回転機械:タービンランナー セントローレンスFDR発電プロジェクトのプロペラ式ランナー ランナーの寿命延長 破壊力学が水力発電所のプロペラ式ランナーの延命を支援 M. Sabourin(カナダ ソレル -トレイシー,Alstom Hydro,水力工学部長およびエキスパート) D-A. Bouffard(カナダ ソレル -トレイシー,Alstom Hydro,水力工学エンジニア) F. Paquet(カナダ ソレル -トレイシー,Alstom Hydro 水力工学,提案チームリーダー) こうした理由から,現在の技術仕様には 寿命に応じて,所定の位置にある初期欠陥 命を満たし,部品破損を回避することはき タービンランナーの動荷重解析が必要です. の限界寸法を算定することです.エンジニ わめて重要です.ニューヨーク電力公社 破壊力学解析によって,キズの亀裂進展速度 アは応力拡大係数を算定し,予想動作条件 (New York Power Authority)は,セント を評価し,所定の耐用年数における構成部品 を表す負荷パターンを適用することで,ラ ローレンスFDR発電プロジェクトのように の機械的破損を予測します.延命を促すため, ンナーの亀裂伝搬と脆性破壊を評価します. 大規模な水力発電機の修復に取り組んでい Alstom社のエンジニアは,ANSYS したがって,破壊力学の手法は,特にラン ます.最近の数値シミュレーションソフト Mechanicalを使用して,プロペラ式水力ター ナーのハブとブレードとの部分溶け込み溶 ウェアの進展により,このような発電機の ビンランナーに見られるような複雑な形状の 接の解析に適しています. 性能を高め,生産性と信頼性を向上するこ 応力拡大係数を,亀裂長さの関数として計算 とができるようになりました.修復プロ します. 水力発電プロジェクトにとって,予測寿 欠陥の応力拡大係数を評価する場合,標 準的に使用するのは英国規格「BS ジェクトのフェーズ2では,Alstom Hydro 社(発電製品やシステムを開発する企業, 7910:2005: 破壊力学解析の目的は,構成部品の予測 Guidance to methods for カナダ ケベック州)が元のAllis-Chalmers社 製タービンに8つの新しい交換プロペララン 1 2 ナーを供給する予定です. 3 これらのランナーは直径6.096メートル, ブレードと 4 ハブの接合部 5 推定寿命が70年,正味落差24.7メートルで 64.9MWの発電能力があります.ランナーの 6 中央軸 ハブとブレードは,ステンレス鋼の鋳造物を 7 最終形状に機械加工したものです.水力ター ビンランナーの耐用期間中に発生する動荷重 は破損の原因になります.したがって,ター 平面断面 8 9 ビンの信頼性やプロジェクトの経済的な実行 可能性には大きなリスクがあります. 破壊力学解析に使用する平面の定義.FMAとハブおよびブレードとの交わりを示す. ANSYS Advantage • Volume II, Issue 1, 2008 27 回転機械:タービンランナー セントローレンスのランナーに使用されたブレード設計の応力度の比較.左が欠陥のないランナーで,右が部分溶け込み溶接部のあるランナー. た.次に,応力拡大係数を各平面の亀裂長 さの関数として表す関係式を考案しました. ブレード こうしたデータを利用することで,ラン ブレード 吸い込み側 吸い込み側 圧力側 ナーの耐用期間中に発生する動荷重への耐 圧力側 久性の向上に適した部分溶接部をもつラン ブレードと ハブの接合部 半楕円形 フィレット ナーを設計することができました. ハブ その結果,溶接量は減少し,これによっ ハブ て溶接歪みが小さくなり,最終形状の精度 が非常に高くなりました.Alstom社が設計 ランナー交換品のブレードとハブの接合部の溶接形状(右)は,英国規格で指定された形状(左)とは大きく 異なる. プロセスにFEAを使用したことにより,ラ ンナーの効率を高いレベルに保ち,キャビ テーション侵食を防ぎ,全体の挙動を改善 assessing the acceptability of flaws in 平面の2-D自由度を抽出し,破壊力学解析を することができます.現在,最初のラン metallic structures」 (BS 7910:2005: 金属構 行いました.2-D FEAモデルは3-D解析とほ ナーは円滑に稼動しており,今後少なくと 造体におけるキズの許容基準評価法の指針) ぼ同等の応力を示し,この手法の妥当性を も70年間は環境に優しいエネルギーを作り です.この規格では,ブレードとハブの接 裏付けました.これらの平面について,エ 続ける見通しです.その他の発電機の引き 合部を十字接合のように簡略化した形状と ンジニアチームは亀裂先端に斜め要素を用 渡しと運転開始は数年先の予定です.■ 考えます.ただし,セントローレンスのラ いて,ブレードとハブの溶接部が溶け込ん ンナーに使用するブレード設計のほか,最 でいない断面を亀裂としてモデル化しまし References 新のランナー設計の一部では,溶接部の形 た.混合モード応力拡大係数の算定には変 状が十字とはかけ離れています.このよう 位外挿法を用いました.また,広範な亀裂 な部分溶け込み溶接部には溶融していない の長さと位置の応力拡大係数を評価しまし Sabourin, M.; Bouffard, D-A.; Paquet, F., “Life Prediction of Hydraulic Runners Using Fracture Mechanics Analysis,” Alstom Hydro, ©ALSTOM 2007. 部位が含まれるため,接合部の断面全体に 溶接金属が溶け込んでいません.Alstom社 700 のエンジニアはこれまでの手法を改善し, 最大Pnom このような新しいランナーの安全な溶接形 多項式(最大Pnom) 多項式(最大Emballement) を比較して,応力拡大係数を検証しました. その結果は満足のいくものでした. エンジニアチームはまず,静的3-D有限要 素解析(FEA)を行い,欠陥のない,完全 溶け込み溶接部を使用した理論上のラン ナーについて,常時通常運転と緊急条件の 応力拡大係数(MPa mm1/2) Mechanicalの出力結果と標準的な英国規格 の十字接合に使用する公式ソリューション 最大Emballement 600 状を設計しました.それと同時に,ANSYS 500 400 300 200 100 場合の変位および応力分布を評価しました. 負荷パターンを複雑にして,できるだけ実 際のタービンに近い動作を表現しました. 0 0 20 40 60 80 100 亀裂長さ(mm) 3-D FEAの結果から,エンジニアは使用 28 ANSYS Advantage • Volume II, Issue 1, 2008 亀裂長さの関数としての応力度 120 140 160
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