2014年 一般共同研究 ヒトがん細胞を用いた Akt/MMP

平成 26 年度 金沢大学がん進展制御研究所 共同研究報告書
研究区分
一般共同研究
ヒトがん細胞を用いた Akt/MMP-9 阻害性抗転移剤の開発
研究課題
研究代表者
研究分担者
受入担当教員
【研 究 目 的】
【研究内容・成果】
【成 果
等】
所属・職名・氏名
徳島大学・教授・宇都義浩
所属・職名・氏名
徳島大学・D1・多田竜
所属・職名・氏名
徳島大学・M2・芝一休
所属・職名・氏名
徳島大学・M2・玉谷大
職名・氏名
教授・佐藤博,准教授・遠藤良夫
がんはがん細胞だけでなく,血管や結合組織,免疫担当細胞といったがん周囲組織との相
互作用の上で成り立っており,治療戦略としてがんの縮小ではなく再発期間の延長という観
点から,がん転移を抑制できる血管新生阻害剤は最適な制癌剤であると思われる.平成 23-25
年度の共同研究において,低酸素サイトトキシン誘導体 TX-2137 は,Akt および MMP-9 産
生の抑制を介して抗転移活性を示すことを明らかにした.また,TX-2137 をリード分子とし
て新たに分子設計・合成した TX-2282 が TX-2137 よりも強い抗転移活性を有することを示し
た.そこで,平成 26 年度は,TX-2137 および TX-2282 をリードとして中性子捕捉による抗
腫瘍・抗転移活性の増強を目的とした抗転移剤の開発を試みる.
これまでに TX-2137 のフェノール基をフェニルボロン酸に置換した化合物1を分子設計・
合成し in vitro 抗腫瘍活性、MMP-9 阻害活性および発育鶏卵を用いた in vivo 抗転移活性を
評価したが有意な結果は得られなかった。今年度は、TX-2137 および化合物1の in vitro 低
酸素細胞毒性を MCF-7 細胞および MDA-MB-231 細胞を用いて評価した結果、TX-2137 は低酸素
条件で常酸素条件よりも数倍高い抗腫瘍活性を示したが化合物1はほとんど抗腫瘍活性を示
さなかった。この結果より、化合物1はボロン酸基の高い水溶性により細胞内取込が低下し
たことで薬理活性が失われたと推察した。そこで、TX-2137 および化合物1を用いて MCF-7 細
胞に対する細胞内取り込みを評価したところ、TX-2137 は細胞内に取り込まれていたのに対
し、化合物1は検出限界以下であった。よって、化合物1の疎水性を向上させる必要性が示
されたため、化合物1の疎水性向上を目的としてフェニルボロン酸のヒドロキシル基をフッ
素化もしくは MIDA 保護した化合物を新たに分子設計した。さらに in vivo 試験に必要な水溶
性を保持するために TX-2137 のベンゾトリアジン骨格にフェノール基を付加した化合物を分
子設計した。その結果として、フッ素化体はかなり不安定であり合成に失敗したため、現在
は MIDA 保 護 体 を 合 成 中 で あ る 。 ま た 、 チ ラ パ ザ ミ ン に フ ェ ノ ー ル 基 を 付 加 し た
3-chrolo-1,2,4–benzotriazine-7-ol-1-oxide の合成時に、クロロ化反応で骨格のフェノール
基もクロロ基に置換されたため、フェノール基を TBDMS 保護した誘導体の合成を試みており、
現在のところ 3-Chloro-1,2,4–benzotriazine-7-ol-1-oxide TBDMS 保護体まで完了している。
今後は、3-amino-1,2,4–benzotriazine-7-ol-1-oxide TBDMS 保護体を用いて TX-2137 誘導
体および TX-2137 ボロン含有誘導体の合成及び MIDA 保護体の合成を完了させ、in vitro 抗腫
瘍活性、MMP-9 阻害活性、発育鶏卵を用いた in vivo 抗転移活性および中性子併用による抗腫
瘍活性を評価する予定である。
また、新規 Akt 阻害剤をリードとした低酸素指向性抗転移剤の創製も行う予定である。
【主な論文発表】
・Uto Y, Tamatani D, Mizuki Y, Endo Y, Nakanishi I, Ohkubo K, Fukuzumi S, Ishizuka M,
Tanaka T, Kuchiike D, Kubo K, Inui T, Hori H. Evaluation of the sonosensitizing
activities of 5-aminolevulinic acid and Sn(IV) chlorin e6 in tumor-bearing chick
embryos. Anticancer Res., 34(8), 4583-7, 2014.
【学会発表】
・芝 一休 ,遠藤良夫 ,佐藤
博 ,宇都義浩 :Development of antimetastatic hypoxic cytotoxin
TX-2282 targeting for Akt/protein kinase B based on TX-2137,第 73 回日本癌学会学術総会,横浜
市,2014 年 9 月 25-27 日.
【その他特筆事項】
なし