遠洋かつお一本釣り漁業って、どんな漁業なの? 遠洋かつお一本釣り漁業は、めいめいの 乗組員たちが、竿一本でカツオを船上へ釣 り上げる、まさに文字通りの釣り漁業です。 このかつお一本釣り漁業は、小学 5 年生の 社会科で教わる漁業の学習でも、取り上げ られることが多い、日本でも代表的な漁法 です。 遠洋かつお一本釣り漁業で使う釣り針 (擬餌針)には、一般的な釣り針について いるような「かえし」がなく、釣り上げた カツオの口から、すぐに釣り針が外れる構造になっています。これは、短時間でたくさん のカツオを釣るために考案されたもので、カツオが餌と間違えて喰いつくように羽根など で装飾されています。 一口に遠洋かつお一本釣り漁業と言っても、ターゲットとなる魚種はカツオだけでなく、 時期・漁場によって、ビンナガをターゲットとした一本釣り漁業を行うこともあります。 最近では、脂の乗ったビンナガが「ビントロ」や「トロビンチョウ」などと呼ばれて人気 が出ています。 遠洋かつお一本釣り漁業の主な漁場は、太平洋の「東沖漁場」と呼ばれる日本の東側・・・ カムチャツカ半島からベーリング海の南方・・・海域と、「南方漁場」と呼ばれるカロリン諸 島やマーシャル諸島、フェニックス諸島近辺の南太平洋です。東沖漁場では、カツオとビ ンナガをターゲットとした操業が行われ、南方漁場ではカツオをターゲットとした操業が 行われています。主としてこの 2 つの漁場の間を、時期や漁模様、仲間の船からの情報な どを聞きながら移動して操業を行います。 遠洋かつお一本釣り漁船の大きさは 360~500 トン(国際トン数で 550~750 トン)で、 近海のかつお漁船と比べると約 4 倍のサイズです。船の長さは 60~65 メートルで、スピー ドが求められるため、やや細長い船形をしているのが特徴で、日本では 23 隻の遠洋かつお 一本釣り漁船が稼働しています。この漁船には、30 人前後の船員が乗っていて、最近では、 漁労長や船長などの幹部船員を除き、その半数以上が外国人船員で占められています。 次航海のための修繕を終えた遠洋かつお一本釣り漁船は、航海に備えて、燃油や乗組員 のための食料を積み込むと、まず、最初に餌場に向かいます。そして、餌場でかつお一本 釣り漁業に使う、カタクチイワシなどの生餌を積み込んでから、漁場へ向かいます。生餌 はかつお一本釣り漁業の生命線でもあり、どれだけ生きの良い生餌を確保できるかが、漁 を左右する重要なポイントでもあります。 遠洋かつお一本釣り漁船は、目的の漁場へ到 着すると、乗組員達は、各々、双眼鏡を使って、 カツオの群を探します。双眼鏡で、カツオの餌 になる小魚の群が海面に跳ね上がる様子や、そ れらの小魚を狙っている海鳥などの動きを観察 しながら、カツオの群を探すのです。 カツオの群を見つけると、大急ぎで船をカツ オの群に寄せ、船からカタクチイワシなどの生 餌を撒いて、船にカツオの群を寄せ付けます。 それと同時に、舷側から海面に向けて海水を 散水しします。この散水は、撒いた海水で海面を叩く事により、カツオの餌になる小魚が 海面近くで混乱して泳いでいるように見せかけて、カツオを海面近くにおびき寄せるため です。 カツオの群が海面近くによると、乗組員たちが、返しの無い疑似針を使って、この疑似 針に食いついたカツオを一本一本、船の上に釣り上げます。 遠洋かつお一本釣り漁業で漁獲したカツオは、竿で一尾ずつ釣り上げる漁法の性質上、 傷や痛み、カツオに与えるストレスが少なく、刺身やタタキ用として市場に供給され、カ ツオ節の原料になることはあまりありません。 釣り上げたカツオは、すぐに急速凍結してマイナス 45℃の魚倉で冷凍保存されます。凍 結はマイナス 20℃に冷却したブライン液(食塩水)にカツオを一本ずつ投入して急速凍結 し、投入後もブライン液の温度をマイナス 15℃以下に維持する等の厳しい基準を設けてい て、この基準をクリアしたカツオは、B-1(ブライン凍結一級品)製品と呼ばれ、色や食味 が非常に良く、解凍して刺身やタタキにすると鮮度に優れているので市場で高い評価を受 けています。また、最近では、においがなく色の綺麗な S-1(脱血カツオ)製品の製造に 数隻が取り組んでいて、こちらも市場で高い評価を受けています。
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