ヒューペルミンE - 認知症の早期発見、予防・治療研究会

ヒューペルジンAを主成分とするサプリメント
(ヒューペルミンE)の使用経過報告
田平 武
河村病院認知症診断・予防・治療センター
順天堂大学大学院医学研究科
認知症診断・予防・治療学
第9回認知症サプリメント研究会
平成25年9月7日
AP品川
ヒューペルミンE
レキオファーマ(株)
原材料名
配合
量
(mg)
クルクミンパウダー
60.0
トウゲシバエキス末
原材料
配合量
トウゲシバエキス末
75 mg
25.0
クルクミンパウダー
60 mg
ピペリン
3.0
ビタミンC
50 mg
ビタミンC
21.0
ビタミンE
5.0
ビタミンE
3.5 mg
シソ油
119.0
6カプセル=
アリセプト3.8 mgに相当
2包=アリセプト3.8 mgに相当
78歳 女性 アルツハイマー病
現病歴: X - 8年から物忘れがある
X年6月交通事故で後頭部打撲、以後認知症悪化
X年7月25日T11圧迫骨折で入院、右足しびれあり、
10月退院後特別養護老人ホームに入所
入所時自分の部屋が分からない、トイレの場所が
分からない、 10月24日初診
既往歴・家族歴: 特記事項なし、生活歴:中学卒(全9年)
現症:MMSE 13/30 (3単語遅延再生2/3, 時1/5, 所0/5,
計算1/5, 復唱0/1, 文章0/1, 図形0/1)
ADAS-J cog 30.6
MRI:側脳室・側脳室下角拡大軽~中、大脳萎縮軽度
X虚血性変化、ラクナ(両基底核、深部白質)
血液検査:脂質異常、空腹時高血糖
ヒューペルミンE 3粒/日
X年11月7日めそめそしていたが明るくなった、人とよく
話すようになった、時の見当識4/5
2週後ヒューペルミンE 6粒/日に増量
8週後ADAS23.3 [改善] 、16週後ADAS22.7 [改善維持]
42週後 ADAS 27.7 [ベースライン以下を維持、副作用なし]
76歳女性
現病歴:69歳交通事故(横断歩道で車にはねられた)、意識障害なし、以後認知症
症状出現
既往歴:小児期より難聴高度
家族歴:特記事項なし
生活歴:高卒、英文タイピスト
現症:膝関節症による歩行障害、高度難聴、パーキンソン徴候なし
MMSE 15/30 (3単語遅延再生0/3, 時0/5, 所3/5, 計算0/5)
ADAS 41.3, 構成障害なし
MRI:下角拡大、大脳(とくに頭頂葉)萎縮、虚血性変化
服用薬)トスペラール(25) 2T、ソラシロール(10) 2T、
メリスロン(12) 2T、メバン(5) 2T、
アリセプト(5) 1T、モーラステープ
ヒューペルミンE 3C服用開始
2週後 6Cに増量
6週後 副作用なし、ADAS 30.3
23週後 ADAS 25.0 血液検査:異常なし
50週後 ADAS 33.3 [悪化傾向にあるがまだベース
ライン以下を維持]
92歳女性 アルツハイマー型認知症
現病歴:85歳頃から物忘れ、夜間不眠(トイレ昼3回、夜15回)、これが続くと譫妄状態となり
ものを投げたりする
既往歴:82歳肝臓病、92歳細菌性膵炎、急性胃腸炎
家族歴:母80過ぎて物忘れ
生活歴:高等女学校卒(計10年)、主婦
併用薬:なし
2012.9.19 初診時 軽いPD sign あり
MMSE 22/30 (3単語遅延再生0/3、時1/5、所4/5)、
ADAS 22.0 時計、図形 正常
MRI 両下角拡大中、大脳萎縮軽~中、虚血性変化軽、梗塞なし
ヒューペルミンE3C/日開始
2週後 介護者「天気が悪くてもいい天気だねなどと言っていたが、そういうことがなくなった
、人との会話が増えた」
ヒューペルミン6C/日に増量
6週後 ADAS 17.7
しかし薬(ヒューペルミンE)を長く飲んではいけないと家族に訴え、家族は本人が飲みたくな
いというのなら無理にすすめないで下さいということで中止
中止後ADAS 22.3に悪化
ヒューペルミンE顆粒の使用経験
• ヒューペルミンEを19名のアルツハイマー病患
者が試みた。
• カプセルは服用直後に胃症状を訴えるものがあ
ったが、顆粒では訴えるものはなかった。
• 顆粒はおいしい、飲みやすいと好評であった。
• カプセルをのどに引っかけた例が1例あったが、
顆粒は問題なかった。
• 2例はカプセルを好んだ。
• ヒューペルミンE開始後ADAS-Jcogの改善が見
られ、効果が少なくとも1年持続した。
外来患者診断割合
順天堂
河村病院
(H21.5~H25.8)
(H24.1~H25.8)
N=404
N=224
合計
N=608
MCI
AD
VD
DLB
FTD
うつ
他
正常
私の抗認知症薬使用内訳
140
120
100
順天
80
河村
合計
60
40
20
0
アリセプト
レミニール
イクセロン
メマリー
アリセプトⓇ服用後ADAS-Jcogの経時的変化
ADAS
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84
週
イクセロンパッチⓇ服用後ADAS-Jcogの経時的変化
ADAS
25
20
15
10
5
0
0
2
4
6
8
10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54
週
レミニールⓇ服用後ADAS-Jcogの経時的変化
ADAS
30
25
20
15
10
5
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
42
44
46
48
50
週
ヒューペルミンE
45
40
35
30
25
20
15
中止
10
5
0
0
2
4
6
8
10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50
週
トウゲシバ( (Huperzia serrata) )
ヒューペルジンA
= テルペンアルカロイド (テルペノイド)
アセチルコリンエステラーゼ阻害作用
ブチリルコリンエステラーゼ阻害作用
NMDA受容体拮抗作用
DA, NE増強作用
BBB通過、半減期:約6時間
代謝:CYP1A2により代謝を受けるが
95%は代謝されず、腎より排泄
2-2)Huperzine A の薬理作用
Huperzine A は強力なAChE阻害剤 ②
Hup.A および対照薬の覚醒ラット大脳皮質アセチルコリン量に及ぼす作用
Hup.A は覚醒ラットの大脳皮質アセチルコリン量を増加させた。その活性は、モル比較で、ドネペ
ジルの8倍、リバスチグミンの2倍であった。 Hup.A の活性は対照薬に比べて持続的であった。
Liang, Y.Q.; Tang, X.C. : Neurosci Lett 2004, 361(1-3): 56-59
2-2)Huperzine A の薬理作用
Huperzine A はアセチルコリンとドパミンをバランスよく増加させる③
Hup.A をラットに腹腔内投与した時の、大脳皮質アセチルコリン量、ノルエピネフリン量
およびドパミン量に及ぼす作用
% increase above baseline
250
0.1mg/kg
0.3mg/kg
0.5mg/kg
200
150
100
50
0
Acetylcholine
Norepinephrine
Dopamine
Hup.A はドパミンを増やす作用がある
Zhu, X.D.; Giacobini, E. J Neurosci Res 1995, 41(6): 828-835
AChE阻害剤の使用と大腿骨近位部骨折リスク
(AChE阻害剤未使用群との比較)
1.8
1.67
1.6
1.67
1.4
調
整
後
の
オ
ッ
ズ
比
1.2
1
1
0.8
p<0.002
0.6
p<0.001
0.4
0.22
0.2
0.39
0.39
0.22
0
AChE阻害剤
未使用
(n=487)
リバスチグミン
(n=911)
ドネペジル
(n=645)
ガランタミン
(n=191)
【調整因子】 年齢、性別、BMI、clinical dementia rating scale (CDR)、blessed dementia scale (BDS)、MMSE、falls risk
assessment tool (FRAT)、施設入所、Charlson comorbidity score (CCS)、喫煙、SSRI使用歴、骨折歴
Tamimi I, et al.: J Bone Miner Res. 27: 1518-27, 2012より作図
骨粗鬆症のメカニズムと
ビスホスホネート、ニコチンの薬理
エストロゲン
OPG
Activated
Synovial Fibroblasts
RANKL
RANK
-GTP
Activated T
Lymphocytes
Activated
Dendritic
Cells
Ach
Nicotine
Galantamine
煙草のみは骨がもろい
レミニールは骨折が増加?
Bisphosphonateは効かない
Ca, Vit D3, Vit K2が必要
T Cell
apoptosis
破骨細胞
mAChR
nAChR
骨芽細胞
bisphosphonate
骨形成促進 骨形成抑制
Bone
国立長寿医療研究センター新飯田俊平先生提供図を改変
AChE subtypes
球状 G1、・・・ G4
コラゲン様蛋白結合型 A1・・・
アセチルコリン
G4
G1
ADではG4が減少
従ってG1特異性の
高いAChE阻害薬が
有利
Immunohistochemistry of AChE in rat brain
(Hammond P et al. PNAS 91, 10933-37, 1994)
線条体:G4が多い
→G4阻害によりパーキンソン病
類似の状態に
Effects of acetylcholinesterase inhibitors on
acetylcholinesterase
G4 and G1 form in rats in vitro.
IC50=Ki (M)
Cortex
Hippocampus
Striatum
Huperzine A
G4
G1
7.0±3.5×10-9**
3.5±1.5×10-7
5.0±0.6×10-7*
8.4±0.9×10-7
1.1±0.1×10-7**
6.0±6.0×10-7
Donepezil
G4
G1
4.0±1.5×10-9
3.5±1.2×10-9
5.6±1.4×10-6
2.9±3.5×10-9**
5.2±0.9×10-7
1.4±0.4×10-10**
Rivastigmine
G4
G1
1.5±1.4×10-3
1.6±2.1×10-5**
3.5±0.5×10-4
3.1±0.8×10-5**
1.0±4.0×10-4
1.5±1.1×10-5*
*P<0.05, **P<0.01, significant difference between G4 and G1 forms.
(Wang R et al. Acta Pharmacologica Sinica 2006 Jan; 27 (1): 1–26)
トウゲシバは岐阜にもあった
トウゲシバ
ホソバトウゲシバ
百々ケ峰(どどがみね)
まとめ
• ヒューペルミンEを19例のアルツハイマー病患者に試みた。
• 長期(約1年)継続服用した症例5例中4例でADAS-Jcogの
スコアがベースライン以下(改善)を維持していた。
• アリセプト5 mgを服用していた中~高度の1例にヒューペル
ミンEを併用しても問題なく、認知機能の改善が見られた。
• 顆粒は飲みやすくおいしいとの評価であったが、カプセルを
好む症例もあった。
• 重篤な副作用は見られなかった。
• ヒューペルミンEの一日量(ドネペジル換算で3.8 mg)はやや
不足する印象があった。
• トウゲシバの国内生産の可能性について検討を開始した。