アルカリおよびクエン酸処理された茶殻による重金属イオンの吸着除去

アルカリおよびクエン酸処理された茶殻による重金属イオンの吸着除去
神奈川工科大学 応用化学専攻
マルコメ株式会社
○大西真野 遠藤友紀
中村良
中島将太 笹本忠
1.
はじめに
高度経済成長期に日本の産業は目覚しい発展を遂げたが、その半面、公害問題なども多く発生した。その
ひとつとして、重金属廃液による水域ならびに土壌の汚染が挙げられる。排水中の重金属は、活性炭やイオ
ン交換樹脂などを使用して除去することができるが、高価であるためごく一部で使用されているにすぎない。
そのため、安価かつ大量に入手でき、環境への負荷が小さい重金属吸着材の開発が待望されている。そこで
本研究では、植物性廃棄物である「茶殻」に注目し、アルカリおよびクエン酸処理された茶殻の重金属イオ
ン(銅・亜鉛・クロム酸イオン)に対する吸着除去材への応用開発を目的として行った。ここでは、銅イオン
についての結果を示す。
2.
実験方法
茶殻は福田食品工業㈱製のものを原試料とし、以下の前処理を行った。まず、未処理の茶殻に 0.1M NaOH
水溶液を加え2h攪拌し分離する。純水で1h攪拌する。その後、廃液の pHが変わらなくなるまで純水で
洗浄、分離を繰り返す。分離した茶殻を50℃で 1 日乾燥させた試料をアルカリ処理茶殻とした。アルカリ
処理茶殻に 0.6M クエン酸水溶液を加え2h静置し浸漬させる。その後 50℃で 12h、さらに、120℃で 90min
二段加熱する。50℃の純水で1h洗浄し茶殻を分離する。廃液の pHが変わらなくなるまで洗浄・分離を繰
り返し、乾燥させた試料をアルカリ/クエン酸処理茶殻とした。
回分式吸着実験は以下の方法で行った。茶殻 0.5g 量りとりサンプル管へ入れる。そこへ原液 0.1~100ppm
に調整した重金属硝酸塩水溶液を 40mL 入れ、恒温槽中にて吸着実験を行なった。吸着条件は、吸着時間を
0~24h、温度を 25℃、pH を 1~12 で行った。その後、遠心分離を行い、サンプル溶液を得た。
流通式吸着実験は以下の方法で行った。茶殻 5.0g を量りとりガラスカラムに充填した。そこへ重金属硝酸
塩水溶液を 1.0mL/min で流通させ、時間毎にサンプリングを行った。
回分式、流通式ともに得られたサンプル溶液中の銅イオンの定量は原子吸光光度計(島津製作所:AA-6800)
にて行った。
3.
結果と考察
未処理の茶殻、1h煮出し茶殻、アルカリ処理茶殻、アルカリ/クエン酸処理茶殻に重金属イオン(Cu2+、
Zn2+、CrO42-)を回分式にて吸着させた結果を以下に示す。図1はそれぞれの茶殻に 1ppm 銅イオンを吸着
させ、吸着時間を変化させた結果である。4hまでは吸着時間が長くなるにつれて吸着率は高くなった。図 2
は pH依存性を示したものである。pH12 以外の pH 領域でアルカリ処理茶殻<1h煮出し茶殻<アルカリ/
クエン酸処理茶殻<未処理の茶殻の順に吸着率が高くなっている。pH4~8 で高い吸着率が見られたが、は
どの茶殻もあまり変化はない。pH2、10、12 で吸着率が低く、強酸及び強アルカリ性に寄ると吸着率が低
くなる傾向が見られる。銅イオンはアルカリ下で、水酸化銅に変化してしまうため吸着機構が変わり、あま
り吸着しなくなると考えられる。未処理の茶殻では pH6 が一番高く、1h煮出し茶殻、アルカリ処理茶殻、
アルカリ/クエン酸処理茶殻では pH4 が高い。以上より銅イオンは pH4 での吸着が最適である。
一方、流通式吸着実験では初期濃度 100ppm の銅イオン水溶液を流通させたところ、24h で平衡に達し、
茶殻 1g あたりの吸着量がアルカリ処理、クエン酸処理、1h 煮出し茶殻の順で高くなるという結果が得られ
た。
吸着率/%
吸着率/%
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
5
0.5h
1
2
4
時間/h
8
図1 Cu 2+ 時間依存性
16
20
24
未処理
1h煮出し
アルカリ処理
アルカリ/クエン酸処理
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
2
4
6
8
pH
2+
図2 Cu pH依存性
10
12
未処理
1h煮だし
アルカリ処理
アルカリ/クエン酸処理