宿泊旅行統計調査による季節変動に関する一考察

宿泊旅行統計調査による季節変動に関する一考察
和歌山大学観光学部
大井達雄
Ⅰ
はじめに
観光市場において,季節変動,または季節性は避けることができない現象である。観光
市場 の季節変動とは,月次,または四半期による時間的な変動を意味し,それは 1 年間を
周期として繰り返し発生するものである。観光は季節の移り変わりを楽しむといっても過
言ではないが,季節性は観光経営において最も厄介な特徴の 1 つである。観光入込客数,
宿泊者数や観光消費額のいずれも年間を通じて一定であることはありえず, 多くの観光地
で 繁 盛 期 と 閑 散 期 が 存 在 し て い る 。そ れ ゆ え 繁 盛 期 の 長 期 化 ,ま た は 閑 散 期 の 短 縮 化 を 目
的とした観光政策が実施されている。
Butler and Mao( 1997) は , 図 1 の よ う に 観 光 市 場 に お け る 季 節 変 動 の メ カ ニ ズ ム を
図示している。基本的には,観光客を意味する需要過程,受け入れ先である観光地を意味
する供給過程と,戦略やマーケティングを意味する 調整過程の 3 つの過程が存在する。需
要過程では,気候や長期休暇などにより,観光現象が発生することになる。一方で供給過
程は,気候の差,魅力的な観光資源の存在や観光地としての認知度などを理由として観光
客が訪れることになる。つまり観光客と観光地は相互依存関係にあるといえる。この関係
は,季節変動の存在がある程度寄与している。さらに季節の違いによって需給バランスが
不 安 定 と な る た め ,割 引 価 格 の 実 施 ,観 光 施 設 の 開 発 ,広 告 宣 伝 な ど の 調 整 過 程 を 通 じ て ,
観光市場は構築されている。ここでは,観光市場における季節変動の存在の大きさが述べ
ら れ て い る 。 こ の よ う に Butler and Mao( 1997) に 限 ら ず , 欧 米 で は 季 節 変 動 に 関 す る
研究は日本よりも進んでいるが,まだまだ克服すべき課題は多い。
図 1
観光市場における季節変動のメカニズム
( 参 考 ) Butler and Mao( 1997)
1
本 稿 の 目 的 は ,宿 泊 旅 行 統 計 調 査 を 使 用 し て ,日 本 の 観 光 市 場 の 季 節 変 動 の 特 徴 を 実 証
的に明らかにすることである。従来から季節変動の存在が観光経営において多大な影響を
及ぼしていることが指摘されていたが,その特徴について統計指標を使用して分析したも
のは皆無であり,本研究の意義は大きいといえる。内容として,まず観光事業における季
節変動の特徴と問題点について述べる。続いて,今回の分析で使用するデータと統計指標
について説明する。各種統計指標を使用して,全国や都道府県の季節変動の特徴を明らか
にした上で考察を行い,最後にまとめと今後の課題についてふれることにする。
Ⅱ
観光事業における季節変動の特徴と問題点
図 2 は 平 成 19~ 22 年 の 宿 泊 旅 行 統 計 調 査 に お け る 従 業 者 数 10 人 以 上 の 宿 泊 施 設 の 延 べ
宿 泊 者 数 の 推 移 を 示 し た も の で あ る 。 全 体 的 な 動 き と し て , 平 成 19 年 の 3 億 938.1 万 人
泊 か ら ,平 成 20 年( 3 億 969.9 万 人 泊 )は ほ ぼ 同 一 水 準 で 推 移 し た 。平 成 21 年( 3 億 130.3
万 人 泊 )に は 2 割 以 上 下 落 し た も の の ,平 成 22 年 に は 3 億 4882.3 万 人 泊 と 大 幅 に 改 善 し
ている。延べ宿泊者数の季節的な傾向として, 図 2 からもわかるように,延べ 宿泊者数は
8 月がもっとも多く,逆に 1 月や 6 月が少ないことがわかる。年によってバラツキが存在
するものの,1 月から 3 月にかけて上昇し,その後,数カ月低迷するものの,夏には急上
昇し,秋から冬にかけて再び下落傾向にある。このような傾向を毎年繰り返している。ま
た海外の観光学研究では,最盛期と閑散期の間の期間を,その形状からショルダーシーズ
ン( shoulder season)と 呼 び ,こ の 期 間 を で き る だ け 短 縮 す る よ う な 政 策 が 実 施 さ れ て い
る。
40
35
30
延
べ
宿
泊
者
数
(
百
万
人
泊
)
25
20
15
10
5
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 1 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 1 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 1 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 1 1
月月月月月月月月月 0 1 2 月月月月月月月月月 0 1 2 月月月月月月月月月 0 1 2 月月月月月月月月月 0 1 2
月月月
月月月
月月月
月月月
平成19年
図 2
平成20年
平成21年
平成22年
全 国 の 延 べ 宿 泊 者 数 の 推 移 ( 従 業 者 数 10 人 以 上 の 宿 泊 施 設 の み )
(参考)観光庁『宿泊旅行統計調査』
し か し な が ら ,8 月 を 山 と し ,1 月 や 3 月 を 谷 と す る 季 節 変 動 は 47 都 道 府 県 で 共 通 し た
傾 向 で は な い 。平 成 22 年 の デ ー タ に お い て ,全 国 と 47 都 道 府 県 に つ い て ス ピ ア マ ン の 順
位相関係数を計算したところ,順位相関係数が 1 となった,つまり,全国のデータと全く
同じような動きをした都道府県は存在しなかった。相関係数が高かった県として,福岡県
( 0.951), 香 川 県 ( 0.923), 群 馬 県 ( 0.916), 埼 玉 県 ( 0.902 ), 千 葉 県 ( 0.902) が , 逆
に 順 位 相 関 係 数 が 低 か っ た 県 と し て ,宮 崎 県( 0.490),京 都 府( 0.490),北 海 道( 0.503),
2
長 野 県 ( 0.587), 青 森 県 ( 0.608), 奈 良 県 ( 0.608) が あ げ ら れ る 。 図 3 で は 平 成 22 年 の
宮崎県と京都府の延べ宿泊者数の推移を示している 。図 3 から,宮崎県の場合,延べ宿泊
者 数 の ピ ー ク は 3 月 ( 268,660 人 泊 ) で , 2 位 が 2 月 ( 265,750 人 泊 ) と な っ て い た 。 同
様 に 京 都 府 の 場 合 , 延 べ 宿 泊 者 数 の ピ ー ク は 11 月 ( 1,187,180 人 泊 ) で , 続 い て 5 月
( 1,185,590 人 泊 ) が ほ ぼ 同 じ 水 準 と な っ て い る 。 多 く の 県 で 1 位 で あ っ た 8 月 に つ い て
は 宮 崎 県 で は 3 位 , 京 都 府 で は 4 位 で あ る 。 平 成 21 年 の デ ー タ に つ い て み た 場 合 , 京 都
府 は 引 き 続 き 11 月 が ピ ー ク と な っ て い る も の の , 宮 崎 県 は 8 月 が 最 大 延 べ 宿 泊 者 数 を 記
録 し て い る 。 こ の 理 由 と し て , 平 成 22 年 に 宮 崎 県 で 発 生 し た 口 蹄 疫 問 題 が あ げ ら れ , 観
光客数が大幅に減少したためである。このように,都道府県単位でみた場合,延べ宿泊者
数の季節変動は,全国と同様の動きを示すわけではなく,気候,社会状況,観光イベント
の関係で,年間や地域の格差が存在している。
1,400,000
1,200,000
延 1,000,000
べ
宿 800,000
泊
者 600,000
数
人 400,000
宮崎県
京都府
(
)
200,000
0
1月
2月
3月
図 3
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月 11月 12月
宮崎県と京都府の延べ宿泊者数の推移
( 平 成 22 年 , 従 業 者 数 10 人 以 上 の 宿 泊 施 設 の み )
(参考)観光庁『宿泊旅行統計調査』
観光活動における季節変動のパターンとして 3 種類の分布が存在する。それらは,最盛
期が 1 つの単峰型,2 つの双峰型,ピークシーズンのない一様型の分布に分類される。単
峰型の分布では,図 2 のように,1 つのピークを形成する場合が該当する。場合によって
は , 海 水 浴 場 の よ う に 夏 場 の 観 光 客 数 が 冬 場 の そ れ の 10 倍 以 上 に な る な ど , 極 端 な 変 動
を も た ら す こ と が あ る 。双 峰 型 の 分 布 は ,図 3 の 京 都 府 の 延 べ 宿 泊 者 数 の デ ー タ の よ う に ,
2 つのピークが存在することを意味する。典型的な事例として,山岳観光があげられる。
夏 は 登 山 ,冬 は ス キ ー と い う よ う に 2 つ の 観 光 資 源 が 享 受 で き る 観 光 地 で は こ の よ う な 傾
向がみられる。最後の一様型の分布は,ピークが存在しない場合を意味する。具体的には
シ ン ガ ポ ー ル ,香 港 や ハ ワ イ な ど で は ,一 年 中 観 光 客 が 平 準 化 し て 訪 問 し て い る 。た だ し ,
1 年中のあらゆる月で観光客が全く同数ということはありえず,何をもってピークがない
と定義するのかについては議論の余地がある。
観 光 デ ー タ に お け る 季 節 変 動 が 発 生 す る 要 因 と し て 2 種 類 存 在 す る 。ま ず 第 1 に 自 然 現
象 に 基 づ く 季 節 変 動 ( natural seasonality ) で あ る 。 こ れ は 四 季 に よ っ て 発 生 す る 気 候 の
変動(気温,日照時間,降水量,降雪量等)を意味する。このような変動は,日によって
3
差異はみられるものの,おおむね季節によって特徴をもち,同時に一定のサイクルを有す
る。自然現象に基づく季節変動は日照時間のように予測可能なものもあれば,気温や降水
量のように正確な予測が困難なものもある。最近では地球温暖化の影響もあり,ますます
予測が難しくなり,季節変動が観光市場に与える影響も小さくはない。一般的に赤道近く
に存在する観光地ほど季節変動が小さく,逆に緯度が高くなるほど季節変動が大きくなる
傾 向 に あ る が ,赤 道 周 辺 の 観 光 地 に お い て も ,モ ン ス ー ン に よ る 降 水 量 や 湿 度 の 高 さ な ど ,
ある程度の季節性の影響を受けている。
も う 1 つ の 要 因 が ,制 度 に 基 づ く 季 節 変 動( institutionalized seasonality )で あ る 。こ
れは宗教,文化,民族や社会状況などを背景とするもので,その代表例として,祝日,夏
休みやゴールデンウィークから,祭祀や宗教行事,漁期や狩猟期間など広範囲に及ぶ。制
度に基づく季節変動の代表例である夏休みは,北ヨーロッパの学生が収穫期に農作業を手
伝 う こ と を 目 的 と し て , 6~ 10 週 間 と い う 長 期 間 設 け ら れ た こ と が は じ ま り と い わ れ て い
るが,現在には,多くの欧米諸国において学生がこの時期に農作業を手伝うことはあまり
ない。夏休みは観光市場において必要不可欠な存在となり,その意味は変化している。ま
た,野球やサッカーなどの多くのプロスポーツの活動期間(シーズン)も制度に基づく季
節変動の代表といえ,スポーツ観光の基本となっている。
制度に基づく季節変動は広範囲な特徴を有するために,観光市場への影響を評価するこ
とは困難を極めている。また祝日については,日本でも観光活動を促進するために月曜日
を休日とし,週末と合わせた 3 連休にする政策(ハッピーマンデー)が行われている。こ
の政策は数少ない成功例であり,実際,新しい制度を導入しても,習慣や伝統のほうが重
視される傾向もある。新制度が根づくためには長時間要することが指摘されている。特に
休暇期間の分散化については,海外では必ずしも成功しているわけではない。
このような自然環境と制度の 2 つの季節変動は,相互補完的な関係にあるといえる。つ
まり自然環境に応じて制度の内容が設定されている場合も多い。例えば,天候不良の時期
に,進んで観光しようという人は少なく,逆に天候が良ければ観光客は増加する。そのよ
うな時期に大型連休,または観光シーズンが設定されている。
季節変動は上記のような特徴を有するが,一方で観光経営においては,さまざまな弊害
も も た ら し て い る 。そ の 代 表 と し て 2 つ の 問 題 点 を 指 摘 す る 。第 1 は 労 働 市 場 へ の 影 響 で
ある。観光市場において季節変動が存在するために,経営者は従業員を正規雇用すること
が難しい。繁盛期では労働力を必要とするが,閑散期ではその労働力が過剰となる。観光
産 業 の 労 働 者 の 多 く は 非 正 規 で 雇 わ れ ,ア ル バ イ ト や 季 節 労 働 者 が 中 心 で あ る 。そ の た め ,
繁盛期が終われば失業することになる。長期間雇用することができないため,社員教育も
十分に行われず,良質な人材がなかなか育たないのが現状である。このような特徴は日本
だけでなく,世界的な課題となっている。
続いてファイナンス,主に資金繰りの問題がある。観光事業では,あらかじめ巨額の投
資 額 が 必 要 と な る 場 合 が 多 い 。テ ー マ パ ー ク や ホ テ ル な ど が そ の 代 表 例 で あ る 。そ の た め ,
自己資金だけではまかなうことができず,借り入れに依存せざるをえない。 また観光施設
は閑散期になれば,一部が休眠状態になり,収益を生み出さない ことになる。それゆえ,
売り上げが安定せず,経済状況の変化によっては返済も滞ることになる。また繁盛期にお
いて,冷夏などの異常気象が発生した場合には,次シーズンにおいてその穴埋めをするこ
4
とはかなり困難である。
さらに観光事業の場合,季節変動に関係なく,他の産業と比較しても,自然災害やテロ
などの危機に対して脆弱な側面がある。したがって,経営を安定させるためには高価格や
大規模開発路線を取らざるをえず,逆にこの戦略が観光客数を減少させることもある。大
規模開発については,近年のサスティナブルツーリズムへの意識の高まりもあり,難しい
のが現状である。
Ⅲ
データの紹介と分析手法
1. 宿 泊 旅 行 統 計 調 査
今回の実証分析では,宿泊旅行統計調査のデータを使用することにする。宿泊旅行統計
調 査 は 平 成 19 年 か ら 本 格 調 査 が 実 施 さ れ , そ の 目 的 は 宿 泊 旅 行 の 実 態 を 全 国 規 模 で 把 握
することであり,日本国内において宿泊業を営むホテル,旅館,簡易宿所,会社・団体の
宿泊所などの全宿泊施設を対象としている。都道府県,従業者数規模別層化抽出により,
従 業 者 数 10 人 以 上 の 宿 泊 施 設 に つ い て は 全 数 調 査 が 行 わ れ , 10 人 未 満 の 場 合 に は , 標 本
調 査 が 実 施 さ れ て い る( 抽 出 率 は 10 人 未 満 の 宿 泊 施 設 に つ い て は 3 分 の 1,5 人 未 満 の 施
設 に つ い て は 9 分 の 1)。 こ の よ う な 抽 出 方 法 は , 平 成 22 年 4~ 6 月 調 査 か ら 実 施 さ れ ,
そ れ 以 前 は 従 業 者 数 10 人 以 上 の 宿 泊 施 設 の み が 対 象 で あ っ た 。 本 研 究 に お い て は , 経 年
比 較 の 観 点 か ら ,従 業 者 数 10 人 以 上 の 宿 泊 施 設 の デ ー タ の み を 使 用 し て い く こ と に す る 。
観光市場の季節変動をみていく場合には,宿泊観光客だけでなく,日帰り観光客を含め
た観光入込客統計も使用すべきである。しかしながら,共通基準を使用した観光入込客統
計調査は現在においても全都道府県で実施されていないこと,調査結果の蓄積は宿泊旅行
統計調査と比較して十分でないこと,公表結果が月次データではなく,四半期データであ
る こ と か ら , 本 稿 で は 宿 泊 旅 行 統 計 調 査 の 延 べ 宿 泊 者 数 の デ ー タ ( 従 業 者 数 10 人 以 上 の
宿泊施設のみを対象)を使用することにする。
宿泊旅行統計調査の調査項目については,従業者数の規模別により異なるが,基本項目
として宿泊施設の名称,宿泊施設所在地,宿泊施設タイプ,客室数及び収容人数,従業者
数,宿泊目的,延べ宿泊者数と実宿泊者数,及び外国人延べ宿泊者数と実宿泊者数,利用
客室数,居住地別(県内外別)延べ宿泊者数と,多岐に及んでいる。
2. 分 析 手 法
季節変動を最も簡単に把握する方法として,最大値と最小値の比を計算する方法がある。
)とする。そこで,1 年のうち延べ宿泊
今 , あ る 任 意 の 月 の 延 べ 宿 泊 者 数 を 𝜈𝑖 (
者 数 の 最 大 の 月 を 𝜈𝑚𝑎𝑥 , 最 小 の 月 を 𝜈
とした場合,以下のように表すことができる。
(1)
式 (1)の 場 合 ,非 常 に わ か り や す い 指 標 で あ る が ,最 大 値 と 最 小 値 の 数 値 の み に 注 目 す る
ため,その他の月の数値は無視されることになる。つまり,最大値と最小値が異常値であ
る場合には,季節変動の実態を正確に把握することが困難となる。このような問題点に対
し て , Lundtrop( 2001) は , 以 下 の よ う な 季 節 変 動 指 標 ω ( seasonality indicator) を 考
案した。
5
̅
(2)
こ こ で , ̅は 平 均 値 を 意 味 す る 。 す な わ ち , 式 (2)は 年 間 の 延 べ 宿 泊 者 数 の 平 均 値 を 最 大 値
で 除 し て 計 算 す る こ と を 意 味 す る 。 も と も と こ の 指 標 は , Yacomis( 1980) の 季 節 変 動 に
関 す る 指 標 を 改 良 し た も の で あ る 1 。 式 (2)の 場 合 ,
の範囲をとり,ある特定の月に
す べ て の 宿 泊 客 が 滞 在 し ,そ の 他 の 月 に は 宿 泊 客 が 存 在 し な か っ た 場 合 に は ,
逆にすべての月で宿泊客数が等しい場合には
となり,
と な る 。つ ま り に 近 け れ ば 近 い ほ ど ,季
節変動が大きく,逆に 1 に近ければ近いほど,季節変動が小さいことがわかる。
さらに見方を変えると,最大宿泊者数𝜈
はホテルの最大収容能力と読み替えることも
可能である。すなわち,季節変動指標ωはホテルの平均稼働率に近い概念となる。もし,
= 0.5の 場 合 は , 平 均 し て 約 半 数 の 部 屋 し か 埋 ま っ て い な い こ と を 意 味 す る 。
上 記 の 指 標 に 加 え て , Wanhill(1980) は , 所 得 格 差 や 資 産 格 差 の 分 析 に お い て 有 名 な ジ
ニ係数を用いて,季節変動を客観的に把握する方法を提案した。ジニ係数とは,イタリア
の 統 計 学 者 Corrado Gini に よ っ て 考 案 さ れ , 社 会 に お け る 所 得 や 資 産 の 分 配 の 不 平 等 さ
を 測 る 指 標 と し て , 多 く の 実 証 分 析 で 使 用 さ れ て い る 。 Wanhill(1980) は 季 節 変 動 を 観 光
商品の在庫調整が困難なことから発生する観光客数の格差と考え,ジニ係数の適用を提案
している。
ここでジニ係数の計算方法について説明する。今,以下のローレンツ曲線が与えられて
い る 場 合 に ,ジ ニ 係 数 (G )は ,ロ ー レ ン ツ 曲 線 と 45 度 線 で 囲 ま れ た「 三 日 月 形 」の 面 積 (𝑆)を 2
倍 す る こ と に よ っ て 求 め ら れ る 。つ ま り ,三 角 形 (𝑇 )と ,3 つ の 台 形( 𝑇
算 し , 頂 点 を (0 0) ( 0) (
𝑇3 𝑇4 )の 面 積 を 計
)と す る 直 角 二 等 辺 三 角 形 の 面 積 ( 0.5) か ら 減 算 す る 。
(1,1)
(0,0)
図 4
ローレンツ曲線
6
S  0.5  T1  T2  T3  T4 
1
1
1
1

 0.5    F1  Q1   Q1  Q2  F2  F1    Q2  Q3  F3  F2    Q3  1 1  F3 
2
2
2
2

こ れ に よ り , ジ ニ 係 数 は 以 下 の 公 式 に よ り 求 め る こ と が で き る 2。
G
S
(3)
ジ ニ 係 数 の 評 価 に つ い て は , 0( 零 ) に 近 い 場 合 に は 平 等 に 近 い こ と , つ ま り 季 節 変 動
が小さいこと ,またジニ係数が 1 に近い場合には,格差が大きいこと,つまり 変動が大き
いことを意味する。ジニ係数がどの数値を超えていれば,格差が大きいとみなすことがで
きるような絶対的な基準は存在せず,主に時系列上の変化やデータ間の比較をみていくこ
とが一般的である。また,今回の場合においては,X 軸には月数の累計,Y 軸には延べ宿
泊者数の累計がそれぞれ設定されることになる。
ジニ係数を経年比較する上で,要因分解することができれば,さらに季節変動の特徴を
理解することができるが,ジニ係数では要因分解は困難である。そのため,タイル指標を
使用して要因分解を行うことにする。タイル指数も不平等度や格差を表す代表的な指標の
1 つで,完全に平等な場合は 0 となり,数値の上昇は格差の拡大を意味する。
鈴 木( 2006)に よ れ ば ,タ イ ル 指 標 は ,グ ル ー プ (
得を
,全体の構成員数を
(
∑𝑖
𝑖 ), 平 均 所 得 を
(
)の 構 成 員 (
∑𝑖
∑
𝑖
)の 所
)と し て , 次 の よ う
に表される。
𝑇
∑∑
𝑖
𝑖
𝜇
l (
𝑖
𝜇
そ の 上 で , グ ル ー プ の 平 均 所 得 を , 𝜇𝑖 (
)
(4)
∑
𝑖
)と す る と , タ イ ル 指 標 に よ る 不 平 等
度 は ,以 下 の よ う に グ ル ー プ 内 の 不 平 等 度 (𝑇𝑖𝐼𝑁 )と グ ル ー プ 間 の 不 平 等 度 (𝑇 𝐵𝑊 )に 分 解 さ れ る 。
𝑇
∑
𝑖
𝑖 𝜇𝑖
𝜇
𝑇𝑖𝐼𝑁 + 𝑇 𝐵𝑊
(5)
本稿では,タイル指標を使用して,延べ宿泊者数の地域内格差と地域間格差についても
みていくことにする。
本稿では主に延べ宿泊者数のデータを使用して,季節変動をみていくことにするが,こ
のような統計指標を使用することによって,宿泊者数以外のさまざまな観光統計の季節変
動を把握することができる。
Ⅳ
結果と考察
1. 季 節 変 動 指 標 ω
平 成 22 年 の 宿 泊 統 計 調 査 の 延 べ 宿 泊 者 数 の デ ー タ に 基 づ い て , Lundtrop( 2001) が 考
案した季節変動指標 ωを計算したところ,以下の図 5 のような結果になった。詳細な数値
を 紹 介 す る と , 全 国 の 場 合 0.764, 47 都 道 府 県 の 平 均 値 は 0.742 と な っ て い る 。 ま た 変 動
7
の 少 な い 上 位 3 県 は , 東 京 都 ( 0.897) , 大 阪 府 ( 0.864) , 福 岡 県 ( 0.858) と 大 都 市 圏
が 占 め て い る の に 対 し , 変 動 の 大 き い 下 位 3 県 は 長 野 県 ( 0.564) , 和 歌 山 県 ( 0.571) ,
山 梨 県( 0.589)と な っ て い る 。例 外 は 存 在 す る も の の ,大 都 市 圏 ほ ど 季 節 変 動 が 小 さ く ,
一方で地方の季節変動の大きさがわかる。その中でも中部地方が顕著である。この結果,
都 市 観 光 が 普 及 し て い る 地 域 ほ ど ,季 節 変 動 が 小 さ い と い え る 。上 記 で も 説 明 し た よ う に ,
ωは平均稼働率と拡大解釈することもできるので,その側面を強調した場合,年間を通じ
て 東 京 都 で は 90% の 部 屋 が 埋 ま っ て い る の に 対 し ,長 野 県 で は 6 割 も 埋 ま っ て い な い こ と
が わ か る 3。
0.8
0.7
0.6
図 5
季 節 変 動 指 標 ω の 結 果 ( 平 成 22 年 宿 泊 旅 行 統 計 調 査 )
平 成 19 年 か ら 平 成 22 年 ま で の ω の 変 化 に つ い て は ,多 く の 県 で 平 成 19 年 か ら 平 成 20
年 に お い て ほ ぼ 同 水 準 を 維 持 す る か , ま た は 微 増 が み ら れ た も の の , 平 成 21 年 に か け て
下 落 し , そ の 後 平 成 22 年 に は 回 復 傾 向 が み ら れ た 。 こ れ は 宿 泊 旅 行 調 査 の 延 べ 宿 泊 客 数
の 推 移 と 同 様 の 動 き を し , 平 成 20 年 9 月 以 降 の 景 気 後 退 の 影 響 を 受 け て い る こ と が 想 定
される。
ただし,一部の県では,異なった動きもみられる。その例が京都府と三重県である (図
6) 。 京 都 府 の 場 合 , リ ー マ ン シ ョ ッ ク の 影 響 を 受 け ず , さ ら に 平 成 22 年 に は ω が 急 激 に
増 加 し , 季 節 変 動 が 減 少 し て い る 。 三 重 県 の 場 合 は , 平 成 19 年 か ら 現 在 に か け て , 季 節
変動は拡大する傾向にある。いずれの県も,延べ宿泊者数が 4 年間で 継続して増加,また
は減少傾向になく,季節変動が影響していると考えられる。ただし,観光イベントの実施
状況の関係など,さらなる分析が必要である。
8
1.000
0.950
0.937
0.930
0.891
0.900
0.850
0.800
0.750
0.700
0.802
0.800
0.779
0.897
0.841
全国
0.760
東京都
0.767
0.758
0.650
0.749
0.685
0.669
0.600
0.764
京都府
三重県
0.639
0.550
0.500
平成19年
平成20年
図 6
平成21年
平成22年
季 節 変 動 指 標 ω の 変 化 ( 平 成 19~ 22 年 )
2. ジ ニ 係 数
各 都 道 府 県 別 の ジ ニ 係 数 を 地 図 グ ラ フ に ま と め た も の が 図 7 で あ る 。具 体 的 な 数 値 を あ
げ る と , 全 国 は 0.059, 47 都 道 府 県 の 平 均 値 は 0.083 と な っ て い る 。 ジ ニ 係 数 が 0( 零 )
に 近 い の で ,基 本 的 に は 季 節 変 動 は 小 さ い と 考 え て よ い 4 。都 道 府 県 別 に み た 場 合 ,季 節 変
動 の 小 さ い 県 と し て , 東 京 都 ( 0.034), 愛 知 県 ( 0.044), 大 阪 府 ( 0.049) が , 逆 に 大 き
い 県 と し て , 奈 良 県 ( 0.168), 和 歌 山 県 ( 0.127), 長 野 県 ( 0.124) が そ れ ぞ れ あ げ ら れ
る。季節変動指標ωの結果と同様,大都市圏ほど季節変動が小さく,地方,特に中部圏の
季節変動の大きさがわかる。ジニ係数と季節変動指標ωについてピアソンの積率相関係数
を計算したところ,
0.
0と な り ,高 い 負 の 相 関 が み ら れ た 。つ ま り ジ ニ 係 数 が 小 さ い
値ほど,ωの値が大きいことを意味している。
しかしながら,一部の県では 2 つの指標に整合性が見られなかった。その代表例が 奈良
県 で , ジ ニ 係 数 は 高 く , 季 節 変 動 は 大 き い も の の , 季 節 変 動 指 標 ω は 0.719( 30 位 ) と ,
平均よりも少し下に位置している。この理由として延べ宿泊者数の最大値と最小値の差が
大 き い こ と が あ げ ら れ る 。全 国 の 場 合 は そ の 比 が 1.48 倍 と な っ て い る の に 対 し ,奈 良 県 の
場 合 は 3.22 倍 と , 他 の 県 と 比 較 し て 突 出 し て い る た め で あ る 。
平 成 19~ 22 年 に お け る 時 系 列 上 の 変 化 に つ い て み た 場 合 , ジ ニ 係 数 は 安 定 的 な 性 質 を
有するために,短期的に大きな変動をもたらすことはない。しかしながら,わずかの差で
は あ る が ,全 国 の 場 合 ,平 成 19~ 21 年 に か け て ジ ニ 係 数 は 大 き い が ,平 成 22 年 に は 小 さ
くなっていることがわかる。このことから,不景気になり宿泊者数が減少すれば,それと
同時に季節変動が大きくなり,逆に宿泊者数が増加すると,季節変動が小さくなることが
わ か る 5 。 こ の よ う な 傾 向 は 25 県 で み ら れ て い る 。 し か し な が ら , 図 8 の 長 野 県 の よ う に
4 年間でジニ係数が大きくなっているところもあれば,佐賀県のようにジニ係数が減少し
て い る と こ ろ も あ り , 地 域 に よ る ト レ ン ド の 差 異 も 存 在 し て い る 6。
9
0.15
0.10
0.05
図 7
ジ ニ 係 数 の 結 果 ( 平 成 22 年 宿 泊 旅 行 統 計 調 査 )
0.140
0.120
0.100
全国
0.080
東京都
0.060
長野県
0.040
佐賀県
0.020
0.000
平成19年
平成20年
図 8
平成21年
平成22年
ジ ニ 係 数 の 推 移 ( 平 成 19~ 22 年 )
3. タ イ ル 指 標
タ イ ル 指 標 で ,宿 泊 旅 行 統 計 調 査 の 全 国 デ ー タ か ら 季 節 変 動 を 計 算 し た 結 果 は 表 1 に ま
とめられる。タイル指標の結果は季節変動指標ωやジニ係数の結果と異なり,わずかな数
値 の 変 化 で あ る が , 平 成 19 年 か ら 平 成 21 年 に か け て 数 値 が 減 少 し , 逆 に 平 成 22 年 に は
数値が上昇している。つまり,上記の 2 つの統計指標とは異なり,不況期において季節変
動が小さくなり,回復過程になれば,季節変動が大きくなっていることがわかる。 加えて
都 道 府 県 内 と 都 道 府 県 間 の 2 つ の 要 因 に 分 け た 場 合 に は , 95%以 上 を 都 道 府 県 間 の 格 差 が
寄与し,都道府県内の変動が占める割合がわずかであることが読み取れる。
し か し な が ら , 都 道 府 県 内 の タ イ ル 指 標 の み に 注 目 し た 場 合 に は , 平 成 21 年 の 数 値 が
10
高 く , 平 成 22 年 に は 数 値 が 減 少 し て い る 。 つ ま り , 上 記 の 2 つ の 指 標 と 同 様 に , 景 気 後
退期において季節変動が大きくなり,回復基調になれば,季節変 動が小さくなる傾向を窺
い知ることができる。今回,全体のタイル指標は,季節指標ωやジニ係数と違う動きを見
せたが,これは都道府県間,つまり地域格差があまりに大きいことが原因として生じたと
考えられる。都道府県内の季節変動については整合的な結果が得られたといえる。
表 1 タイル指標の計算結果
全体
都道府県内
都道府県間
Ⅴ
平 成 19 年
平 成 20 年
平 成 21 年
平 成 22 年
0.346
0.339
0.340
0.345
( 100.0%)
( 100.0%)
( 100.0%)
( 100.0%)
0.011
0.010
0.012
0.011
( 3.1%)
( 3.1%)
( 3.5%)
( 3.2%)
0.335
0.329
0.328
0.334
( 96.9%)
( 96.9%)
( 96.5%)
( 96.8%)
まとめと今後の課題
上記で,季節変動に関する特徴と問題点を紹介し,本稿で使用するデータ(宿泊旅行統
計 調 査 )と 分 析 手 法 を 説 明 し た う え で ,季 節 変 動 指 標 ω ,ジ ニ 係 数 ,タ イ ル 指 標 を 通 じ て ,
延べ宿泊者数の季節変動に関する実証分析を行った。この結果,一部の指標では異なった
動きをみせたが,おおむね景気後退局面になれば,季節変動が大きくなり,逆に景気が回
復すれば,季節変動が小さくなることがわかった。
この理由として考えられることに,まず繁盛期は景気の影響を受けずに,一定規模の観
光客数が見込まれる。本来なら,景気が回復すれば観光客数が増加し,それに伴って多く
の観光客を受け入れることが理想であるが,観光商品は供給が制限されているので,早期
に対応することは不可能である。しかしながらショルダーシーズンや閑散期になれば,観
光客が増加しても,収容能力に余裕があるため,ピーク時との格差は小さくなる。 そのた
め,景気が良くなれば,季節変動が縮小する傾向にある。逆に景気後退期になれば,ピー
ク時はほとんど変化がなく,観光客はショルダーシーズンや閑散期の観光活動を控える 。
それゆえ,季節変動が拡大する。このような指摘は,従来からもなされていたが,各種の
指 標 を 通 じ て ,今 回 ,は じ め て 実 証 的 に 裏 付 け ら れ た こ と に な る 。当 然 の こ と で は あ る が ,
今後の観光政策としては,季節変動をできる限り小さくし,観光経営を安定化させるため
には,ショルダーシーズンの短縮化やオフシーズンの観光客や宿泊客の増加 をさせるよう
な観光商品や企画の開発が求められることになる。
宿 泊 旅 行 統 計 調 査 の 結 果 は ま だ 4 年 間 し か 存 在 し な い た め ,ま だ 一 般 化 を 行 う に は よ り
長 期 的 な 分 析 が 必 要 で あ ろ う 。 ま た 今 回 の 分 析 で は , 宿 泊 旅 行 統 計 調 査 の 従 業 者 数 10 人
以上の宿泊施設のみを対象としているため,実態よりも季節変動が小さくなっている。中
小零細業者を含めた全体で行った場合には,より変動が大きくなったといえる。また,都
道府県単位で計測したため,ある程度,データの平準化が行われている。市町村レベルで
の計測を行った場合にはより多くのバラツキが発生すると考えられる。このように課題を
11
あげれば枚挙にいとまがないが ,このような課題を 1 つずつ克服 すれば,宿泊者数だけで
なく,観光統計データの全体における季節変動について客観的に把握することができ,さ
らに観光需要予測やリスクマネジメントなどの他分野への応用も可能となるといえる。こ
のような課題を早急に解決することが日本が観光立国となるために必要不可欠である とい
える。
注
Yacomis( 1980) が 使 用 し た 分 析 手 法 は 2 種 類 で あ る 。 1 つ は , 季 節 変 動 指 標 ω の 分 母
と 分 子 を 入 れ 替 え た 季 節 変 動 比 ( seasonality ratio) と , も う 1 つ は 変 動 係 数 で あ る 。 季
節 変 動 比 に つ い て は ,ω と 同 様 の 特 徴 を 有 す る が ,そ の 範 囲 が 1~ 12 と な る こ と が 他 の 指
標との関係上,使いにくい側面を有している。また変動係数については,観光データ(主
に 観 光 入 込 客 数 ) を 指 数 化 ( 基 準 月 を 100) し た う え で , 平 均 値 と 標 準 偏 差 を 計 算 し , 平
均値に対する標準偏差の割合を計算することで,季節変動を測定している。
2 ジニ係数の計算には,平均差を使用するなど,さまざまな方法が存在している。
3 宿泊施設の稼働率については,日本観光旅館連盟が実施している旅館営業概況調査が存
在 し て い る 。 同 調 査 に よ る と , 平 成 22 年 8 月 に お い て 全 国 で は 47.3% と な っ て い る 。 こ
の結果とωの乖離については,主要観光地(温泉地を含む)所在の会員を対象としている
ことなど,さまざまな要因が考えられるが,今後の検討課題としたい。
4 Tsitouras( 2004) の 研 究 に よ れ ば , ジ ニ 係 数 は ギ リ シ ャ が 0.50, イ タ リ ア が 0.24, ポ
1
ル ト ガ ル が 0.19, ス ペ イ ン が 0.24 と い う 結 果 と な り , 日 本 よ り も 大 き い こ と が わ か る 。
こ れ は 2000 年 の 非 居 住 者 に よ る 宿 泊 者 数 の デ ー タ に 基 づ き , 計 算 方 法 に 一 部 差 異 が 存 在
するため,国際比較の解釈には注意が必要である。とはいえ,ジニ係数の小ささは,日本
の宿泊業の能力の高さを表しているといえる。
5
ただしジニ係数は,下位階級の累積度数の変化に影響を受けやすい側面もある。
6
宿泊旅行統計調査ではなく,各都道府県の観光入込客統計のデータを使用して,ジニ係
数を計算した場合には,G
0. 6 と な っ た 。 た だ し , こ の 数 値 は 東 京 都 や 大 阪 府 な ど の 月
別 観 光 入 込 客 数 を 公 表 し て い な い 都 府 県 は 除 か れ て い る 。 ま た 平 成 22 年 の 観 光 入 込 客 数
の デ ー タ( 共 通 基 準 に 基 づ か な い 場 合 も あ る )を 使 用 し て い る が ,平 成 23 年 10 月 末 現 在
で 平 成 22 年 の デ ー タ を 公 表 し て い な い 県( 福 島 県 や 北 海 道 な ど )に つ い て は 平 成 21 年 の
数値に基づいている。いずれにせよ,この結果からわかるように,観光入込客数のほうが
宿泊者数よりも季節変動が大きいことがわかる。ちなみに,観光入込客数について,ジニ
係 数 が 最 も 大 き か っ た の は ,秋 田 県( 0.268)で ,逆 に 最 も 小 さ か っ た の は 沖 縄 県( 0.073)
である。沖縄県の場合,県外からの日帰り観光客はほとんど考えられず,延べ宿泊者数の
ジニ係数とほぼ同じ結果となった。
参考文献
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12
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Patterns. A Comment on Hartman”, Leisure Studies, Vol.7 No.1, pp.33-39.
・ Tsitouras, Anastassios (2004), “Adjusted Gini Coefficient and 'Months Equivalent'
Degree of Tourism Seasonality: A Research Note”, Tourism Economics , Vol.10, No.1,
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・ 御 園 謙 吉 , 良 永 康 平 ( 2011),『 や わ ら か ア カ デ ミ ズ ム ・ 「 わ か る 」 シ リ ー ズ よ く わ か
る統計学 経済統計編 第 2 版』,ミネルヴァ書房
13