祝 ・ 浦 添 市 美 術 館 開 館 25周 年

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「美しさ」
「きよらかさ」を表す
琉球の古語
祝・浦添市美術館開館
きよらさ 76
周年
開館
周年あいさつ
本年2月1日、浦添市美術館は開館
周年を迎えました。
当館は、平成2年2月1日、国内初の
漆芸の専門館として、県内では最初の本
格的美術館として開館いたしました。
開館当初の琉球漆器200件余の収蔵
品は、現在では日本や中国さらに東南ア
ジア地域まで広がり、約1300件余に
まで達する漆器コレクションとなり、焼
物や絵画などを含めると2000点近い
収蔵品となりました。
また、入館者も近々
200万人を達成する予定です。
この間、常設展示では沖縄の漆芸を中
心に紹介してきました。また、企画展示
では、海外に流出した琉球王国の文化財
浦添市美術館館長
宮里正子
解を賜りますようお願い申し上げます。
これまでのご支援ご協力に感謝するとと
もに、今後とも浦添市美術館の活動にご理
となることを目標にして、活動してまい
ります。
そして、美術館が地域や児童生徒の心
がより豊かで真実味を育む社会教育施設
もたゆまぬ研鑽と研究を重ねます。
りを持つ漆文化を通して沖縄やアジアの
歴史を次世代につなげるためにこれから
器の美しさはもとより、人々と長い関わ
当館のコレクションの基となる漆器は、
アジア独特の樹液を用いた造形です。漆
幅広いジャンルの展覧会を開催してきま
した。
やヨーロッパの美術などを紹介するなど、
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25
1
きよらさ:
浦添市美術館ニュース 2015 年4月1日(年3回発行)
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平成
年度 第Ⅰ期常設展
漆器の中のものがたり
●ものがたりと吉祥文
今回の常設展では、各地の漆器の中から、「ものがたり」が
表された作品を取り上げ、紹介します。
●琉球漆器~美・技・歴史~
第一室では、まず琉球漆器の歴史をた
どるとともに、その美や技、特徴に迫り
ます。
縁起が良い、おめでたい意味合いの文
様である吉祥文の中にも、故事・説話が
もととなっているものがあります。例え
ば、吉祥文の代表的なモチーフに長寿を
意味する「桃」がありますが、その由来
は中国の女仙・西王母の庭の蟠桃が三千
年に一度実を結び、これを食べれば長寿
になるという伝説に基づいています。第
三室では、こうした吉祥文と結びつくも
のがたりを紹介します。
●漆器にまつわるものがたり
「沖縄の古美術とともに~岡信孝の日本
画」展(平成 年1月 日~2月 日)
関 連イ ベ ン ト「 対 談 : 美 を 語 る 」 ダ イ
ジェスト版をお届けします。
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義父の濱田が、復帰前の沖縄に私と女
房と子供を呼んで、石垣島や竹富島、壺
屋の事を教えてくれた。
ある日壺屋を歩いてスケッチをしてい
たら、建築中の家が垣を崩してて、一番
下に 初期 の 壺 屋 の陶 器が 層に な っ て た。
これは非常に重要な物じゃないかと、県
立博物館に調べるように連絡しました。
―沖縄との繋がりは?
明治の物中心に。まだ評価されていな
い、 一般 的 に 認め ら れ てな い 物 の 中に、
美の世界を感じて収集していた。
んですよね。
―お父様も沢山コレクションされていらした
うちは子供が8人いて、父が才能の有
無 は お れが 選 ぶか らそ の 方向 へ行 け と。
それで絵描きに。
うして日本画の道に?
うですが、ご実家はお医者様の家系です。ど
また奥村土牛といった先人に薫陶を受けたそ
― 先 生 は 祖 父・ 川 端 龍 子、 義 父・ 濱 田 庄 司、
語り手:岡信孝氏(日本画家)
聞き手:宮里正子(当館館長)
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その旅行中に、盗掘犯を捕まえたので、
盗品を見に来てくれと石垣の警察から濱
田に連絡があった。駆けつけると、体育
館に千点ぐらい並んでました。僕がそこ
で収穫したのは、その副葬品に琉球の陶
器の歴史を全部見たという事です。中国
の物、白磁もちょっと、初期の伊万里も
ずいぶんあった。韓国のもありましたね。
そこから沖縄の陶器を集めるようになり
ました。
すね。では、何にひかれて琉球漆器に?
―沖縄の古美術収集は陶器から始まったんで
まず、川端龍子が亡くなった時に、こ
れからは古美術を僕の師 匠にしようと
思った。骨董市やガラクタ屋から拾い出
す目を養う。偽物を買わない眼を作ると
いうことは、偽物を描けない、だから師
匠なんです。
ある時京都の骨董屋に寄ると、沈金の
お盆があって、それが素晴らしく美しい。
「これはどこの?」と聞いたら「沖縄だ」
と。骨董屋は沖縄の物は安いと言うんで
す。じゃあ、これを集めようと思って5
~6点集めると、全て素晴らしい。僕も
だんだん目が利くようになってきた。
でも、しばらくすると行く先々で予約
済で買えない。コレクターが琉球物が出
たら買うと言って押さえてた。値段も一
年で十倍になって。それで収集を諦めた
ら、ある日「沖縄の物を集めてらっしゃ
るんですね」
と道具屋が訪ねてきた。
「私
が琉球物を持ってる人を知っているから、
出してきましょう」と。本当に名前のな
い 道 具 屋 さ ん で す け ど、 月 に 2 ~ 3 点
持って来るんです。
年位で200点ほど集めて、そのコ
レクションが最初に寄贈した物です。
新美術新聞にね、大きく写真入りで漆
の美術館が出来たと載ってたんです。そ
れで、ここにあげようと思ってた。
不 思 議 な 縁 で、 骨 董 屋 の 観 宝 堂 さ ん
が「こういう美術館ができたんですけど、
岡先生、沢山もってるそうですね」と電
話をくれて、僕は「売らないけどあげる
よ」と言ってしまった。
観宝堂さんはすぐに来て、私の家から
―当館へ寄贈のきっかけは何でしょうか?
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漆 器 に 施 さ れ た 文 字 や 持 ち 主 の銘 と
いったところからも、作品にまつわるも
のがたりを垣間見ることができます。第
四室では、一つ一つの作品に秘められた
さまざまなものがたりを紹介します。
●漆器に触れてみよう!
日常生活の中で、なかなか漆器に触れ
る機会が無いという方も多いのではない
でしょうか。第五室ではさわれる漆器を
中心に展示します。
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●うつわに広がるものがたりの世界
朱緑漆二十四孝図密陀絵盆
特集
対談:美を語る
ダイジェスト
年5月 日(土)
○ 会 期 平成
日(日)
~9月
○ 料 金 一 般150円 大学生100円
高校生以下無料
13 16
27
第二室では故事・説話をもとにした文
様を取り上げ、紹介します。故事・説話
とは、中国の古典に書かれている逸話や、
人々の間で語り伝えられてきた話などの
ことです。有名なものに中国の二十四人
の 親 孝行 者の 話を ま とめ た「 二 十 四 考 」
があります。そのうちの一つ、王祥の話
は、魚が食べたいと言う母親のために魚
採りに行くも、極寒ゆえ河面は氷で覆わ
れており、衣服を脱いで氷上に伏してい
ると、氷が溶け魚が二匹出てきた、とい
う内容です。写真の作品「朱緑漆二十四
孝図密陀絵盆」には、その様子が文様と
なって表されています。作品に広がるも
のがたりの世界をお楽しみください。
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2
漆芸家シリーズ2015 松田勲展
4回目の開催となる漆芸家シリーズ展。
今回は伝統工芸士で沖展会員の松田勲氏
を紹介します。
松田氏は和歌山県で修業し、㈱琉球漆
器で勤めた漆器業界リーダーの一人です。
その一方で 年前から首里に工房を構
えて自身の作品を発表しています。県指
定無形文化財「琉球漆器」技能保持者の
三人(故)嘉手納 勇
慿氏から箔絵を、金
城唯喜氏から沈金を、前田孝允氏から螺
鈿を学び、伝統的ながらも新しい試みを
取り入れた多彩な表現を得意としていま
す。
また、首里末吉や読谷村楚辺といった
各地の獅子頭の製作、八重瀬町に伝わる
の人々の年中行事や暮らしに寄り添った
儀間比呂志「戦がやってきた」展
日(火)
日(日)
年の節目の年、慰霊の日にあわ
戦後
せ、沖縄を代表する作家・
儀間比呂志氏が沖縄戦を
描いた版画「戦がやって
きた」を展示します。
画面の中から静かに伝
わる怒りと祈りが胸を打
つ作品です。
○ 会 期 平成 年6月
~6月
トコト
メールマガジンはじめました。
当時の浦添市美術館の宮城篤正館長に電
話した。そしたら宮城館長がすぐ飛んで
来た。でも「私ではこれだけの物は受け
取 れ ま せん。 市 長 を 呼 ん でき ま す 」 と。
一か月後に比嘉昇市長がいらして、新聞
社 3 社 を 連 れ て 贈 呈 式。 そ う い う 流 れ
だったんです。その後、徳川義宣先生と、
荒川浩和先生とあなたが調査に来た。
― 先 生 達 は、『 琉 球 漆 工 芸 』 と い う 琉 球 漆 芸
の世界で代表的な本を出しています。
そ の基準にはみ出るような物ばかり
だ っ た。
「私 の研究した以外の物が こん
なにあるのか」と驚いていました。
ていましたが、
「絵」は、見たことがなかった。
―先生の絵の原点である漆器や焼物は目にし
を両方見て欲しいと展覧会を企画しました。
それで今回は最初に頂いた物と先生の日本画
僕としては、コレクターではなく絵描
きなんです。だから、絵をコレクション
と一緒に展示してくれて本当に嬉しかっ
た。それで今持ってる物を全部差し上げ
るから、一緒に展覧会をやりましょうと。
沖縄の物はこれが全てです。僕はね、王
墓に報告したんです。お返ししますよと。
した。開館当初の寄贈品と絵を、と考えてい
―新たに140点近くも頂けるとは想定外で
たので。でもこれは、最初の寄贈品と兄弟と
いうか、一緒の物なんですね。
そうです。研究してもらいたいんです
ね。 琉球 の美 とか 喜び とか 悲 し み とか、
実際のものから調べてもらいたい。
(編集 山川・友寄)
市美術館ニュース」をご登録ください。
随時配信。希望者はコードから「浦添
月1回のお知らせの他、新しい情報を
浦添市美術館は、漆芸専門の美術館であ
ることはもちろん、内井正蔵氏による建築
も、見所のひとつです。海外から、浦添市
美術館の建築を見に来たという方もいます。
塔が連なった外観も趣がありますが、私
のおすすめはエントランスホールから展示
室へ向かう廊下の窓から見える景色です。
花芭蕉や夾竹桃の鮮やかな緑と、琉球石
灰岩の白、レンガの赤茶色、銅 瓦の緑青が
一望できる空間は、少し影が指すのですが、
その隙間を通して沖縄の強く鮮やかな青空
が見えます。浦添市美術館にお越しの際に
は、展示品だけではなく、建物が作る空間
もお楽しみください。
(友寄)
学芸員より ちょっヒ
と
以上の展覧会はすべて主催:浦添市美
術館、観覧料は無料です。
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今後の展覧会
10 29
70
注目
27
仕事を多く手がけました。
このような、松田勲氏の伝統漆芸の世
界をどうぞご堪能ください。
日(土)
日(日)
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「平成 年度 新収蔵品展」
「琉球八景 中島蕉園」
―《 琉 球 交 易 港 図 屏 風 》
《琉球八景》
《琉球
龕(ガン)などの修復にも携わり、沖縄
―
交易港図》《花鳥図》《琉球八景校合摺り》 」
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那覇の港や首里・那覇のまちの賑わい
を 描い た《 琉球 交 易 港 図 屏 風》
、浮世絵
師・ 葛 飾 北 斎 が 琉 球 の
景勝地8ヶ所を描いた
《 琉 球 八 景 》 な ど、 当館
収蔵の絵画作品5件が
新たに浦添市文化財に
指 定 さ れ ま し た。 そ の
指定作品を記念展示し
ます。
年 度 新 収 蔵 品 展 」 で は、
ま た「 平 成
約150件の新収蔵品から約 件をお披
露目します。
26
27
実習教室作品展
浦添市美術館友の会・サークル作品展
当館では、一般の方を対象に実習教室
を開講しています。本展は、紅型・きゅ
う漆・金繕いの3教室の作品を展示予定
です。約 名の受講生の、個性あふれる
作品をお楽しみください。
また、美術館のサークルメンバーや友
の会会員の、日頃の制作の成果を発表す
る作品展も同時開催されます。
年4月7日(火)
○ 会 期 平成
~4月 日(日)
30
「浦添市文化財指定記念展
27
30
平成 年5月
○
会
期 ~5月
3
40
日(水)
日(日)
27
26
年4月
○
会
期 平成
~5月
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浦添市市制施行 周年・浦添市美術館開館 周年記念
日本近代洋画への道
ー山岡コレクションを中心にー展
江戸から明治へ移り変わる時代の変化
とともに、美術の世界もまた転換期を迎
えます。伝統的な絵画手法とは異なった
50
西洋の技術や材料にいちはやく注目して、
少ない資料を頼りに、また直接渡欧して
技術を修得し、日本の美術界に新たな局
面を開こうとした画家達がいました。
この展覧会は初期洋画の優れたコレク
ションである「山岡コレクション」を中
心に、日本洋画の父といわれる高橋由一
をはじめとする草創期の画家達の秀作約
100点を一堂に紹介します。
新しい時代に新しい絵画を創り出そう
とした画家達の情熱を感じていただける
展覧会です。
主な作家
青木繁・浅井忠・黒田清輝・司馬江漢・
高橋由一・徳川慶喜・山本芳翠など約
42
作家
日(金)
日(水)
青木繁 二人の少女
一九〇九年(明治 )
23 14
*関連する講演会などの催しと観覧料の
-)
27
13
詳細は次号にてお知らせします。
年8月
○会 期 平成
~9月
高橋由一 鮭図(部分)
一八七九―八〇年(明治
12
45
25
美術館スケジュール 2015 年4月~ 2016 年3月 ※タイトルや日程は変更になる場合があります。
■常設展展覧会名称
会期
主催
平成 27 年度第Ⅰ期常設展
5/16(土)~9/13(日)
浦添市美術館
平成 27 年度第Ⅱ期常設展
9/17(木)~1/11(月)
浦添市美術館
平成 27 年度第Ⅲ期常設展
1/15(金)~4/23(土)
浦添市美術館
■企画展示室展覧会名称
会期
主催
浦添市美術館実習教室作品展
4/7(火)~4/19(日)
浦添市美術館
第 17 回浦添市美術館友の会・サークル作品展
4/7(火)~4/19(日)
浦添市美術館友の会
第 35 回沖縄県書窓展
4/22(水)~4/26(日)
沖縄県書窓会
浦添市文化財指定(絵画)記念展
4/29(水)~5/10(日)
浦添市美術館
平成 26 年度新収蔵品展
4/29(水)~5/10(日)
浦添市美術館
第 7 回おきなわレカンフラワー展
5/1(金)~5/10(日)
第 7 回おきなわレカンフラワー実行委員会
漆芸家シリーズ 2015 松田勲展
5/16(土)~5/24(日)
浦添市美術館
琉球大田焼窯元・平良幸春ファミリー展
5/27(水)~5/31(日)
平良幸春
かなの書 仲本清子展
6/11(木)~6/14(日)
かなの書 仲本清子展実行委員会
第 41 回沖縄県書道展
6/17(水)~6/21(日)
沖縄県書道美術振興会、琉球新報社
儀間比呂志「戦がやってきた」展
6/23(火)~6/28(日)
浦添市美術館
(前期)6/3(水)~6/7(日) 戦後 70 年沖縄美術- REGENARATION -
社会と芸術
-戦後沖縄社会と抵抗のモダニズム美術-展 (後期)6/24(水)~6/28(日) 実行委員会プロジェクトすでぃる
みんな大好きアンパンマン
7/3(金)~8/9(日)
琉球新報社
やなせたかしの世界展
日本近代洋画への道
8/14(金)~9/23(水)
浦添市美術館
-山岡コレクションを中心に-展
第 28 回てだこライオンズクラブ
9/19(土)~9/21(月)
てだこライオンズクラブ
国際平和ポスターコンテスト
住友生命 沖縄支社 第 39 回 こども絵画コンクール
9/27(日)
住友生命沖縄支社
わたしのマーガレット展
10/3(土)~11/22(日)
琉球新報社
浦添市文化協会 第 34 回文化祭
11/26(木)~11/29(日)
浦添市文化協会
東恩納渓石書作展
12/2(水)~12/6(日)
東恩納渓石書作展実行委員会
第 21 回沖縄県中学校総合文化祭
12/12(土)~12/13(日)
沖縄県中学校文化連盟
第 31 回県立浦添工業高校デザイン科卒業作品展
12/17(木)~12/20(日)
沖縄県立浦添工業高校デザイン科
第 16 回 浦添市小中学校美術作品展
琉球大学教育学部美術教育専修・
大学院美術教育専修「卒業・修了」展
PIECE OF PIECE『レゴ @ ブロック』で作った
世界遺産展 PART-3(予定)
12/23(水)~1/17(日)
浦添市美術館
2/10(水)~2/14(日)
琉球大学教育学部美術教育講座
2/20(土)~4/10(日)
沖縄タイムス社
開館時間:午前9時 30 分~午後5時
※金曜日は午後7時まで(入館は開館の 30 分前まで)
編集・発行
休館日:毎週月曜日(公休日の場合は開館)
12/28(日)~1/ 4(日)は年末年始休館
5/12(火)~5/15(金)は臨時休館
〒901-2103 沖縄県浦添市仲間1丁目9-2 Tel:098-879-3219 Fax:098-878-1221
http://museum.city.urasoe.lg.jp/
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