第 章 テイラー展開 次の図のように関数 のグラフを のグラフ(積み木のようなものと考えます) を積み重ねて作ってみましょう。 ただ単純に足すだけではうまく作れません、色々と削ることが必要になります。次のように 半分にしたり, 分の に削らなくてはなりません。 どうですか? たった 枚の積み木を積み重ねただけで,ほぼ たね。これから学ぶのがこのテイラー展開のお話です。 のグラフに近づきまし 初等関数の微分 初等関数の微分 まずは、これまでに習った微分の公式をおさらいしておきましょう。その前に三角関数の逆数につい て、次のように定義しましょう。 三角関数の逆数 微分公式 例題 次の関数を微分せよ。 (解答) ■ 【問題 】 次の関数を微分せよ。 例題 次の関数を微分せよ。 (解答) ∴ ∴ ∴ 【問題 】 次の関数を微分せよ。 ■ 双曲線関数の微分 指数関数を用いて、次の各式によって定義される関数を双曲線関数といいます。 双曲線関数 はハイパボリックサイン またはハイパーサインと呼びます。 などにつ いても同様です。 双曲線関数に関する定理 (証明) と同様 で とする。 ■ 双曲線関数の微分 (証明) ■ 例題 は を満たすことを証明せよ。 (解答) ∴ 【問題 】 について、 を求めよ。 ■ 逆三角関数の微分 の逆関数は無限多価(無限に多くの値をとる点が存在)であるが、その値を主値: に制限したものを 同様に または (アークサイン)で表す。 の逆関数で主値を (アークコサイン)、 に制限したものを の逆関数で主値を または に制限したものを または (アークタンジェント)で表す。 逆三角関数 逆三角関数の微分 (証明) で であることに注意すると、 ∵ ■ 例題 次の関数を微分せよ。 (解答) 【問題 】 次の関数を微分せよ。 ■ 次の関数を微分せよ。 次の関数を微分せよ。 次の関数について、 関数 逆関数 を求めよ。 について、次の問いに答えよ。 を求めよ。 を微分せよ。 平均値の定理 ロールの定理 まずは、 世紀のフランスの数学者ロール( 、 理、ロルの定理から始めましょう。この定理は、両端で 上に少なくとも なる点が開区間 ~ )が証明したごく当たり前の定 になる関数のグラフについて、接線の傾きが 個は必ずあることを述べています。 ロールの定理 関数 は閉区間 で連続、開区間 で微分可能なとき、 ならば を満たす (証明) が存在する。 が恒等的に 、つまり は恒等的に なので、全ての が恒等的に でないときは、 ころが存在する。いま で の値が正または負になると となる場合を考える。このとき、 が最大となる が存在する。 で最大であるから、 のとき、区間 における よって、右微分係数 一方、 ならば、 の平均変化率は負である。 は のとき、区間 における の平均変化率は正。 ∴ ∴ ∴ となる区間がある場合は、 が最小となる ∴ が存在し、同様に ■ 例題 (解答) のときロールの定理を満たす を求めよ。 は閉区間 よってロールの定理より で連続、開区間 を満たす が存在する。( は ∴ ■ 【問題 】次の関数について、ロールの定理を満たす を求めよ。 で微分可能で と の間) に 平均値の定理 ロールの定理から、平均値の定理が導かれます。 平均値の定理 関数 が閉区間 で連続、開区間 を満たす が存在する。 証明) 点 、 を考える。関数 とおくと、 が成り立ち、 で微分可能なとき、 を通る直線の方程式 とこの直線の式との差を は閉区間 で連続、開区間 で微分可能で、 はロールの定理が成立するための条件を満たす。 したがって、ロールの定理より を満たす が存在する。よって、 ∴ を満たす が存在し、平均値の定理が示された。 ■ 平均値の定理は、関数 のグラフにおいて、開区間 ける接線の傾きが区間 における にある曲線上のある点で、その点にお の平均変化率 と一致するような点があることを意 味します。またこの平均値の定理は と の役割をとりかえることによって、 更に のときも成り立ちます。 とおき式変形することで、次の式が得られます。 平均値の定理 (証明)平均値の定理より ここで さらに、 とおくと、 とおけば、 が成り立ち、 であるから、 となるので、 ■ 例題 のとき、平均値の定理の式を満たす (解答) と の値を求めよ。 なので、平均値の定理より ∴ また、 【問題 】次の関数 ■ について、平均値の定理の式を満たす と の値を求めよ。 平均値の定理の応用 平均値の定理を拡張して、次の定理が得られます。 平均値の定理の応用 関数 が閉区間 で連続、開区間 ならば で微分可能なとき、 は定数 (証明)平均値の定理によって、任意の を満たす に対して、 が存在する。定理の仮定より、 であるから、 は任意なので、 は定数 ■ 例題 、 が で連続で、 で ならば、 ( は定数) であることを証明せよ。 (証明) とすると、 は で連続で、 なので、平均値 の定理の応用より、 ∴ ( は定数) ■ 【問題 】平均値の定理の応用を用いて、次を証明せよ。 (一定)ならば、 ( ( は定数) は定数)ならば、 ( は定数) (一定)ならば、 ( は定数) コーシーの平均値の定理 、 ロピタルの定理を導くのに用いられるのは、フランスの数学者コーシー( ~ )による、コーシーの平均値の定理といわれるものです。 コーシーの平均値の定理 関数 を満たす が閉区間 で連続、開区間 で微分可能で、 のとき、 が存在する。 (証明) とおくと、 を満たす 次に が成り立つ。よって が存在する。 を示す。 の条件は開区間 の全ての 均値の定理より を満たす が存在し、 より ■ について成り立つ。よって、平 次の関数 は開区間 においてロールの定理の条件を満たしている。この区間内でロールの定理 を満たす の値を求めよ。 次の関数 は開区間 において平均値の定理の条件を満たしている。この区間内で平均値の定理 を満たす の値を求めよ。 関数 について、等式 を満たす を求めよ。 のとき、コーシーの平均値を満たす の値を求めよ。 の値 ロピタルの定理 ロピタルの定理 ロピタル( ’ 、 ~ 、フランス)の定理を証明します。 ロピタルの定理 関数 、 は を含む区間で連続で、高々 を除いて微分可能で、 のとき、 有限な極限値 (証明) と であり、 が存在するならば、 の場合に分けて考える。閉区間 でコーシーの平均値の定理を適用すると、 に注意して、 を満たす が存在する。ここで、 のとき で、このとき ∴ 同様に、閉区間 ここで、 でコーシーの平均値の定理を適用して、 が存在する場合を考えているので、 ∴ ∴ 例題 ロピタルの定理を用いて、次の極限値を求めよ。 (解答) 【問題 】ロピタルの定理を用いて、次の極限値を求めよ。 例題 を求めよ。 (解答) とおくと、 ∴ 【問題 】 ■ を求めよ。 ■ ロピタルの定理の拡張形 ロピタルの定理で、 を無限大に近付けた場合も成立します。 ロピタルの定理の拡張形 関数 、 は十分大きな全ての き、 有限な極限値 (証明) の関数 、 について微分可能で、 のと が存在するならば、 が閉区間 で連続、開区間 で微分可能で、 ならば、ロピタルの定理を導いたときと同様にして、 ここで、 とおいて、 とすると よって ここで、 のとき だから 同様に、 を負の無限大にした場合も成立する。 ■ 例題 を求めよ。 (解答) ここで、 より、ロピタルの定理を用いて、 ■ 【問題 】 を求めよ。 のとき、 ロピタルの定理の拡張形 ロピタルの定理で 、 が正または負の無限大のときも成立します。 ロピタルの定理の拡張形 関数 、 はは を含む区間で、 を除いて微分可能で、 のとき、 有限な極限値 であり、 が存在するならば、 (証明) コーシーの平均値の定理より を満たす 、または、 が存在する。よって、 、または、 が成り立つ。ここで、 のとき なので、 となり、 、または、 が得られる。このとき、 は 以外で微分可能なので、 のとき とすると、 、または、 次に、上式で の極限を考える。左辺は に依存しないので、右辺のみに関係する。 なので が得られ、 、 のときも が成立する。 ■ 例題 ロピタルの定理を用いて、次の極限値を求めよ。 (解答) ■ 【問題 】ロピタルの定理を用いて、次の極限値を求めよ。 【問題 】 は任意の自然数、 を示せ。 のとき、 例題 ロピタルの定理を用いて、極限値 を求めよ。 (解答) ■ 【問題 】ロピタルの定理を用いて、次の極限値を求めよ。 【問題 】 【問題 】 を求めよ。 を求めよ。 ロピタルの定理を用いて、次の極限値を求めよ。 ロピタルの定理を用いて、次の極限値を求めよ。 のグラフを描け。 テイラーの定理 高次導関数 関数 の 次、 次、 次導関数 については既に学びました. 、 次導関数が存在します.関数 可能であるといい、 の が がさらに微分可能なときは 回まで微分可能なとき、 は 回微分 次導関数を記号 などで表します。 初等関数の高次導関数 ( ( ) ( ) ( ) ) ( ) (証明) したがって、 とおいて を利用すると、 ■ 例題 次の関数の第 次導関数を求めよ。 (解答) ■ 【問題 】次の関数の第 【問題 】 次導関数を求めよ。 の第 次導関数を求めよ。 多項式のテイラー展開 一般の 次の多項式は、常に の形に書くことができます。実際、 を で割り、次に、その余りを で割り、 と 続けていくと、上の形が得られます。 例題 を のベキで表せ。 (解答) ■ 【問題 】 を このとき、係数 のベキで表せ。 を高次の微分係数 を用いて表すことができます。 まず、 次に、 より、 より、 より、 これを続けていって、 であることがわかります。よって、 次の多項式については次のように表示できます。 多項式のべき展開 例題 を のベキで表せ。 (解答) より、 【問題 】 【問題 】 を を のベキで表せ。 のベキで表せ。 テイラーの定理 テイラーの定理は、平均値の定理を一般化し、一般の関数についても上の表示と類似のものが成り立つ ことを示します。 テイラーの定理 関数 は閉区間 を満たす で 次導関数が連続で、開区間 で 回微分可能ならば、 が存在する。 (証明) と仮定してみたとき、 であることを示す。 とおくと、 より が成り立つ。( を満たす ) よって、ロールの定理より が存在する。ここで、 を計算して、条件 を示す。 のとき とおくと、 よって、 より ■ と仮定しても、証明はまったく同様なので、テーラーの定理は の場合にも成り立つことが わかります。また平均値の定理と同様に、 とおくと、 でテイラーの定理は次の様にも書くことができます。 テイラーの定理(別表現) テイラーの定理に現れる最後の項を 重要になります。 剰余項 で表し剰余項といいます。関数の近似の誤差を評価する際に マクローリンの定理 が成り立つので、 の代わりに を用いることもあ テイラーの定理において ります。特に の場合はマクローリンの定理とも呼ばれます。 とおいて、 より を用いると、次の式が得られます。 マクローリンの定理 テイラーの定理の初等関数への応用 (証明) ∴ ゆえに、マクローリンの定理より、 となるので、 のとき ここで、 が偶数のとき、 が奇数のとき、 ∴ ∴ なので、マクローリンの定理で を に置き換えると、 となるので、 のとき なので、マクローリンの定理で を に置き換えると、 、 だから、 ここで、 が偶数のとき、 が奇数のとき、 ∴ ∴ 、 、 ∴ よって、マクローリンの定理より、 ■ 例題 マクローリンの定理を用いて、 を展開せよ。また、剰余項も求めよ。 (解答) ∴ また、 ∴ ■ 【問題 】マクローリンの定理を用いて、次の関数を 次の項まで展開せよ。 【問題 】マクローリンの定理を用いて、次の関数を展開せよ。また、剰余項も求めよ。 コーシーの剰余項 について、コーシーの剰余項と呼ばれる別表現を テイラーの定理の剰余項 見てみましょう。この表現は対数関数の近似を考えるときに用います。 コーシーの剰余項 テーラーの定理における剰余項 (証明)剰余項 また、 を は、つぎのように表現できる。 を固定したときの の関数とみなして と定義します。 より、 とく。 にコーシーの平均値の定理を 用いて、 は と の間 ∴ を微分して、 ここで、 とおくと、 より、 に代入して、 ■ 次の関数の第 次導関数を求めよ。 回微分可能な関数とすると、これらの積 を は 回微分可能で、次が成り立つ。 (ライプニッツの公式) の第 これを用いて、 次導関数を求めよ。 マクローリンの定理を用いて、次の関数を与えられた次数まで展開せよ。 次 マクローリンの定理を用いて、次の関数を 次 次の項まで展開せよ。 マクローリンの定理を用いて、次の関数を展開せよ。 関数の近似式 近似 テイラーの定理 を用いて、それから剰余項をとり除いて得られる、関数 の‘ 次の近似式 ’を考えます。 次近似式 関数 の 特に 次の近似式 を次のように定める。 とすると、 例題 とするとき、 の における 次近似式 を用いて、 の値を求めよ。 (解答) ∴ ∴ ∴ 【問題 ■ 】 とするとき、 の における 次近似式 を用いて、 の値 】次の関数 の における 次近似式を求めよ。また、この近似式を用いて指定され の における 次近似式を求めよ。また、この近似式を用いて指定され を求めよ。 【問題 た値の近似値を求めよ。 【問題 】次の関数 た値の近似値を求めよ。 例題 が十分小さいとき、 を証明せよ。 (証明) (例題 ∴ 【問題 ■ 】 が十分小さいとき、 を証明せよ。 ) 誤差 次近似式は整式であり、 ‘ 整式はいくらでも精度よく計算できる ’ことが重要です。マクローリンの定 理の剰余項は整式ではなく、その絶対値 は近似の誤差といわれます。誤差 急速に増大します。 ( が成り立つので、十分に大きな の大きさを評価しましょう。分母 は が大きくなると は自然数)とすると、 をとれば は十分に小さくなります。よって、 の増加と共に急速に増大することがない場合には、十分に大きな に対して、誤差 が は十分に小さく なることが期待されます。 誤差 は未知の を含むのでその大きさを精確に評価することはできず、実用上は、 な誤差の限界と呼ばれる計算可能な量 を考え、それを誤差の代用とします。 が十分に小さいと評価できる場合には、関数 誤差の限界 より大き の 次近似式 は十分に意味があります。 例題 とするとき、 (解答) の における による誤差 を求めよ。 より、 ∴ 【問題 次近似式 )■ 】 とするとき、 の における 次近似式 による誤差 を求め よ。 例題 のとき、 なる近似式の誤差は より小さいことを証明し、 による誤差を評価せよ。 (解答) ∴ ∵ ここで 【問題 とすると、 】 のとき、 ■ なる近似式の誤差は より小さいことを示せ。 指数関数の近似と誤差の評価 指数関数 の近似を考えましょう。マクローリンの定理で、 だから が得られます.誤差の限界 は より、例えば のようにとると評価できます. す。 として、対数の底 のとき、 は十分に小さくなりま の近似 を考えてみましょう。この場合、 ですが、 なので、誤差の限界を と評価しましょう。ちなみに と、 のとき、つまり始めの なので、上の近似式は くとも 桁の精度で 項を計算する のとき有効数字が少な の近似値を与えます.実際、 で計算すると が得られ、知られている値 比べると有効数字 と 桁の精度で一致します。 は の増加と共に急速に に近づいていくことに注意し ましょう。 ここで、関数 の 次近似式 を直接用いて、 ていく様子を見てみましょう。右の図からわかるように、 が と共に近似され になると既にほぼ近似できているのがみて 分かります。 例題 の値を四捨五入によって、小数第 位まで求めよ。ただし、 であることは使ってもよい。 (解答) とすると、 のとき、 は よって誤差は より、 を超えない。 より、 ∴ もし とすると、 となり誤差が大きく小数第 ∴ 位まで求めることができない。 のときは、 となり、小数第 【問題 ■ 】 ∴ 位に少し誤差が残ることになる。 の値を四捨五入によって、小数第 位まで求めよ。 三角関数の近似と誤差の評価 にマクローリンの定理を適用して、 次に三角関数の近似を考えましょう。先ほど見たように が得られます。よって、誤差 は となります。ここで誤差は、 、および、 に依存しない形で、 なので とすることができます。 となるので、この近似は有効数字が少なくとも が得られ、誤差 の周期が と制限でき、 のとき、 桁の精度になります。 についても、同様に は、 とできます。 のとき、 ここで、関数 の となり、誤差は微々たるものになります。 次近似式 を直接用いて、 が と共に近似されてい く様子を三角関数を例にとって見てみましょう。 まず、 ですが、次の図からわかるように、これは うというわけですから、 次式によって での接線になります。次に、 くなり、また近似の範囲も広がります。 次の近似 になると、区間 と区別がつきません。これらの様子は誤差の式 を原点付近で近似しよ は 付近での近似がよ においては肉眼ではもう からもわかるように、 を定め ればそこでの近似は近似式の次数と共によくなっていき、また近似できる範囲もその次数と共に広がってい きます。 例題 の値を四捨五入によって、小数第 位まで求めよ。 (解答) を代入して、 のとき、 よって誤差は ∴ 【問題 を超えない。 ∴ 】 の値を四捨五入によって、小数第 ■ 位まで求めよ。 対数関数の近似と誤差の評価 対数関数の近似は注意が要ります。議論がしやすいように としましょう。 対数関数の近似 対数関数 をマクローリンの定理における誤差 において、 のとき は、 となる。 (証明)マクローリンの定理より 誤差 は、 とおくと、 のとき、 だから、 が大きくなるとき、全ての のとき について誤差が小さくなるとは限りません。よって、 となるための条件は 。その の範囲は、 , より に注 意すると、 θ θ となります。 は 誤差 に依存するので上の不等式を正確には解けませんが、 が小さくなるための‘ 安全な 同様にして、 を利用すると, が大きいとき ’の範囲が得られます。 が得られます。よって、 ならば確実に とがわかります。コーシーの剰余項を用いると、この範囲を ローリンの定理とコーシーの剰余項より、 より まで広げることができます。マク のとき ∴ となる条件は、 より より、 より、 のときは、 より 満たす。 のときは、満たす。 のときは、 より、 より、 において、 なので のとき が小さくなるこ となる。 ■ だから、 例題 とするとき、 における の値を求めよ。さら 次の近似式を求めよ。また、この近似式を用いて との誤差を評価せよ。 (解答) を代入すると、 よって、 【問題 との誤差はかなり大きいといえる。 ■ 】 用いて とするとき、 の値を求めよ。さら における 次の近似式を求めよ。また、この近似式を との誤差を評価せよ。 このように のマクローリンの 展開式は収束がかなり遅いといえます。そのために別な展開式を考えましょう。 また、 のマクローリン展開を用いて や いま見たようにマクローリン展開における誤差は や の値を計算することはできません。何故なら のときにのみ成り立つからです。では の値を計算するのにはどうしたらよいでしょう。 例題 を用いて、次の等式を示せ。 さらにこの等式を用いて の値を求めよ。 (解答) ∴ であり、マクローリンの定 理において、 を に変えると、 を代入すると、 を代入すると、 ■ 【問題 なので、比較的良い近似を与えているといえます。 】 の値を求めよ。 が十分小さいとき近似式 とするとき、次の問いに答えよ。 の 数第 が成り立つことを証明せよ。 における 次近似式 を用いて の近似値を求めよ。答えは四捨五入して小 位まで求めよ。 を用いることで、 の近似値を求めよ。 にマクローリンの定理を適用することで、 の値を小数点以下第 位まで決定 せよ。 の値を小数第 より小さい鋭角に対する正弦の値を計算するのに、近似式 誤差は 位まで求めよ。 以下であることを示せ。また、これを用いて、 を用いると、 の値を小数第 位まで求めよ。 テイラー展開 テイラー展開 指数関数や三角関数の 次式近似において、誤差 た。また、対数関数 より、関数 については の極限で になることがわかりまし のときにそうなりました。一般に、テイラーの定理 が無限回微分可能で、 が成り立つならば、 は のとき、 で誤差 が消滅するとき、 は次のようなべきの形の無限級数の形に表すことができます。この表式を関数 のテイラー展開またはテイラー級数といいます。 テイラー展開(テイラー級数) 特に の場合をマクローリン展開またはマクローリン級数といいます。 マクローリン展開(マクローリン級数) テイラー展開において、変数変換 単のために を行えばマクローリン展開に帰着するので、これからは簡 の場合を考えます。このとき、テーラー展開可能であるための条件は誤差 を用 いて、次のようになります。 マクローリン展開可能なための条件 マクローリン展開可能なための条件 は をみたす (証明) ここで、 で無限回微分可能で、 に関係しない定数 が存在すれば、 は でテイラー展開可能である。 より、 の内部に任意に固定した に対して、 を満たす自然数 ■ が存在するから、 初等関数のテイラー展開 初等関数のテイラー展開 (証明) とおくと、任意の正数 に対して、 よって、テイラー展開可能なための条件より成り立つ。また、 は任意の正数なので、 で成り立 つ。 とおくと、 よって、テイラー展開可能なための条件より成り立つ。 とおくと、 よって、テイラー展開可能なための条件より成り立つ。 「初頭関数の近似」の頁参照。 ■ 例題 関数 (解答) ここで のマクローリン展開を求めよ。 とおくと、 だから、マクローリン展開は とおくと、 よって、マクローリン展開可能。よって、 ■ 【問題 】次の関数がマクローリン展開可能であることを示せ。また、マクローリン展開を求めよ。 ( はコーシーの剰余項を用いよ。) 関数 のマクローリン展開を求めよ。また、この展開式を利用して のマクローリン展開を求めよ。 次の関数のマクローリン展開を求めよ。 マクローリン展開を利用して、次の極限値を求めよ。 複素数の極形式と複素指数関数 極形式と指数関数 複素数の学習で,複素数 の絶対値を ,偏角を とすると θ θ と表されることを学 びました。これまでに学んだ無限級数表示の結果を用いると,オイラーの公式と呼ばれる非常にきれいな 公式を導くことができます。絶対収束する無限級数は項の順序を自由に変えても収束値が変わらないことを 利用します. オイラーの公式 (証明)三角関数のマクローリン展開より、 ここで, なので、 ① 三角関数のマクローリン展開は絶対収束級数なので、和をとる順を変えることができ、 指数関数のマクローリン展開において を で置き換えると、 ② ①②より 特に ■ のときには ,, を結ぶ神秘的な関係式が得られます。 オイラーの公式 の無限級数は、 ですから、全ての実数 に対して収束します。また、その導関数につい ては より、指数関数として満たすべき性質 を満たします。ここことから、複素数 と表すことができます。 の絶対値を ,偏角を とすると、 複素変数の指数関数・三角関数と複素微分 ( 複素数 は実数)の無限べき級数によって定義される複素指数関数 を考えましょう。この無限級数は任意の複素数 に対して絶対収束します。以下, は,微分学の立場に おける、指数関数の定義 を満たすことを示しましょう。まずは複素関数 とし, の α からの‘ 増分 ’を としましょう。複素 増分 が存在するとき、 ら ,対応する 平面上で,点 を用いて, の微分係数の定義から.複素 が点 点を の‘ 増分 ’を に任意の経路を通って限りなく近づくことを で表しましょう。 を複素関数 平面上の 、または のとき,有限な の における微分係数といいます。上式は が任意の方向か に近づいても極限値が存在して、その極限値が近づく方向に依存しないことを要求しているので、非 常に強い条件になっています。 が成り立つので、 は が存在するとき、 で連続であることに注意しましょう。 ^ は微分可能、よって の多項式も 微分可能です。このことは、代数学の基本定理の証明の際に必要であった条件、つまり、複素数 の多項式 は連続関数であることが厳密に示されることを意味します。マクローリン展開はべき級数なので、微分係数 を求めるには の導関数を調べれば済みます。 ∴ この結果は全ての複素数 ( は自然数) について成り立ちます。よって、項別微分の定理より、 ∴ 三角関数のマクローリン展開で実変数 を複素変数 で置き換えた複素三角関数 を考えると、容易に確かめられるように次の微分関係が成り立ちます。 また、指数関数との関係 を複素数で置き換えた関係式 も成り立ちます。 さらに, が成り立つので、 のように,三角関数は指数関数を用いて表すことができます。 以上,指数関数・三角関数で例解したように、複素関数の導関数は実数の場合と同じです。実数の微分公 式はそのまま複素数の公式になります。実数で微分可能な範囲は複素平面上の領域に拡張されます。
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