残業代をゼロにする 労働基準法等

過労死を激増させ、残業代をゼロにする
労働基準法等「改正」案の廃案を
労働基準法 等「改正」案の廃案を要求する
等「改正」案の廃案を 要求する意見書
要求する 意見書
自由法曹団
2 015
01 5 年 4 月 2 4 日
安倍内閣は、2015年4月3日、長時間労働と残業代不払いを促進する高
度プロフェッショナル制度の創設、企画業務型裁量労働制の拡大、フレックス
タイム制の清算期間の延長等を内容とする労働基準法(以下、「労基法」とい
う 。 )等 「 改 正」 案 を 閣議 決 定 し、 同 日 、国 会 に 提出 し た 。
自由法曹団は、労基法等「改正」案の廃案を強く求め、労働時間規制の抜本
的 強 化を 求 め る。
以 下 、そ の 理 由を 述 べ る。
第1
1
はじめに
労働 政策審議会の建議
―3者構成原則の蹂躙
労 働 政策 審 議 会は 、2 0 1 5 年 2月 1 3 日、塩 崎 恭久 厚 生 労働 大 臣 に 対 し
て 、労 働 時 間 規制 の 適 用を 除 外 する「 特 定 高 度 専 門業 務・成 果 型 労 働制( 高
度 プ ロフ ェ ッ ショ ナ ル 制度 )」の 創 設 や 企画 業 務 型裁 量 労 働制 の 拡 大等 を 提
言 す る「 今 後 の労 働 時 間法 制 等 の在 り 方 につ い て (建 議 ) 」を 行 っ た。
労働政策審議会は、労働者代表委員の一致しての反対を押し切って、高
度プロフェッショナル制度の創設や企画業務型裁量労働制の拡大等を提言
する報告をまとめ、建議したものであり、報告には労働者代表委員の「認
め ら れな い 」 との 意 見 が明 記 さ れて い る 。
このような強権的なとりまとめは、ILO(国際労働機関)条約等で確
認されている「労働政策に関する重要事項は労使公益の3者構成で調査審
議すべき」との3者構成原則の趣旨を踏みにじるものであり、とうてい容
認 で きな い 。
2
第1次安倍内閣のホワイトカラー・エグゼンプションの 再現
この建議を受けて、安倍内閣は、4月3日、施行日を2016年4月1
日 と して 、 今 通常 国 会 に労 基 法 等の 「 改 正」 案 を 提出 し た 。
1
「改正」案の高度プロフェッショナル制度は、一定範囲の労働者(特に
ホワイトカラー労働者)について、労基法の労働時間規制をはずし、労働
時間の管理も残業代の支払いも不要にしている。高度プロフェッショナル
制度は、「残業代ゼロ法案・過労死促進法案」反対の世論が高まる中で、
2007年に第一次安倍内閣が法案提出断念に追い込まれたホワイトカラ
ー・エグゼンプションの再現である。また、企画業務型裁量労働制の拡大
やフレックスタイム制の清算期間の延長は、いずれも、不払い残業の拡大
を 企 図す る も ので あ る 。
高度プロフェッショナル労働制度の創設や企画業務型裁量労働制の拡大
等は、「1日8時間・1週40時間」の労働時間法制の大原則を破壊し、
過労死を激増させ、残業代をゼロにするものであり、とうてい容認できな
い。
3
「1日8時間・1週40時間」の労働時間法制の大原則
―労働に8時間、睡眠に8時間、生活に8時間
労働時間には、それを超えて延長できない肉体的・精神的・家族的・社
会 的 限度 が あ る。人 間 は1 日 の 24 時 間 を周 期 に 生活 し て おり 、そ の 中 で 、
「労働時間に8時間、睡眠時間に8時間、生活時間に8時間」という人間
の 自 然の 要 求 があ る 。
生活時間の8時間は、家族との家庭生活や社会的、文化的活動のために
必要である。また、主権者として社会や政治の在り方を考え、その権利を
行使するために必要な時間である。ある程度の生活時間(自由時間)がな
け れ ば 、社 会 参加 や 政 治参 加 も でき ず 、他 方 、限 度 を 超 え た長 時 間 労働 は 、
労働者の精神と健康を破壊し、最悪の場合は家族や社会の維持さえ危うく
なる。
8時間労働制は、「労働時間に8時間、睡眠時間に8時間、生活時間に
8時間」の要求に基づいて実現されたものである。アメリカのシカゴの労
働者は、1886年5月1日、8時間労働制の実現をめざしてゼネストに
立ち上がり、これがメーデーの起源となった。1919年に設立されたI
LO(国際労働機関)は工場における労働時間は「1日8時間を越えては
ならない」とする1号条約を採択し、「1日8時間労働規制」が世界のス
タ ン ダー ト に なっ た 。
そのような中で、日本は、いまだにILO1号条約を批准していないの
で あ る。
2
第 2 長時間労働とタダ働きを強要する「 特定高度専門業務・成果型労働制( 高
度プロフェッショナル制度)」
1
高度プロフェッショナル制度の創設
⑴
欺瞞的な 創設理由
建 議 は、高 度 プロ フ ェ ッシ ョ ナ ル制 度 創 設の 理 由 とし て 、「 時間 で は な
く成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え」としてい
る 。 しか し 、 これ は 、 まっ た く 根拠 の な いご ま か しの 主 張 であ る 。
第1に、現行の労基法の下でも、出来高給や成果主義賃金など、成果
で 賃 金 を 決 め る こ と は 可 能 で あ る 。「 成 果 で 評 価 さ れ る 働 き 方 」 の た め 、
高度プロフェッショナル制度を創設し、労働時間規制の適用を除外する
必 要 はま っ た くな い 。第 2 に 、高 度 プ ロ フェ ッ シ ョナ ル 制 度は 、「 成 果 で
評 価 され る 働 き方 」、即 ち「 成 果 で賃 金 等 を決 め る 働き 方 」を 導 入 す る こ
とを定めているわけでもない。第3に、実際には、いったん高度プロフ
ェッショナル制度が導入されれば、使用者から成果を上げることを要求
さ れ 、労 働 者 は、 際 限 のな い 長 時間 労 働 を強 い ら れる こ と にな る 。
⑵
労基法第41条の2の新設
労 基 法「 改 正 」案 は 、第 4 1 条 の2 を 新 設し て 、高 度 の 専 門的 知 識 等を
必 要 とす る 一 定の 業 務 に従 事 す る労 働 者 のう ち 、一 定 水 準 以上 の 賃 金 が 支
払 わ れる と 見 込ま れ る 労働 者 に つい て 、労 基 法 に 定め る 労 働時 間 規 制 を 適
用 し ない と す る「 特 定 高度 専 門 業務・成 果 型 労 働 制( 高 度 プロ フ ェ ッシ ョ
ナ ル 制度 )」 が 創設 す る こと を 定 めて い る 。
こ の 高度 プ ロ フェ ッ シ ョナ ル 制 度は 、労 働 者 に い ま以 上 の 長時 間 労 働 と
タ ダ 働き を 強 要し 、 過 労死 ・ 過 労自 殺 を 促進 す る もの で あ る。
2
⑴
長時間労働 とタダ働きの強要
労働時間規制の適用除外
高 度 プロ フ ェ ッシ ョ ナ ル制 度 は、要 件 を 満た す 労 働者 に つ いて 、労 基 法
第 4 章に 定 め る労 働 時 間、休 憩、休 日 及 び深 夜 の 割増 賃 金 に関 す る 規 定 の
適 用 をす べ て 除外 す る とい う も ので あ る 。
労基法第4章は、労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関して、
使 用 者に 対 し て次 の よ うな 規 制 を課 し て いる 。
3
労 働 時間(32条)
1日8時 間 ・週40時 間を超えて労 働させることを禁 止
労 働 時間 が6時間を超える場 合には少 なくとも45分、8
休 憩(34条)
時 間を超 える場 合には少なくとも1時間の休 憩 時間 を与え
なければならない(1項)。
休 憩時 間は自 由 に利 用させなければならない(3項)。
休 日(35条)
深 夜の割 増 賃 金
原 則として毎 週 少なくとも1回の休 日を与 えなければなら
ない。
深 夜 労働 させた場 合 には、その時 間の労 働については、
(37条4項 ) 25%以 上 の割 増 賃 金を支 払 わなければならない。
こ れ らの 規 定 の適 用 を 除外 す る とい う こ とは 、使 用 者 は、労 働 者 に 対 し
て、労 働 時 間 につ い て は1 日 に 何時 間 で も、週 に 何時 間 で も労 働 さ せ る こ
と が でき る、休 憩 時 間 も 与え な く てよ い、週 1 回 の 休 日も 与 え なく て よ い 、
深 夜 に労 働 さ せて も 割 増賃 金 を 支払 わ な くて よ い、と い う こと で あ る 。逆
に 言 えば 、使 用 者 は 労 働者 を 2 4時 間 、休 憩 も 与 えず に 労 働さ せ た り 、1
週 間 連続 で 労 働さ せ た りす る こ とも 適 法 とな り 、こ の よ う な場 合 に も 一 切
残 業 代を 支 払 わな く て よい 、 と いう こ と を意 味 し てい る 。
⑵
ア
使用者の指揮命令 による長時間労働の危険
「改正」案 第41条の2 の内容
「改正」案第41条の2は、高度プロフェッショナル制度の対象労
働者に対して、労働時間規制の適用をすべて除外するだけでなく、使
用者が始業時刻や終業時刻を定めたり、指揮命令をしたり、具体的な
業 務 指示 を し たり す る こと を 禁 止し て い ない 。
イ
厚生労働省の見解
こ の 点 に つ い て 、 厚 生 労 働 省 は 、「 高 度 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル 制 度 の 対
象 業 務 は 、 裁 量 労 働 制 1の 対 象 業 務 よ り も 裁 量 性 が 高 い こ と を 想 定 し て
い る ので 、使 用 者 が 、高 度 プ ロ フェ ッ シ ョナ ル 制 度の 対 象 労働 者 に 対 し
て 、始 業 時 刻 や終 業 時 刻を 定 め たり 、指揮 命 令 を した り 、具 体 的 な 業 務
指 示 をし た り する こ と はで き な い 。」 と の 見解 の よ うで あ る 。
し か し 、高 度 プロ フ ェ ッシ ョ ナ ル制 度 の 対象 業 務 の方 が 裁 量労 働 制 の
対 象 業務 よ り も裁 量 性 が高 い と は言 え な い 。む し ろ 、高 度 プロ フ ェ ッ シ
専門業務型裁量労働制が労基法第38条の3、企画業務型裁量労働制が労基法第38条の4に規定
されている。
1
4
ョ ナ ル制 度 の 対象 業 務 は 、そ の 例と さ れ てい る「 金 融 商 品 の開 発 業 務 」、
「 ア ナ リ ス ト の 業 務 ( 企 業 ・ 市 場 等 の 高 度 な 分 析 業 務 )」、「 研 究 開 発 業
務 」等 を 見 て みる と 、裁 量 労 働 制の 対 象 業務 、とり わ け 企 画業 務 型 裁 量
労 働 制の 対 象 業務 よ り も裁 量 性 が低 い と 解さ れ る 。
さ ら に、日 本 経団 連 は、2 0 0 5年 6 月 21 日 に「 ホ ワ イ トカ ラ ー エ
グ ゼ ンプ シ ョ ンに 関 す る提 言 」を 発 表 し 、そ の 中 で対 象 労 働者 の 範 囲 を
「 年 収4 0 0 万円 以 上 」の 労 働 者に 拡 大 する こ と を主 張 し てい る 。こ れ
で は 、全 労 働 者の 5 0 %前 後 の 労働 者 に ホワ イ ト カラ ー・エ グ ゼ ン プ シ
ョ ン が適 用 さ れる こ と にな る 。こ れ ら の 労働 者 の ほと ん ど は 、高 度 プ ロ
フ ェ ッシ ョ ナ ル制 度 の 対象 労 働 者と さ れ ても 、そ の 業 務 を 遂行 す る 上 で
裁 量 権を 有 し ない で あ ろう 。
ウ
裁量労働制 との対比
労基法第38条の3の1項1号は、専門業務型裁量労働制について、
そ の 対象 業 務 を 、
「 当 該 業務 の 遂 行の 手 段 及び 時 間 配分 の 決 定等 2 に 関 し
使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で
定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務」と定めている。
ま た 、労 基 法 第3 8 条 の4 の 1 項1 号 は 、企 画 業 務型 裁 量 労働 制 に つ い
て 、そ の 対 象 業務 を 、「 当 該 業 務の 遂 行 の手 段 及 び時 間 配 分の 決 定 等 3 に
関 し 使用 者 が 具体 的 な 指示 を し ない こ と とす る 業 務」 と 定 めて い る 。
こ れ に 対 し 、「 改 正 」 案 第 4 1 条 の 2 は 、 高 度 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル 制
度 の 対象 業 務 につ い て 、上 記 の よう な こ とは 一 言 も定 め て いな い 。法 文
上は、使用者が、高度プロフェッショナル制度の対象労働者に対して、
始 業 時刻 や 終 業時 刻 を 定め た り 、指 揮 命 令を し た り 、具 体 的な 業 務 指 示
を し たり す る こと は 禁 止さ れ て いな い 。
エ
管理監督者 との対比
労 基 法第 4 1 条2 号 は 、管 理 監 督者 に 対 して 労 働 時間 に 関 する 規 制 の
適 用 を除 外 す るに 当 た って 、前 記 の 第 3 8条 の 3 の1 項 1 号や 第 3 8 条
の 4 の1 項 1 号の よ う な定 め を して い な い。
し か し 、行 政 実務 及 び 裁判 例 に おい て 必 要と さ れ てき た 管 理監 督 者 の
要 件 は 、「 ① 事 業 主 の 経 営 に 関 す る 決 定 に 参 画 し 、 労 務 管 理 に 関 す る 指
揮 監 督権 限 を 認め ら れ てい る こ と、② 自 己の 出 退 勤を は じ めと す る 労 働
2 今回の労基法「改正」案には、
「 時 間 配 分 の 決 定 」 に 、「 始 業 及 び 終 業 の 時 刻 の 決 定 を 含 む 。」 こ と が
明記されている。
3 注2で述べた労基法第38条の3の1項1号と同様の改正が予定されている。
5
時 間 につ い て 裁量 権 を 有し て い るこ と、お よ び ③ 一般 の 従 業員 に 比 し て
そ の 地位 と 権 限に ふ さ わし い 賃 金( 基 本 給 、手 当 、賞 与 )上 の 処 遇 を与
え ら れて い る こと で あ った 。」( 菅 野和 夫 著「 労 働 法
第十 版 」3 3 9 頁 )
と さ れて い る 。
管 理 監督 者 と 対比 し て 見る と 、金 融 商 品 の開 発 業 務 、ア ナ リス ト の 業
務(企 業・市 場 等 の 高 度な 分 析 業務 )や研 究 開 発 業務 等 に 従事 す る 高 度
プ ロ フェ ッ シ ョナ ル 制 度の 対 象 労働 者 は、事 業 主 の経 営 に 関す る 決 定 に
参 画 し得 る よ うな 地 位 には な く、自 己 の 出退 勤 を はじ め と する 労 働 時 間
管 理 につ い て 裁量 権 を 有し て い ると は 言 えな い 。
さ ら に 、前 述 のよ う に 、日 本 経 団連 は 、対 象 労 働 者の 範 囲 を「 年 収 4
0 0 万円 以 上」の 労 働 者、即 ち、全 労 働 者の 5 0 %前 後 の 労働 者 に 拡 大
す る こと を 主 張し て お り、そ の 場合 、これ ら の 労 働者 の ほ とん ど は 、高
度 プ ロフ ェ ッ ショ ナ ル 制度 の 対 象労 働 者 とさ れ て も、そ の 業務 を 遂 行 す
る 上 で裁 量 権 を有 し な いで あ ろ う。
管 理 監督 者 と 対比 し て 見て も 、高 度 プ ロ フェ ッ シ ョナ ル 制 度の 対 象 労
働 者 には 、労 働 時 間 管 理等 に つ いて 裁 量 権が あ る とは 言 え ない 。し た が
っ て 、高 度 プ ロフ ェ ッ ショ ナ ル 制度 の 下 では 、使 用 者 が 対 象労 働 者 に 対
し て、始 業 時 刻や 終 業 時刻 を 定 めた り 、指 揮 命 令 をし た り、具 体 的 な 業
務 指 示を し た りす る こ とに な る であ ろ う 。
オ
まとめ
以 上 のと お り 、高 度 プ ロフ ェ ッ ショ ナ ル 制度 の 対 象労 働 者 は 、裁 量 労
働 制 の対 象 労 働者 や 管 理監 督 者 と異 な り、業 務 遂 行上 の 裁 量権 が 乏 し く 、
自 ら の裁 量 に より 労 働 時間 を 決 定す る こ とが 保 障 され な い 中で 、労 働 時
間 規 制の 適 用 が除 外 さ れる こ と にな る 。そ の 結 果 、高 度 プ ロフ ェ ッ シ ョ
ナ ル 制度 の 下 では 、使用 者 は 、労 働 者 に 対し て 指 揮命 令 権 を有 し 、際 限
の な い長 時 間 労働 や 深 夜労 働 を 命ず る こ とが で き るこ と に なる 。高 度 プ
ロ フ ェッ シ ョ ナル 制 度 は、後 述 する と お り、法 制 度上 は 、4 8 日 間 連 続
し て、2 4 時 間休 憩 な しで 、労働 に 従 事 する こ と につ い て も、何 ら 規 制
が な い制 度 に なっ て い る。
このようなことが許されれば、労働の長時間化がますます促進され、
過 労 死 、過 労 自殺 が 激 増す る こ とに な る 。日 本 に 蔓延 す る 過労 死 や 過 労
自 殺 の 現 状 は 自 由 法 曹 団 の 2 0 1 4 年 1 0 月 1 0 日 付 意 見 書 41 1 ~ 1
5 頁 に述 べ た とお り で ある 。高 度 プ ロ フ ェッ シ ョ ナル 制 度 の創 設 に よ っ
2 0 1 4 年 1 0 月 1 0 日 付「 過 労 死 を 激 増 さ せ 、 残 業 代 を ゼ ロ に す る 労 働 時 間 法 制 の 大 改 悪 に 反 対 す
る 意 見 書 」( 自 由 法 曹 団 ホ ー ム ペ ー ジ 参 照 。)
4
6
て、労 働 者 の ワー ク ラ イフ バ ラ ンス や 社 会参 加 が 阻害 さ れ るの み な ら ず 、
過労死や過労うつ、過労自殺がますます増大することになるのである。
⑶
長時間労働をもたらす高度プロフェッショナル制度
高度プロフェッショナル制度の創設理由として「長時間労働を抑制す
る 」と い う 点 が掲 げ ら れて い る 。ま た 、高 度 プ ロ フェ ッ シ ョナ ル 制 度の 創
設 に よ り 、「 ム ダ な 残 業 を 減 ら し て 労 働 の 生 産 性 を 高 め る 」 な ど 、 長 時 間
勤 務 に歯 止 め がか か る かの よ う な報 道 も なさ れ て いる 5 。
し か し、残 業 代が 支 払 われ る 労 働者 よ り も、残 業 代が 支 払 われ な い ホ ワ
イ ト カラ ー・エ グ ゼ ン プシ ョ ン 労働 者 の 方が 労 働 時間 が 長 いこ と は、次 表
の と おり 、 ア メリ カ の 事例 か ら も明 ら か であ る 。
〔 残 業代 支 払 労働 者 と 残業 代 ゼ ロ労 働 者 の週 労 働 時間 の 比 較〕
(出典
GAO, “ Fair Labor Standards Act –
White-Collar Exemptions in the
Modern Workplace,” September 1999)
3
⑴
不十分な健康確保のための制度
高度プロフェッショナル制度において採用されている健康確保のため
の制度
「 改 正 」案 は 、高 度 プ ロフ ェ ッ ショ ナ ル 制度 の 創 設に あ た って 、使 用 者
に 対 し て 、「 健 康 管 理 時 間 」 の 把 握 義 務 を 課 す と と も に ( 第 4 1 条 の 2 の
1 項 3 号 )、 次 の 3 つ の う ち い ず れ か の 健 康 ・ 福 祉 確 保 措 置 を 講 じ な け れ
ば な らな い と して い る (第 4 1 条の 2 の 1項 4 号 )。
5
2017年2月14日付日経新聞
7
イ
労働者ごとに始業から24時間を経過するまでに厚生労働省令
で 定 める 時 間 以上 の 継 続し た 休 息時 間 を 確保 し 、か つ 、午 後 1 0 時
から午前5時の間において労働させる回数を1か月について厚生
労 働 省令 で 定 める 回 数 以内 と す るこ と 。
ロ
健康管理時間を1か月又は3か月についてそれぞれ厚生労働省
令 で 定め る 時 間を 超 え ない 範 囲 内と す る こと 。
ハ
1年 間 を 通じ 1 0 4日 以 上 、か つ 、4 週 間 を 通じ 4 日 以上 の 休 日
を 確 保す る こ と。
ま た 、「 改 正 」 案 は 、 使 用 者 に 対 し て 、 健 康 管 理 時 間 の 状 況 に 応 じ た 健
康・福 祉 確 保 措置 を 講 ずる こ と( 第 4 1 条の 2 の 1項 5 号 )や 対 象 労働 者
か ら の苦 情 の 処理 に 関 する 措 置 を講 ず る こと ( 第 41 条 の 2の 1 項 6 号 )
を 定 めて い る 。
そ し て 、「 改 正 」 案 は 、 使 用 者 に 対 し て 、 上 記 1 項 4 号 、 5 号 で 規 定 す
る措置の実施状況を労働基準監督署に報告しなければならないと定めて
い る (第 4 1 条の 2 の 2項 )。
⑵
「健康管理時間」の把握が困難であること
「 健 康管 理 時 間 」と は 、労 働 者 の事 業 場 内の 滞 在 時間( 労 使 委 員 会 が 決
議 し た場 合 に は労 働 時 間 )及 び 事業 場 外 にお い て 労働 し た 時間 と の 合 計 時
間 を 言う と さ れて い る (第 4 1 条の 2 の 1項 3 号 ) 6 。
し か し 、現 在 でも 使 用 者に は 労 働者 の 労 働時 間 を 把握 す る 義務 が 課 さ れ
て い る 7 のに も かか わ ら ず 、そ の 把握 が 不 十分 で あ るこ と が 多く み ら れ る 。
業 務 が継 続 し てい る の にも か か わら ず 、タ イ ム カ ード を 所 定時 刻 に 打 刻 さ
せ る こと な ど によ り 、 実労 働 時 間を 短 く 装う こ と もま れ で はな い 。
特 に、事 業 場 外で の 労 働時 間 の 把握 が 困 難で あ る とし て「 事 業 場 外 み な
し 労 働 時 間 制 」( 労 基 法 第 3 8 条 の 2 ) が 導 入 さ れ た こ と か ら も わ か る と
お り、事 業 場 外で の 労 働時 間 の 客観 的 な 把握 は 困 難で あ り、事 業 場 外 で の
労働時間の把握のためには自己申告制を採用せざるを得ないと思われる。
し か し 、自 己 申告 制 に おい て は 、労 働 者 の申 告 を 修正 さ せ たり 、ま た は 上
司や周囲の評価を気にして労働者自らが行う労働時間の申告が抑制的に
な さ れ た り し て お り 、 厚 労 省 の 通 達 8で も 「 不 適 正 な 運 用 に 伴 い … 使 用 者
当 該 対 象 労 働 者 が 事 業 場 内 に い た 時 間( こ の 項 の 委 員 会 が 厚 生 労 働 省 令 で 定 め る 労 働 時 間 以 外 の 時 間
を 除 く こ と を 決 議 し た と き は 、 当 該 決 議 に 係 る 時 間 を 除 い た 時 間 )と 事 業 場 外 に お い て 労 働 し た 時 間 と
の合計の時間
7 労基法108条、規則54条1項5号参照
8 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」
( 平 成 13 年 4 月 6 日 基 発 第
339 号 )
6
8
が 労 働時 間 を 適切 に 管 理し て い ない 状 況 もみ ら れ る 」と 指 摘さ れ て い る と
こ ろ であ る 。
こ れ らの 状 況 を改 め る こと な く 、単 に 使 用者 に「 健 康 管 理 時間 」把 握 義
務 を 課し た の みで は 、労 働 者 の「 健 康 管 理時 間 」を 適 切 に 把握 す る こと は
困 難 であ る 。
「 健 康管 理 時 間」の 把 握が 使 用 者の 義 務 とさ れ、こ れ を 欠 く場 合 に は 高
度 プ ロフ ェ ッ ショ ナ ル 制度 の 適 用が な い 旨定 め ら れて い る が( 1 項 本 文 但
書 )、 一 応 の 制 度 さ え 定 め て お け ば 「 健 康 管 理 時 間 」 の 実 態 を 把 握 し て い
な く ても 義 務 を果 た し たと さ れ る恐 れ が ある 。
⑶
健康・福祉確保措置が長時間労働を許容するものとなっていること
健康・福祉確保措置(第41条の2の1項4号)について、建議では、
健 康 管 理 時 間 に つ い て 、「 1 週 間 当 た り 4 0 時 間 を 超 え た 場 合 の そ の 超 え
た 時 間が 1 月 当た り 1 00 時 間 を超 え る こと 」を 許 容 し て いる 9 。上 記「 1
か 月 当た り 1 00 時 間 超の 健 康 管理 時 間」と は、過 労 死 基 準で あ る 1 か 月
当 た り の 残 業 時 間 1 0 0 時 間 に 匹 敵 す る 時 間 で あ る 。し た が っ て 、健 康 ・
福 祉 確保 措 置( 1 項 4 号 )に よ り 、い か にイ ン タ ーバ ル 規 制を 設 け 、深 夜
労 働 の 回 数 を 規 制 し て も ( 前 記 イ )、 ま た は 健 康 管 理 時 間 を 一 定 の 範 囲 内
と す る こ と を 定 め た と し て も ( 前 記 ロ )、 過 労 死 を 超 え る よ う な 長 時 間 労
働 が 許容 さ れ るの で あ れば 、 過 労死 防 止 には 何 の 役に も 立 たな い 。
ま た 、人 間 の 健康 確 保 のた め に は毎 日 睡 眠を 摂 ら なけ れ ば なら な い の に
も か かわ ら ず、前 記 ロ を選 択 し た場 合 に は、一 定 の期 間 内 の健 康 管 理 時 間
が 厚 労省 令 の 範囲 内 で あれ ば 、数 日 間 に わた っ て 休憩 や 睡 眠が と れ な い 労
働に従事させることも許容されることになる。前記ハを選択した場合も、
あ る 4週 間 の 最初 の 4 日と 、そ れ に 続 く 4週 間 の 最後 の 4 日を 休 暇 と す る
こ と によ り 、4 8 日 間 連続 し て 24 時 間 労働 に 従 事さ せ る こと も 許 容 さ れ
る こ とに な る 。
以 上 のと お り、健 康・福 祉 確 保 措置( 第4 1 条 の 2の 1 項 4号 )は 、長
時 間 労働 の 規 制に ま っ たく 役 に 立た な い 。
「 労 働 安 全 衛 生 規 則 に お い て 、 健 康 管 理 時 間 に つ い て 、 1 週 間 当 た り 40 時 間 を 超 え た 場 合 の そ の 超
え た 時 間 が 1 月 当 た り 100 時 間 を 超 え た 労 働 者 に つ い て 、 一 律 に 面 接 指 導 の 対 象 と す る 旨 を 規 定 す る
こ と が 適 当 で あ る 。 」( 建 議 添 付 の 「 報 告 」 1 0 頁 )
9
9
4
際限のない 適用拡大の 危険 があること
⑴
政府財界が適用拡大を 目論んで いること
2 0 14 年 6 月2 4 日 に閣 議 決 定さ れ た「『日 本 再 興戦 略 』改 訂 2014」
は 、 雇 用 規 制 を 「 岩 盤 規 制 」 と 称 し て 、「 穴 を 空 け る 」 こ と を 宣 言 し て い
る 。労 働 政 策 審議 会 で は 、使 用 者代 表 委 員が「 幅 広 い 労 働 者が 対 象 とな る
こ と が 望 ま し い 」 と の 意 見 を 述 べ て い る ( 建 議 参 照 )。 安 倍 首 相 は 、 年 収
要 件 に つ い て 、「 経 済 状 況 が 変 化 す る 中 で 、 そ の 金 額 が ど う か と い う こ と
は あ る 。」 と 述 べ て い る 。 産 業 競 争 力 会 議 の 委 員 で あ る 竹 中 平 蔵 パ ソ ナ グ
ル ー プ 会 長 兼 慶 応 大 学 教 授 は 、「 小 さ く 生 ん で 大 き く 育 て る 」 と 述 べ て い
る 。榊 原 定 征 日本 経 団 連会 長 は 、2 0 1 5年 4 月 7日 の 記 者会 見 で 、高 度
プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル 制 度 の 創 設 に つ い て 、「 最 終 的 に こ の 制 度 を 実 効 性 あ
るものにするには、年収要件の緩和や職種を広げる形にしないといけな
い 。」、「 制 度 は 走 り だ し た が 、 極 め て 限 定 し た 社 員 か ら 始 め る と い う 認 識
だ 」と 述 べ て いる 。こ の よ う に 、政 府 財 界は 、高 度 プ ロ フ ェッ シ ョ ナル 制
度 の 適用 を 拡 大し よ う とし て い る。
高 度 プロ フ ェ ッシ ョ ナ ル制 度 の 創設 に あ たっ て は 、対 象 業 務が 定 め ら れ 、
対 象 労働 者 に も一 定 の 要件 が 課 され て い る 。し か し 、こ れ らは 、次 に 述 べ
る と おり 、 何 ら適 用 拡 大の 歯 止 めと は な らな い 。
⑵
ア
対象業務 の拡大の危険
抽象的な基準
高 度 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル 制 度 の 対 象 業 務 は 、「 高 度 の 専 門 的 知 識 等 を
必 要 とし 、そ の 性 質 上 従事 し た 時間 と 従 事し て 得 た成 果 と の関 連 性 が 通
常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、
労 働 者 に 就 か せ る こ と と す る 業 務 」( 第 4 1 条 の 2 の 1 項 1 号 ) と さ れ
て い る。
し か し 、何 が「 専 門 的 知識 等 」で あ り 、ど の 程 度 であ れ ば それ が「 高
度」で あ る と 言え る の か、ど の よう な 場 合に「時 間 」と「成 果 」と の「 関
連 性 」が「 通 常 高 く な い 」と 認 めら れ る のか 、極 め て 抽 象 的で あ り 、全
く 明 らか で は ない 。建議 で は 、対 象 業 務 とし て 、次 の も の が挙 げ ら れ て
いる。
・ 金 融商 品 の 開発 業 務
・ 金 融商 品 の ディ ー リ ング 業 務
・ ア ナリ ス ト の業 務 ( 企業 ・ 市 場等 の 高 度な 分 析 業務 )
・コ ン サ ル タ ント の 業 務( 事 業・業 務 の 企画 運 営 に関 す る 高度 な 考
案 又 は助 言 の 業務 )
10
・ 研 究開 発 業 務等
こ れ では 、例 え ば 通 常 の営 業 で あっ て も 、時 間 を かけ な く ても 大 き な
成 果 が出 る 場 合が あ り 得る 点 を 重視 す れ ば、時 間 と成 果 と の関 連 性 が 通
常 高 くな い と して 、 対 象業 務 と され る 恐 れが 否 定 でき な い 。
さ ら に 、対 象 業務 と さ れる 業 務 に従 事 す る労 働 者 の中 に は 、当 該 業 務
に 中 心的 に 携 わる 者 か ら、他 の 者を 補 佐 する 形 で その 指 示 に従 っ て 従 事
す る 者や 、定 型 的 な 業 務に 従 事 する 者 ま で幅 広 く いる の で ある 。そ れ に
も か かわ ら ず、対 象 業 務と さ れ る業 務 に 従事 し て いる 労 働 者が 一 律 に 高
度 プ ロフ ェ ッ ショ ナ ル 制度 の 対 象労 働 者 とさ れ る こと に な り、妥 当 で な
い。
イ
いくらでも拡大される対象業務
しかも、対象業務が建議で挙げられているものに限られる保障は全
くない。現に、労政審の使用者代表委員である鈴木重也氏(日本経済
団体連合会労働法制本部主幹)は、労政審の労働条件分科会における
議論の中で、枠組みのみを決めて具体的には個別に労使で決定すべき
で あ ると 提 案 して い る 10 。対 象 業 務の 定 め につ い て は、厚 生 労 働 省 令 で
定めるものとされており、国会で審議されることなくいくらでも拡大
す る こと が で きる 仕 組 みに な っ てい る 。
⑶
対象労働者 の拡大の危険
ア
対象労働者の要件
高 度 プロ フ ェ ッシ ョ ナ ル制 度 の 対象 と す るこ と が でき る の は、次 の 要
件 を 満た す 労 働者 で な けれ ば な らな い と され て い る( 第 4 1条 の 2 の 1
項 2 号 )。
イ
書面 に よ る合 意 に 基づ き 職 務が 明 確 に定 め ら れて い る こと 。
ロ
労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を
一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額の三
倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上
で あ るこ と 。
「対象業務を決める際には、例えばホワイトハッカーですとかデータサイエンティストというよう
に、10年前にはなかったような専門職もどんどん出てきておりますので、詳細に列挙するというこ
とではなしに、大きな枠組みを決めた上で、個別企業労使で対象業務をある程度決められる仕組みと
す る こ と が 大 切 で は な い か と 考 え て お り ま す 。 」( 2 0 1 4 年 1 1 月 1 7 日 第 1 2 0 回 労 働 政 策 審 議
会労働条件分科会)
10
11
イ
職務の明確性
し か し、職 務 の明 確 性( イ )につ い て は、例 え ば「 会 社 の 行う 業 務 全
般」と い う こ とで も「 職 務 が 明 確に 定 め られ て い る」こ と にな る と 考 え
ら れ 11 、何 ら 要 件と し て 意味 を な さな い 。 そも そ も 、「従 事 す べ き 業 務 」
は 、労基 法 第 15 条 1 項、労 基 法施 行 規 則第 5 条 1項 1 号 の3 で 明 示 さ
れ て いな け れ ばな ら ず 、「 職 務 が明 確 に 定め ら れ てい る こ と」と い う の
は 当 然の こ と であ る 。
ウ
年収要件
また、年収要件(ロ)についても、単に「見込まれる」とされてお
り、実際に年収要件を満たしたことが要件とはされていない以上、当
初は見込まれていても、歩合制や賃金減額等により、最終的には年収
が基準を下回っても高度プロフェッショナル制度が適用されることに
なる。
そ も そ も 、 建 議 に お い て は 、「 1 年 間 に 支 払 わ れ る こ と が 確 実 に 見 込
ま れ る 賃 金 の 額 」 と さ れ て い た に も か か わ ら ず 、「 確 実 に 」 と の 文 言 が
削 除 され て い る。厚 生 労働 省 の 説明 と し ては「 確実 」と い う文 言 を 用 い
なくても法律上権利行使しうる賃金を指すものである旨の説明がなさ
れ て いる よ う であ る が、少 な く とも 文 言 上は そ の よう な 規 定と は な っ て
お ら ず 、「 見 込 み 」 が あ れ ば 足 り る と さ れ て い る 。 し た が っ て 、 年 収 基
準 に 達す る か 不確 実 な 場合 で も、高 度 プ ロフ ェ ッ ショ ナ ル 制度 の 適 用 対
象 と され る 恐 れは 否 定 でき な い。例 え ば 月額 基 本 給が 6 0 万円 で 過 去 の
歩 合 給実 績 が 40 0 万 円の 労 働 者に つ い て、結 果 的に 歩 合 給が 0 円 と な
り 年 収が 7 2 0万 円 で あっ た と して も 、年 収 要 件 を満 た す「 見 込 み 」が
あ っ たと し て、高 度 プ ロフ ェ ッ ショ ナ ル 制度 の 適 用が な さ れる 恐 れ が あ
る 。こ れ が 月 額基 本 給 20 万 円、過 去 の 歩合 給 実 績が 9 0 0万 円 、実 際
の 年 収が 2 4 0万 円 で あっ た と して も 同 様で あ る。少 な く とも 使 用 者 の
誤解ないし拡大解釈によりそのような運用がなされる恐れがあること
は 、管 理 監 督 者の 恣 意 的な 拡 大 解釈 が 行 われ て い るこ と に 鑑み れ ば 、明
白 で ある 。
さ ら に 、平 成 27 年 1 月毎 月 勤 労統 計( 速 報 )の「 き ま っ て支 給 す る
給 与 の額 」は 2 6 万 0 07 9 円 、年 収 の 3倍 は 9 36 万 2 84 4 円 12 で
あ る とこ ろ 、「 相当 程 度 上回 る 水 準」 が ど の程 度 か 明ら か で はな い 。
11 「 会 社 の 行 う 業 務 全 般 」 と の 定 め は 広 範 で は あ る が 、 広 範 な 定 め で あ る こ と は 、 条 文 上 は 否 定 さ れ
ていない。
12 2 6 万 0 0 7 9 円 ×1 2 か 月 ×3 倍
12
し か も 、 前 述 し た よ う に 、 安 倍 首 相 は 、 年 収 要 件 に つ い て 、「 経 済 状
況 が 変 化 す る 中 で 、 そ の 金 額 が ど う か と い う こ と は あ る 。」 と 述 べ て 、
年 収 要件 は 変 わり う る こと を 認 めて い る 13 。政 府 財 界が 高 度 プロ フ ェ ッ
シ ョ ナル 制 度 の適 用 拡 大を 目 論 んで い る こと を 考 える と、年 収 要 件 が 今
後 引 き下 げ ら れる 危 険 性は 高 い と言 わ ざ るを 得 な い。
⑷
適用拡大の歯止めにならない 制度導入のための手続要件
高 度 プロ フ ェ ッシ ョ ナ ル制 度 の 導入 に あ たっ て は 、当 該 労 働者 の 書 面 に
よ る 同意 と 、 労使 委 員 会の 決 議 が必 要 と され て い る。
し か し、使 用 者と 労 働 者間 に は 立場 の 強 弱が 厳 然 とし て 存 在し 、ま た 昇
進 へ の影 響 が 考え ら れ る以 上 、使 用 者 か ら同 意 を 求め ら れ た場 合 に 労 働 者
が こ れを 拒 む とい う こ とは 極 め て困 難 で ある 。採 用 時 に 包 括的 に 同 意 を 求
め ら れた 場 合 には 、同 意 を 拒 む こと は さ らに 困 難 であ る。同 意 し な い 労 働
者 に 対す る 不 利益 取 扱 いは 禁 止 され て い るが( 第 4 1 条 の 2の 1 項 7号 )、
不利益取扱いの立証やそれが同意しなかったことによるとの立証は労働
者 が しな け れ ばな ら ず 、そ の 立 証は 困 難 なも の と なら ざ る を得 な い 。
ま た、同 意 の 撤 回に つ い ての 規 定 がな さ れ てお ら ず、一 度 同 意 した 以 上 、
永 久 に労 働 時 間規 制 の 適用 除 外 とな る 恐 れが あ る 。
労 使 委員 会 決 議に つ い ても 、現 在 の 労 使 の力 関 係 の差 を 見 れば 、何 ら の
歯 止 めに も な らな い こ とは 明 ら かで あ る 。
5
制度上の欠陥
⑴
高度プロフェッショナル制度の 適用がなくなっても 、残業代不払いの 危
険
健 康 管理 時 間 を把 握 す る措 置( 1 項 3 号 )を 怠 っ たり 、健 康・福 祉 確 保
措 置( 1 項 4 号 )を 講 じな か っ た場 合 に は 、行 動 プロ フ ェ ッシ ョ ナ ル制 度
の 適 用 が な く な る と さ れ て い る ( 1 項 本 文 但 書 )。 使 用 者 が 高 度 プ ロ フ ェ
ッ シ ョナ ル 制 度を 導 入 した が、上 記 の 各 措置 を 講 じな か っ た場 合、い つ か
ら 高 度プ ロ フ ェッ シ ョ ナル 制 度 の適 用 が なく な る のか 、明 ら か で な い 。例
え ば、イ ン タ ーバ ル 規 制と 深 夜 労働 の 回 数制 限 を 定め る 健 康・福 祉 確 保 措
置( 1 項 4 号 イ )を 採 用し た 使 用者 が 、深 夜 労 働 の回 数 制 限に 違 反 した 場
合、違 反 し た とき か ら 高度 プ ロ フェ ッ シ ョナ ル 制 度の 適 用 がな く な り 、労
働 時 間規 制 の 適用 が な され る の か 、そ れ とも 高 度 プロ フ ェ ッシ ョ ナ ル 制 度
の適用を開始した当初にさかのぼって労働時間規制の適用がなされるの
13
2014年6月16日の衆院決算行政監視委員会
13
か 、 明ら か で ない 。
当 初 にさ か の ぼっ て 高 度プ ロ フ ェッ シ ョ ナル 制 度 の適 用 が なく な り 、労
働 時 間規 制 の 適用 が な され る と 解す る の が労 働 者 保護 に 適 して い る が 、そ
の 場 合、使 用 者も 労 働 者も 労 働 時間 を 把 握し て い ない 可 能 性が 高 く、残 業
代 の 支払 い が 得ら れ な い危 険 性 があ る。そ の 場 合 には 、使 用 者 が 残 業 代 不
払 い の利 益 を 受け る の に対 し て 、労 働 者 は 、健 康 を損 な わ れた ま ま 、何 ら
の 補 償も 救 済 も受 け ら れな い 恐 れが あ る 。
高 度 プロ フ ェ ッシ ョ ナ ル制 度 の 適用 が あ る場 合 に は、使 用 者に「健 康 管
理 時 間」の 把 握義 務 は ある が、こ れ は「 対 象 労 働 者が 事 業 場内 に い た時 間 」
も 含 ま れ て お り ( 1 項 3 号 )、 労 働 時 間 そ の も の の 立 証 に は 役 に 立 た な い
危 険 性が あ る 。
⑵
深夜割増賃金の不払い の不合理性
高 度 プロ フ ェ ッシ ョ ナ ル制 度 の 他に 、労 働 時 間 規 制の 適 用 除外 制 度 と し
ては、管理監督者に対する適用除外制度(労基法第41条3号)がある。
管 理 監督 者 に 対す る 適 用除 外 制 度は 、高 度 プ ロ フ ェッ シ ョ ナル 制 度 と 異 な
り 、 深夜 労 働 の割 増 賃 金の 支 払 い義 務 を 免除 し て いな い 。
管 理 監督 者 は、経 営 者 と一 体 的 地位 に あ る者 を 言 い、高 度 プロ フ ェ ッ シ
ョ ナ ル制 度 の 対象 労 働 者よ り も 高い 地 位 にあ る 者 を指 し て いる 。
こ の 2つ の 制 度を 比 較 した と き 、地 位 の 高い 管 理 監督 者 に 対し て は 深 夜
労 働 の割 増 賃 金の 支 払 い義 務 が ある の に もか か わ らず 、こ れ よ り も 地 位 が
低く立場の弱い高度プロフェッショナル制度の対象労働者に対しては深
夜 労 働の 割 増 賃金 の 支 払い 義 務 が免 除 さ れて い る 。こ の 取 扱い の 違 い が 不
合 理 であ る こ とは 、 誰 の目 に も 明ら か で ある 。
⑶
成果と長時間労働を強要され、賃金が切り下げられる危険
建 議 は 、 高 度 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル 制 度 創 設 の 理 由 を 、「 時 間 で は な く 成
果 で 評価 さ れ る働 き 方 を希 望 す る労 働 者 のニ ー ズ に応 え」と し て い る 。し
か し 、 高 度 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル 制 度 に は 、「 成 果 で 評 価 さ れ る 働 き 方 」 =
「 成 果で 賃 金 等を 決 め る働 き 方 」に つ い ての 定 め は、 ま っ たく な い 。
実 際 には 、高 度 プ ロ フ ェッ シ ョ ナル 制 度 の下 で は 、労 働 者 は 、使 用 者 か
ら 際 限な く 成 果を 上 げ るこ と を 要求 さ れ 、長 時 間 労働 が 常 態化 す る で あ ろ
う 。そ し て 、多 く の 成 果主 義 賃 金が そ う であ っ た よう に 、労 働 者 に 支払 う
賃 金 原資 総 額 は、 長 期 的に は 減 縮の 方 向 にむ か う であ ろ う 。
14
6
⑴
アメリカのホワイトカラー ・ エグゼンプションとの比較
アメ リカ のホワイトカラー ・エ グゼンプション
労 基 法等「 改正 」案 に 登場 す る「 高 度 プ ロフ ェ ッ ショ ナ ル 制度 」は 、ア
メ リ カの ホ ワ イト カ ラ ー・エ グ ゼン プ シ ョン 制 度 を手 本 と した も の であ る 。
ア メ リカ の 制 度が ど の よう な も ので あ り 、現 在 ど んな 問 題 を抱 え て い る の
か 、「 高 度 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル 制 度 」 の 導 入 の 可 否 を 検 討 す る う え で 大 い
に 参 考に な る ので 紹 介 する 。
こ の 制度 は 、腕 力・身 体 的 技 能 及び 能 力 を用 い て 、主 と し て反 復 的 労 働
に従事する肉体的労働者その他のブルーカラー労働者には適用されない。
ま た 、原 則 と して 、実 際 に 労 働 した 日 時 や時 間 に かか わ ら ず 、あ ら かじ め
定 め られ た 金 額を 支 払 う俸 給 ベ ース の 労 働者 が 対 象で あ り 、時 給 制 や 日 給
制 の 賃金 労 働 者は 対 象 とな ら な い。
ア メ リカ で は 、公 正 労 働基 準 法( F L S A )に よ って 、週 4 0 時 間 を超
える労働に対しては通常の賃金の5割増の支払いが使用者に義務づけら
れ て いる 。労 働 時 間 の 限度 規 制 やイ ン タ ーバ ル 規 制は な い。深 夜 労 働 や 休
日 労 働も 同 じ 割増 率 で ある 。こ の 残 業 代 支払 い 義 務を 免 れ る制 度 が ホ ワ イ
ト カ ラー・エ グ ゼ ン プ ショ ン で ある 。ホ ワ イ ト カ ラー・エ グ ゼ ン プ ショ ン
は 1 93 8 年 のF L S A制 定 時 から あ り 、1 9 9 9年 時 点 です で に 制 度 適
用 労 働 者 ( 残 業 代 ゼ ロ 労 働 者 ) は 、 約 2 5 5 3 万 人 ( 全 体 の 約 2 割 )、 そ
の う ち1 割 近 くが 年 収 30 0 万 円未 満 で 、収 入 が 多く な い 者に も 広 く 適 用
さ れ てい た 。
2 0 04 年 改 正に よ り、俸 給 要 件は 週 2 55 ド ル から 週 4 55 ド ル( 年
収 換 算 で 2 万 3 6 6 0 ド ル ( 約 2 8 3 万 円 )) 以 上 に 引 き 上 げ ら れ た が 、
す で に 、俸 給 労 働者( 時 間 給を 除 く )の8 9 % はこ の 金 額を 上 回 って い た 。
か え って 、改 正 に よ り 、職 務 要 件が 緩 和 され 、ま た 、適 用 基準 が 曖 昧に さ
れ 使 用者 に よ る制 度 の 濫用 も 増 えた た め 、適 用 労 働者 が 増 加し た と 評 価 さ
れ て いる 。
⑵
ホワイトカラー ・エ グ ゼンプションの見直し
F L S A は 、 管 理 的 ( executive) 労 働 者 、 運 営 的 ( administrative)
労 働 者 、 専 門 的 ( professional) 労 働 者 、 コ ン ピ ュ ー タ ー 関 連 労 働 者 、 お
よ び 外勤 セ ー ルス 労 働 者に つ い ては 、最 低 賃 金 と 時間 外 割 増賃 金 の 両 方 の
規 定 の適 用 を 除外 し て いる 。さら に 高 額 報酬 労 働 者(Highlycompensated
employees)に つ い て も 適用 除 外 とし て い る。こ れ ら適 用 除 外と さ れ る 労
働 者 の範 囲 は 、労 働 省 の規 則 で 詳細 に 具 体的 職 務 内容 と 俸 給要 件 が 規 定 さ
れ て いる 。
15
2 0 04 年 改 正は 、多 発 し て い たエ グ ゼ ンプ シ ョ ン適 用 の 該当 性 を め ぐ
る 残 業代 支 払 訴訟 を 抑 止す る こ とが 大 き な目 的 だ とさ れ た。し か し、改 正
後 残 業代 支 払 請求 訴 訟 はさ ら に 増加 し て いる 。改 正 に よ っ て適 用 基 準 が 緩
和 さ れさ ら に 曖昧 に な った た め であ る と 評価 さ れ てい る 。
2 0 14 年 3 月 、オ バ マ大 統 領 は残 業 代 規定 適 用 対象 者 数 を増 や す た め
に、F L S A のも と で の現 在 の ホワ イ ト カラ ー・エ グ ゼ ン プシ ョ ン 制 度 の
改 革 をト マ ス・ペ レ ス 労働 長 官 に指 示 す る覚 書 を 出し た。大 統 領 は ホ ワ イ
ト カ ラー・エ グ ゼ ン プ ショ ン が「 現 代 の 経済 に 追 いつ い て おら ず 」、「 こ れ
ら の 規則 が 時 代遅 れ の ため 、何 百 万 も の アメ リ カ 人が 残 業 代や 最 低 賃 金 の
権 利 から も 保 護さ れ て いな い 」と 述 べ て いる 。現 在 、労 働 省に お い て 改 正
作 業 が進 め ら れて お り 、ま も な く規 則 の 改正 案 が 公表 さ れ るこ と に な っ て
い る 。労 働 省 のワ イ ル ド・デ ー ビッ ド 賃 金時 間 局 長は 、具 体 的 な 改 正内 容
に つ いて は 秘 密で あ る と言 っ て いる が 、同 局 長 や 関係 者 の 発言 に よ れ ば 以
下 の 3点 に つ いて 改 正 がな さ れ ると の こ とで あ る。第 1 に、週 4 5 5 ド ル
の 俸 給基 準 の 大幅 な 引 き上 げ で ある 。第 2 に 、俸 給 基 準 の 物価 連 動 性 の 採
用 で ある 。そし て 、第3 に 、職務 基 準 の 簡素 化・明 確 化 で ある 。アメ リ カ
で は 、近 々 制 度の 改 正 がな さ れ るこ と は 確実 で あ る。
⑶
ホワイトカラー ・エ グゼンプションの対象者
使 用 者に 言 わ れて 、自 分 は エ グ ゼン プ ト だと 思 っ てし ま っ てい る 労 働 者
が 多 いの で あ る。と り わけ 、ニ ュ ー ヨ ー クな ど で 働く 若 年 ホワ イ ト カ ラ ー
労 働 者は 、自 分 が 残 業 代を も ら える な ど とい う こ とを 考 え たこ と が な い と
い う 者が 多 数 存在 す る とい う。ホ ワ イ ト カラ ー・エ グ ゼ ン プシ ョ ン の 適 用
要 件 につ い て の概 要 は 前述 し た が 、具 体 的判 断 基 準に つ い て規 則 に は 詳 細
な 規 定が 存 在 する 。し か し 、自 分 の 職 務 がそ れ に 該当 す る のか 否 か を 判 断
す る こと は 困 難を 極 め てお り 、裁 判 が 多 発す る 原 因も 要 件 該当 性 の 判 断 が
き わ めて 困 難 であ る こ とが 大 き な要 因 で ある 。使 用 者 に エ グゼ ン プ シ ョ ン
該 当 する と い われ れ ば 、そ れ に 反し て 行 動す る こ とは ア メ リカ で も 難 し い
の で ある 。
ホ ワ イト カ ラ ー・エ グ ゼン プ シ ョン 適 用 労働 者 に つい て は、1 9 9 9 年
に 2 55 3 万 であ っ た との 統 計 資料 が あ る。こ れ は、全 米 の労 働 者 の 約 2
割 に あた る。2 0 0 4 年の 改 正 によ っ て、俸 給 基 準が 週 2 50 ド ル か ら 週
4 5 5ド ル に 引き 上 げ られ た。し か し、2 0 1 3 年時 点 で 週給 4 5 5 ド ル
以 上 の労 働 者 は給 与( 週 給・月 給 制 )労 働 者 の 8 9% で あ り 、ほ と んど の
労 働 者は こ の 基準 は 満 たし て い る 。2 0 04 年 改 正に よ っ て職 務 基 準 が 緩
和 さ れ不 明 確 とな っ た こと に よ って 、エ グ ゼ ン プ ショ ン 適 用者 は 増 加 し た
16
と い うの が 大 統領 府 や 労働 省 、 労働 組 合 の見 解 で ある 。
⑷
エ グゼンプション労働者の労働時間
エグゼンプション労働者と非エグゼンプション労働者の労働時間を対
比 し た資 料 が ある 。1 9 9 9 年 の資 料 で ある が、週 4 0 時 間内 で 労 働 す る
者 が、非 エ グ ゼン プ ト 労働 者 の 中で は 8 1% で あ るの に 対 して 、エ グ ゼ ン
プ ト 労働 者 の 中で は 5 6% に 過 ぎな い 。エ グ ゼ ン プト 労 働 者が 非 エ グ ゼ ン
プ ト 労働 者 に 比べ て 長 時間 労 働 を強 い ら れる 傾 向 にあ る と 言え る 。
「日本では残業代をもらえなくなれば労働者はダラダラと残業するこ
と が なく な り 労働 時 間 が短 く な ると い う 見解 が あ るが ど う 考え る か 」と の
質 問 に 対 し て 、 い ず れ の 関 係 者 も 、「 そ ん な 考 え は 馬 鹿 げ て い る 」 と 一 笑
に 付 し て い る 。 い ず れ も 関 係 者 も 、「 使 用 者 は 残 業 代 を 払 わ な く て す む の
で あ れば い く らで も 残 業を 命 じ るの で あ り 、残 業 代を 払 わ なけ れ ば な ら な
い の であ れ ば 残業 を 命 じる の は 必要 最 小 限の 範 囲 に限 定 す るの で あ り 、労
働 者 はそ れ に 従わ ざ る を得 な い 。日 本 で は何 と い う空 論 を 展開 し て い る の
だ」と 呆 れ て いる 。残 業 代 を 払 わな く て 良い 労 働 者は 労 働 時間 が 長 い 傾 向
に あ るこ と は 、ア メ リ カの 実 情 から も 明 白で あ る 。
⑸
アメリカ の動きに逆行
ア メ リカ で は ホワ イ ト カラ ー・エ グ ゼ ン プシ ョ ン 制度 の 見 直し が な さ れ
よ う とし て い る 。わ が 国は 、ホ ワ イ ト カ ラー・エ グ ゼ ン プ ショ ン を 導入 し
よ う とし て い るの で あ り、 逆 方 向に 進 も うと し て いる 。
労 働 時間 規 制 の意 義 の 再確 認 が 必要 で あ る。
7
まとめ
建 議 は 、 高 度 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル 制 度 の 導 入 に あ た っ て 、「 こ う し た 中 、
過 労 死等 防 止 対策 推 進 法が 制 定 され る な ど 、労 働 者の 健 康 確保 に 向 けた 一 層
の 取 組が 求 め られ る と とも に 、次 世 代 育 成支 援 や 女性 の 活 躍推 進 等 の観 点 か
ら も、長 時 間 労働 を 抑 制し 、仕 事 を 生 活 の調 和 の とれ た 働 き方 を 拡 げて い く
こ と が喫 緊 の 課題 と な って い る 。」と 提 唱 して い る 。
し か し 、上 記 の提 唱 と は裏 腹 に 、高 度 プ ロフ ェ ッ ショ ナ ル 制度 は 、労 働 者
の 健 康と ワ ー クラ イ フ バラ ン ス 、社 会 生 活を 維 持 する た め に設 け ら れた 労 基
法 第 4章 に 定 める 労 働 時間 規 制 の適 用 を すべ て 除 外す る 一 方で 、健 康・福 祉
確 保 措置 と し ては 不 十 分な も の しか 設 け てい な い 。
以 上 に見 て き たよ う に、高 度 プ ロフ ェ ッ ショ ナ ル 制度 は、労 働 者 に 長 時 間
労 働 とタ ダ 働 きを 強 要 し 、過 労 死 、過 労 自殺 を 激 増さ せ る もの で あ り 、と う
17
て い 認め る こ とは で き ない 。
第3
長時間労働と 残業代 不払いを拡大する 企画業務型裁量労働制の 拡大
1
企画業務型裁量労働制の適用を受ける労働者の実態
⑴
ア
適用労働者に蔓延する長時間労働
厚 労 省 労 働 基 準 局 の 調 査 14 に よ れ ば 、 企 画 業 務 型 裁 量 労 働 制 の 適 用 を
受 け る労 動 者( 以 下 、「 企画 業 務 型の 労 動 者」と い う 。)の 1 日の み な し
労 働 時間 は 、平均 8 時 間1 9 分 であ る に もか か わ らず 、企 画業 務 型 の 労
動 者 の1 日 の 平均 実 労 働時 間 は 、最 長 の 者で 1 1 時間 4 2 分、平 均 的 な
者 で 9時 間 1 6分 に 及 んで い る (表 1 )。
ま た 、1 日 の み なし 労 働 時間 を 8 時間 以 下 に設 定 す る事 業 所 は 、5 0 .
8 % であ る に もか か わ らず 、平 均 的 な 労 働者 の 実 労働 時 間 が8 時 間 以 上
で あ る 事 業 場 は 8 0 . 7 % に 及 び ( 表 2 )、 1 1 時 間 超 の 労 動 者 が い る
事 業 場は 6 2 .0 % ( 12 時 間 超の 労 動 者が い る 事業 場 は 45 . 2 % )
も 存 在す る 。
そ し て、労 働 政策 研 究・研 修 機 構の 調 査 15(以 下「 JI L P T 調 査 」)
に よ れば 、企 画 業務 型 の 労働 者 は 、通 常 の 労 働時 間 制 の労 働 者 に比 べ て 、
「150時間以上200時間未満」の割合が低く(49.8%と61.
7 % )、「 2 0 0時 間 以 上2 5 0 時間 未 満」の 割 合 が高 い(3 8 .6 % と
2 6 .5 % ) こと が 明 らか と な って い る 。
こ の よう に 、企 画 業 務 型の 労 働 者は 、み な し 労 働 時間 を は るか に 超 え
た 時 間の 労 働 を強 い ら れて お り 、か つ 、そ の 労 働 時間 は 通 常の 労 働 時 間
制 の 労動 者 に 比し て 長 時間 で あ るこ と は、統 計 上 顕著 で あ る( な お 、統
計 上 、専 門 業 務型 の 労 動者 の 実 労働 時 間 は、 更 に 長い )。
厚労省労働基準局「平成25年度労働時間等総合実態調査結果」
労働政策研究・研修機構「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果
14年6月30日)
14
15
18
労 働 者 調 査 結 果 」( 2 0
( 出 典 : 厚 労 省 労 働 基 準 局 「 平 成 2 5 年 度 労 働 時 間 等 総 合 実 態 調 査 結 果 」)
(出典:表1と同じ)
イ
かか る 長 時間 労 働 は 、た と え労 動 者 に業 務 遂 行上 や 時 間配 分 の 裁 量 が
与 え られ て も、最 も 重 要な 意 味 を持 つ 労 働の 量( 仕 事 の 量)や 仕 事 の 期
限 は 使用 者 に よっ て 決 定さ れ る ため 、労 働 者 自 身 では 労 働 時間 を 制 御 で
き ず 、形 式 的 に裁 量 性 が認 め ら れて い て も、事 実 上長 時 間 労働 を 強 い ら
れ る とい う 根 本的 問 題 に要 因 が ある 。J IL P T 調査 上 で 、次 表 3 の と
お り 、 企 画 業 務 型 の 労 動 者 に 最 も 多 い 不 満 が 、「 労 働 時 間 ( 在 社 時 間 )
が 長 い 」( 4 5 . 1 % )、 2 番 目 に 多 い 不 満 が 、「 業 務 量 が 過 大 」( 4 0 .
0 % )と い う 結果 が 出 てい る こ とも 、 そ の証 左 で ある 。
19
(出典:JILPT調査)
⑵
違法な裁量労働制の適用
― 「名ばかり裁量労働制」の横行
ア
第 1 1 7 回 労 政 審 労 働 条 件 分 科 会 配 布 資 料 16 に よ れ ば 、 企 画 業 務 型
の 労 動者 の う ち 、「 一 律 の出 退 勤 時刻 が あ る 」と 回 答し た 者 が5 0 .9 % 、
「 決 めら れ た 時間 帯 に 職場 に い れば 出 退 勤時 刻 は 自由 」と 回 答 し た 者 が 1
0 . 6 % 、「 出 退 勤 の 時 刻 は 自 由 だ が 、 出 勤 の 必 要 は あ る 」 と 回 答 し た 者
が 、 3 3 . 7 % で あ り 、「 出 勤 す る か し な い か は 自 由 」 と 回 答 し た 者 は 僅
か 1 .4 % に 過ぎ な い 。な お 、 不明 は 3 .5 % で ある ( 表 4 )。
第 1 1 7 回 労 働 政 策 審 議 会 労 働 条 件 分 科 会「 裁 量 労 働 制 の 新 た な 枠 組 み 、 フ レ ッ ク ス タ イ ム 制 の 見 直
しについて」
16
20
(表4)日々の出退勤(企画業務型の労働者)
一律の出退勤時刻がある
1.4
50.9
10.6
33.7
3.5
決められた時間帯に職場に
いれば出退勤時刻は自由
出退勤の時刻は自由だが、
出勤の必要はある
出勤するかしないかは自由
不明
0%
20%
40%
60%
80%
100%
( 出 典 : 労 政 審 配 布 資 料 17 )
ま た 、J I L PT 調 査 によ れ ば 、企 画 業 務型 の 労 働者 が 遅 刻し た 際 の
対 応 と し て 、「 上 司 に 口 頭 で 注 意 さ れ る 」 と 回 答 し た 者 が 4 3 . 3 % 、
「 場 合 に よ っ て は 懲 戒 処 分 も な さ れ る 」 と 回 答 し た 者 が 6 . 5 % 、「 裁
量 労 働 制 の 適 用 を い っ た ん 外 さ れ る 」 と 回 答 し た 者 が 2 . 3 % 、「 賃 金
が カ ット さ れ る 」と 回 答し た 者 が1 0 .8 % 、「 勤 務評 定 に 反映 さ れ る 」
と 回 答 し た 者 が 2 2 . 7 % で あ り 、「 特 に 何 も さ れ な い 」 と 回 答 し た 者
は 3 3. 4 % に過 ぎ な い( 表 5 )。
さらに、上記労政審配布資料によれば、企画業務型の労動者のうち、
仕 事 の目 標 等 を自 ら 設 定し て い る者(他 者 と 相 談 して 自 ら 設定 し て い る
者 を 含む ) は 、5 6 . 3% に と どま る 。
17
同上
21
(表5)遅刻した際の対応(企画業務型の労動者)
上司に口頭で注意される
2.3
43.3
6.5 10.8
22.7
7
33.4
2
場合によっては懲戒処分も
科される
裁量労働制の適用をいった
ん外される
賃金がカットされる
勤務評定に反映される
その他
特に何もされない
不明
0%
20%
40%
60%
80%
100%
(出典:表3と同じ)
イ
業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関して労働者に裁量が認め
ら れ てい な い 場合 、企 画 業 務 型 裁量 労 働 制の 適 用 が許 さ れ ない こ と は 言
う ま でも な い 。
し か し 、前 記 のよ う な 実態 に 照 らせ ば 、業 務 遂 行 手段 や 時 間配 分 の 決
定等につき裁量がなく企画業務型裁量労働制の適用要件を満たさない
に も かか わ ら ず、こ れ を違 法 に 適用 し て いる 使 用 者が 相 当 数存 在 し て い
る こ とに 疑 い の余 地 は ない 。
裁 量 労働 制 の 濫用 =「名 ば か り 裁量 労 働 制」の 利 用に よ り、労 働 時 間
に見合った賃金を支払うことなく長時間労働を強いるという手口が横
行 し てい る の であ る 。
2
⑴
企画業務型裁量労働制の拡大による長時間労働 と残業代不払いの拡大
現行法上の企画業務型裁量労働制
現 行 法 は 、 企 画 業 務 型 裁 量 労 働 制 の 適 用 が 認 め ら れ る 業 務 と し て 、「 事
業 の 運営 に 関 する 企 画・立 案・調 査・分 析 の 業 務 であ っ て 、性 質 上 その 遂
行 方 法を 大 幅 に労 働 者 に委 ね る 必要 が あ るた め 、そ の 業 務 の遂 行 の 手 段 お
よび時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする
業 務」の み を 定め 、自 ら 労 働 時 間を 自 律 的に 管 理 して 業 務 遂行 方 法 を 自 ら
が決定することのできる企業の中枢業務に従事する労働者のみを対象労
働 者 とし て い る。
こ の よう な 対 象業 務 の 限定 は 、広 く 対 象 業務 を 認 める こ と によ っ て 裁 量
22
労 働 制が 濫 用 され 、本 来 の 労 働 時間 規 制 が無 意 味 化す る こ とを 防 ぐ た め で
ある。
⑵
裁量性のない業務に 対象 業務 を 拡大
と こ ろが 、「 改 正 」案 は 、現 行 法の「 事 業 の 運 営 に関 す る 事項 に つ い て
の 企 画 ・ 立 案 ・ 調 査 及 び 分 析 の 業 務 」( 第 3 8 条 の 4 の 1 項 1 号 イ ) に 加
え て、①「 事業 の 運 営 に関 す る 事項 に つ いて 繰 り 返し 、企画 、立 案、調 査
及 び 分析 を 行 い 、か つ 、こ れ ら の成 果 を 活用 し 、当 該 事 項 の実 施 を 管理 す
る と と も に そ の 実 施 状 況 の 評 価 を 行 う 業 務 」、 ② 「 法 人 で あ る 顧 客 の 事 業
の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を行い、かつ、
これらの成果を活用した商品の販売又は役務の提供に係る当該顧客との
契 約 の締 結 の 勧誘 又 は 締結 を 行 う業 務」を 追 加 し てい る( 第 3 8 条 の 4 の
1 項 1号 ロ 、 ハ )。
し か し、上 記「 実 施 の 管理 」は及 び 実 施 状況 の 評 価の 業 務」や「 契 約 の
締 結 の勧 誘 又 は締 結 の 業務 」は 、そ の 遂 行の 方 法 を大 幅 に 労働 者 の 裁 量 に
委 ね る必 要 が ある 業 務 とは 言 え ず 、こ の よう な 業 務を 含 む 業務 を 企 画 型 裁
量 労 働制 の 対 象に す る こと は 許 され な い 。
こ れ らの 業 務 にま で 企 画型 裁 量 労働 制 が 拡大 さ れ ると 、労 働 時 間 を 自 律
的 に 管理 し た り 、業 務 遂行 方 法 を自 ら が 決定 し た りす る こ との で き な い 労
働 者 にま で 企 画業 務 型 裁量 労 働 制が 拡 大 され る こ とに な り 、裁 量 労 働 制 の
名 目 で、 長 時 間労 働 と 残業 代 不 払い が 蔓 延す る こ とに な る 。
⑶
立法事 実の不存在
第 1 11 回 労 政審 労 働 条件 分 科 会配 布 資 料 18 によ れ ば、対 象 業 務 の 範 囲
に つ いて 、 企 画業 務 型 の労 働 者 の6 7 . 1% が 「 現行 制 度 のま ま で よ い 」
と 回 答 し 、「 狭 い 」 と 回 答 し た の は 僅 か 7 . 2 % に 過 ぎ な い 。 他 方 、 事 業
場 に おい て も 、企 画 業 務型 の 対 象業 務 の 範囲 に つ いて 、そ の 4 0 .6 % が
「 現 行 制 度 の ま ま で よ い 」 と 回 答 し 、「 狭 い 」 と 回 答 し た の は 2 1 . 7 %
に 過 ぎな い 。こ の よ う に 、労 動 者側 、使 用 者 側 の いず れ か らも 、企 画 業 務
型 裁 量労 働 制 の対 象 業 務の 範 囲 につ い て 追加・拡 大 の 要 請 がな い の であ る 。
こ の こと は 、企 画 業 務 型裁 量 労 働制 の 拡 大の 立 法 事実 が な いこ と を 意 味
する。
18
「 裁 量 労 働 制 等 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 ( 主 な 結 果 )」
23
⑷
手続きの 簡素化
ア
労使委員会決議の 本社一括届出
現 行 の労 基 法 施行 規 則 は 、事 業 場の 労 使 委員 会 の 企画 業 務 型裁 量 労 働
制 に つい て の 決議 の 届 出は 、所 轄 の 労 働 基準 監 督 署に し な けれ ば な ら な
い と 定め て い る( 第 2 4条 の 2 の3 の 1 項 )。と こ ろが 、建議 は 、「 企 画
業 務 型裁 量 労 働制 が 制 度と し て 定着 し て きた こ と を踏 ま え、① 労 使 委 員
会 決 議 の 本 社 一 括 届 出 を 認 め る こ と が 適 当 で あ る 。」 と し て 、 厚 生 労 働
省 令 等に よ る 手続 き の 簡素 化 を 目論 ん で いる 。
し か し 、事 業 場に 対 応 する 地 元 の労 働 基 準監 督 署 でな け れ ば 、裁 量 労
働 制 につ い て の適 切 な 監督 、指 導 は で き ない 。労 使 委 員 会 決議 の 本 社 一
括 届 出は 、労 働 者 保 護 のた め の 労働 基 準 監督 署 の 監督 、指 導 機 能 を 弱 め
る 措 置で あ り 、と う て い認 め る こと は で きな い 。
イ
健康福祉措置の労働基準監督署への報告
労 基 法 第 3 8 条 の 4 の 4 項 は 、「 使 用 者 は 、 定 期 的 に 、 健 康 ・ 福 祉 確
保 措 置の 実 施 状況 を 労 働基 準 監 督署 に 報 告し な け れば な ら ない 」旨 を 定
め て いる 。
こ の 点 に つ い て 、 建 議 は 、「 ② 定 期 報 告 は 6 か 月 後 に 行 い 、 そ の 後 は
健 康・福 祉 確 保措 置 の 実施 状 況 に関 す る 書類 の 保 存を 義 務 づけ る こ と が
適 当 であ る 。」と し て い る 。こ の 建議 に 基 づき 、
「 改 正 」案 は 、労 基 法 第
3 8 条の 4 の 4項 か ら「 定 期 的 に 」と の 文言 を 削 除し 、健 康・福 祉 確保
措 置 の実 施 状 況を 最 初 の1 回 だ け報 告 す れば よ い とし て い る。
し か し 、労 働 基 準監 督 署 が使 用 者 に対 し て 適切 な 監 督 、指 導 を 実施 し 、
労 働 者の 健 康・福 祉 を 確保 す る ため に は、健 康・福 祉 確 保 措置 に つ い て
定 期 的な 報 告 を受 け る 必要 が あ る。最 初 の1 回 し か報 告 を 受け な い の で
は 、 労働 基 準 監督 署 は 、適 切 な 監督 、 指 導を す る こと は で きな い 。
⑸
まとめ
建 議 は、「 長 時間 労 働 の抑 制 」を か か げ てい る 。し か し 、
「 改 正 」案 は 、
企 画 業務 型 裁 量労 働 制 の 対 象 業 務 を 拡 大 す る の み で 、対 象 労 働 者 の 健 康 ・
福 祉 を確 保 す る措 置 を 何ら 講 じ てい な い 。
企画業務型裁量労働制の長時間労働と残業代不払いの実態を見る時、
「 改 正」案 の 企画 型 裁 量労 働 制 の拡 大 は、さ ら な る長 時 間 労働 と 残 業 代 不
払 い を拡 大 し 、過 労 死 、過 労 自 殺を 増 加 させ る だ けで あ る 。
企 画 業務 型 裁 量労 働 制 の拡 大 は 、と う て い認 め る こと は で きな い 。
24
第4
1
残業代不払いを拡大するフレッ クス タイ ム 制の 清算期 間の延長
建議 の 提言
フ レ ック ス タ イム 制 と は、 一 定 期間 ( 清 算期 間 、 現行 法 で は1 ヶ 月 以 内 )
の 総 所定 労 働 時間 を 定 めて お き 、労 働 者 がそ の 範 囲内 で 現 実の 始 業 時刻 と 終
業 時 刻の 双 方 を決 定 し て労 働 す る制 度 で ある 。
建 議 は 、「 フ レッ ク ス タイ ム 制 の見 直 し 」と し て 、「 メ リ ハリ の あ る働 き
方 を いっ そ う 可能 に す るた め 」、「 よ り 利用 し や すい 制 度 とな る よ う 」見 直
し を 行う こ と が適 当 で ある と す る。 つ ま り、 フ レ ック ス タ イム 制 に つ い て 、
利 用 を促 進 す るこ と を 目的 に 制 度改 正 を 提案 し て いる の で ある 。
「 改 正 」案 は 、① 清 算 期間 の 上 限を 現 行 の1 か 月 から 3 か 月に 延 長 し( 3
2 条 の3 の 1 項2 号 )、② 清 算 期間 が 1 か月 を 超 える 場 合 にお い て は 、当 該
清算期間をその開始の日以後1か月ごとに区分した各期間ごとに当該各期
間を平均し1週間当たりの労働時間が50時間を超えない範囲内において
労 働 させ る こ とが で き る。 」 ( 同条 第 2 項) と 定 めて い る 。
2
立法事実の不存在
し か し、フ レ ッ クス タ イ ム制 の 清 算期 間 の 延長 に つ いて は、以 下 の と お り 、
そ も そも 現 場 の労 使 か らの 要 求 はな く 、 立法 事 実 に欠 け る もの で あ る。
⑴
使用者 側 の要 求
厚 生 労働 省 の 調査 19 に よ ると 、フ レ ッ ク ス タイ ム 制 を導 入 し てい る 企 業
割 合 は5 .3 %( 適 用 労働 者 は 8 .3 % )と 少 数 であ る( た だ し 、1 0 0
0 人 以上 の 事 業場 で は 、2 7 . 7% で あ る )。
そ し て、厚 生 労働 省 の 要請 に 基 づく 調 査 20 によ れ ば、フ レ ッ クス タ イ ム
制 を 導入 し て いる 事 業 場の う ち、3 9 .3% は 不 便 に 感じ て い ない と い う 。
他 方 、5 1 .3% が 同 制度 を 不 便と 感 じ ると 回 答 し、そ の 理由 と し て「 清
算 期 間 が 短 い 」 が 9 2 . 6 % と 高 い も の の 、「 最 良 の 清 算 期 間 」 に つ い て
は 9 4.8 % が「不 明 」と 回答 し て お り、3 か 月 と回 答 し たの は わ ずか 0 .
8 % に過 ぎ な い。
そ も そ も 、 フ レ ッ ク ス タ イ ム 制 を 導 入 し て い る 事 業 場 に 対 し て 、「 フ レ
ッ ク ス タ イ ム 制 の 問 題 点 」 を 問 う て も 、「 特 に 問 題 な い 」 が 3 9 . 9 % と
最 大 で あ り 、「 清 算 期 間 が 限 定 さ れ て い る 」 と 答 え た の は 4 . 0 % に 過 ぎ
な い。つ ま り、使 用 者 側に お い ても フ レ ック ス タ イム 制 の 清算 期 間 の 延 長
に 関 する 具 体 的な 要 求 は存 し な いの で あ る。
19
20
厚生労働省平成26年就労条件総合調査
労働政策研究・研修機構〔平成25年調査・平成26年発表〕
25
⑵
労働者 側 の要 求
一 方、フ レ ッ クス タ イ ム制 が 適 用さ れ て いる 労 働 者へ の 調 査で は 、フ レ
ッ ク スタ イ ム 制を 見 直 すべ き か との 問 い に対 し て「 こ の ま まで よ い 」が 8
2 . 5 % と 圧 倒 的 多 数 で あ り 、「 見 直 す べ き 」 と 回 答 し た の は 1 5 . 2 %
に 過 ぎ な い 。 さ ら に 、「 見 直 す べ き 」 と 回 答 し た 労 働 者 の な か で は 、 コ ア
タ イ ム を な く す べ き だ と い う 意 見 が 4 0 . 0 % と 最 も 多 く 、「 清 算 期 間 を
長 く すべ き 」 とい う 意 見は 1 9 .5 % ( 全体 の 3 %未 満 ) にす ぎ な い。
労 働 者側 に お いて は、フ レ ッ ク ス タイ ム 制 の清 算 期 間の 延 長 とい う 要 求
は な いの で あ る。
⑶
小括
以上のとおり、使用者側、及び労働者側ともにフレックスタイム制の
清 算 期間 を 見 直せ と の 要求 は ほ とん ど 無 いの が 実 態で あ る 。
3
長時間労働をもたらすフレッ クス タイ ム 制
な お、フ レ ッ クス タ イ ム制 は、実 際 に お いて 労 働 時間 を 短 縮す る 制 度 と し
は 機 能し て お らず 、建 議 の い う「 メ リ ハ リの あ る 働き 方 」の 実 現 に 寄与 す る
か も 疑問 で あ る 。す な わち 、通 常 の 労 働 時間 制 を 導入 し て いる 企 業 では 、1
か 月 の実 労 働 時間 が 2 00 時 間 未満 の 企 業が 7 4 .8 % で ある の に 対 し て 、
フ レ ック ス タ イム 制 を 導入 し て いる 企 業 では 、 7 0. 4 % と減 少 し て い る 。
一 方 で、1 か 月 の実 労 働 時間 が 2 00 時 間 以上 の 企 業に つ い て、前 者 は 2 8 .
1 % であ る の に対 し 、 後者 は 3 2. 8 % と増 加 し てい る 。
フ レ ック ス タ イム 制 は 、労 働 時 間を 短 縮 して「 メ リ ハ リ 」を 生 み 出 すど こ
ろ か 、む し ろ 労働 時 間 が長 時 間 化し て い る傾 向 が ある 。
4
「改正」案の 問題 点
―長時間労働と残業代不払いの 増大
「 改 正 」案 は 、清 算 期 間を 3 か 月に 延 長 して い る 。こ れ は 、現 状 の 清算 期
間 1 か月 の 場 合よ り 、よ り 長 期 にわ た り 長時 間 労 働が 集 中 する こ と を是 認 す
る こ とを 意 味 し 、妥 当 でな い 。こ れ は 、「 長 時 間 労働 を 抑 制し 、仕 事 と 生 活
の 調 和の 取 れ た働 き 方 を拡 げ て いく 」 と の建 議 の 立場 と も 矛盾 す る 。
さ ら に 、上 記 の「 長 時 間労 働 が 集中 す る 期間 が 長 期間 化 す る 」こ と は 、そ
れ だ け残 業 代 不払 い が 増え る こ とを 意 味 する 。
清 算 期間 の 上 限を 3 か 月に 延 長 する こ と は 、と う てい 認 め るこ と が で き な
い。
26
第5
実 効 性のない働き 過ぎ防 止のための法改正
1
はじめに
建 議 は、最 初 に「 働 き 過ぎ 防 止 のた め の 法制 度 の 整備 等」を か か げ てい る 。
し か し、建 議 は、「 結 論を 得 る に至 ら な かっ た。」とし て、「 労 働 時 間( 時
間 外 労働 )の上 限 規 制 の法 定 化」や「 休息 時 間(勤 務 間 イ ンタ ー バ ル)規 制
の 法 定化 」 を 見送 っ て いる 。 そ れだ け で なく 、 建 議は 、 施 策の 多 く を 告 示 、
通 達、指 針 や 労使 の 自 主的 取 組 にま か せ るも の と なっ て お り、こ の 点で も 実
効 性 のな い も のと な っ てい る 。
以 下、働 き 過 ぎ防 止 の ため の「 改 正 」案 の 各条 項 の 実効 性 に つい て 述 べ る 。
2
長時間労働 抑 制策
⑴
中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適
用 猶予 の 廃 止
労 基 法 第 3 7 条 1 項 但 書 は 、「 月 6 0 時 間 を 超 え る 時 間 外 労 働 の 割 増 賃
金 率 を 5 割 以 上 と す る 」 と 定 め て い る 。 し か し 、 同 法 第 1 3 8 条 は 、「 中
小 事 業主 の 事 業に つ い ては 、当分 の 間 、上 記 第 3 7条 1 項 但書 は 適 用 し な
い 」 と定 め て いる 。
「 改 正」案 は、上 記 第 13 8 条 を廃 止 し、2 0 1 9年 4 月 1日 か ら 施 行
す る とし て い る。し か し、中 小 企業 で 働 く労 働 者 に対 し て 適用 を 猶 予 し て
い る 現 状 が 問 題 な の で あ り 、「 改 正 」 案 は 、 よ り 以 前 に 行 っ て お く べ き 改
正 を 今回 行 お うと す る に過 ぎ な い。
上 記 改正 を も って 、長 時 間労 働 抑 制策 が 強 化さ れ る とい う こ とは で き な
い。
⑵
ア
健康確保のため の時間外労働に対する監督指導の強化
労基法 「改正」案 第 36条5 項 の新設
―健康確保の 配慮
「 改 正 」 案 は 、 労 基 法 第 3 6 条 5 項 を 新 設 し 、 同 項 で 、「 前 項 の 助 言
及 び 指 導 (「 時 間 外 労 働 の 限 度 基 準 に 関 す る 助 言 及 び 指 導 」 の こ と ) を
行 う に当 た っ ては 、労 働 者 の 健 康が 確 保 され る よ う特 に 配 慮し な け れ ば
な ら ない 。」 と 定め て い る。
上 記 の と お り 、「 改 正 」 案 は 、 使 用 者 に 何 ら 法 的 義 務 を 課 す も の で は
な く 、そ の 点 から し て 実効 性 が ない こ と は明 ら か であ る 。
27
イ
労基法 「改正」案 第 36条5 項 を 踏 ま え る要 式 、告 示 、 通達
建 議 は、「 上記 の 法 整 備の 趣 旨 を踏 ま え、時 間 外 労働 の 特 別条 項 を 労
使 間 で協 定 す る場 合 の 様式 を 定 め、当 該 様式 に は 告示 上 の 限度 時 間 を 超
え て 労働 す る 場合 の 特 別の 臨 時 的事 情 、特 別 延 長 時間 、限 度 時 間 を 超 え
て労働した労働者に講ずる健康確保措置等を記入することが適当であ
る 。」、「 併 せ て 、 時 間 外 労 働 の 特 別 条 項 を 労 使 間 で 協 定 す る 場 合 、 限 度
時間を超えて労働した労働者に講ずる健康確保措置を定めなければな
ら な いこ と を 時間 外 限 度基 準 告 示に お い て規 定 し、健 康 確 保措 置 と し て
望 ま しい 内 容 を通 達 で 示す こ と が適 当 で ある 。」 と して い る 。
上 記 建議 の 提 言は 、時 間 外 労 働 の限 度 基 準を 超 え て労 働 す るこ と を 当
然 視 して い る こと か ら して も 、ま た 、規制 方 法 が 要式 や 告 示、通 達 で あ
る こ とか ら し ても 、長 時 間 労 働 抑制 策 と して 実 効 性が な い こと は 明 白 で
ある。
3
⑴
年次 有給休暇 の 取得促進
労基法 「改正」案 第 3 9 条7 項 、8 項 の新設
―使用者の年次 有給休暇 の時 季 指定による 付与
「改正」案は、従来の労基法第39条7項、8項を9項、10項にし、
新 た な 7 項 、 8 項 を 新 設 し 、 7 項 で 、「 使 用 者 は 、 年 次 有 給 休 暇 ( 使 用 者
が与えなければならない有給休暇の日数が10労働日以上である労働者
に 係 る も の に 限 る 。) の 日 数 の う ち 5 日 に つ い て は 、 1 年 以 内 の 期 間 に 、
労 働 者 ご と に そ の 時 季 を 定 め る こ と に よ り 与 え な け れ ば な ら な い 。」 と 定
め 、 8 項 で 、「 使 用 者 が 労 働 者 の 時 季 指 定 や 計 画 的 付 与 に よ り 有 給 休 暇 を
与 え た場 合 に おい て は、当 該 与 えた 有 給 休暇 の 日 数分 に つ いて は 、時 季 を
定 め るこ と に より 与 え るこ と を 要し な い 。」 と 定 めて い る 。
⑵
年次 有給休暇 の 取得促進 策としての実 効 性
2 0 1 3 年 時 点 の 年 次 有 給 休 暇 の 取 得 率 は 、 4 8 . 8 % で あ る 。「 有 給
休暇の日数が10日労働日以上である労働者への5日の時季指定による
年 次 有給 休 暇 の付 与」は 、上 記 48 .8 % の 取 得 率と ほ ぼ 同じ か も し く は
そ れ 以下 の 時 季指 定 に よる 付 与 であ り、年 次 有 給 休 暇の 取 得 促進 策 と し て
の 実 効性 が あ るか 否 か 疑問 で あ る。
ま た、年 次 有 給休 暇 は、労 働 者 の請 求 す る時 季 に 与え る の が原 則 で あ る
( 労 基法 第 3 9条 5 項 )。使 用 者 の時 季 指 定が 労 働 者の 時 季 指定 に 優 先 し 、
労 働 者の 時 季 指定 権 を 奪う よ う なこ と が あっ て は なら な い 。
し た がっ て、労 働 者 の 時 季指 定 が 使用 者 の 時季 指 定 に優 先 す るこ と を 定
28
め つ つ、使 用 者 の時 季 指 定に よ る 年次 有 給 休暇 の 付 与日 数 を 5日 か ら さ ら
に 増 やす こ と を検 討 す べき で あ る。
第6
おわりに
1
日本の長時間労 働の現 状
―世界でトップクラスの日本の長時間労働
⑴
日本の 労働者の年間労働時間
厚 生 労働 省「 毎 月 勤 労 統計 調 査」に よ れ ば、2 0 13 年 に おけ る 日 本 の
労 働 者の 年 間 総実 労 働 時間 は 1 74 6 時 間( 事 業 所 規模 5 人 以上 )で あ る 。
こ の 数字 は、パ ー ト タ イ ム労 働 者 を含 め た 全労 働 者 の平 均 労 働時 間 で あ る 。
パ ー トタ イ ム 労働 者 を 控除 し た 労働 者(フ ル タ イ ム労 働 者)の 年 間 総 実 労
働 時 間は 、 2 01 8 時 間に の ぼ る。
総 務 省統 計 局( 労 働 力 調査 )に よ れ ば、パ ー ト タ イム 労 働 者を 含 め た 全
労 働 者の 年 間 総実 労 働 時間 は 、20 6 4 時間( 2 01 3 年 )で あ り 、男 性
に 限 れば 、年 間 労働 時 間 は2 3 0 0時 間 、そ こ か ら さ らに 正 社 員に 限 れ ば 、
年 間 労働 時 間 は2 4 0 0時 間 に 近い 数 字 に及 ん で いる 。
法 定 労働 時 間 どお り 就 労し た 場 合の 年 間 労働 時 間 は、約 1 9 00 時 間 で
あ る。し た が って 、日 本 の 労 働 者は 、年 間 数 百 時 間の 残 業 をし て い る も の
と 解 され る 。( 以上 、 自 由法 曹 団 意見 書 21 6 ~7 頁 参 照)
⑵
ア
労働時間(残業時間)の上限規制のない日本の労働法制
時間外労働の限度基準( 平 成10年労働省告 示 第154 号 )
労 基 法3 6 条 1項 は 、使 用 者 は 、当 該 事 業場 の 過 半数 労 働 組合 も し く
は 過 半数 代 表 と書 面 に よる 協 定( 3 6 協 定)を 締 結し 、労働 基 準 監 督 署
に 届 け出 れ ば 、時 間 外・休 日 労 働 を させ る こ とが で き る旨 を 定 めて い る 。
次 い で、同 条 2項 は 、厚 生 労 働 大臣 は 、前 項 の 協 定で 定 め る労 働 時 間
の 延 長の 限 度 をに つ い て基 準 を 定め る こ とが で き ると し て いる 。こ の 労
基 法 36 条 2 項を 受 け て定 め ら れた の が「 労 基 法 第3 6 条 第1 項 の 協 定
で 定 め る 労 働 時 間 の 延 長 の 限 度 等 に 関 す る 基 準 」( 平 成 1 0 年 労 働 省 告
示 第 15 4 号 )で あ る 。
上 記 時間 外 労 働の 限 度 基準 で は 、そ の 限 度時 間 は 次の よ う にな っ て い
る。
2014年10月10日付「過労死を激増させ、残業代をゼロにする労働時間法制の大改悪に反対
する意見書」
21
29
イ
期間
限 度 時間
1 週間
1 5 時間
2 週間
2 7 時間
4週間
43時間
1か月
45時間
2か月
81時間
3か月
12 0 時 間
1年間
36 0 時 間
特 別 条 項付 36 協 定による上限規制の 撤廃
と こ ろが 、時 間 外労 働 の 限度 基 準( 平 成 1 0 年労 働 省 告示 第 1 54 号 )
3 条 は 、 上 記 限 度 基 準 を 定 め る の と あ わ せ て 、 3 6 協 定 で 、「 限 度 時 間
を 超 えて 労 働 時間 を 延 長し な け れば な ら ない 特 別 の事 情( 臨 時 的 な も の
に 限 る 。)が 生 じた と き に限 り 」、限 度 時 間 を超 え て 労働 時 間 を延 長 す る
こ と がで き る 旨の 特 別 条項 を 定 めて い る 場合 は、限 度 時 間 を超 え て 時 間
外 労 働を さ せ てよ い と 定め て い る。
こ の 36 協 定 の特 別 条 項の 制 度 によ り 、日 本 の 労 働時 間 規 制は 事 実 上
上 限 のな い も のに な り 、際 限 の ない 長 時 間労 働 が 蔓延 し て いる 。大 企 業
に お いて は 、1 か 月 1 00 時 間 超 、1 年 10 0 0 時間 前 後 の時 間 外 労 働
を 許 容す る 3 6協 定 を 締結 し て いる 例 も 珍し く な い。
こ の よう な 状 況に 基 づ いて 、日本 で は 、過 労 死 、過 労 自 殺 が多 発 し て
い る ので あ る 。
2
労基法 等 「改正」案を 廃 案に !
―労働時間 規制の抜本的強化こそ重要
労 基 法等「 改 正 」案 の 高度 プ ロ フェ ッ シ ョナ ル 制 度の 創 設 、企 画 業 務 型 裁
量 労 働 制 の 拡 大 、フ レ ッ ク ス タ イ ム 制 の 清 算 期 間 の 延 長 は 、「 1 日 8 時 間 ・
1 週 40 時 間 」の 労 働 時間 法 制 の大 原 則 を破 壊 し 、過 労 死 、過 労 自 殺を 激 増
さ せ 、残 業 代 をゼ ロ に する も の であ り 、 とう て い 容認 で き ない 。
自 由 法曹 団 は、「 高 度 プロ フ ェ ッシ ョ ナ ル制 度 の 創設 、企 画 業 務 型 裁 量 労
働 制 の拡 大 、フ レ ッ ク スタ イ ム 制の 清 算 期間 の 延 長 」を 定 める 労 基 法等「 改
正 」 案の 廃 案 を強 く 要 求す る 。
い ま 、な す べ きこ と は 、「 時 間 外労 働 の 限度 基 準( = 労 働 時間 の 上 限 )の
法 律 化と 3 6 協定 の 特 別条 項 の 制度 の 廃 止」や「 勤 務 の 終 了と 開 始 の間 に 1
1 時 間以 上 の 間隔 を お く『 勤 務 時間 イ ン ター バ ル 制度 』の 導 入 」な ど 、労 働
時 間 規制 を 抜 本的 に 強 化す る こ とで あ る 。
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自 由 法曹 団 は 、労 働 時 間規 制 の 適用 除 外 制度 の 創 設や 裁 量 労働 制 の 拡 大 等
に 断 固と し て 反対 し 、 人間 ら し く働 く ル ール を 確 立し 、 過 労死 、 過 労 自 殺 、
長 時 間労 働、不 払 い 残 業等 を 根 絶す る た め、全 力 をあ げ て 奮闘 す る 決意 で あ
る。
以上
31