技術士第一次試験と適性科目

第
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第 1 章 技術士第一次試験と適性科目
章
技術士第一次試験と適性科目
技術士第一次試験は、JABEE の認定コースを卒業していない受験者が、技
術士第二次試験を受験するために必要な受験資格になります。技術士第一次試
験の合格者は、技術士補となることができますが、技術士補は技術士を補助す
るための資格であり、登録の際に補助する技術士を定め、その人を補助する場
合にのみ技術士補としての資格で業務が行えるという仕組みになっています。
そのため、あくまでも技術士になるための修習期間中の資格であり、技術士補
の資格自体は個人の最終目標とはなりえませんので、基本的には、技術士第一
次試験は技術士第二次試験の受験資格と考えた方がよいでしょう。
1.技術士第一次試験の試験科目
技術士第一次試験は、平成 25 年度試験から共通科目がなくなり、基礎科目
(Ⅰ)
、適性科目(Ⅱ)
、専門科目(Ⅲ)の 3 つの科目で合否が判定されるよう
になりました。また、平成 24 年度試験まで実施されていた専門科目と基礎科
目間での救済措置が廃止され、技術士試験の基本原則である科目合格制に復帰
しましたので、1 つの科目でも失敗すると、そこで不合格が確定します。技術
士第一次試験は、図表 1.1.1 に示す試験科目で合否が判定されます。
現在の技術士第一次試験では、専門科目については、各技術部門の基礎的な
分野に出題を重点化するとされています。また、基礎科目については、科学技
術全般にわたる基礎知識を 5 つの問題群で出題するとなっており、具体的に出
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図表 1.1.1 技術士第一次試験科目
試験科目
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問題の内容と種類
出題数
解答数
試験時間
合格基準
基礎科目 科学技術全般にわたる基礎知
識を問う問題
1. 設計・計画に関するもの
2. 情報・論理に関するもの
3. 解析に関するもの
4. 材料・化学・バイオに関す
るもの
5. 環境・エネルギー・技術に
関するもの
各問題
群
6問
各問題
群
3問
1 時間
50 %
適性科目 技術士法第四章(技術士等の
義務)の規定の遵守に関する
適性を問う問題
15 問
15 問
1 時間
50 %
専門科目 技術部門に係る基礎知識及び
専門知識を問う問題
35 問
25 問
2 時間
50 %
題される内容が明記された問題群名称になっています。それに対して、適性科
目は『技術士法第四章(技術士等の義務)の規定の遵守に関する適性を問う問
題』という簡単な説明にとどまっており、実際に出題される内容が不明確な試
験科目となっています。
2.適性科目の出題内容と出題傾向分析
適性科目は、「技術士法第四章(技術士等の義務)の規定の遵守に関する適
性を問う問題」を出題するとされていますが、実際には、法令を含めて、広く
技術者が遵守すべき内容を対象に、受験者が技術士にふさわしい倫理観を保持
しているかどうかを試す試験となっています。対象とする法令に関しても、技
術士法に限らず、技術者全般および社会人が社会生活を適切に維持していくう
えで知っておかなければならない法令を対象としています。
技術士試験では、第一次試験、第二次試験を問わず、総合点で合否判定を行
うのではなく、科目合格制をとっています。技術士第一次試験の科目合格基準
第 1 章 技術士第一次試験と適性科目
は 50 %ですので、適性科目でもそこを目標にして勉強しなければなりません。
ですから、適性科目で 50 %を超える点となる 8 問を確実に取るための勉強を
行う必要があります。かつての適性科目試験では、普通の倫理観を備えていれ
ば、感覚的に正答を見つけだせる問題が多く出題されていましたので、特に受
験勉強をしなくても 8 問程度は難なく取れました。しかし、最近では、法律等
に関しての知識を持っていないと正答が見つけられない問題が増えてきていま
す。技術者の倫理喪失に起因した社会的な問題事例が増えてきている状況を鑑
みると、このような適性科目の傾向は強まることがあっても、安易に解答でき
る問題を増やす方向にはないと考えます。ただし、専門科目や基礎科目ではそ
れなりに難しい問題が多く出題されており、一定量の勉強が必要な点を考慮す
ると、適性科目はできるだけ効率良く勉強する必要があります。そういった点
で、本著では技術者倫理にかかわる事項を集約しましたので、ここで説明する
内容を理解するだけでも、十分に適性科目の合格点が取れると考えます。
なお、適性科目試験で過去に出題された問題を整理すると、下記の 8 つの項
目に集約できます。
(1)
技術士法第 4 章と倫理規定
適性科目の最初の問題として、最近では技術士法第 4 章に関する問題が出題
されています。そういった点でも、この項目は重要な出題項目といえます。ま
た、技術士倫理綱領や学会等の倫理規定をベースとした問題も定番問題として
出題されています。その中でも、継続教育に関する問題は頻繁に出題されてい
ますので、技術者にとって専門家としてのレベルを継続的に高めていく姿勢が
強く求められているのが、この点でもわかります。
(2)
技術者倫理一般
技術者倫理の基礎として、倫理に関する用語や倫理における基本的な考え方
に関する問題が出題されています。特に、倫理問題の対象となる公衆とプロフ
ェッショナルの立場の違いなどについても、これまで多くの出題がなされてい
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ます。また、倫理事象の対応方法などに関しても、これまで出題されています。
(3)
研究活動における倫理
科学技術の高度化が進むとともに、技術がもたらす影響が大きくなる傾向に
あります。また、研究者の倫理違反に起因する社会問題が多く聞かれるように
なっている現状を反映して、研究活動における倫理教育の強化が進められてい
ます。その中には、ガイドブックとして指針を示すような動きが学協会でも出
てきており、その内容を問題として取り上げるようになってきています。
(4)
法律の遵守
最近では、法令違反の事例も多く報道されるようになってきており、法令遵
守という掛け声とはうらはらに、違反行為の実態が明らかになってきていま
す。そういった背景から、適性科目においても、具体的な法律を基に問題を作
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成する例が増えてきています。技術者が知っていなければならない法律につい
ての問題ですので、各法律の目的を理解して、適切な判断が行えるようになら
なければなりません。
(5)
リスクと技術者倫理
世の中には多くのリスクがあります。そのリスクを適切に評価するために、
リスクマネジメントやリスクアセスメントという考え方が強く求められるよう
になってきています。それに合わせて、適性科目でも具体的な問題が出題され
ています。また、リスクに対する説明責任という観点から、リスクコミュニケ
ーションに対する積極的な行動も技術者には求められるようになってきていま
すので、そういった内容を問題として出題する例も増えています。
(6)
職業倫理
技術士が高等な専門的応用能力を有した技術者であるという点から、最近で
は、職業倫理に関する問題が増えてきています。そのなかでも、技術者が組織
第 1 章 技術士第一次試験と適性科目
に属して業務を遂行する場合が多いために、セクシャルハラスメントやパワー
ハラスメントなどに関する問題が非常に多く出題されています。さらに、最近
では、技術者や組織等の社会的責任が重視されるようになっている現状を反映
して、社会的責任の認識を問う問題が出題されています。
(7)
安全・環境倫理
技術が進歩していく過程で、新しい技術が、安全や環境に大きな影響を与え
てきたという事例がこれまでに多くありました。また、地球環境問題の観点か
らは、持続可能な開発という概念も技術者には欠かせないものとなっていま
す。そういった点で、循環型社会の形成に関する問題や環境に関する用語の問
題が出題されています。さらに、安全の確立を図るための法律や規格が多く存
在しますので、そういった内容に関する問題もこれまでに出題されています。
(8)
事例研究
平成 13 年度試験に初めて適性科目が導入された時期には、事例問題が多く
出題されていました。その後、事例問題は少なくなりましたが、それでも数年
おきに事例問題が出題されています。具体的な事例については、多くの受験者
がある程度知識があるものと考えますので、ここではあまり範囲を広げること
なく、過去に出題された事例について紹介したいと考えています。
(9)
過去の出題傾向
適性科目で出題されている内容を説明した上記の文章だけでは、実際に出題
傾向はわかりませんので、平成 21 年度~27 年度試験の適性科目で出題された
問題の内容を大まかに分析してみたのが、図表 1.2.1 になります。
図表 1.2.1 を見るとわかるとおり、これまで法律に関する問題が一番多く出
題されています。また、適性科目で出題すると示されている技術士第 4 章に関
する問題がその次に多くなっています。なお、技術者が専門職業人である点も
重視されており、職業倫理に関する問題も一定量出題されている点も注目され
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