の予算総額がほぼ同水準と答えた公民館は 54.7%、減
少傾向にあると答えたところは 39.3%である。
(4) 利用者等の環境問題に対するニーズ
文部科学省「学習活動やスポーツ、文化活動に係るニーズと社会教育施設等に関する調
査」
(平成 18 年度)では、学習者のいわゆる「現代的課題」に関する関心の中で、「情報
やコンピュータ(46.1%)
」に続いて「自然保護・環境問題」
(33.1%)は 2 位であり、学
習者の環境問題に対する関心は高い。
7
また同調査では、公民館を所管する教育委員会が認識している学習者のニーズについて
も調べているが、その中で、
「自然保護・環境問題」
(52.0%)は、
「医療・保健・福祉」
(56.7%)、
「少子高齢化・介護」
(55.8%)に続く 3 位である。
(5)社会教育施設運営上の課題
同調査では、公民館などの社会教育施設等の運営に対する学習者全体の評価として、
「住
民のニーズ等を踏まえた運営に向けて努力しているとは思うが、不十分である」(39.3%)
等の否定的な評価が半数を超えた。
公民館は施設数や職員数、予算が減らされているなか、環境を含めた様々な社会課題を
効果的に扱うことが求められている。
第2章 取り組みの流れ
2-1.当WG設立までの取り組み
(1) 関西の公民館へのアンケート調査
当部会は上記をふまえて、公民館を主対象として、暮らしに身近な場面での環境教育の
充実に向けた検討をはじめることとした。そのために公民館における環境教育の現状や課
題等をより具体的に把握するため、関西の公民館を対象に、平成 23 年 11~12 月にアンケ
ート調査を行った(回答数は 34 件)。主な結果は、以下のとおりである。
環境に関する教育活動を行う意向が「ある」と回答したのは 47.1%、
「ない」と回答し
たのは 50.0%であった。次に、環境教育活動を行ったことがあるかどうかを質問したとこ
ろ、
「ある」は 38.2%、
「ない」は 61.8%であった。
約半数の施設で環境教育を行う意向をもち、その一方で環境教育活動を約 3 分の 1 の施
設で実施しているということであった。つまり約 6 分の 1 の施設で意向はあるが行ったこ
とはないということが明らかになった。
なお「意向がある」との回答者に対し、
「実施する場合の分野」を質問したところ、「自
然観察・生態系(生物多様性)保全」(62.5%)、「資源消費削減(リサイクル)」(18.8%)
の順であった。
また、環境教育活動の実施にあたっての課題としては、
「専門的なことを話せる講師の確
保」
(61.8%)
、
「資料あるいは設備の充実」(5.9%)の順であった。
8
(2) 関西の社会教育関係者へのアンケート調査
前項のアンケート結果から示唆される今後の可能性やそのために克服すべき課題につい
てより具体的に把握するため、平成 24 年 1~3 月、教育委員会の社会教育主事や、公民館
等(図書館や博物館等を含む)の社会教育施設関係者の計 97 名に対するアンケート調査
を行った。
その内容は、①公民館等での環境教育に関する意向の有無とその理由、②公民館等で望
まれる環境活動、③公民館等で環境教育を行う上での課題、④環境以外で公民館等に求め
られているテーマ等である。得られた回答は、先のアンケート調査での傾向とほぼ同じで
あったが、その理由や背景を生の声として確認することができた。得られた主な知見は、
以下のとおりである。
(a)公民館等での環境教育に関する意向の有無とその理由
「意向があり実施している」という回答が多く寄せられ、公民館で地域の生きものにつ
いての講座開催、図書館での打ち水の活動や、博物館での公害をテーマとした展示など、
施設ごとに様々な活動がされていることがわかった。
「意向はあるが実施していない」とい
う、前述の「約 6 分の 1」の公民館施設と同じ回答は 5 人から回答があった。
「実施してい
ない」
「実施する意向はない」場合の理由として、
「地域としてのニーズがない」
「受講者が
見込めない」との回答が多く聞かれた。また、「予算不足」「スタッフ不足」との回答もあ
った。
(b)公民館等で望まれる環境活動
「リサイクル」
、
「自然観察」の順に回答が多く、次いで「地球温暖化問題・低炭素化」
、
「省エネルギー」が続いた。また、
「生活に密着したわかりやすい講座」「家庭や地域で無
理なく取り組める活動」
「地域資源と結びついて地域への関心が高まるテーマ」を望む回答
もあった。
(c)公民館等で環境教育を行う上での課題
「講師の確保」
「受講者の確保」が二大課題として挙がった。それらに関連して、講師を
確保する上での「外部機関との協力」や、受講者を確保する上での「広報活動・手段」の
必要性を指摘する回答が多く見られた。加えて、
「企画にあたっての情報の不足」
「運営等
のノウハウの不足」
「スタッフ不足」
「予算不足」等を課題として挙げる回答もあった。
こうした回答は、環境教育を実施する場合のみの課題ではなく、現在、公民館等が、ヒ
ト・モノ・カネ・情報をどのように確保するかという難問に直面していることの現れと思
われる。
9
(d)環境以外で、公民館等に求められているテーマ
「防災」
「高齢化対応・介護・健康」
「子育て」
「まちづくり・コミュニティ再生・地域活
性化」との回答が多くあった。東日本大震災後で特に「防災」がクローズアップされ、さ
らに近年の大きな社会課題である少子高齢化に対応する必要が、社会教育関係者の間で認
識されていることがうかがえる。
なお文部省(当時)生涯学習審議会答申「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興
方策について」
(平成 4 年)のなかで、生涯学習で扱われるべきものとして「現代的課題」
が挙げられた。その内容として「生命、健康、人権、豊かな人間性、家庭・家族、消費者
問題、地域の連帯、まちづくり、交通問題、高齢化社会、男女共同参画型社会、科学技術、
情報の活用、知的所有権、国際理解、国際貢献・開発援助、人口・食糧、環境、資源・エ
ネルギー等」
が例示されたが、
「社会や人々の生活の変化に応じて流動的なもの」とされた。
(e)まとめ
社会教育関係者は、公民館等の社会教育施設を地域づくりの拠点として認識しており、
地域住民が社会課題に触れ、また、地域の様々な団体と繋がりを持ち、協力・連携してい
く上でのコーディネーション機能を有する場となることを企図している。また、環境や防
災等、現代的な課題についての学びの場を提供することを通して、新しい公共づくりに貢
献したいという思いをもっている。
一方、公民館等においては、こうした期待を実現するにあたって、ヒト・モノ・カネ・
情報が不足しているという難しい課題に直面している。特に運営上厳しい状況にある公民
館においては、様々な工夫等を凝らして活動を行うところもあるが、同時に外部からの協
力や他団体との連携を希望していることがうかがえる。
2-2.当 WG 設立と、それ以降の取り組み
(1) WG の設立
以上の知見を踏まえ、公民館等における環境教育を充実させるために、
a.環境教育の実際例の中から、多くの受講者が集まり好評を得たもの等、今後の公民館
等での環境教育の参考になるものを収集する。
b.公民館等での環境教育を実施する上でのポイントを、講師の選定や受講者の募集等、
ステップごとに示す。
こととし、環境教育や公民館活動に携わっている方々に外部委員として参加いただき、平
成 24 年 8 月、地球環境関西フォーラム 環境教育・啓発部会の下に、
「暮らしの中での環境教育促進事業ワーキンググループ(以下、WG)
」を設置した。
10
(2) WG における活動
①検討会の実施
各回のテーマを決めた上で、WG設立を機に就任いただいた専門委員の方々に情報提供
をお願いし、その内容を全員で討議する形で検討を進めた。
平成 24 年度は、公民館等における環境教育の実際例の収集と、環境教育の企画のしかた
をテーマに検討を行った。
25 年度のテーマは、講師の選定、広報、他組織との連携、調整の仕方等について。
26 年度は、職員研修や暮らしを題材にした環境教育等をテーマに検討するとともに、報
告書への記載内容を詰めた。
なお、各地の社会教育施設を訪問し、また環境教育関係者や公民館関係者が集まる場で
発表・意見交換を行うなど、提言内容の確認と見直しを行った。
②試行事業の実施
当 WG ではまた、本提言を出来る限り環境教育の実践に役立つものとするため、得られ
た知見をもとに、環境教育のプログラムを作成し、平成 25 年度に市民向けに 2 箇所計 3
回、公民館職員向けに 1 回、それぞれ試行事業を行った。
なお、試行事業の内容、ならびにそこから得られた知見は、当フォーラムのウェブサイ
ト(http://www.global-kansai.or.jp/ichiran/kyoiku-teigen.html に掲載)で紹介している
ので併せてご覧いただきたい。
[コラム]
公民館にできること
~奈良市の公民館では~
(公財)奈良市生涯学習財団
事務局統括主任 佐野万里子
奈良市には、市内全域を対象とする大型館3館と、ほぼ中学校区に 1 館の割合で設置さ
れている地区公民館 21 館、合計 24 の公民館があります。指定管理者として、この 24 公
民館の管理・運営を行っているのが、公益財団法人奈良市生涯学習財団(以下、
「財団」
)
です。
財団では、地域のみなさんが気軽に
歩いて行くことのできる身近な場所に
ある地区公民館が、地域づくりや地域
の課題解決にとても重要な役割を担う
と考えています。それぞれの地域で、
その環境やそこに暮らす人々が異なり、
地域資源も課題も異なるからです。そ
こで、事業計画において、地区公民館
奈良市の公民館配置図
が「地域の特性・課題や地域住民のニ
ーズ等に即した事業展開を行う」
こと、
11
「地域の拠点としての役割を担い、学校や各種活動団体との連携を図る」こととしていま
す。また、重点的に取り組む分野として「高齢者・男女・青少年・家庭教育・現代的課題」
の 5 つの分野を設け、全施設での事業開催を必須としています。
地区公民館では、こうした事業計画や重点分野に基づき、限られた予算、3~4 人という
限られた職員で、地域のみなさんのニーズや課題の把握に努めています。
登美ヶ丘公民館は、高齢化が進行するなかで地域の高齢者をどう見守るかという課題に
対し、地域の福祉施設等と連携・協力し、高齢者サロンを運営するボランティアを養成す
る講座を開催しました。
また、南部公民館は、小学生対象の事業を企画する過程で地域の NPO と出会い、地域
の課題「地域性の異なる 5 つの小学校で異なる育ちをした子どもたちが 1 つの中学校に進
学するため、新生活に慣れるのにエネ
ルギーを要し、つまずいてしまうこと
も少なくない、不登校や学力低下が心
配である」ことを知ります。そこで、
この NPO と協働で、課題解決に向け
た講座を開催しました。不登校になら
ないよう、小学校区を越えた仲間づく
りや豊かな人間形成の糧となる体験活
動の提供を目的としたこの講座は、青
年ボランティアスタッフの学びの場と
もなっています。
他にも、富雄南公民館では、地域住
南部公民館「なんなん?おもしろ体験隊」の様子
民の健康を見守る仕組みをつくろうと、
市の健康づくりの担当課と連携した講座を開催しました。健康づくりに関心の高い地域の
ため、毎回多くの方が参加し、自身の健康状態を把握し、記録をつけて管理することがで
きるようになるだけでなく、
運動習慣づくりや仲間づくりという点でも成果がありました。
このような、地域の課題に対して多様な他者と協働で取り組む講座は、奈良市だけで行
われているわけではありません。
全国各地の公民館が、それぞれの地域の課題解決のため、
地域資源を活用しながら日々取り組んでいるのです。
しかし、こうした事業は、
「自然に」できるようになった訳ではありません。職員がこれ
まで培った知識・経験を活かして企画・立案することはもちろんですが、力量を形成する
ための研修が必要です。奈良市では、外部の研修に参加する他、年に 1 回は他市町村の公
民館職員等を講師に招いた全体研修を実施し、先進的な実践事例と職員の役割を学んでい
ます。また平成 23 年度からは、近隣の 4~5 公民館が集まって隔月でブロック別研修を実
施し、財団内での情報共有・経験交流を行っています。
このブロック別研修において地域の課題を出し合った結果、ブロック内の公民館が協働
で取り組む事業が生まれた例もあります。
奈良市の東部山間地域にある 5 公民館では、いずれの地域も、過疎化や少子高齢化が大
きな課題となっています。そこで、東部ブロックでは 2 つの事業を考えました。ひとつは、
「まるまる一日デイキャンプ」です。子どもが減り、大人数のなかでの共同体験をする機
会が少ないことから、東部 5 地域の子どもたちを一同に集めてデイキャンプを開催してい
ます。初めて会う子どもたち同士でも、仲良く楽しく活動できるよう、班を編成し、大学
生ボランティアの協力も得ながらハイキングや夕食作りなどの活動を進めていくのですが、
12
こうした大きな事業は 5 公民館の連携でなければできないものです。
もうひとつは、
「プチ田舎暮らし」という共通のタイトルをもつ講座です。東部山間地域
には魅力的な地域資源が数多くあるので、地域の方を講師に迎え、その地域資源を活用し
た講座を開催することで、市街地の方
に東部山間に来てもらい、地域を元気
にしようというもので、その成果が認
められ、平成 26 年度からは市の委託
事業として取り組んでいます。
このように、公民館は、地域資源を
活かした地域コミュニティの活性化や
「プチ田舎暮らし」ロゴと東部地域地図
地域課題の解決の拠点となることが期
待されています。また、多様な人々・団体との協働により、それに向けての取り組みも進
んでいます。さらに、研修を通してスキルアップも図っています。
このノウハウを活かし、公民館が「環境問題」に取り組むことももちろん必要だと思い
ますが、そもそも公民館が取り組んでいる「より“豊か”に生きること」や「地域課題の
解決」において、
「環境」は切っても切り離せないものだと考えています。これからも、地
域のみなさんと、日々の暮らしについて語りあい、学びあい、
「環境」も含めた「より“豊
か”
」な地域づくりに貢献していきたいと思います。
第3章 公民館等における環境教育を一層充実させるために
本章ではまず環境教育の定義を整理したうえで、主として環境教育を実施する意向はあ
るが実施できていない「公民館等の社会教育施設」
の館長やスタッフ等の関係者に対して、
具体的なヒントとなる情報を紹介する。
3-1.
「公民館等の社会教育施設ならでは」の環境教育とは
(1)「環境教育」の定義
環境教育には様々な定義があろうが、多くの人の共通認識とされている概念としては、
次のようなものになろう。1975 年に開催された国際環境教育会議で採択されたベオグラー
ド憲章においては、環境教育の目的は、
「環境とそれにかかわる問題に気づき、関心を持つ
とともに、当面する問題の解決や新しい問題の発生を未然に防止するための知識、技能、
態度、意欲、遂行力を身に付けた人々を育てること」とされている。
また、わが国の「環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律」では、
「持続
可能な社会の構築を目指して、家庭、学校、職場、地域その他のあらゆる場において、環
境と社会、経済及び文化とのつながりその他環境の保全についての理解を深めるために行
われる環境の保全に関する教育及び学習」とされている。
13
二つの定義のいずれにおいても、環境問題解決あるいは持続可能な社会構築をめざすう
えでの課題を理解し、解決に向けた行動ができるための学びがポイントである、といえよ
う。最近は特に「持続可能な開発のための教育(ESD: Education for Sustainable
Development)
」への注目が高まっているが、その実施に必要な観点として「他人との関
係性、社会との関係性、自然環境との関係性を認識し、
『関わり』、
『つながり』を尊重でき
る個人を育むこと」
「そのため、環境、平和や人権等の ESD の対象となる様々な課題への
取組をベースにしつつ、環境、経済、社会、文化の各側面から学際的かつ総合的に取り組
むことが重要」とされている。
(文部科学省ウェブサイト http://www.mext.go.jp/unesco/004/1339970.htm より引用)
以下では、上記の環境教育の定義をふまえつつ、必ずしも環境に関心がない人にとって
も取り組みやすい実際例を挙げたうえで、公民館等が取り組むべきプログラム開発の方向
性について述べる。
(2)公民館等が関わる環境教育の事例
公民館等の社会教育施設が関わる環境教育の中から、長年にわたって継続実施されてい
る事例を三つ紹介する。
【事例1】小学生と地域の人たちによる農作物栽培・加工・調理
農業を主な生業とする地域で、農業従事者の高齢化が進むと共に、後継者不足という問
題にも直面していた。そこで、小学校の全学年を対象として、学年によって異なる農作物
を地域の人たちと一緒に、種まきから収穫、加工・調理(例:たくあん漬け・販売、そば
打ち、豆腐作り)までを体験してもらうプログラムを、地元の公民館が地区内の小学校と
連携して始めた。
【事例2】里山づくりを起点とする地域の場づくり
ある地域で住民間の交流が減少しているという課題に直面していた。そこで、地域の人
たちが集まる場を作ろうと、地元の公民館が地区内の小中学校と連携して、地域を一望で
きる高台に里山を作ることを始めた。続いて、炭焼き窯やビオトープ、竪穴住居などの施
設を順番に整備した。また、里山でキャンプ等のイベントを開催することにより、里山に
集まる人を増やした。そのための労働力は、小中学校等と連携しながら、イベントの参加
者等に、次の機会には、ボランティアとして参加してもらうことにより確保している。
14
【事例3】希少淡水魚の人工繁殖をきっかけに、意見の異なる人たちが対話
ある用水路に希少な魚が生息しており、それを巡って、自然保護団体と用水を使用する
農家とが長年対立状態にあった。そのような中、地元の小学校が魚の人工繁殖に取り組む
ことになり、両者が協力することになった。それをきっかけとして地元の公民館が仲介し
て両者の話し合いの場が設けられるとともに、地元のお米を食する会や、川の清掃活動等
が行われるようになった。
(3) 地域の様々な課題に関わる環境教育
前項の事例1と2は、そもそもの活動のきっかけや目的が、環境問題を知ることや学ぶ
ことではない。事例3は、きっかけは生物多様性保全であっても、地域における対立の解
消に重点が置かれている。その意味で環境教育ではないとの意見がありうる。
それに対して当 WG としては、
「環境教育は柔軟に多様な要素を入れることで、広がりと
深みが生まれる」と考えている。紹介した三つの事例について、例えば、事例1は、農作
物の栽培から加工・調理までを体験することを通じて、私たちが日頃食べているものがど
のように作られているか、また、そこにはどのような苦労があるか等がわかり、
「残さず食
べよう」
「すべて使おう」という意識に繋がる。事例2は、里山づくりを通じて、一度失っ
てしまうと自然を再現するのは難しいという認識をもつきっかけになりうるし、キャンプ
への参加を通じて、それまで気づかなかった里山における自然や生き物を発見する機会に
なる。事例3も、活動の意義としては、自然保護団体と農家の対立解消ということに重点
が置かれるかもしれないが、希少な生物保護と持続可能な農業の両立という課題を考える
機会になる。
環境教育をどのように行うかを考えるにあたって、環境の問題やその解決策に正攻法で
のアプローチをすると、以下のような考え方に陥りやすい。
a.
「環境教育とは地球温暖化問題やごみ問題、生物多様性の保全といったテーマに真正面
から長期継続的に取り組むものである」→「しかし、自分たちにはそのような知識も
時間も予算もない」→「だから、自分たちが環境教育を行うのは無理である」
b.
「不要な電気のスイッチは切りましょう、ごみは分別して捨てましょう、といったこと
は誰もが知っており、聞き飽きている」→「そんなテーマに地域の皆さんは興味がな
いはず」
このような考え方では、
「環境教育は実施しにくい」という結論に繋がってしまう。実
際に、当 WG における関係者へのヒアリングの中でも、
「環境教育と言えば、分別回収し
なさいといった話でしょう。しかし、市民の皆さんはそのような話には興味がなく、受講
者は集まりません。だから、当館では環境教育を行わないのです」といった意見を伺った。
環境を正面から扱う環境教育はもちろん大切である。そのうえで当 WG では検討の対象
を広げて、地域の様々な課題に関わる、いわば幅広い意味での環境教育の意義や可能性に
公民館等のおかれた状況を勘案しながら着目したい。
15
例えば、環境に必ずしも関係しない活動であっても、公園や里山を会場にしてみる。ま
た、話の流れの中で、地球温暖化問題やごみ問題にも少し触れてみる。そうした形で無理
のない範囲で、環境の要素を少し加えていただく。そのことにより、受講される方にすれ
ば、
面倒なことを習わされるのではないか、
といった抵抗感をもたずに参加しやすくなる。
実施される方にとっても、環境教育を正面からとらえようとすると力んでしまうが、身近
なテーマを扱う延長に環境の要素を少し入れるということならば、無理なく実施しやすい。
さらには、地域の様々な課題に関わる活動は、環境教育の本来的な目的に沿った活動に
なる可能性を秘めている。特に持続可能な社会構築をめざすにあたっては、p.14 に紹介
した「持続可能な開発のための教育(ESD)
」の考え方である、様々な事象の関係性を認
識し「環境、経済、社会、文化の各側面から学際的かつ総合的に取り組む」ことが重要と
なる。環境以外の、より身近な地域での暮らしに沿ったテーマを切り口にすること、そこ
に環境の観点を見出すことは、現代社会から環境教育に向けられる要請でもある。
このような広い意味での環境教育を実施するにあたっては、公民館等で実施する他の事
業と比べて、特別変わったことをしていただく必要はない。
公民館等で新しい事業を企画する場合、まず「地域社会において解決すべき課題は何か」
、
あるいは、
「地域の人たちは何に関心を持っているか」という点をまず考えることであろう。
地域の様々な課題に関わる環境教育の企画も同様である。
ただし、その際、対象をあまり狭い範囲に絞ってしまうのではなく、当該課題が他の問
題とどのように関わっているかということを、少し広めに考えていただくことをお願いし
たい。冒頭にも述べたとおり、環境問題は、地球全体の非常に多岐にわたる問題である。
幅広く考えていただくことにより、取り扱う問題に付け加えていただく「環境」の要素も
見つけやすくなるはずである。
[コラム]
公民館等で「環境教育」をはじめるための視点
(公財)京都市環境保全活動推進協会(京エコロジーセンター指定管理者)
事業部事業第 1 課課長補佐 新堀春輔
「環境教育」と聞くと難しい環境問題に対する知識が求められ、尻込みするという声を
よく耳にします。しかしながら、
「環境教育」は、私たちの暮らしと「環境」のつながりや
関わり方を見直すための教育であり、私たちの行動について考える機会であり、非常に多
様な切り口でのアプローチが可能なものといえます。まずは、難しい環境問題を直接的に
取り上げるものだけが環境教育ではなく、もっとひろく柔軟に「環境教育」を捉えること
をお勧めします。
少し環境教育の考え方について深く見てみると、私たちが環境教育によって解決しよう
としている環境問題の根本原因は、私たちの環境とのつながり方・関わり方であり、解決
のためには私たちが暮らす社会、経済、政治のしくみや、それを支える価値観や、制度、
16
私たちの生活の中での選択等、
多様な切り口で再考する機会が必要になります。そのため、
環境問題を真っ向に考える局部的な環境教育だけでは、不十分であることは明らかであり、
幅広い領域から考えていく必要があります。実際、国際的にも「環境教育」を「持続可能
な開発のための教育(ESD)」の一環と位置づけ、暮らしや社会に関わる様々な問題と環
境をつなぎながらアプローチを進める動きとなっており、もちろん日本においても同様で
す。
このような視点で環境教育を捉えるとき、環境教育を真正面から捉えるというよりはむ
しろ、様々な切り口に環境の要素をちりばめたアプローチを繰り返すことが効果的だとい
えます。
例えば、クッキングのイベントで、旬の食材の利用やどのような農法で、どのような農
家がつくったのかといった話をしたり、レシピに食材の使い切りのアイディアを盛り込ん
だりしてみる。工作のイベントで国産材を使用し、国産材の利用や森林と私たちの暮らし
についての話を盛り込んでみる。裁縫の教室やイベントで、要らなくなった衣服を持ち寄
り、それをおしゃれにリメイクする。バザー等のイベントをしていれば、バザーで不要に
なったものを必要とする人に渡して再利用することの意義を少し発信してみる。このよう
なちょっとした視点やアイディアを追加するだけで、楽しむだけのイベントに「環境につ
いて考えるきっかけ」を付加することができ、私たちの毎日の暮らし、具体的には「衣食
住」と「環境」のつながり・関わり方を見直すきっかけにすることができます。
夏野菜を使ったクッキングイベントの様子
まちで森とつながるくらしを考えるイベントの様子
(国産材の端材を使った積み木体験)
もう一つ、環境教育をより実践しやすくするための視点として、様々な社会資源*を活用
することをお勧めします。企画の全てを公民館等の単独で、そこの職員の皆さんだけで実
施する必要はなく、すでに存在する社会資源をうまく活用することでより多様で魅力的な
活動が展開できる、という視点です。実際に、ほとんどの自治体では環境に関する情報や
環境教育・環境学習に関する情報を提供または公開しているし、自治体によっては環境教
育・環境学習を推進するための施設や組織を持っている場合もあります。例えば、京都市
みやこ
では「京都市環境保全活動センター( 京 エコロジーセンター)
」を設置し、市民の環境学
習や環境保全活動を推進する役割を担い、必要に応じて出前講座や、環境学習ツールの貸
し出し、協働での研修・イベント等の事業を行っています。京都市のように環境教育に特
化した施設等がない場合でも、環境教育を行っている NPO を始めとした諸団体は多く存
在し、新たな活動の場を求めている場合や、要望があれば出前講座等に対応してくれる場
合も多いです。自分たちだけで悩むのではなく、様々な施設・団体・中間支援組織が相談
に乗ってくれるので、前述したような既存のイベント等に環境の視点を盛り込むアイディ
アや、共に企画を行うパートナーや講師の選出などに困ったら、気軽に相談することをお
勧めします。
17
京エコロジーセンターの外観
京エコロジーセンターで活躍する環境ボラ
ンティア「エコメイト」とスタッフ
「環境教育」の重要性・必要性は理解できても、これまで行ってきた事業に追加して、
独自で「環境教育」を行うとなると、負担に感じてしまうことは当然の心理だと思います。
しかしながら、公民館等での「住民に向けた新たな価値や魅力ある事業の展開」と、
「環境
教育の推進」を同時に実現することができればどうでしょうか。その実現に、ここに紹介
した 2 つのヒントが役立てば幸いです。
*「社会資源」…提言の中では、それぞれの地域における資源としての「地域資源」についての記載があ
りますが、ここでは地域の範囲にとどまらない、情報や各種資源の活用を含む、より広い意味で「社会資
源」という言葉を使用しています。
(4) ポイントは地域資源の活用
「地域の課題」の次ぎは、
「何を用いて、地域の課題を認識してもらうか」
「どのような
場なら、住民のニーズに応えられるか」、さらには公民館等の社会教育施設としての使命を
果たす観点から、
「どのように自分自身の課題として認識してもらうか」「どのように課題
解決のための行動を促すか」等の検討が必要となる。
その際に、公民館等での事業を行う上でポイントとなるのは、
「地域資源」をうまく活用
することである。
環境教育という視点での「地域資源」として考えられるのは、地域の自然や生息する生
物、地域の産業、地域にある施設、地域に居住する人、勤務する人などである。
その地域の特徴を形作っている幅広い範囲のものが「地域資源」に該当するが、ここで
強調すべきことは、地域の居住者や勤務者等、
「ひと」を含むということである。地域を構
成し、その良さを引き出す最も重要な主体として地域に関わる人々がいることを積極的に
紹介する意味で、
「ひと」を「地域資源」のひとつとして位置づけたい。
それでは、
「地域資源」を活用した環境教育の事例をいくつか紹介してみよう。
一つ目は、その地域にある森や川を訪れる、そしてそこに棲む鳥や昆虫、植物を観察す
ることである。環境教育というカテゴリーで実施している、いないに関わらず、類似の活
動を実施している公民館等は多いと考えられる。その施設が意識する、しないにかかわら
18
ず、こうした活動は環境教育として位置づけることができる。
二つ目は、
「地域の産業を知る」という視点で、地域にある工場を訪問し、どのような製
品を作っているかを見学することである。こうした活動を行っている公民館等も多くある
ようである。その際に、生産設備だけでなく、併せて、廃棄物や排水の処理を見学したり、
ゴミを減量する工夫やリユース・リサイクルの取り組みについての話も聞いてみる。こう
した環境の要素を少しでも加えれば、
内容の濃い環境教育となる。
見学する側にとっても、
自分たちの住まいの近隣において廃棄物処理が適切に行われているかどうかということは
関心が高いはずである。地域の商店街やショッピングセンターを訪問する場合であっても、
同様の要素を付加することはそれほど難しくないだろう。
三つ目は、地域で栽培された農産物で郷土料理を作ったり、食べたりする会を開催する
ことである。その際の講師としては、長年、その農産物を栽培したり、その料理を作って
いる年長者が候補になるだろうが、併せて、昔と今の栽培方法や収穫量の違い等、その方
の体験に基づく話をしていただく。そうすれば、夏の暑さや冬の寒さ、雨の降り方の昔と
今の違い等から、地域の自然を考える環境教育の場となりうる。
こうした「地域資源」を活用した環境教育は、その地域で長年活動し、地域から信頼さ
れている公民館等の社会教育施設だからこそ可能となる。また、こうした「地域資源」を
活かした環境教育は、遠くから有名な講師を呼んだり、大掛かりなイベントを開催するの
に比して、比較的に少ない負担でできる。公民館等の社会教育施設関係者の皆さんには、
これまで扱ってきた「地域資源」を環境の視点からとらえなおして活動を進めることが望
まれる。
最後に、公民館としてぜひ意識して欲しいこととして、
「地域資源」とともに注目すべき
なのは、「施設の利用者」である。
公民館等で実施した行事の参加者、または、公民館等の設備をサークル活動等で使用し
ている人たちとぜひ率直な情報交換をしていただきたい。地域の課題や、施設へのニーズ
等、公民館等を実際に利用している人ならではの意見や要望を聞くことができるだろう。
そうすることにより、施設での行事の企画を行う上で大変参考となるだろう。さらに、施
設の利用者にはキラリと光る魅力をもち、いきいきと自身の世界を語る人がいる。そうし
た人々の隠れた可能性を見出し、
うまく働きかけることで、
講師の役割を担ってくれたり、
行事を知人に PR してくれることに繋がる。
19
[コラム] 施設利用者が味方!伝わる環境教育の方法
(特活)とよなか市民環境会議アジェンダ 21(豊中市立環境交流センター指定管理者)
事務局次長 正阿彌崇子
地域に根差した社会教育施設で、環境教育の講座やイベントを行うなら、ぜひ施設の利
用者に目を向けてみてください。利用者を仲間ととらえなおすことで、内容や集客に困ら
ない、伝わる環境教育ができるかもしれません。実際の社会教育施設の事例を紹介しまし
ょう。
●サークル団体を講師に
環境講座の講師を貸室の利用団体や施設の利用者に頼んでみましょう。必ずしも環境に
詳しい人にこだわる必要はありません。私は、夏休みの子ども向け講座で、陶芸サークル
に講師を依頼したことがあります。陶芸サークルメンバーとの会話の中で、陶芸がその地
域の土や歴史と深い関係にあることを知った私は、講座を環境教育として実施することに
しました。そして、目的を①自分の手でお皿を作ることによって物を大切にする気持ちを
育てる、②自分の地域と陶芸の関わりの歴史を知ることで、身近な自然の恵みから様々な
物ができていることを気付かせる、にしました。
2 時間×3 日間の連続講座で、対象は小学 1~3 年生 20 名でし
た。陶芸を教える部分はサークルが担当し、私は「陶芸の土
がどこから来たか」や「作ったお皿をどのように使っていく
か」をイメージできるように、作業の合間に陶芸と地域のこ
とがわかる紙芝居をし、陶芸の工程が写真でわかるワークブ
ックを子どもたちと仕上げました。
講座は定員に達し、子どもたちにもの作りの体験と、物と
自分と地域の自然のつながりを知ってもらうことができまし
た。
また、
日常的に施設を利用しているサークルだからこそ、
きめ細やかな安全対策や事前準備が行えました。さらに、陶
芸サークルメンバーが講師になることで、自らの活動の環境
的側面や公共的価値に気づき、自信を持ってくれたことも大
きな成果でした。その後、そのサークルは積極的に施設の運
陶芸でお皿作りの風景
営に関わってくれる強い味方になりました。
環境教育の相手は、講座参加者だけでなく、講座に関わってくれる全ての人だと考えて
みてはどうでしょう。そして、環境に詳しい人だけでなく、趣味のサークルも含めて、利
用者を見渡してみると意外な講師が見つかるかもしれません。
●講座講師と参加者が生み出した新しい環境の切り口
私は施設利用者や講座参加者の話をよく聞くように心がけています。趣味でも仕事でも
やりたいことでも話を聞いて、利用者の想いや人柄を確認できたら、一緒に企画する仲間
になってもらいます。
布ナプキン講座をした時、講座後に講師と 1 人の受講生から、命や体について、もっと
オープンに語り、みんなでその大切さを感じる場を持ちたいという話が出ました。そこで
後日、話し合いをし、施設と一緒に「環境×いのち×手しごと」という新しい切り口のイ
ベントや講座を企画することになりました。目的は、
「命の誕生の神秘さと素晴らしさを感
20
じることでその大切さを学び、自分や他者、環境を大切にできる人を育成する」にしまし
た。イベントに向け、その受講生が目的を共感する仲間を集め、団体を立ち上げました。
最初に行ったイベントは、内容ごとにいくつかの
コーナーを設け、助産師による命(出産)のお話、
薬に頼らず体をケアするメディカルアロマ体験、胎
児人形で命の誕生を学べるコーナー、布ナプキン販
売、産道を通る疑似体験のコーナーなど、命の大切
さを楽しみながら感じられるものとなりました。
大きな成果は、今まで施設だけでは伝え方や集客
に困っていた内容のイベントを、開催できたことで
す。広報も協働で行い、施設は公共的な場所での広
報を担当し、グループはチラシの作成、子育てサー
胎児人形で重さや大きさを体感
クルや講座などに出向いた広報、施設ができていな
い SNS を使った広報にも力を入れてくれました。その結果、2 時間のイベントで 70 人程
度の来場があり、今までの施設の広報だけでは、参加が得られなかった若い世代の親子や
教育関係者が参加しました。内容も命の大切さや尊さを改めて家族で感じるいい機会にな
ったと参加者から好評でした。利用者の声を活かし、想いを共有して、協働して企画や広
報を行うことで、最初に企画した女性対象の布ナプキン講座の想定を超えた、人々に伝わ
るイベントを実施できました。
利用者の声にはニーズとシーズの両方が隠れています。その声を活かして、関わっても
らいながら講座を作ると、利用者が率先して広報し、新しい人を連れて来てくれる講座に
なります。
これらの事例について、
「これが環境教育?」と思った方もおられるかもしれません。環
境教育、さらに広げて持続可能な開発のための教育(ESD)は、本来、取り上げるテーマ
やジャンルに制限がありません。何を題材にしようとも、企画者がその先に「自然と人と
のつながり」や「地域や社会の課題解決」を意識して講座やイベントの目的を立てること、
そして、長期的な人育ての視点を持つことで、環境教育になります。いわゆる「環境問題」
を前面に打ち出さなくても、施設利用者の興味の中から、自然や環境、地域などの要素を
入れることで、受け入れやすい環境教育になるのです。
利用者をサービス享受者ではなく、企画を共に作る仲間になりうる人々ととらえなおす
ことで、社会教育施設での環境教育の敷居は、企画をする施設運営者にとっても、参加す
る人にとってもより低いものになります。私は前述の事例以外にも、利用者と一緒に茶道
教室、国際理解講座、整理収納教室、野外リーダー養成講座、おもちゃ体験会、手作り市、
環境ギャラリーなど、様々な角度からの環境教育を企画してきました。どれも、日ごろか
ら積極的に施設利用者とコミュニケーションを図り、施設周辺地域の特徴や歴史に関心を
持ち、利用者に今まで取り上げられることの少なかった地域ニーズや課題などを教えても
らうことで、できあがった企画です。
講座に関わった利用者は、活動に対する視野が広がり、自信を持つことで、より地域の
活動に積極的になります。これは、啓発的な環境教育講座を超え、地域課題や環境問題を
克服する市民の育成につながる実践的な環境教育を行っているといえるのではないでしょ
うか。それこそが、地域に根差した社会教育施設の強みが発揮された、今、社会で求めら
れる環境教育だと思います。
*紹介した事例は筆者が公立の施設で指定管理として運営していたときに実施したものです。
21
3-2.環境教育を行う上での実践ポイント
3-1.で記した「公民館等の社会教育施設ならでは」の環境教育を改めて整理すると、
以下のようになろう。
・環境以外の多様な題材を取り上げるなかで、環境の視点をうまく織り込む
・地域資源を効果的に活用する
・公民館の利用者に講師や広報など、積極的に関わってもらう
こうした観点で事業を実施するうえで、いくつかの実践的なポイントが考えられる。当
WG で検討してきた内容を紹介する。
(1) 魅力的な環境教育事業を企画するために
①目的を明確に意識する
プログラムの企画にあたっては、その目的を意識することが何より重要である。そのプ
ログラムによって気づきを促す、考える機会にする、何らかの行動を後押しする、など何
を目指すのかを明確にする必要がある。そうすることで、企画意図に沿った受講者が集ま
りやすくなる。また目的が明確であれば、実施後の事業評価を定量的に行いやすくなり、
企画の改善につなげやすい。
② 「地域の課題」
「地域資源」を収集し、整理する
普段接する人や物、場所など、普段から接しているものを「地域の課題」
「地域資源」と
いう視点で見直すことが重要である。それには、地域の人々と様々な場面で接すること、
率直に話ができる場を意識的にもち、地域で困っていることや知られざる個々人の特技、
熱い思いなどを知ることが効果的である。地域の課題にアンテナをめぐらし、それぞれの
人の様々なポテンシャルを引き出せるように、普段から企画担当者が様々なネットワーク
を広げることが、魅力的な企画を生むことにつながる。
例えば西宮市では環境学習を地域づくりの大きな理念として都市宣言を行っており、各
地区に「エココミュニティ会議」があり、地域主体の環境活動推進がなされている。平成
10 年から始めている「エコカードシステム」では、学校、自治会、ボーイスカウト、文具
店、スーパーマーケットなどが地域資源であり、それらの人たちによる小学生の活動を支
えるネットワークづくりが地域づくりにつながっている。この活動では市内の小学校を対
象にして、生きものを大切にしたりエコ文具の購入をするなど環境にやさしい活動をした
際にエコカードにスタンプをもらえるしくみとなっている。
上記活動を実施する NPO 法人 こども環境活動支援協会(LEAF)は、防災と環境との
つながりを考える「まちの語り部活動」事業も実施している。これはまち歩きの中で地域
の歴史や風土、生態系について語り部が説明するものである。河川では過去の河道(かど
う)が震災時に構造物が被災した箇所と多く重なることを認識する等、地域の成り立ちを
深く認識し、未来を考える事業である。これらの情報を広く普及するためホームページ
22
「人・まち・エコつなげてマップ・にしのみや」も立ち上げている。地域の課題からスタ
ートすれば、環境だけでなく防災など他の現代社会における課題に対応した事業が生まれ
るといえる。
③企画担当者が自ら楽しいと思えるプログラムを企画する
さらに、魅力的なプログラムを企画するには、企画担当者自らが楽しいと思えることが
重要である。そのための一つの方法として、企画する事業の正式な目標以外に、担当者個
人の「ウラ目標」を見つけることも有効である。そうすることで、その企画自体が担当者
にとって「自分ごと」として思いを込めることができる。
「ウラ目標」は個人としての思いであるから、自分の問題関心、興味あることにつなが
っていれば何でもよい。例えば p.14 で記した事例 1(小学生と地域の人たちによる農作
物栽培・加工・調理)を企画したとすれば、それを機会にたくあんを自宅でつくってみる、
それを家族でおいしく食べる、ということを「ウラ目標」にすれば、さらに心のこもった
企画になるだろう。
以上をヒントにすれば、担当者にとっても自分の思いがこもった企画が実現でき、地域
の市民を引き付け、あわせて環境問題と生活との関わりを自分の問題として認識できるこ
とにつながりやすい。
(2) 講師選定や参加者募集等にあたって
①行政のウェブサイトを活用する
公民館等の社会教育施設が環境に関する講座等を企画するうえでは、専門性ある講師を
なるべく低コストで確保することが必要になる。そのためにはまず、行政等の環境教育関
連情報サイト等に公開されている講師リスト等を、積極的に利用してはどうだろうか。本
提言では巻末に、当 WG を構成する、行政による環境教育・環境学習関連情報サイトの紹
介を掲載するので参考にされたい。
②講師候補に事前にアプローチする
講師候補となる人が見つかれば、その人がどんなことに興味をもっており、どのような
内容の話をするのかはインターネットを通じてかなりの程度は把握できる。そのうえで、
可能ならば公開講座に企画担当者が参加し、実際にその人の話を聞く、あるいは質問する
などして対面で話をすることが重要である。その人となりを探り、地域資源と関連づけて
話してもらえそうかどうか等、検討することが有効である。また公開講座等に参加するも
う一つのメリットは、直接的に講師候補に会えなくても、同じようなテーマに関心をもつ
参加者と知り合いになり、
情報を得る、うまくいけば人を紹介してもらえる可能性がある。
23
③ 金銭価値以外のメリットを講師に訴求する
予算が少なくても魅力的な企画を実施する方法として、担当者が地域で様々な分野に秀
でた人に講師をお願いすること以外にどのようなやり方があるだろうか。一案として、講
師になってもらう人に、謝金以外のメリットを訴求したい。
その講師がそのイベントに関わることで、何を得られるのかを意識してみる。どういっ
たことを重視する人なのかを、集められる情報のなかで想像してみる。人によっては、自
分が普段接する世界とは違う場で、自分とは異なる視点を得ることに意義を見出すかもし
れない。その地域出身の人であれば、何らかの形で自分のルーツとなる地域の役に立ちた
いという人も多いだろう。人が何かを引き受けるときに、金銭的要素以外のものを勘案す
ることを意識することが重要である。
④ 過去のイベント参加者との関係づくり
過去の講座やイベントの参加者は、地域の知られざる魅力や歴史、課題などをいきいき
と語る意欲と能力に長けている可能性がある。そうした人々との有機的な関係づくりが、
次の講座やイベントの講師候補を生む場合が少なからずある。
そのうえ、過去の講座やイベントの参加者は、その社会教育施設のファンあるいは応援
団になってくれる可能性が高い。応募票や講座終了後のアンケートに、今後も案内を出す
ため住所や名前の記載をお願いすれば、またとない「顧客データ」を得られる。もちろん
個人情報であり情報管理の徹底は必要であるが、うまく活用すればそれらの人々は未来の
講師に、そして今後の講座やイベントの継続的な参加者に、さらには非常に効果的な口コ
ミでの広報協力者にもなってもらえる可能性がある。
[コラム]「事業企画担当者・事務局戦略論 ~事業を進める際の勘所~」
和歌山大学 地域連携・生涯学習センター 講師 西川一弘
効果的な事業実施の際には事務局力の向上と、企画の持ち方にひと手間・ふた手間かけ
るとより広がると思います。
「ストレートに「環境」や「防災」を掲げるだけでは同じよう
な人しか来ない」
「硬いテーマでの集客にはいつも困っている」
「なかなか人が集まらない」
、
そんな声をよく聞きます。大切なことは①テーマを単線的に捉えずに複線的・多角的に捉
えること、②手を変え、品を変える柔軟性を持たせること、③ひとりで考え込まずいろん
な人に SOS を発信すること、が大切になるでしょう。
①テーマの複線化・多角化“●●と言わない●●”
テーマを設定する際に直接的なテーマをあえて掲げない方法、あるいは別の価値を前面
に掲げる方法もあります。環境イベントを企画する際もあえて「環境」を前面に掲げない
方法です。例えば、川の清掃イベントを企画する際、
「川をきれいにしよう」とか「清流に
しよう」というアプローチだけではなく、
「きれいになった川で川下りをしよう」とか、世
界遺産の地域であれば「みんなで川の世界遺産を綺麗にしませんか」などのアプローチが
考えられます。また、熊野古道は「道が世界遺産」になっていることから、
「道普請」
(道
24
路を協働で補修・管理すること)の考え方をベースにボランティアプログラム化すること
で、付加価値を付けたアプローチも考えられます。
テーマの中身ではなく、場所を変えてみることも有効かもしれません。例えば限界集落
の問題をあえて都会の真ん中で考えてみるなど、現場や現地の人から離れたところから考
えるアプローチによって新たな視点を得られるかもしれません。
②手を変え、品を変える柔軟性
上記の様にテーマやタイトルに手を変え、品を変えることも大切ですが、事業企画プロ
セスにも手を変え、
品を変える柔軟性を持たせておくことが重要です。プロセスを大切に、
柔軟性を持たせるためには、
“実行委員会方式”が重要です。事務局だけで企画をしたり、
決定するのではなく、その討議・決定のプロセスに多様な人を巻き込むことで新たな知見
が得られると同時に、共に動いてくれるキーパーソンを見つけることができるでしょう。
外部企画委員には自分の“マイブレーン”となる人を入れておく方がいいでしょう。立
場上言えない・言い出せないことをその委員さんを通じて発言してもらえれば、角が立た
ずに議論のテーブルへ乗せることができるでしょう。
③ひとりで考え込まずいろんな人に SOS を発信すること
最も大切なのは担当者を含む「事務局」です。事務局の采配、力量によって企画や事業
の質は決まると言っても過言ではありません。事務局の想いと参加者意識は比例関係であ
り、参加者が少ない・意識が高まらないことは、翻って事務局の想いや方法が高まってい
ないことなのです。
事務局力を上げるためには、事務局の“マイブレーン”を確保しておく必要もあります。
SOS を発信できるマイブレーンが居れば常に相談に乗ってもらえる心強さがあります。マ
イブレーンは実は近くにいると思います。
「灯台下暗し」のように意外と近くに居すぎて気
づかない、思いつかないということもあるかもしれません。そんな時はまず携帯電話に登
録した電話帳を見て、ブレーンになりそうな人を探してみることもよい方法と思います。
上記三点を述べてきましたが、まとめるなら
ば
“異を繋ぎ、
新しい価値を創造していくこと”
だと思っています。
“●●と言わない●●”も“実
行委員会方式”も“マイブレーン”も、いかに
“異”と繋げていくのかだと思います。新しい
価値は基本的に“新しい組み合わせ”で生まれ
ると考えています。
公民館での環境教育推進であれば、首長部局
との連携も必須です。大きな組織では単独で事
“異”を繋げるコーディネーターの機能論
(当 WG 第 6 回検討会(H26.1.27)資料より)
業を推進しがちですが、組織の中には同じ目標
を持つ担当部局も存在します。今は組織が流動化
して一概には言えませんが、教育委員会社会教育・生涯学習部局が統括する公民館と環境
政策を推進する首長部局との連携もまた、組み合わせの一つでしょう。お互いの弱みを最
小化し、強みを最大化することで、環境問題の解決策の多様化と深化、新しい人材(キー
パーソン/参加者)の発掘、チャネルの拡大が図れることでしょう。
組み合わせの数を拡げ、新しい価値を創って参りましょう。
25
(3) 他施設との連携による活動充実
社会教育施設の関係者の中には、自施設だけでなく他の施設と連携した事業実施を目指
す方もおられるだろう。実際にそうした事例はある。特に東日本大震災後に公民館、博物
館、図書館での連携の動きが起こっている。施設間連携は環境教育の分野においても期待
される。いくつかの施設が協働して取り組むことで可能性が広がる。
例えば大阪市立自然史博物館は市民を自然へ誘うために大阪市立図書館、大阪府立図書
館と提携して、出張展示や連携イベントを実施している。環境への無関心層への働きかけ
による裾野の拡がり、環境や科学に関わるコミュニケーションの高度化、社会全体での環
境意識啓発のスパイラルアップ効果が期待できる。
そもそも自然への誘いは、博物館の展示内容だけでは完結しない。友の会や一般市民、
外部研究者等、情報をもった人が博物館に集い、それら外部支持者が情報を受けるだけで
なく再発信をしてもらうことが重要である。そのために展示、教育普及、収集保管、調査
研究を連動させており、市民参加イベントに力を入れている。こうした取り組みには、各
地域の公民館も参画しうるし、そうすることにより施設それぞれの活動に広がりが生まれ
る。
第4章 社会教育施設をサポートする機関・団体に求められること
第3章では公民館等の館長やスタッフに向けて、環境教育を実施するうえでのヒントと
なる情報をまとめた。それをふまえて本章では、公民館等の社会教育施設をサポートする
機関・団体に求められることをまとめる。
4-1.公民館等職員研修において、多面的な視点からの講座企画力養成をはかる
公民館職員向けの研修の機会としては、国や、都道府県及び市町村の教育委員会が実施
する社会教育主事研修や公民館主事研修、公民館関連団体等が実施する職員スキルアップ
のための研修などがある。そうした研修においては、地域における様々な課題を別々のも
のとして認識するのではなく、一見別々の社会課題であっても、その原因や結果を仔細に
みれば関連性があり、そこに着目すれば複数の社会課題を扱えることに気付く場となるこ
とが望まれる。
そもそも現代の社会課題には高齢化や子育て、地域らしさの再認識、防災、環境など様々
なテーマがある。それらを個別に専門的に扱おうとすると、何度も何度も講座やイベント
を開催することになるため、予算や人的な面で年々厳しさを増している公民館等の社会教
育施設においては、
扱うべきテーマが多くあるなか、
何かに絞らざるを得ないことになる。
一方で、個別テーマに対応した研修を個々別々に扱うやり方とは別に、一つの研修のな
26
かで多様なテーマを扱うアプローチがありうる。
例えば高齢化や子育てに関するテーマとして健康関連情報を扱うとする。その際に、大
気環境の現在における課題として報道されることが増えている PM2.5 も扱えば、自動車や
石炭の燃焼等に関連して多く発生することを伝え、国際的な環境問題の視点に言及するこ
とができよう。
また第3章では「地域の課題」
「地域資源」に着目することの重要性を述べた。地域らし
さの再認識として、例えば地域に固有の生物種をテーマにしてはどうだろうか。例えば近
畿地区には万葉集や枕草子など様々な古典にちなむ場所、登場する固有種などがある。奈
良の春日大社などいくつかの場所で万葉植物園があり、そこで見ることのできる植物を扱
えば、地域の文化的アイディンティティの認識とともに、環境教育の機会になる。奈良で
は鹿をとりあげて、郷土の文化と深く関わっている一方で農作物などに被害を与えている
ことを考える講座もありうる。
さらに、東日本大震災以降、非常に重要なテーマとして公民館等の社会教育施設関係者
に認識されているのが、防災であろう。防災を扱う講座においては、もちろん具体的な避
難のしかた等、実践的である必要があろう。ただその際に、一般的な防災知識だけでなく、
その地域に即した防災のあり方を知ることが重要である。特に近畿地区で対応が必要とさ
れている震災や津波については、地域によってその危険性や考慮するべきポイントが大き
く異なるはずである。基礎自治体で防災マップを作成しているところも多く、そうした資
料を使って専門組織の協力を得ながら、公民館で防災の講座をすることは有効であろう。
そして公民館ならではの切り口として、その地域の成り立ちや過去の災害について扱うこ
とが考えられる。沿岸部であれば、ジェーン台風や第二室戸台風の爪痕は防災碑などの形
で残されており、ご存命の体験者の方が多くおられるはずである。地域の郷土史研究会の
協力を得るなどにより、過去の被害を改めて認識する機会をもつことは重要な防災教育で
あろう。そのうえで、地域の公園等の残された自然を愛でながら防災マップを片手に散策
すれば、
地域の環境問題への認識にもつながる。
昨今の地球温暖化が海面上昇をもたらし、
ヒートアイランド化が集中豪雨を増やし、都市化が進んでアスファルトで表土を覆う都市
の在り方が河川の急激な増水にもつながることを認識する機会にもすれば、防災教育でも
あり、環境教育でもある内容となる。
このように社会課題を様々な側面から検討する見方は、p.14 で紹介した「持続可能な
開発のための教育(ESD)」につながる考え方である。こうした柔軟な観点から社会課題
をとらえるには、通常の形での座学の研修だけでなく、公民館職員や様々な社会教育施設
職員、ESD に関心をもっている環境教育関係者をはじめとした様々な人たちとの間で情報
交換をすることが重要である。
27
[コラム]公民館等の社会教育関係職員への研修の現状と今後の方向性
(公財)兵庫県生きがい創造協会生涯学習部生涯学習専門員
天満淳
公民館は地域の拠点施設として、様々な地域課題を解決するためにいろいろな事業を展
開しています。しかし、近年の行財政改革などの影響により、人員や予算の削減など公民
館を取り巻く環境は非常に厳しいものとなっています。公民館職員は事業の企画、運営、
実施など多くの業務を一人で行うことも多く、事業の充実に向けた職員の資質向上が求め
られています。
兵庫県では公民館等社会教育関係職員を対象に、社会教育推進に向けた専門的知識や技
能を習得するため、5 つのセミナーから成る「社会教育関係職員スキルアップ研修」を実
施しています。
(各 1 日、セミナーごとに募集)
① 企画力向上セミナー
・参加体験型学習により社会教育における課題、役割などを明確にする。
・企画のもつ「事業企画的側面」と「プログラムデザイン的側面」を理解する。
・
「前提条件」を定め、
「企画意図」を明確にし「企画書」を作成する。
② 評価力向上セミナー
・評価の必要性を学び、評価の全体像を知る。
・評価の指標をつくり、
「自己評価シート」
「集計表」「報告書フォーム」を作成する。
③ 広報力向上セミナー
・広報紙やチラシづくりのポイント、広報マンとしての心構えなどを学ぶ。
・イベントチラシの企画書を作成し、チラシをデザイン
する。
④ ファシリテーション力向上セミナー
・参加体験型学習により協働の場についてみんなで考え
る。
・グループでゲームを通して協働の場を体験する。
・ファシリテーションの理論を学ぶ。
⑤ コミュニケーション力向上セミナー
・コミュニケーションの基本を学ぶ。
ファシリテーション力向上セミナーの様子
・人を惹きつける話し方、説明力をつけるポイントを学
ぶ。
・伝達力実践トレーニング、プレゼンテーション実習
各セミナーは少人数(定員 20 名)で実施され、参加体験型
学習やグループワークを多く取り入れているため、熱心な情
報交換が行われるなど参加者同士の交流が深められ、市町の
枠を超えた人的ネットワークを構築することができます。
「スキルアップ研修」の他にも、経験が 2 年未満の職員を
対象とした「新任社会教育関係職員研修」や社会教育主管課
長や公民館長等を対象とした「社会教育・生涯学習主管課長及
参加体験型学習の様子
び社会教育施設長等研修」も実施しています。
事業が一方的な提供ではなく、地域住民が主体的に取り組
むものとなるよう、その仕掛けづくりをすることが公民館職員に望まれる役割となってい
ます。研修を通して、職員の資質を向上させるとともに、今後活用できる人的ネットワー
クを構築することが、公民館を中心とした地域課題の解決につながります。
28
4-2.教育委員会と環境部局が緊密に連携する
社会教育施設での環境教育を推進するうえで、管轄する各自治体の教育委員会と、環境
部局が協力しあえる関係にあることが望まれる。しかし現実には、緊密に連携されている
ところもある一方で、情報交換がほとんどなされていない場合もあるようである。
緊密に連携されている例として、ある自治体では教育委員会と環境部局が連携した環境
学習を推進するため、環境部局に教育委員会から職員を継続して配属している。この自治
体ではさらに下記の取組が行われ、両者の連携が効果的な取組として定着している。①環
境部局において地域の人材や NPO 等から募集、登録した環境学習サポーターが、教育委
員会が所管する体験型環境学習事業において学齢期の環境学習を支援する。②教育委員会
と環境部局が連携し、学校教育における環境教育の推進に関し、特に顕著な功績のあった
学校を表彰する。③環境部局が実施する高校生や大学生など環境づくりの担い手となる若
者世代を対象としたフォ-ラムやイベントについて、教育委員会が事例発表校の紹介や参
加募集などについて協力する、など。
また豊中市では「とよなか ESD 連絡会議」を数ヶ月に一度、様々な市民団体とともに
開催し、教育委員会や環境部、市民協働部、人権文化部等が会議に加わり、さらにもちま
わりで事務局を務めるなど、顔が見える関係性をもつ工夫がされている。また環境以外の
事例ではあるが、田辺市では教育委員会と防災・企画部局が連携して「防災ひとづくり」
をテーマとする人材養成講座を開催している。また、全体の人材養成についても教育委員
会とそれぞれの専門部局が連携して生涯学習推進計画を策定するなどの取り組みがなされ
ている。これらは人を育てるのが専門である教育委員会と、個別の課題について専門性が
深い部局が、うまく連携している事例といえよう。
環境部局には、地域社会に最も近い公民館などの社会教育施設をうまく活用して、その
事業の遂行を効果的に行うことを提言したい。具体的には教育委員会が実施する、地域資
源を活かして地域のよさを再認識するイベントに、何らかの形で環境的な視点を加えて事
業参加すること、などについて検討いただきたい。
逆に公民館を管轄する教育委員会関係者が、環境部局を知ることも重要である。そうす
ることで、p.15 で記したような、地域の様々な課題に関わる環境教育が多く生まれる。
公民館等の社会教育施設で環境教育を実施するうえで講師の確保が課題になることが第2
章で明らかになったが、ぜひ環境担当部署に相談することから始めていただきたい。
もともと関わっていた活動に異質な活動をかけあわせて相乗的な動きを起こすには、ま
ずはアンテナの感度を上げ、様々な情報を入手することからはじまる。その一助として、
巻末の「各行政の環境教育・環境学習関連サイトの紹介」を活用いただきたい。
29
◎終わりに
今、公民館等の社会教育施設は変革期にある。統廃合が進み予算が少なくなり人員も減
少するなか、
地域の課題解決の場として社会において今まで以上に期待が寄せられている。
今回の我々の取り組みは、環境教育が公民館等の社会教育施設で実施されるよう促進す
るためのものである。
環境教育は環境だけでは力を持ちにくく、社会における他の課題とかけあわされる形で
実施することで、より機会多く、また広範囲な参加者を得ることができる。防災や子育て、
地域づくりなど様々な社会課題の解決に向けて、社会教育施設が今まさに直面している課
題にこそ、
「持続可能な開発のための教育(ESD)」に通じ、今後の環境教育の可能性を広
げるきっかけがあるはずである。
公民館等の社会教育施設の関係者の方には、ぜひ本提言の内容を、貴施設での事業や活
動に役立てていただきたい。
あわせて、社会教育施設の運営を管轄される教育委員会や行政の方には、正面から環境
をとらえるものだけでなく、地域の課題や資源、現代的課題などにもつながる幅広い形で
の環境教育の視点をふまえて、施設関係者の研修等にぜひ取り組んでいただきたい。
また、行政の環境部局によるイベントは内容や参加者が固定化しがちのようだが、公民
館等の社会教育施設との協働を進めることにより枠を広げていただくことを望みたい。
本提言が公民館等の社会教育施設での環境教育促進に少しでも役立ち、暮らしに身近な
環境教育が促進され、ひいては今後の持続可能な社会構築につながるものになればと願っ
ている。
以上
30
◎地球環境関西フォーラム
環境教育・啓発部会のあゆみ
当部会の発足は平成 6 年であるが、その前身であるライフスタイル研究分科会以来、一
貫して市民、とりわけ次世代を担う若者を主対象とし、生活のあり方を見直し、より環境
を意識した暮らしを自律的に選んでいただくための情報提供や環境教育のあり方に関する
調査研究、実験、実践活動を行ってきた。以下、当部会の主な活動を紹介する。
・コンピューターシステムの開発等(平成 5~12 年度)
自己のライフスタイルをパソコンに入力すれば環境への影響・コストや修正すべき箇
所を示してくれる環境負荷の低減方法についてアドバイスするソフト「環境に優しい暮
らしのチェック」等を開発し、当フォーラムウェブサイトで開示。
・エコ商品の普及検討(平成 11~14 年度)
若者へのエコ商品普及を目的に、コンビニエンスストアと連携し、店頭のエコ商品に、
エコ商品であることを示す表示を取り付け、売り上げ比較実証実験等を実施。
・環境教育支援制度の実施(平成 12~18 年度)
平成 12 年 7 月、当フォーラム会員である自治体、企業、大学等が保有する環境情報
や人材、施設を、地域の学校環境教育に役立てる「環境教育支援制度」を創設。同支援
内容である講師派遣・施設見学・教師の受け入れ・体験学習を紹介した「小・中・高等
学校のための環境教育サポートブック」を作成・配布(作成:平成 12 年度、改訂:平
成 13、14、17、18 年度)
。平成 12~18 年度累計で、計 84 校に会員企業による出張授
業等を実施。多くの企業で学校教育向けの出前授業が行われるようになったことを踏ま
え、当部会としての活動は終了。
・“若者によるエコ・メッセージ”ポスターデザイン公募事業(平成 15 年度~)
若者を中心に幅広い世代への環境啓発を図るため、16 歳~25 歳の若者を対象に、
“エコ・メッセージ”をポスターの形で募集する事業を平成 15 年度に開始。専門家によ
る審査の上、優秀作品は関西各地で展示会を開催。平成 26 年度に第 11 回を開催、応募
作品は 367 点(第 1~11 回の累計:2,816 点)
。
・暮らしの中での環境教育促進事業 WG(平成 24~26 年度)
以上
31
「暮らしの中での環境教育促進事業ワーキンググループ」メンバー等のリスト
【ワーキンググループ メンバー】
順不同。平成 27 年 3 月末現在。
前任の方(末尾に(*))の所属・役職は参画当時のもの。
座長
篠﨑 由紀子
地球環境関西フォーラム 環境教育・啓発部会座長、株式会社都市生活研究所所長
専門委員
西川 一弘
国立大学法人和歌山大学地域連携・生涯学習センター講師
出口 寿久
国立大学法人和歌山大学地域連携・生涯学習センターセンター長/教授(*)
正阿彌 崇子
NPO 法人とよなか市民環境会議アジェンダ 21 事務局次長
新堀 春輔
公益財団法人京都市環境保全活動推進協会事業部事業第 1 課課長補佐
谷内口 友寛
公益財団法人京都市環境保全活動推進協会事業部事業課事業課長(*)
佐野 万里子
橋尾 和紀
公益財団法人奈良市生涯学習財団事務局統括主任
公益財団法人兵庫県生きがい創造協会嬉野台生涯教育センター
生涯学習企画調整担当主任生涯学習専門員(*)
天満 淳
公益財団法人兵庫県生きがい創造協会生涯学習部生涯学習専門員
横田 和明
大阪府 環境農林水産部みどり・都市環境室地球環境課環境活動推進グループ主事
内海 克二
大阪府 環境農林水産部みどり・都市環境室地球環境課環境活動推進グループ主査(*)
原田 寿樹
京都府 文化環境部環境・エネルギー局環境政策課企画担当副課長
井上 裕之
京都府 文化環境部環境・エネルギー局環境政策課企画担当副課長(*)
深井 鉄平
滋賀県 琵琶湖環境部環境政策課環境政策担当副主幹
小林 匡哉
滋賀県 琵琶湖環境部環境政策課環境政策担当主任主事
赤﨑 好近
滋賀県 琵琶湖環境部環境政策課環境政策担当主任主事(*)
芳川 一宏
奈良県 くらし創造部景観・環境局環境政策課環境企画係長
長尾 舞
奈良県 くらし創造部景観・環境局環境政策課環境企画係主事
中田 直人
兵庫県 農政環境部環境創造局環境政策課環境学習参事
木南 晴太
兵庫県 農政環境部環境創造局環境政策課活動支援班長
井口 洋
兵庫県 農政環境部環境創造局環境政策課課長補佐兼環境学習係長(*)
井邊 正人
和歌山県 環境生活部環境政策局環境生活総務課副課長
内藤 景一郎
和歌山県 環境生活部環境政策局環境生活総務課課長(*)
大橋 信之
和歌山県 環境生活部環境政策局環境生活総務課温暖化対策推進班主任
井川 博樹
和歌山県 環境生活部環境政策局環境生活総務課温暖化対策推進班主任(*)
井原 優子
大阪市 環境局環境施策部環境施策課長
吉田 一
大阪市 環境局環境施策部環境活動担当課長(*)
安川 広文
大阪市 環境局環境施策部環境施策課環境活動担当課長代理
一野 千夏
大阪市 環境局環境施策部環境施策課担当係長
藤原 一規
堺市 環境局環境保全部環境共生課長
山田 幸伸
京都市 環境政策局環境企画部環境管理課環境評価係長
斧田 宏美
神戸市 環境局環境創造部地球環境課環境教育担当係長
宮里 潤
大阪ガス株式会社 CSR・環境部企画チーム副課長
古寺 淳二
大阪ガス株式会社 CSR・環境部企画チーム係長(*)
高橋 秀和
関西電力株式会社
西邑 麻衣
ダイキン工業株式会社 CSR・地球環境センター
細川 朗
東洋紡株式会社
環境・安全部
平田 雅巳
東洋紡株式会社
環境・安全部(*)
仲上 俊二
地球環境関西フォーラム 事務総長
委員
事務局
環境室環境計画グループチーフマネジャー
32
枚田 哲郎
地球環境関西フォーラム 事務総長(*)
加藤 久佳
地球環境関西フォーラム 事務総長(*)
林 紀行
地球環境関西フォーラム 事務局次長
平山 健次郎
地球環境関西フォーラム 事務局次長
【本事業検討にあたって講演をいただいた外部講師の方々】
・NPO 法人こども環境活動支援協会事務局長
小川雅由 様(H24.10.29)
・大阪市立自然史博物館主任学芸員
佐久間大輔 様(H25.7.12)
・岡山市 ESD 世界会議推進局副主査
原明子 様(H25.11.1)
【専門委員の連絡先】
・和歌山大学
地域連携・生涯学習センター
TEL:073-427-4623
代表メールアドレス:[email protected]
URL:http://www.life.wakayama-u.ac.jp/
・(特活)とよなか市民環境会議アジェンダ 21(豊中市立環境交流センター内)
TEL:06-6844-8611
代表メールアドレス:[email protected]
URL:http://toyonaka-agenda21.jp/
・(公財)京都市環境保全活動推進協会(京エコロジーセンター内)
TEL:075-641-0911
担当者メールアドレス:[email protected]
URL:http://www.miyako-eco.jp/
・(公財)奈良市生涯学習財団事務局
TEL:0742-26-5600
代表メールアドレス:[email protected]
URL:http://manabunara.jp/
・(公財)兵庫県生きがい創造協会生涯学習部
TEL:079-424-9832
代表メールアドレス:[email protected]
URL:http://www.hyogo-ikigai.jp/ikigai/
以上
33